第16話よろしくお願いします。
1回戦を終え応援席に戻ってくるとクラスのやつらからお疲れなどと声をかけられて出迎えられた。
「お、三神お疲れさん!いやぁ〜みごとにぶっ飛ばしたな!上鳴のこと」
「ははは……まぁな」
褒めるように明るく言う砂藤達にテキトーな相槌を打っておく。
「昼休みのこともあったし、綺麗に上鳴がふっ飛んでってウチらはちょっと清々したけどね〜。ま、アンタも同罪だから次は三神の番かな〜」
茶化したように言う耳郎に何人かの女子が頷いたり苦笑したりする。
「いやいや、ほんと悪かったって!そろそろ機嫌直して普通に応援してちょー」
俺も軽い口調でそう答えて階段を降りていく。そうして1人早口でブツブツつぶやきながらすごいスピードでノートに書き殴っている男の頭に軽くチョップをしてから隣りに座る。
「ブツブツブツブツ…………痛っ、あ、ノア君!お疲れ〜」
「おう、サンキュ。ってかノートにメモすんのはいいけどもっと周り見ろな?みんな引いてたぞ」
「え、あぁ……そうだった、恥ずかしい……!」
「ま、まぁでも終わってすぐなのに先見越して対策考えてんだもんね、すごいねデク君!」
恥ずかしそうに顔を赤らめてノートで顔を隠すデックンに麗日がフォローを入れる。
「いやこれはほぼ趣味みたいなもので!せっかくクラス以外のすごい個性が見れる機会だし……!あ、A組のみんなのもまとめてるんだ!ホラ、麗日さんのも!」
「っっ!!!」
「おいコラやめろ、そういうのは本人に見せるもんじゃありません!」
麗日がなんとも言えない顔で固まるなか、ノートをペラペラとめくり麗日のことが事細かに書かれたページをウキウキした顔で見せるデックンに、俺は慌ててノートを無理やり閉じさせた。
こいつ1度テンションが上がると変なことまで喋りだすことがよくあるからそこだけはマジでどうにかしてほしい……。
そんなことを思っている間にも試合は進んでいき、
第4試合は飯田VS発目。
騎馬戦ではデックンと組んでいたサポート科の女子、対等に戦いたいからとアイテムの装備を飯田に渡してきたらしく、本来ヒーロー科は原則アイテムの使用禁止なのだが青臭いという主審好みの理由だったためにそれが許可されるという状態で始まったこの試合。
……試合というよりただの売り込みだった。
発目や飯田が付けたサポートアイテムを戦闘中に使用して自分の存在をサポート会社の皆様に売りこむ実演販売のような時間がおよそ10分続いた後、満足した彼女は清々しい顔で自ら場外に出て一応飯田の勝利となった。
騙されてサポートアイテムを付けることになった挙句、散々アイテムの紹介のために振り回さた飯田は納得がいかないようで席に戻ってきてからもしばらく悶えていた。
これはさすがに飯田がちょっと可哀想だ……。
第5試合は青山VS芦戸。
放ったレーザーを尽く躱されてベルトをを溶かされた青山がとどめのアッパーの失神KOで芦戸があっさりと2回戦進出。
第6試合は常闇VS八百万。
常闇の個性『黒影』が八百万を為す術もなく場外へと追い出す圧倒的な強さを見せつけ勝利。
第7試合は切島VS鉄哲。
個性ダダ被りな2人の対決が始まったのだがその最中、デックンが立ち上がった。
「ん、どしたデックン。トイレか?」
「いや、ちょっと麗日さんのとこに行ってこようと思って……」
「ふ〜ん……俺もついてっていいか?がんばれのひとつくらい声かけてやりたいと思っててさ」
「そうだね、早く行こう。この試合終わったらすぐに順番来ちゃうし」
相手が爆豪と決まって、応援席にいた時から時々緊張してそうな顔してて声かけようかと思ってたとこだしちょうどいい。
切島達の試合で盛り上がるなか、選手控え室へと駆け足で向かった。
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「デク君に三神君!?あれ、みんなの試合見なくていいの?」
俺達が現れたことに驚いた顔をする麗日にまぁな、と言って試合の終わった飯田にもお疲れさん、と手を振る。
「飯田達のが終わってからは短期戦ばっかでな、今は切島とB組のやつが殴りあってるとこだ」
「そっか。じゃあもう次、すぐ…………」
自分の出番がいよいよ次にまで控えていることを知った麗日は手を見つめ表情を固くする。
そんな彼女にその緊張をほぐそうとわざと明るい声で飯田が上げる。
「ま、まぁ!さすがに爆豪君も女性相手に全力で爆発は……!」
「「するね」」
俺とデックンの即答に2人は苦い顔をする。
「残念ながらアイツは、そんな理由で手ぇ抜くほど中途半端なヤツじゃないんだよなぁこれが」
「うん……というかみんな夢のために1番になろうとしているんだ、かっちゃんじゃなくても手加減なんて考えないよ」
まぁ確かに、よくよく考えれば手加減しようなんてやつはそもそもいないよな。そうだな、と頷く。
「僕は麗日さんにたくさん救けられた。だから少しでも救けになればと思って……かっちゃんへの対策、付け焼き刃だけど考えてきた!」
俺がそんなことを思っていると、いつも個性に関して必死に書き込んでいるノートを前に突き出し、デックンはそう力強く告げた。
なるほどね。あんな短期間のうちにそんなことまで考えてたとは、ちょっと驚きだ。
へ〜?と興味津々な顔でデックンを見る。
そんなデックンの申し出に麗日は俺達の方を向いて、
「ありがとうデク君。でも、いい……!」
それを断った。
俺達が少し驚いた顔をするなか、そうして静かに語り始める。
「やっぱりデク君はすごい、すごいとこどんどん見えてくる。騎馬戦の時仲いい人とのほうがやりやすいと思ってたけど、デク君に頼ろうとしてたんかもしれない。
だから飯田君が挑戦するって言ったり、三神君が仲良しだからとか関係なく自分の力でいろいろ考えて、勝ち上がってきたりしてるの見てちょっと恥ずかしくなった。だから、いい!
みんな将来に向けて頑張ってる、そんならみんなライバルなんだよね。だから……」
入り口の前まで歩き振り返ると、震える手でサムズアップをしてぎこちない笑顔で一言。
「決勝で会おうぜ……!!」
そう力強く言った。
そのまま控え室を出ようとする麗日の背に俺は声をかける。
「確かにみんなライバルだけどさ、それと同時にダチでもあるんだよ。
だから……頑張れよ!
ま!ありきたりな言葉だけどさぁ、これだけ言いたくてね。もともとこれ言うためにここに来たワケだし!」
歯をみせてそう笑うと麗日もいつものような笑顔に戻ってうん!と明るく頷いた。
そんな彼女を見送り3人で応援席へと戻る。
その最中、先程の飯田の試合やこれから始まる麗日達の試合のことなどを話していると、ふと飯田が麗日の言っていたことを思い返し声をあげた。
「それにしても麗日君にはしてやられたな。
決勝で会おう、この言葉是非とも実現させたいところだ!俺も君達と決勝という大舞台で闘いたい!絶対に勝ち上がらなければな!」
「うん、そうだね!次の相手は轟君だし手強いけど僕も頑張るよ!」
「まぁ俺達はどうやっても決勝では当たらねぇけどな〜。飯田、2回戦俺とお前で闘やるってこと分かってるか?」
「「あ。」」
熱く盛り上がっているなか水を差すようではあるが俺がそう呑気に言うと2人揃って固まった。本当に忘れていたらしい。
「そ、そうだったぁ!!うっかりしていたよ……三神君、次の試合お互い全力を尽くそう」
急にマジメな声に戻り、俺にまっすぐな瞳を向ける。そんな飯田の肩を軽く叩き、軽く笑う。
「ハッ、んなこと言われなくてもわかってるさ。手加減なんてしねぇし、したらぶっ飛ばすからな?」
「闘うんだしどっちにしろぶっ飛ばすんじゃない?ノア君……?」
「ん〜あぁそうだな、ククッ、次の試合絶対にぶっ飛ばすから覚悟しとけな?飯田クン!」
なんて3人でたわいもないことを話ながら麗日の応援をしようと席へと戻る。
「麗日さん行動不能、爆豪君2回戦進出!」
度重なる爆破を受け、力なく倒れ伏した彼女に歩み寄った主審のミッドナイトがそう告げた。
低姿勢での突進を繰り返し注意を反らせ、爆破によって生じた瓦礫を浮かせそれを一気に降らせるという秘策も爆豪には通じず一撃で防がれて体力も限界に達して立ち上がることもできなくなった麗日。
決勝で会おうというあの言葉は叶わぬ夢になってしまった。
重い空気が漂うなか、試合の準備のためデックンが立ち上がる。忘れぬうちにとその背中に声をかけた。
「デックン応援してるからな、勝てよ!そんで準決勝、俺とお前で絶対闘るぞ……!」
「うん、行ってくる……その約束、絶対に叶えてみせるよ」
そう言って控え室へ向かうデックンをひらひら手を振り見送る。
今のあいつに轟を負かせる程の力があるかと言われたら、あるとは簡単には言えないだろう。
それでも期待せずにはいられない。あいつも俺も勝ち上がって準決勝、あのステージで闘うことができたらと思うと心が躍る。
そもそもデックンとは10年来のダチだ、親友だ。応援しないワケないけどな。
ステージを見下ろし試合が始まるのをいまかいまかと待ち続けた。
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『君の!"力"じゃないか!!』
その叫びが会場中に木霊したその直後、客席の上の方にいる俺達のところまで仰け反らずにはいられないほどの熱風が吹き荒れる。
飯田から炎ひだりは使わないと言っていたと聞いたんだが、デックンはそれを破り使わせた。
ここまでにも半分の力で闘う轟に全力でかかってこいとか挑発と取れる言葉を投げかけていたがあれはそうじゃなかったってことか?
そう考えるとここまでの言動が轟に何か変化をもたらそうとしているようにも思えてくる。
まったく、自分の指も腕もあんなにボロボロにしてまでやるかよ普通?ほんっとにあいつはお人好しが過ぎる。
まぁ、そんなとこがカッコイイと少しばかり思っちまってる自分がいるのもまた腹立たしい、そんな心境に反してきっと俺はいまニヤけてるんだろうけど。
結局、炎を解禁し全力となった轟が引き起こした大爆発によって場外まで吹き飛ばされデックンは2回戦で敗退となった。
またしても約束は叶わぬ夢となってしまった。
それでも俺的にはこの体育祭で1番印象に残った試合はどこだったかと問われれば、間違いなくこの試合だと即答する自信がある。すごい試合だった、それくらいの気迫を感じた。
と、静かに感傷に浸っているとそれを掻き消す勢いで両隣がバタバタと騒がしくなる。
「ね、ねぇデク君大丈夫なんかな……すごいボロボロになってたけど」
「た、確かにあれはさすがにリカバリーガールでも……!くっ、心配だ!ケガは無事に完治するのだろうか!?」
「やかましいな2人して……まぁ俺も心配だし試合できるまで結構かかるだろうしなぁ、ちょっと様子見に行ってみるか」
アワアワとしている2人に苦い顔をしながら立ち上がると麗日達も凄まじい勢いで首を縦に振った。
3人で保健室へ向かおうとすると峰田と梅雨ちゃんもついて来た、俺達と同じようにデックンのことを心配してくれてるらしい。
「「「緑谷!「君!」「ちゃん!」 「デク君!」
「グエッ!?」
扉を開けようとドアノブに触れた瞬間後ろの4人にイノシシのように突進され、絞められた鳥みたいな声で保健室へと押し込まれた。
ちょっとちょっと、前に俺いるの忘れてない……?
「まったく、騒がしいねぇ……」
「あはは、すいません俺らこいつのことで心配で〜」
リカバリーガールにヘラヘラとした感じで謝ると横たわるデックンの隣にいる男と目が合う。
「あ、オー……っと!先客がいたみたいだ。こりゃ後にしたほうがいいかもな!ははは……」
あっぶねぇ!あやうくオールマイトって言うとこだった。
正体バラしそうになっちゃってスイマセン……と、トゥルーフォームの彼に4人にはきづかれぬように小さく目線を送ると僅かに微笑んでくれた。
ようやく先客がいることに気づいた麗日がきょとんとした顔ではじめましてと挨拶をした。よかった、やっぱりオールマイトだとバレずに済んだみたいだ。
「みんな……次の、試合は……?」
「ステージ大崩壊の為、しばらく補修タイムだそうだ」
「そ、お前らがド派手にぶっ壊したからな〜まぁ、とりあえずお疲れさん!」
か細い声で問うデックンに俺と飯田が答える。それに続いて峰田がガタガタ震えながら声をかけた。
「さっきの試合怖かったぜ緑谷……あれじゃあプロも欲しがんねえよぉ……」
「塩塗り込んでくスタイル、感心しないわ」
それに梅雨ちゃんがベロで頭をどついて窘める。
まぁ峰田の言うことも分からなくはない、俺がスカウトする側だったらあんなの危なっかしくて絶対選ばないだろうし……。
「準決勝お前と闘うって約束は果たせなくなったが心配すんなよ、俺がそこのマジメ君をちょちょいとぶっ飛ばして轟に勝ってやるからな!」
「ふふっ、ありがと。楽しみにしてるよ…………」
明るい声で笑いそう言った。ちょっとした励ましになれば、なんていう俺のただの自己満足の気もするけどデックンは笑ってそう言ってくれた。
「むむっ!聞き捨てならないな、そう易々と勝ちを譲る気はないぞ!」
「いいねぇ〜やる気満々だな。それが空回りしねえといいな?」
「当然さ!俺だってこんなところでは絶対に負けられない、そもそも……」
お互いに調子のいいことを言い合っているとリカバリーガールが俺達の背中をグイグイと押し追い出そうとしてきた。
「うるさいよホラ、心配するのはいいけどこれから手術さね!」
「「「「手術ぅう!?!?」」」」
「まじすか」
あらら、思っていた以上の大怪我だったらしい。とうとう保健室から閉め出されてしまった。
手術となりゃ邪魔しちゃいけない、早く戻ろうとみんなを説得し半ば無理やり席へと戻らせる。
その途中で俺と飯田は試合の準備のため麗日達と別れ、控え室に向かった。
それから20分ほど経とうとした頃、ステージの補修が終わったとの連絡を受けステージへ向かった。
あれだけの大勝負の後だ、観客からの声援にもさらに熱が入ったように大きく聞こえた。
ある程度の距離を空け互いに見つめ合う。俺がいつもとあまり変わらぬ飄々とした感じでいるのに対し、飯田はキリッとこちらを睨みつけるような険しい表情でいる。そうして警戒したままの顔で声をあげる。
「三神君、君のことも俺は尊敬に値する素晴らしい友だと思っている。
だからこそ俺は君にも挑戦を申し込む!友として……ライバルとして!!」
「いいね、そういうの嫌いじゃねぇよ。俺もライバルとしてお前を蹴落として上にいかせてもらうぞ……飯田!」
俺もそう宣戦布告をして腰を落とし、戦闘態勢に入る。
じっと相手を見据え開始の合図を待つ。そして、
『2回戦第2試合……スタートォ!!』
それを聞き届けた瞬間、ぐっと前へ飛び出し加速する。
向こうも少し遅れて脚のエンジンを使い同様に真っ直ぐ加速してくる。そうしてステージのちょうど真ん中辺り、俺達の放った蹴りが互いに激突した。
すぐに反射で蹴りの威力を増幅させようとするが、
「ぐっ……ぁ!?」
『先に仕掛けた三神を、飯田正面から打ち負かしたァ!』
そのまま脚を振り切られ蹴り飛ばされたのは俺のほう。勢いよく身体を打ちつけられ2、3度ステージを転がった。
クッソ、やっぱあいつのほうが速いし力負けしちまうか。最初の戦闘訓練でも全く追いつけなかったしなぁ……。
蹴り返された脚を擦りながら立ち上がる。まだ痛みがヒリヒリと残ってはいるがこのくらいどうってことない、さて次はどうしようか。
俺も飯田も直接触れなければ攻撃はできない。相手に対応される前に仕掛けようにもスピードはあっちのほうが上。正面からじゃ絶対に無理だろう、相手の意表を突く攻撃から始めてそこから崩していくしかないか。
軽く息を整えさっきと同じように真っ直ぐ突進していく。それに迎え撃とうと飯田も同じように向かってくる。ここまでは最初と同じ、
先程蹴りを放った間合いまで詰めると飯田は脚を振り上げようと構える。
それを見た俺は身体は正面を向いたまま、足に反射を発動させ斜め前へ飛び出しそれを躱す。目を見開く飯田を尻目に背後へ回り込み、その大きな背中に反射を発動させ全力で飛び蹴りを叩き込んだ。
「ま、まさかあの体勢からそんな動きができるとは思わなかったよ。今のは効いた、やるな三神君……!」
背中を擦り痛みに顔を歪ませながら飯田がよろよろと立ち上がる。
「そのまま場外まで吹っ飛んでくれたらありがたかったんだがねぇ〜、言ってなかったか?俺どんな体勢でもどの方向にでも行けちゃうんだよ。さ、たまにはお前からも仕掛けてこいよ?」
人差し指をちょちょいと動かして挑発する仕草を見せる。それにしっかりと応えグングン接近してくる。
俺の正面まで来たかと思うと一気に進路を変え背後を取りに来た。
なるほど、俺のやったことそのままやり返そうってか。意外と負けず嫌いだね〜。
そんな飯田の蹴りをちらりと見てスレスレのところでしゃがんで躱す。さらに続けざまにもう一蹴り、迫り来るその脚にしゃがんだままの俺は。
「っと、危ねえ〜」
「なっ!そんな体勢でも動けるのか!?」
しゃがんだ体勢のままスーッと横に平行移動してく俺にぎょっとした声をあげる飯田。
だからどんな体勢でもつったろ。ニヤリと笑ってぴょんと軽くジャンプの勢いで立ち上がる。
その後もしばらく飯田の繰り出す蹴りを時々くらうことはあれど俺が意表を突くような方向へ跳んで躱すという流れを繰り返す。
それから5分ほど経っただろうか。動きにもおおよそ慣れて一撃もくらわず躱せるようになった頃、明らかに飯田の動きにキレがなくなってきた。
「おいおい大丈夫か?そろそろバテてきたみたいだ……なっ!!」
「ぐあぁっ!?」
大きくなってきた隙を見計らって飯田の頬を殴り飛ばす。
飯田のスピードを掻い潜り攻撃することで場外まで出すのは難しいと見切りをつけた俺は、飯田をバテさせて勝負を決める消耗戦に持ち込むことにした。あのスピードの蹴りならば躱すだけならなんとかなると判断したからだ。
俺の強みは攻撃の回避力の高さだと前にデックンが言っていた。
個性による攻撃でもどんな体勢からでもどの方向にも反射で身体を弾いて回避することができるし、激しく体を動かす必要もない為相手より体力の消耗も少ない。
そこから疲弊した相手へ反撃に出るという戦法もとれるとか言っていた。
そもそも個性以外の物であれば透過をしてすり抜けられるから当たらないしな。
それを実践して、小学校の頃に個性使用アリでやってたドッジボールでは負け知らずだった。相手の投げるボールを全部避けてバテバテにさせたとこで仕留めてまくっていた。
こちとら『ドッジボールだけは最強のノア君』で通ってたんだ、攻撃を避けることに関しては結構自信がある。
昔話もほどほどにしっかりと飯田に意識を向ける。
案の定、少々辛そうだ。ここいらでたたみかけるとしよう、飯田めがけて走りだす。
最初であればこちらを上回る速さで迎撃してきた飯田だったが、俺の動きにいまいち対応しきれずに攻撃をくらうことが多くなっていた。
じわじわと場外の線までパンチや蹴りで追い込んでいたとその時、最初から狙っていたかのようなカウンターの蹴りを決められよろよろと後ろへ後ずさる。
「痛ッ……!なんだまだまだ元気じゃねぇか」
「はぁ、はぁ……そんなことはないさ、これ以上君の好きにさせるわけにはいかないな」
俺の言葉に肩で息をしながら額の汗をぬぐいそう言うと、姿勢を低くしこちらを見る。どことなく雰囲気が変わったような気がしてこちらも警戒して少し距離をとる。
何か大技でも仕掛けてくるつもりか?とりあえずギリギリでも躱して次あたりで終わらせよう。
「さぁ来いよ、またひらりと躱してやんよ!」
「できるものならやってみろ!これで終わらせる……『トルクオーバー・レシプロバースト』!!」
「がッ……!?!?」
呼吸が詰まり声にならない声をあげ俺の身体は僅かに浮いた。
あまりにも一瞬の出来事だった。飯田が走りだしたかと思うと気づいた時にはすぐ目の前まで接近、横に真っ直ぐ伸ばされた腕が胸の辺りに直撃してラリアットのような形で直進する飯田の走りに巻き込まれた。
飯田のやつ、あんな隠し技を持っていたとはしてやられたな。騎馬戦の時は飯田達の騎馬とは戦り合わなかったし知らなかった。
……にしても本当に速いな、もう場外目前だ。このまま俺を巻き込んだまま走って場外に放り出そうってことか。
あんなスピードじゃ避けられる奴なんざそうそういないし、こうやって捕まった以上抜け出すなんてことは難しい。
ま、それは俺じゃなきゃの話だけどな?
「このまま君を放り出して俺の勝ちだ!」
「……いいや俺の勝ちだ」
ラリアットをくらい捕まっていたはずの飯田の背後に立ち口元を緩ませる。
「なっ、なぜ!確かに君を捕らえたはず……だッ!?!?」
驚き目を見開いて振り向く飯田が言い終える前にアッパーをくらわし打ち上げる。
しかしそれで終わらせはしない、追撃を仕掛けるため反射を使い打ち上げた飯田の上まで跳び上がる。そして右手をぐっと後ろへ引き構える。
惜しかったぜ、最後の最後、その一手でお前は間違えた。
「残念だったな飯田……これで終わり、だァ!」
そうして反射を発動させた右手を飯田の肩に触れ全力で一気に下へと押しこみ叩きつけた。
「ぐっ……見事にしてやられたよ、だが!まだ諦めないぞ。俺は!」
「横、見てみろよ飯田」
「……?」
まだ戦意を残し、仰向けに倒れる飯田の肩を押さえつけたまま見下ろし静かに告げる。
ゆっくりと首を左右に動かした飯田は大きく息を吐いた。押さえていた肩から体の力を抜いたことを感じ、ゆっくりと肩から手を離す。
「そうか、敗けたのか……俺は」
「飯田君場外!三神君の勝利!!」
ミッドナイトの宣言により会場からは大きな歓声が沸く。
俺に叩きつけられ飯田の体は上半身、肩から上が白線を越え場外へとはみ出していた。
仰向けに倒れたままで空を仰ぐ飯田にしゃがみ込み俺は手を差し伸べる。
「いい勝負ができた、と俺は思う。立てるか?」
「ああ、俺もそう思うよ。だが消耗戦に持ちこまれたりと三神君のペースに乗せられっぱなしだったな、そこは悔しいところだ」
お互いそのままの体勢で話し始める。
「まぁね♪んでも最後は焦ったぜ?危うく形勢ひっくり返されるとこだった、まさかあんな隠し技持ってたとはな。あと一手間違えなきゃお前の勝ちだったよ」
「だがそれをもってしても君には届かなかった……なぜ躱すことができたんだ?一手間違えたとは?」
「別に躱してねぇよ、あんなん見てからじゃとてもじゃないが避けらんねぇって。お前の攻撃を俺はちゃんと全て動いて躱してたからな。
忘れてたんじゃねぇか?俺が物体をすり抜けられんのをさ」
「……っ、そうか!捕らえた後にすり抜けることで回避したのか!まさか全て躱していたのもそれから注意を反らすためか!?」
「そ。お前は攻撃を躱される前に捕えることばっかり考えてあれを使った……まではよかったんだがなぁ。腕で俺に触れたのが失敗だった。
そうだな、それこそあのスピードの蹴りだけで俺を場外に蹴飛ばそうとしてりゃ俺は為す術なく終わってたと思うぞ〜それが間違えた一手さ」
「なるほどな……ふふっ、完敗だ。やはりまだまだ俺も改善せねばならないところがたくさんあるな!」
そう言って笑うとガバッと体を起こした飯田。それを見て改めて俺は手を差し伸べる。
「頑張ってくれよ三神君、君が決勝に勝ち上がること期待しているぞ!」
「おう、任せとけって!お前らの気持ちも背負って勝ち上がってやるよ」
差し伸べた手を取り立ち上がった飯田とそのままかたく握手を交わす。
いろんなやつらの想いも背負い、俺は準決勝へと臨む。
読んでいただきありがとうございました!
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m