『選択』 〜ヒーローになるための〜   作:りんごあめ

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みなさんありがとうございます!これからも細々と頑張っていきたいと思うのでこれからもよろしくお願いしますm(_ _)m

第19話よろしくお願いします。


第19話 背負いし名

「ノア君昨日は焼肉連れてってくれてありがとね」

 

「いいよいいよ気にすんな、体育祭お疲れ様会って言ったろ」

 

「そういう訳にもいかないよ、ご馳走になっちゃったんだしさ」

 

「奢ったのは千年公だし気にすんなよ。本人も言ってたろ、頑張った2人へのご褒美なので好きなだけ食べてくださイ!って。

 ならお言葉に甘えて時間の許す限り暴飲暴食すんのがせめてもの礼ってもんでしょうが」

 

「暴飲暴食って……まぁ確かにお腹いっぱいになるまで食べたけどさ。じゃあ改めてありがとうございましたっておじさんに伝えといてね」

 

「はいよー。お、やっと電車来た。雨の日の満員電車って嫌いなんだよな〜」

 

 

 

 体育祭から2日間の振替休日を経て溜まりに溜まった疲れも大方取れ、今日から普段の学校生活へと戻る、と思っていたら。

 

「おにいさん、おにいさんたち」

 

 声をひそめ誰かを呼ぶ声が聞こえてくる、知り合いでも見かけたのか?まぁ俺らには関係ないだろう、僅かにそらした視線を再びスマホに戻す。

 

 

「ヒーロー科の緑谷君と三神君っ」

「あれ、俺ら!?えと、なんスか……?」

 

 突然自分達の名前を呼ばれ肩をピクリといわせて、声をかけてきたサラリーマンのおっちゃんの方を見る。するとおっちゃんはにっこり笑い、

 

「体育祭よかったぜ、2人とも惜しかったな!」

 

「「え!?」」

 

 いきなりそんなことを言われ状況がいまいち飲み込めず顔を見合わせて目をぱちくりさせる。

 

「緑谷君はベスト8だったよな!かっこよかったぞ〜」

「意外と小さいね」

「三神君は3位入賞だもんな〜すげぇ強いじゃん」

「間近で見るとますますカッコイイわね、モテるでしょ!?」

 

 おっちゃんの声で気づいたのか周りにいた人達も俺達に次々に言葉をかけてくる。

 

「なんか昔を思い出しちゃったよ僕は〜」

「わかるわかる、何か必死な感じがね!」

 

 やがて乗客どうしで会話に花を咲かせるにまで至り、

 

「「「「頑張れよ!ヒーロー!!」」」」

 

「「は……ハイっ!!」」

 

 めちゃくちゃ応援されました。

 

 

 

 

 

 

 

「はぁ〜なんか朝から疲れたよ……」

 

「まさか電車乗っただけであんなに声かけられるなんてなぁ〜!有名人になったみたいでちょっと嬉しいよな」

 

 大勢の期待の眼差しを受けて電車を降り、学校までの道を並んで歩く。

 雨で電車が遅れたこともありいつもよりギリギリな登校になってしまっていた。歩いている生徒の数が少ない、だいたいの生徒はもう教室に着いているんだろうな。

 

 そんなことを考えていると後ろからビタビタとやかましく地面を蹴る音が聞こえてきた。

 

「三神君、緑谷君おはよう!!」

 

「おう。おはよ飯田……って」

「カ、カッパに長靴!?」

「お前なんでこんな土砂降りのなか走ってんだよ」

 

 カッパと長靴を身にまとい、この雨のなかを爆走する飯田が現れた。

 

「朝のランニング、欠かす訳にはいかないからな!

 それより何をのんきに歩いているんだ、2人とも遅刻だぞ!」

 

「遅刻って、まだ予鈴5分前だよ!」

「そーだそーだ、全然余裕だしまったりいかせてくれよー」

 

「雄英生たるもの10分前行動が基本だろう!!」

 

 なんてことを言いながらも一応飯田の後を追い、走って校門をくぐり抜けた。

 

 

 

 

「飯田君のあの……あっ──」

「兄のことなら心配ご無用だ、いらぬ心労をかけてすまなかったな!」

 

 傘についた水滴を飛ばしながらデックンが恐る恐る問おうとすると、それを打ち消そうとするかのように飯田がすぐに普段と変わらぬトーンで短く答えた。

 

 

 

 体育祭の後、ニュースなどを見て飯田の兄インゲニウムがかなりの重症であることを俺達は知っている。だが飯田はまるでそんなことはなかったかのように振舞っていた。

 

 先に上履きに履き替え教室へ向かう飯田に小さな違和感を感じながら俺達も教室へと急いだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 教室へ入るとやはり他のやつらも来る途中に声を掛けられたようで、その話で皆色めきだっていた。

 そういう所からもいかに雄英体育祭が注目されていたのかがよく分かる。

 

 そんな話をしているとすぐにチャイムが鳴り相澤先生が入ってくる。もちろんその頃にはさっきまでの騒ぎはなかったかのように全員ビシッと着席している。皆さんそこだけは素早いんですよ、やたらと。

 

 

「今日のヒーロー情報学ちょっと特別だぞ」

 

 ぐるぐる巻きだった包帯も取れ、いつもの姿に戻った相澤先生がそう言うと教室の空気がピリッとする。

 相澤先生は度々そんなことを言うのだがそうなると大抵よくないことが起こる。

 この前もいきなり小テストをやりますとか言い出して点数が悪かったやつには追加で課題が出たりしたんだよなぁ……。

 

 頼むから小テストだけはやめてください、振替休日はゴロゴロしてゲームしてろくに勉強なんかしてないんです!

 

 緊張した面持ちで相澤先生が口を開くのを待つ。

 

 

 

 

「……コードネーム、ヒーロー名の考案だ」

『『『『胸膨らむやつキタアア!!』』』』

 

 ガッツポーズ共に喜びの雄叫びが教室中に響き渡る。

 

「ッッ!!」

『『『『シーン…………。』』』』

 

 目を光らせ髪を逆立てて睨む相澤先生に、喜びは胸の中だけで爆発させることにして黙りこくる俺達に先生は話を続ける。

 

「というのも先日話したプロヒーローからの指名に関係してくる。指名が本格化してくるのは経験を積み、即戦力と判断される2~3年だ。

 つまり今回お前らに来た指名は将来性に対する興味に近い、卒業までに興味が削がれれば一方的にキャンセルってこともよくある。」

 

「大人は勝手だ……!」

 

「いただいた指名がそのまま自身へのハードルになるんですね!」

 

 なるほどねぇ、今回のはお試しドラフト指名って感じか。

 もう指名が来たからって調子乗ってちゃあ後で痛い目みるかもよってことで大事なのはここからってワケだ。

 変わらずプロに注目してもらえるように経験積んで強くなってアピールしてかなきゃとは、峰田が愚痴ってたけど大人は勝手だってのもちょっとわかる気がするなぁ。

 

 

「んで、その指名結果がこうだ」

 

 相澤先生がリモコンのボタンを押し、指名結果がグラフ状になって投影される。

 グラフは名前の横に来た指名の数がグラフとなって表示されるものだったのだが、上2件だけが極端に突出するその形に「うわぁ……」という間の抜けた声が至るところからきこえてきた。

 

「例年はもっとバラけるんだが2人に注目が偏った。」

「いや偏りすぎでしょ、俺らの票ほとんどかっさらわれてんじゃん」

 

 轟に4000票ちょい、爆豪に3500票ちょいとツートップに7500以上の票が集まり他のやつらと圧倒的な票差を見せつけていた。

 

 ちなみに俺は3位だった俺には350票ほどの指名が来ていた。

 にしても上の2人と3000票以上の差がある、ここまで大差があるとやっぱり悔しい。クラスで3番目に票が多かったのにイマイチ喜べねぇ……。

 

 

「この結果を踏まえ、指名の有無に関わらず職場体験ってのに行ってもらう。

 お前らはUSJん時に一足先にヴィランとの戦闘を経験してしまったが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしようってこった」

 

「それでヒーロー名か!」

「がぜん楽しみになってきた〜!」

 

 ヒーロー名の考案に職場体験、胸高鳴るイベントの連続発生にそわそわし始める生徒を横目に先生は続ける。

 

「まあそのヒーロー名はまだ仮ではあるが適当なモンは──」

「付けたら地獄を見ちゃうよぉ!」

 

 相澤先生がそう言いかけた途端勢いよくドアが開いて乱入者が。そしてそんな乱入者に主に男子が鼻息荒く色めきだつ。

 

 

「学生時代に付けたヒーロー名が世に認知され、そのままプロ名になってる人多いからね!」

 

「「「ミッドナイト〜!!」」」

 

「ま、そういうことだ。そのへんのセンスをミッドナイトさんに査定してもらう、俺はそういうのできんからな」

 

 そう言って教卓から寝袋を取り出す相澤先生。

 あの人ミッドナイトに丸投げして寝るつもりだよ。授業中なのに先生が寝るとはさすが雄英、自由な校風が売り文句ですもんねー。

 

「将来自分がどうなるのか、名を付けることでイメージが固まりそこに近づいていく。それが名は体を表すってことだ。

『オールマイト』……とかな」

 

 そう言い残し先生はもぞもぞと寝袋に潜り込んでいった。

 

 ということでミッドナイトが指揮を取ることなり全員にフリップが配られるなか、ふと気になったことを聞いてみた。

 

「そういやミッドナイト先生さっきすごい完璧なタイミングで入ってきてましたけどもしかしてずっと待ってたんスか?」

 

 

 

 

「えぇ、教室の外でずっとスタンバってました……ってそんなのはどうでもいいでしょ!さっさとヒーロー名考えなさい!」

 

 

 

 

 

 こうして第一回1年A組名前をつけてみようの会が始まった。

 

 

 

「じゃあそろそろできた人から発表してね」

 10分ほど経つとミッドナイトがそう指示を送る。

 というか発表形式なのかよ、これはなかなかに度胸がいるな。全員の前で言うのは少々恥ずかしい節があるぞ。

 他の連中も同じことを思っているようで、ひそひそと周りを見渡すばかりで誰も前に出ない。

 

 そんな静まり返った教室でスっと立ち上がり教壇に立ったやつが1人、青山だ。

 

「いくよ……」

 

 そんな前フリをもってくるもんだから皆ゴクリと唾を呑み見守る。

 

「輝きヒーロー『I can not stop twinkling.』訳して、キラキラが止められないよ☆」

「「「「「まさかの短文!?!?」」」」」

 

 予想のはるか斜め上をいく名前にツッコミが飛ぶ。

 これをヒーロー名にするのはさすがに無理があるだろ!

 あーほらミッドナイトがフリップを取ってなんか書きだしたよ、ダメだしをくら──

「そこはIを取ってcan'tに省略したほうが呼びやすいわね」

 

「それね!マドモワゼル」

「「「「「いいのかよ……」」」」」

 

 あれ?これ思ってたよりテキトーでも大丈夫なやつなのでは……?

 

 続いて前に出た芦戸も、

 

「ヒーロー名『エイリアンクイーン』!!」

「2!!血が強酸性のアレを目指してるの!?やめときな!」

 

 ほんとだよバケモンにでもなりたいんかこいつは。

 先陣切ってった2人がことごとくクセの強すぎる名前を出してきたせいで変な空気になってしまった。

 

「なんか大喜利大会始まっちまったなぁ〜」

「「「「それな!?!?」」」」

 

 そんな空気に思ったことをポロッと口に出すとクラスのほとんどのやつから声が上がる。

 こんなのが続いちゃもうヒーロー名考案というより『自分の特徴を使って新しいあだ名を作ってください』みたいな大喜利になっちまうわ!

 頼むから誰かまともな答えをください、いや答えとかいっちゃうとますます大喜利っぽくなるじゃねぇか。

 そんなセルフツッコミをしていると梅雨ちゃんが前に出てフリップを見せる。

 

「子供の頃から考えてたの。

 梅雨入りヒーロー『フロッピー』!」

 

 あーそう!これだよこれ!こういうわかりやすくて親しみやすいやつ。

 ようやくまともなのがきて他のやつらも胸を撫でおろしフロッピーコールが沸いた。

 

 ありがとうフロッピー、君は命名早々に大喜利大会という地獄から俺達を救いだしてくれたよ。立派なヒーローだよ君は。

 

 

 梅雨ちゃんのフロッピーが空気を引き戻し、大喜利大会化はなんとか免れ続々とヒーロー名が発表されていく。

 

 憧れのヒーローをリスペクトした切島の『烈怒頼雄斗』。

 自分の個性をもとにした瀬呂の『セロファン』。

 自分の身体的特徴を取った芦戸の「ピンキー」。

 個性やそれに関する物を組み合わせた上鳴の『チャージズマ』。

 名前と個性を掛け合わせた麗日の『ウラビティ』。

 

 などなどこんな感じで皆なかなかにシャレた名前を発表してくる。

 轟の名前そのまんまな『ショート』ってのがあったりはしたがそんな感じで特にダメだしをくらうやつも出ずにテンポよく進むヒーロー名考案、さあ次はどんなイカした名がくるのか──

 

「『爆殺王』……!」

「そういうのはやめたほうがいいわ」

「なんでだァ!?」

「ネーミングセンス小2くらいで止まってるんかオマエ」

 

 いやダメでしょ、ヒーローの名前に絶対入ってちゃいけない名前が入ってるんですよそれ。なぜそれでいけると思った。

 

 テンポよくいい雰囲気で進んでいたこの時間を、我が道を突き進む男爆豪がいままでの空気をぶち壊してそんな物騒な名前を出してきやがった。

 

 

 

 

 

「ヒーロー名思ったよりずっとスムーズに進んでるじゃない!

 残ってるのは再考の爆豪君と……飯田君三神君、そして緑谷君ね」

 

 いつの間にか名前が決まっていないのは俺達4人だけになっていたらしい。まじか、と呟き改めてフリップに視線を落とす。

 

 みんなのヒーロー名を見るのに夢中になりフリップは未だ白紙のまま。だが別に名前が何も思いついていないワケじゃない。むしろもうとっくに考えていたものが1つある。

 しかし他のやつらのヒーロー名を見ていてこれでいいものか発表するのが憚られていた。かといって他に思いつくものもなく迷っているうちに残り数名というところまできていたワケだ。

 

 

 そうしているうちに飯田が静かに前に立ちフリップを出した。

 

「あら、あなたも名前なのね。それでいいの?」

 

「……はい」

 

 飯田の出した名は『天哉』。

 別に俺も自分の名前そのままでいくのも悪くはないと思うが飯田の様子が気になった。

 表情は暗く、何か思いつめているようなそんな顔だった。

 

「三神君緑谷君できた?」

 

 そうなると残るは3人、くるりと振り返りデックンのほうを向く。

 

「デックンヒーロー名もうできてんの?」

 

「え、あ〜うん。できてる」

「そ、んじゃお先どーぞー」

 

 そう言ってデックンを先に行かせた。

 

 そうして前に立ったデックンの見せたその名にざわめきが起こる。当然だろう、その名はとてもじゃないがいい意味になんて取れない名前だ。

 

「……いいのかそれで?」

「一生呼ばれ続けるかもしんねぇんだぜ?」

 

 クラスのやつらからも心配の声が上がる。

 

「うん。この呼び名いままであんまり好きじゃなかった、愛称として呼んでくれるのは1人しかいなくて……。けどある人に意味を変えられて、僕には結構な衝撃で嬉しかったんだ。

 

 これが僕のヒーロー名『デク』です!」

 

 そう言ってデックンは堂々と、力強くそう名乗った。

 

 

 

「雑魚で出来損ないのデクじゃなく頑張れって感じの『デク』……か」

 

 一人、小さく呟く。

 

 戦闘訓練での一幕を思い出す。麗日からの言葉を受け、爆豪にそう言い放ったあの時。麗日の何気ない一言がデックンにとって大きな一歩を踏みだすきっかけになってたんだな。

 

 

 名前がもつ意味なんてひとつじゃない、いろんな理由があってもいい。

 後ろめたい気持ちをつけるんなら前向きな気持ちもまとめて込めちまえばいいだけじゃないか。

 そう考えてみると迷っていたのが馬鹿らしく思えてきた。やっぱりこの名前でいい。

 

 決心がつき、デックンが戻ってくるのと入れ替わるように教壇に立つ。

 

「へー、かっこいい名前なんじゃない?ちなみに意味は?」

 

「まぁこれは父親のをマネたもんでしてね、戒めみたいなもんですよ……過去を忘れないためのね」

 

 そう言うとミッドナイトの表情が少し固くなった。入学の際の書類で俺の素性のことを先生達はそれなりに知っているはずだしそりゃそうなるよな。

 せっかくだし皆にはもう話しておこう。

 

「いきなりなんですけど俺の父親ヴィランなんスよ。

 連続殺人鬼(シリアルキラー)快楽(ジョイド)』っていう……知ってる?」

 

「「「「「えぇぇええ!?!?」」」」」

「マジかよ!?」

「とんでもねぇ名前が出てきやがったな!?」

 

 いつものような軽い口調でそう告げると、クラスから驚愕する声が上がる。皆目を丸くして驚いてるあたり父親のことは知ってるみたいだな。このまま話を続けよう。

 

「知ってるなら話は早いな、父親は人を殺すことを楽しんでいたらしい。それに悦びを感じていて、そして付けた名が快楽と書いてジョイド……。

 別に父親のようになりたい訳じゃない、でもヴィランの息子っていうその事実は変わらない。

 それを無かったようにして、隠してプロになって後からそれをバラされる形で知られたら信用を失いかねないしカッコ悪いだろ?

 ……過去は消えないから。

 だからその過去も背負って俺はヒーローとして人を救けて人を喜ばせたり笑顔にして、俺も喜びを感じたい。

 

 そんで俺も喜ぶとかそういう意味の言葉を使おうと思って!

『Delight』と人を楽しませ喜ばせる道化師で……」

 

 そう言ってフリップをポンと叩き名乗る。

 

「俺のヒーロー名は道化師クラウンヒーロー『ディライド』

 ……ってことで!ご清聴ありがとうございました〜」

 

 そう名乗りいつものような軽い口調に戻るとミッドナイトがゆっくりと口を開く。

 

「なるほど。ということはプロになったら公表する気なのね?自分の素性のこと」

 

「まぁそうッスね、早めに自分から公表したいと思ってます」

 

「あなたがそうしたいのなら止めはしないけどいいの?世間からの風当たりが強くて苦労するかもしれないわよ」

 

 俺のことを心配してくれるミッドナイトにまぁそうですねと軽く笑いながら答える。

 

「そりゃ仕方ねえッスよ、最初はそうなることも覚悟のうえです。でもそんな批判の声は自分の行動で黙らせます。たくさんの人を救って自分はヒーローなんだって姿を見せていけば、いつかは認められてそんな声も聞こえなくなるんじゃねえかなぁって」

 

 俺がそう言って笑うとミッドナイトは微笑んで頷いてくれた。

 

「そうね、三神君に限らずヒーローとして世間から認められるっていうのは今の時代結構大事なことだと思うから、そうなれるような立ち振る舞いみんなも心掛けてね。三神君、応援してるわ!」

 

 俺の意思を尊重しそう背中を押してくれたミッドナイトにありがとうございますと軽く頭を下げ自分の席へと戻る。

 

 ヒーローとして生涯使い続ける名前なんだ、このくらい重く背負うほうがいい。

 

 ヴィランの息子という後ろめたい過去から肩身を狭く生きるのではなく、多くの人を救うヒーローであると胸を張って生きることができるように。

 そのために自分を磨き続けることができるように。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「おいおい三神お前すごいな!」

「ほんとだよ!びっくりしちゃったよ!」

「まさか轟の他に父親がめちゃくちゃ有名なやつがいるとはな……」

 

「いや轟とは真逆でだからなぁ……とてもじゃないけど自慢にはなんねぇのよ」

 

 授業が終わった後、俺はクラスのやつらに囲まれ軽いお祭り騒ぎのようになっていた。

 とはいえ、俺が名の知れたヴィランの息子であることを知っても昔のように蔑んだり厳しい言葉をぶつけてくるやつは誰1人としていなかったた。

 いつもと変わらぬ態度で接してくるクラスのやつらに嬉しくなりバカ騒ぎをする皆の様子を見ながら思わず笑みをこぼした。

 

「ノア君、よかったね」

 

 デックンが俺だけに聞こえるくらいの声でそう言って微笑む。

 

「あぁそだな。いいやつばっかりだなここは……」

 

 俺に対してもそうだがA組のみんなはデックンに対しても普通に接してくれる。

 中学までのヤツらは皆デックンをバカにしていた。勿論、いままでと違って個性があるって所で違いはあるが。

 それでもまだまだ個性を制御できず怪我をしまくってるという点では遅れを取っているデックンを普通に仲間として受け入れてくれている。

 

 こいつらはこれまでのヤツらとは違うのだと俺もデックンもこのクラスにいままでにない居心地の良さを感じていた。

 

 

 

 

 

 

 

「デク君三神君〜一緒に帰ろ!」

 

「うん!」

「おう、日直の仕事終わらせるからちょい待って〜」

 

 放課後、全ての授業を終え下校の準備をしていると麗日がそう言って駆け寄ってくる。

 

 学級日誌をテキトーに書いていると、「そういえば。」と麗日が切り出した。

 

「2人は職場体験どこ行くか決まった?」

 

「う〜んまだ迷ってるよ。こんな機会そうそうないからね、色々考えてはみたんだけどどこも魅力的で……」

 

「やっぱそうだよね〜お昼もすんごい考えてたもんね」

 

 昼休みの高速独り言を思い出して麗日は苦笑する。

 相変わらずヒーローのことになると自分の世界に入りブツブツ呟いて思考を巡らすデックンに、クラスのやつらも「いつものやつだぁ」と暖かい目で見守っていた。

 あれ引かれるからやめとけっていつも言ってるんだけどなかなかやめてくれないんだよなあ。もう諦めてブツブツが始まる度にチョップでもくらわせることにしようかな……。

 

「三神君もまだ迷ってるかんじ?」

 

「まぁなー300以上もあるからさ目ぇ通すだけでも大変で。そっから絞ってくのも難しくてな、とりあえず家で一晩ゆっくりと考えてみるさー」

 

 そう答える頃には日誌も書き終わり欠伸をしながら立ち上がる。

 

「あ、終わったんだね。じゃ職員室に出しにいこ、私達も一緒に行くからそのまま帰ろ!」

 

「おう、そうしよ──」

「私が独特の体勢で来たッ!!」

 

 そうだなーと頷いてリュックを背負って教室を出ようとドアを開けたその時、凄まじい勢いで俺達の視界ににオールマイトが滑り込んできた。

 

 

「うわっ!?ど、どうしたんですか?そんなに慌てて……」

「あ、ダメですよオールマイト、ま〜た廊下走ってぇ。相澤先生に怒られちゃいますよ!」

 

「あ、あぁ〜ほんとゴメンナサイ……

 そ、そんなことより!2人ともちょっとおいで、話があるんだ」

「また怒られとるぅ!!」

 

 わざとらしくそう言うとしゅんとするオールマイトに麗日が吹き出す。

 この間もそうだったが俺の悪ふざけにちゃんとノってしゅんとしたりするのが結構おもしろくて、ついついまたからかってしまった。NO.1ヒーローに何してんだってそのうちどっかから怒られそう。

 

 

 そんなことを思い一人でニヤけながら麗日に一言かけてオールマイトの後をついて行く。連れてこられたのは人気の少ない廊下の隅にあるトイレの前。

 

「こ、こんな人気のないとこに連れ込んで俺達にナニするつもりですか!?」

「いやいやいや何もしないよ!?話があるって言ったよね!?三神少年たまに私をからかって楽しんでない……?」

「いいえ気のせいです!それで話ってなんでしょう」

 

 いけないいけない、またからかちゃった。オールマイト怒んないし反応おもしろいからついやってしまう。

 さぁ!話が進まないからそろそろまじめにしよーっと。

 

「急にマジメになるなぁ……

 単刀直入に言おう。緑谷少年、君に指名が来ているんだ」

 

「え……えっ、本当ですか!?」

「お〜!よかったなデックン!!」

 

 朝には指名が来ておらず悔しさを滲ませていただけあり、それを聞いて嬉々とした声を上げるデックン。しかし何やらオールマイトの様子がおかしい、ダラダラと汗を流しガクガクと足を震わせていた。

 

「その方の名は『グラントリノ』。かつて雄英で教師をしていた私の担任だった方でね、ワン・フォー・オールの件もご存知だ。むしろそれで声をかけたのだろう……。

 手紙書いたからかそれとも私の指導不足を見兼ねての指名か。あえてかつての名を出してきてるあたり……怖ぇッ、怖ぇよッ!!」

 

「オールマイトがガチ震いしてる!?」

「天下のオールマイトにも怖いもんがあるんスねー」

 

「うん、うん……マジ怖い!君を育てるのは本来私の責務なのだがせっかくのご指名だ。存分にしごかれてくく……くる、ととっ……!」

 

 オールマイトにこれほどのトラウマ植え付けた人かぁ〜。思ったことがポロッと出てしまう。

 

「デックンお前…………死ぬなよ?」

「えぇ!僕死ぬの!?職場体験で?えぇ……」

 

 オールマイトの様子と俺の言葉から顔を真っ青に震えるデックン。

 あんなこと言っといてなんだが……強く生きろよ!

 

 

「え、ちょっとなんで黙って笑ってるの?何か言ってよぉぉお!」

 

 デックンの肩にポンと手を置きにっこりと微笑んでおく……と、ここでふと思う。

 

「あれ、話ってこれだけ?俺いらなかったんじゃ……今のところデックンをビビらせただけなんだけど」

 

「あっ!そ、そうだった。グラントリノに震え危うく君への話を忘れるところだった」

 

 恐怖に身体を震わせていたオールマイトはなんとか落ち着きを取り戻し、ポケットから1枚の紙を取り出すとそれを俺に渡してきた。

 

「君にもね今日になって新たに1名、指名が来たのだよ。朝渡されたリストには載ってないだろうからそれを伝えようと思ってたんだ」

 

 そう言われ受け取った紙に視線を落とす。そこにはオールマイトの言うようにヒーロー名とおそらく事務所があるであろう場所が書いてあった。

 

「ん〜聞いたことないヒーローっスね。デックンは知ってる?」

 

「ううん、僕も聞いたことない。アングラ系のヒーローなのかな」

 

 聞き覚えのない名に俺もデックンも首を傾げていると、オールマイトがうむ。と頷いて答える。

 

「その人は相澤君のようなアングラ系ヒーローでね、それに加えもう何年も日本では活動してないんだよ。だから君達が知らないのも無理はないだろう」

 

「日本ではってことは海外で活動してる人なんですか!?ノア君すごい人から指名が来てるね!」

 

「へぇ、そりゃすごい。でもなんで海外で活動してる人が急に俺に指名よこしたんだろうな?」

 

「そこは私も少々気になっていてね。日本にいた頃に何度か共に戦ったことがあるんだが彼の性格的に、こういう事に興味は無いはずなんだが……まぁでも!かなりの実力の持ち主だ、そこは私が保障する」

 

 なるほど、オールマイトも認める程の実力を持つ謎のヒーローか。かなり興味深いな、この人のもとに行ってみるのも悪くないのかもしれない。選択する候補にはいれておくか。

 

 

 

「わざわざありがとうございました、家帰ってよく考えてみます」

 

「うん、いいと思うよ。提出期限には気をつけるんだぞ!」

 

 いかにも先生らしいことを言うオールマイト2人で軽く礼を言い、帰り支度をする。

 

「あ、オールマイト!このまま職員室戻りますよね?あの、日誌届けてもらってもいいですか?もともと俺ら職員室行こうとしてたんスよ」

 

「あぁ、それくらいお安い御用さ!2人とも気をつけて帰るんだよ、それじゃまた明日!」

 

 職員室へ行くならついでにと日誌をオールマイトに預け、元気に挨拶をして俺達は下駄箱で待つ麗日と合流し家路へついた。

 

 

 

 ちなみに次の日、相澤先生からオールマイトをパシリにするなと怒られたのだがそれはまた別の話……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ほぉ〜300件以上も指名が!それはすごいですネ」

 

「まぁな、一応3位だし?……そんでこの中から選んで職場体験ってのに行くんだってさ。でもこうも多いと全然決めらんなくて。知ってるヒーローからもちょいちょい指名来てるし……轟とかはもっと大変なんだろうなぁ」

 

 夕飯後、食後のデザートにと、クリームマシマシなお手製パンケーキを頬張る千年公に今日の職場体験についての話をする。

 

「懐かしいですね〜、我輩も職場体験してる子何度か見たことありますよ。ちなみにその轟君達はどのくらい指名あったんですカ?」

 

「轟が4000で爆豪が3500くらいだったかな」

「……ボロ負けじゃないですカ」

「やかましいわ!んなこたぁ分かってんだよ……とにかくさぁどうしようかなって思ってさ〜千年公ならどこ行く?」

 

 ちゃっかりディスってくる千年公にツッコミをいれながら今朝もらったた指名リストを見せる。

 ペラペラとリストをめくりながらフムフムなどと頷いている千年公に、あっ。と思い出してもう1枚紙を手渡す。

 

「なんか後から指名してきたヒーローもいるんだった。なんでも海外で活動してる人らしくてさ?オールマイトも認める実力者なんだとよ」

 

「それはすごい………おっと、これはこれは〜!」

 

 その紙に書かれた名前を見た途端、千年公は突然ニヤニヤと笑いだす。

 

「乃亜、どこに行くか迷っているのならこのヒーローのもとへ行ってみてはどうでしょウ?」

 

「え、千年公このヒーロー知ってんの!?ネットでもほとんどヒットしないくらいのアングラ系だったんだけど?」

 

 まさかの一言に思わず声が大きくなる。ニヤニヤしだしたことも考えて千年公はどうやら何か知っているらしい。

 

「えぇ、古くからの知り合いなんですよ。彼はメディア露出を嫌ってますからねぇ〜おそらくヒーロー達専用のサイトでなければ何も出てこないでしょうネ」

 

 千年公は大学の先生やら医者など色んなとこに知り合いがいると以前言っていたことがあったのだが、まさかヒーローにも知り合いがいたとは初耳だ。

 長く千年公とは暮らしてるけど未だに謎なことだったり、初めて知る事が何故か1年に1回は必ず出てくる。

 

 一昨年は昔一緒に暮らしていた家族がいたバツ1という新事実が発覚し、

 去年にはそのふくよかな見た目から着ぐるみに間違われ、デパートの子供向けイベントで風船配りをさせられたことがあったという話を聞いた。

 ちなみに引くに引けず最後まで無言で子供達に風船を配り続けたらしい。

 やっぱりこの人イマイチ底が知れない……。

 

「素性がよく分からず不安かもしれませんがきっといい経験ができると思いますよ。

 それに…………我輩が頼んだんです、あなたを鍛えてあげてほしいって。いやぁ〜なかなか渋ってましたけど格闘の末ちゃんと指名送ってくれたようでよかったでス!」

 

「……はっ!?ほんと何者だよアンタ」

 

 やはりうちの保護者は底が知れない……。

 

 

 




読んでいただきありがとうございました!

主人公のヒーロー名はこんな感じでいきたいと思います。

次回からいよいよ職場体験に出発します、主人公がどこに行くかお楽しみに(^^;
続きは明日投稿します。
お気に入りや感想、評価などもよろしければお手柔らかにお願いします(^^;

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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