『選択』 〜ヒーローになるための〜   作:りんごあめ

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第20話よろしくお願いします。


第20話 プロヒーローをたずねて・アクマのような男

「全員コスチューム持ったな、本来なら公共の場じゃ着用禁止の身だ。落としたりするなよ」

 

「はーい!」

 

「伸ばすな、はい!だ芦戸」

「はいはーい!」

 

「二度言わすなそして二度言うな三神」

 

「グェッ!……おそろしく速い捕縛、俺でなきゃ見逃しちゃうね」

「おめぇも見逃してんぞ三神ー」

 

 職場体験先のヒーローに失礼がないようにと芦戸を窘める相澤先生に元気よく返事をして、捕縛布でキュッ!と締めあげられる。

 

「前々から思ってけど三神って意外と悪ふざけ好きだよなー」

 

 そんな一瞬の出来事に苦笑いを浮かべるA組のみなさん。

 

「いやいや俺はちょ〜っと雰囲気和ませようとしてるだけよ?みんなして表情硬いんだもん。俺とってもマジメな男だよ?」

 

「そりゃ硬くもなるだろ普通!これからプロのとこに1週間もお邪魔するんだからよ、緊張感ってモンがねぇのかお前には。それにお前のことマジメだと思ってるやつなんて多分いねぇぞ」

 

 切島にそうツッコミを入れられる。なるほど、俺にはもうマジメキャラでいくという選択肢はないのか。別にそんなキャラ目指す気ないけど。

 

「くれぐれも体験先のヒーローに失礼のないように……じゃあ行け」

 

 あれから数日が過ぎあっという間に職場体験当日。出発前最後の確認として駅で注意事項などが改めて伝えられる。

 

 相澤先生の合図のもと、各々の目的地に向かうため電車や新幹線の乗り場に散っていく俺達。

 最初は緊張に顔を強ばらせていたクラスのやつらもいざ出発となれば楽しみなどが勝り浮き足立った様子になるなか、不安げな顔でいるやつが2人。

 

「飯田君!本当にどうしようもなくなったら言ってね、友達だろ?」

「うんうん!いつでも連絡してね」

 

 デックンと麗日がそう言って飯田を引き止めた。

 体育祭の後からなんとなく様子がおかしいと感じていた俺達だったが、大丈夫だと言い張り何も語らなかった飯田に何も言うことはできず。ついに職場体験の日を迎えてしまったワケで、そんななかで心配する2人が絞り出したせめてもの言葉だった。

 

 そんな2人の言葉にゆっくりと振り返った飯田は、

 

「……ああ」

 

 静かに頷いて歩き出すだけでやはり何も言ってはくれなかった。

 

「大丈夫……かな、飯田君」

 

「大丈夫だと信じようぜ麗日、2人が心配してることは飯田もわかっただろうさ。さ、俺らも早く行こうぜ。遅刻しちまうぞ」

 

「あぁ、そうだね。ノア君の行き先って確か飯田君と同じ方だよね?」

 

「そ。だから新幹線で俺からもちょっと声かけとくからさ、2人も職場体験に集中しとけな?」

 

 飯田のことを気にしながらも俺達はそれぞれ体験先へ向かうため別れる。2人を見送った後、俺は駆け足で飯田の背を追う。

 

「飯田〜!新幹線一緒に乗ってこ〜ぜ〜」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……驚いたな、まさか同じ市で体験することになるなんてな」

 

「そういや言ってなかったもんな、俺も保須市で職場体験するんだよ」

 

 俺達は新幹線のなか窓から景色を眺めながら向かい合って話していた。

 

 

 

 

 俺が体験先として選んだのはあの一人遅れて指名をしてきたヒーローだ。千年公の知り合いで今回面倒を見てくれるよう頼んだということ、オールマイトからも実力を認められていることから、そういうことならと興味が湧いて選択した。そして彼が活動先として記載していたのが東京保須市だった。そして飯田が選んだのも同じく保須で活動するヒーローであった。

 

「お前は誰のとこに行くんだっけ?」

 

「俺はノーマルヒーロー・『マニュアル』さんのところだ。三神君はどこに体験に行くんだ?」

 

「あぁ〜俺はこの人なんだけどさ、知らないよな?」

 

「ふむ、聞いたことのない名だな」

 

「やっぱりそうだよな〜アングラ系ヒーローらしいし」

 

 

「「…………。」」

 

 少しの会話の後沈黙が流れる。

 普段の飯田なら俺が何も言わずとも何かしらの話題を出し会話が弾むというのに全くそんな気配はない。その沈黙に耐えられなくなった俺は小さなため息と共に口を開く。

 

「はぁ〜もうじれったい、俺はデックンや麗日ほどは優しくないからな。もうハッキリ言わせてもらうぞ……変な気起こすのはやめろ」

 

「……変な気、か。何のことだ?俺は何も邪な気など──」

「嘘がヘタすぎんだよお前。さっきだってデックン達にあぁ。って返して大丈夫だと言ったつもりなんだろうけどさ、目が全然笑ってねぇのよ。なんつーかこう、心ここに在らずみたいな?そんな敵意丸出しの目、お前らしくないね。

 保須を選んだのも兄貴の仇討ちのためか?やめとけ。気持ちは分かるが少なくとも復讐だけはお前がやるべきことじゃ絶対にない、私怨で動くのはヒーローらしくねぇ……と俺は思うぜ」

 

 そうキッパリと言い切った俺に飯田は声を荒げることも反論することもなくただ、

 

 

「ああ、そうだな。」

 

 静かに肯定するかのように深く息を吐きながらゆっくりと目を閉じた。

 

「っ、そうかよ……!」

 

 そんな飯田の反応に俺は、苛立ちを滲ませるように歯ぎしりをして小さく吐き捨てた。

 あれだけ言っても何も話しちゃくれないのかよ。せめてお前に喧嘩を売るように冷たくまくしてたてた俺の言葉に怒るくらいはしてほしかった。お前が大丈夫じゃないことくらい俺もデックンも麗日も分かりきっているのに、そんなにも下手な嘘をついてお前は俺達を突き放してしまうのか。

 

 ダチが困っているのに何もできない。

 気づけば感じていた苛立ちは、いくら言っても大丈夫だと嘘をつく飯田にではなく、そんな何もできない無力な自分への不甲斐なさへと向かっていた。

 

 

 この一言を最後に俺達が新幹線を降りるまで口を利くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よしっ、保須市とうちゃ〜く!俺は駅出て右行くけど飯田は?」

 

「俺は左だな」

 

 気まずい新幹線の旅も終わり、保須市に着いた俺は俺はあくびまじりに大きく伸びをする。どうやら飯田とはここでお別れらしい。

 

「そっか、んじゃお互い頑張ろうな。困ったことがあったらすぐ連絡してくれ、同じ市内だしすぐに駆けつけてやんよ!」

 

「そうか、わかった。もしなにかあったら連絡する」

 

「おう、いつでもいいぜ。ダチを救けるのは当たり前のことだからな!」

 

 そう言葉を交わし軽く飯田の肩を叩く。どうだろう、普段通りに話せてただろうか。新幹線でのことがあったからちょっと気まずかったんだよなぁ……。

 

 

 俺の心配など露知らず、飯田は体験先の事務所へ向かって歩き出していた。そんな背中を見送り俺も歩を進める。飯田の心配ばかりしているわけにはいかない。俺も職場体験でしっかりと経験を積まなければならない。メモを取り出し事務所へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「あれれ、おかしいな。道間違ったかな俺……」

 

 

 駅から歩いておおよそ15分、メモに書かれた住所に到着した俺は一人首を傾げていた。

 

 書かれていた住所にやってきたが目の前にそびえ立つのは明らかに誰も使っていなそうな廃ビル。

 外壁は黒ずんでいて当分の間人の手が加わっていないというのがよく分かる。

 スマホなども使って何度も確かめるがやはり示される場所はここ。この廃ビルで間違っていないらしい。

 

 

 とりあえずダメ元で中に入ってみることにした。見た感じ中は崩れてはいないため歩き回っても問題はないだろう。

 

 1階には特にヒーロー事務所らしきものは見つからず2階に登ってみる。そうして辺りを見回したところですぐに気づいた。

 階段を登ったすぐ近くのドアに紙が貼られてあり、そこには

 

 

『用があるならこっからどーぞ』

 

 と、書きなぐられていた。

 

 

「いやテキトーすぎるだろ、まじでここなのか……?」

 

 プロヒーローの事務所とは思えないあまりにテキトーな場所と看板に疑心暗鬼になりながらも意を決してドアを開く。

 

「すいませーん雄英高校から職場体験で来たんですけどぉ……」

 

 最初は大きかった声も中の様子を見るにつれ小さくなってしまう。

 それも当然、中には誰もおらず更には部屋の真ん中にソファーと机が一つだけ。とてもじゃないがヒーロー事務所とは思えない。もう本当に外観の通りただの廃ビルだった。

 

「ウーン、ヨシ!やっぱ場所間違えてんだよきっとそうだまったく俺のうっかり屋さんここがヒーロー事務所なわけナイナイ!」

 

 中を軽く歩き自分に言い聞かせるようにそうまくし立て部屋から去ろうとする。

 これはマズイ、迷子になってるんじゃないか俺……?

 

 このまま見つからなければとりあえず相澤先生に連絡しよう、そう重いドアノブに手をかけたその時だった。

 

「……オイ…」

「………ッッ!?!?」

 

 さっきまで誰もいなかったはずなのに背後から声が聞こえてきた。

 あまりに突然のことに声にならない声でビクリと肩を震わせる。

 

 ちょっと待って、なんで?なんで誰もいない部屋から声が聞こえてくるの?もしかしてアレですか、ここただの廃ビルじゃなくて色々出ちゃうとこですか。人間だった方たちがシェアハウスしちゃってる感じの廃ビルですか?

 

 バクバクとうるさい自分の心音を聞きながら振り返ってみることにした。

 これで振り返って誰もいなかったら逃げる、誰かいても逃げる。よしこれでいこう。

 

 ゆっくり深呼吸をしてから振り向いていく。

 

 

 

「…聞イテ……ルカ、オマエノ、名前……ハ?」

「いるぅううううう!!!!!」

 

 そこにいたのは丸い目と大きな口だけの顔をした白いローブを見に纏うハロウィンの仮装マスクにでもありそうな生気のない顔をした大柄な人物。

 

 予想以上にガチなのが現れて悲鳴を上げドアノブを捻る。

 俺ホラーとかマジで無理なんだよ!これはやばいほんとに無理誰か救けてぇ!

 

 脱出を試みる俺だったがその肩をがっしり掴まれ阻止される。俺はこれから一体どうなるんだろう。恐怖に震えていたその時、ソイツが再び声を上げた。

 

「待テ…オマエ……雄英カラ、タイケン……来タヤツ…ダロ?」

 

「ひぃぃぃぃ!………へ?そうですけどな、なんでそれを?」

 

「ソウカ……名前、ハ?」

 

「三神乃亜です!三神乃亜です!!」

「ナゼ、2カイ……言ッタ…?」

 

 あれ、おかしいな。幽霊ってこんなに話通じるんだっけ……?

 

 やや落ち着きを取り戻してはじめてきた俺が、いつでも逃げられるよう身構えながらそんなことを考えているとソイツは掴んでいた手を離し歩いていく。

 

「ツイテ…コイ……タイケン先、ハ……コノ奥…」

 

「えっ、あのもしかして俺を指名してくれたプロヒーローの方ですか?」

 

 ここにきてようやく正常な思考がまわるようになってきた。恐る恐る尋ねてみる。するとその人は静かに首を横に振って答える。

 

「ソレ、オレジャナイ……オレ…連レテ……クルノ、頼マレタ」

 

「あっ、あぁ〜そうなんスね、取り乱しちゃってすいません。じゃお願いします……」

 

 なるほどプロヒーローの関係者だったのか。ソイツとか言ったりだいぶ失礼なことしちゃったなぁ……。

 とりあえず軽く謝罪をしてそそくさとその人の後を着いていく。

 

 そうして部屋の奥まで来ると何やら不思議なモノを見つけた。

 大きさの違う様々な多角形が集まって浮かんでいる。上の方には14と数字が刻まれている。

 

「コノ先ダ……行ク…ゾ」

 

「この先?何もないじゃないです、かぁ……??」

 

 そう言いながら起こった出来事に目を見開いて立ち尽くす。

 その人はなんの躊躇もなく目の前の多角形の集合体の中へと入っていく。

 

 これもしかしてここと別の場所とを移動できる、どこでもいけるドア的なやつか。なかなかに独特な形だから想像つかなかったけど。

 

 この先に指名をくれたヒーローがいるんだろう。

 どんな人なのか結構楽しみになってきたな。

 

 緊張と胸の高鳴りを感じながら俺はそのゲートをくぐった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……なんだここ、てっきりどっか別の部屋に繋がってんのかと思ったのに」

 

 ゲートをくぐった先に広がっていた景色にポカンと口を開けきょろきょろと見回す。

 

 そこは雲一つない青空の下、南国のような白レンガの町がずっと続いていた。

 別の国にでも来たのかと思ったが同時に違和感を感じる。

 その白レンガの町はどこを見ても汚れ一つない綺麗な白の家々が広がっていたが、人の気配が全く感じられなかった。

 耳に入る音も自分の足がレンガを蹴る小気味いい音だけ。どうやら本当にここには誰も住んでいないようだった。

 

 そして感じた違和感はもう一つ。

 初めて足を踏み入れたはずの場所なのに。

 千年公に海外へ旅行に連れて行ってもらった時にもこんな風景の国には行ったことはないのに。

 ここへ来て辺りを見回した瞬間に感じ口からこぼれた感情が。

 

 

 

「懐かしい……」

 

 

 

 自分で言った言葉に首を傾げる。

 何故そんなことを思ったのかはわからないがひとまず町の散策を続けてみることにした。歩いているうちに何かわかるかもしれない。

 さっきの案内してくれた人の姿も見えず白い町をただただ歩いていく。

 

 そうやって歩くこと数分後のこと。

 

 

「人様ん家を歩くのがそんなに楽しいか?」

 

「え……あれ、いつの間に!?」

 

「なんだ?気づいてなかったのか。ずっと居たんだがなぁ、まぁ姿が見えないように(・・・・・・・・・)していたしそれも当然か」

 

 突如として背後から声がかかり慌てて振り向くとそこには家の壁に背を預け腕を組み、口元を緩ませてこちらを見る長身の男が立っていた。

 そしてその人を見た途端すぐに理解する。この人が指名をくれたヒーローであると。彼からは明らかに街を歩く人々とは違う強い存在感を感じた。それほどまでに彼の放つ気迫から自分よりも遥かに格上であるということをこれでもかというくらいに実感させられる。

 

「い、一応確認しますけどあなたが指名くれたヒーローですよね……?」

 

「あぁ、俺がお前を指名してやったプロヒーローだ。せっかくだから名乗ってやろう……」

 

 ごくりと唾を飲んで問うと男はそう言って気だるそうに頭を搔く。

 ゆっくりとこちらに歩みながら男は口を開く。

 

「俺の名は滅罪ヒーロー・『ジャッジメント』。

 俺のことは師匠と呼び敬え、それができなきゃとっとと家へ帰れクソガキ」

 

「え、なんなのこの人コワイ……」

 

 肩まで届きそうな長い赤髪に無精鬚を生やし、顔の右半分を覆う白い仮面を付けた神父を彷彿とさせる装いをしたその人はドスの効いた声でそう言った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「えーと。し、師匠!ここはどこなんですか?とても日本とは思えないんスけど」

 

「めんどくせぇなァ……まあだがその辺ことは説明していた方が後々楽か」

 

 あの後ジャッジメントが立って話すのはダルいと近くの家に入りそこで話すことに。

 出会って数分で師匠と呼べと言われてもちょっと乗り切れないがそうしなきゃマジで追い出されそうな雰囲気を出してるので、とりあえず言われた通り師匠と呼ぶことにした。

 

 部屋の中も白で統一されており壁はもちろんのことテーブルやソファー、ベットなど全ての家具が白一色になっていた。

 正直ここまで白ばっかだと逆にちょっと落ち着かない、すっごいそわそわしてくる。

 

「ここはお前の言う通り日本ではない、というかそもそも別の次元に創られた空間だ」

 

「別の次元!?そんなことどうやって?」

 

 予想外の答えに目を丸くする俺にジャッジメントはテーブルに足をどっかりと乗せタバコを咥えながら答える。

 

「そりゃ個性に決まってんだろ。ちなみにそいつはお前をここに連れてきたやつの個性だ、せっかくだから教えといてやる。

 やつの名はハコブネ、個性も『方舟』。現実とは違う別の次元に空間を創り、さらにそこと現実にゲートを繋げ自由に行き来することができる。ゲートを創るも一度創ったゲートを壊すも全て思いのままだ。

 一度行ったことある所にしかゲートを創れないのが難点ってとこか。ウチの優秀なサイドキックだ、覚えとけ」

 

「そんなデタラメな個性があるとはびっくりだな……」

 

 ワープってだけでもかなり強い個性だといわれているのにこれはさすがに破格の強さだ。ゲートは複数創れるし、そもそも現実と別の空間に行けるということは危ない時はここへ逃げ込んで隠れることだって可能なワケだ。そもそもこんなデカい空間を創れるってとこもやばい、どこを取っても一級品の個性だ。

 

「なるほど、よくわかりました……」

 

「そうか、他に聞きたいことがあるんなら今聞け。とっとと済ませて本題に入りたい」

 

 タバコをふかし退屈そうに言うジャッジメントに俺は続けて質問をぶつける。

 

「えー、なんで俺に指名くれたんスか?長いこと日本では活動してないって聞いたんですけど、やっぱ千年公から頼まれたから?」

 

「千年公、ねぇ……そうだなァ、あのパンパンデブが突然連絡をよこしやがったのさ。お前を弟子にして鍛えてやってほしいとな」

 

「パンパンデブ……千年公のことで間違いないな」

 

 ちゃっかり家族が貶されたが反論できねぇ〜。確かにあんなふくよかな腹だもん。俺だってそう思うわ、千年公はまじで痩せたほうがいいと思う。

 

「でもよくそれで了承してくれましたねー俺的にはありがたいんスけど」

 

「んなわけあるか、誰が好き好んでガキのお守りのためだけに来るんだよ。日本に来たのは他にも色々と用ができたからだ。お前なんぞオマケに過ぎん、自惚れるな。

 俺が好きなものはイイ酒とイイ女だけだ」

 

「えぇ……」

 

 まさかの返答に思わず顔が引きつる。すっげえボロクソに言われた気がするんだが気のせいかな……?

 そんな俺をよそにジャッジメントはおもむろに立ち上がりドアを開け外に出る。

 

「おしゃべりはここまでだ、コスチューム着て表出ろ」

 

 

 理由も語らず行ってしまったジャッジメントに口ごもりながらも言う通りコスチュームに着替え外に出る。

 しかし彼の姿は見当たらず、辺りを見回していると上からドスの効いた声がかかる。

 

「オイ、そっから家の屋上まで上がってこい。方法は問わん、個性も好きに使え」

 

「あ、はーい了解です。そんじゃ、よい……しょっと!」

 

 軽く助走をつけ、反対側の家の壁を蹴り反射で跳ぶ。

 一蹴りで無事家の屋上にたどり着いた俺を見たジャッジメントはフン、と軽く唸ると、

 

「その姿……なるほど確かにアイツにそっくりだ」

 

 声を潜め何か考えるように静かに呟いた。

 

「え、いまなんて?」

 

「いや?独り言だ気にするな。

 体育祭の映像を見させてもらった、言いたいことは色々あるがまァとりあえず……

 下手クソ!とにかくこの一言に尽きる」

 

 俺の問いを一蹴するとジャッジメントはそうはっきりと言い切った。

 

「その個性ならもっとできることはあるはずなのにそれをしない、既にできていることもまだまだ中途半端な欠陥品。

 お前程度じゃ相手にならないヴィランはごまんといる、このままじゃお前……いつか死ぬぞ」

 

 いつか死ぬ、真面目な声でそう忠告を受けた俺は思わず息を呑む。そんな俺を見てフッと軽く笑ってジャッジメントは話を続ける。

 

「そんなコワイ顔すんなよ。そうならねぇ為に俺が相手してやろってんだ、ありがたく思えよ。まずは知ることだ、自分がどれほど弱いのかをな。

 まぁあれこれ言わずとりあえずやってみるか……そうだな、俺に一撃でも攻撃をくらわすことができりゃお前の勝ち、これでいいだろう」

 

「なるほど、いきなり実戦形式ってワケですか」

 

「ああ、実際に戦って思い知らせてやるさ。プロとお前にどれほどの壁があるのかをな。本気で来いよ?」

 

 そう言うとジャッジメントは「ああ、そうだ」と何か思い出したように再び口を開く。

 

「俺は優しいからな、始めに言っといてやろう。

 お前は俺に一度も触れられず負ける……絶対にな?」

 

「……い、言ってくれますねぇ。始めからそんなこと言われちゃ何がなんでも一撃くらわせたくなっちゃうじゃないすか……!」

 

 にやけ顔でそんなふうに煽られおもわず眉をピクピクと震わせる。

 この人完全に俺を舐めてやがる……!そりゃプロなんだし俺なんかより強くて当然なんだろうけどちょっと腹立つよなぁ。

 せめて1発、1発くらいは掠らせて驚かせてやる。

 

 そんな意気込みのもと、姿勢を低くし戦闘態勢に入る。

 

「準備万端ってか?いいぜ、いつでも来い。1発でのびたりなんてしてくれるなよ?」

 

「んじゃ……よろしくお願いしまァーす!!」

 

 ジャッジメントの啖呵を合図に走り出す。最初は個性の発動なしで接近し距離を詰めた所で反射で加速してジャッジメントの側面へ移動する。

 

 ジャッジメントはまだこちらを向いていない。いける、このまま脇腹でも殴り飛ばしてやる。

 そう息巻いて構えた拳に力を込め思いきり振るった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「は、なん……で?」

 

 振るったはずの拳は当たることなく、俺はつい数十秒まで家だったはずの瓦礫の上で空を仰いでいた。

 

 数十秒前の事を思い返す。

 ジャッジメントに殴りかかろうとした瞬間だった。彼はすぐに後ろに飛び退きながら懐から何かを取り出していた。

 

 見えたのはそれくらい。

 気づいた時にはあったはずの家は瓦礫と化し、自分はその上で空を仰いでいた。

 なるほどぉ……わからん。一体何をされたのか皆目見当もつかない。

 

「まぁそこそこ速いがあの程度、対処には困らんな」

 

 そんなことを言いながらジャッジメントが余裕の笑みを見せ現れる。

 のそのそと立ち上がりコスチュームに付いた土煙を軽くはらいながら俺は問う。

 

「はは、そりゃ残念。あの一瞬で一体何すりゃこんな家丸ごと吹き飛ばすなんてことできるんスか?」

 

「手加減してこれを3発ほどブチ込んだだけなんだがな、見えてもいなかったとは。まだまだヒヨっ子だな」

 

「いや銃使ってますやん、それのどこが手加減なんですか」

 

 プラプラと手でつまんだ拳銃を揺らし見せてくるジャッジメントにそうツッコミを入れる。

 

「あァ!?オモチャの銃使ってやったんだぞ!これ以上の手加減なんてあるか」

 

 面倒くさそうに吐き捨てる彼に、なるほどオモチャなのかぁ〜と納得する。

 ん?…………いやちょっと待て。

 

「オモチャで家丸ごと破壊!?ほんとどんな個性だよあんた!?!?」

 

 声を荒らげた俺にジャッジメントはやかましそうに耳を塞いだ後ため息をつき──

 

 

 

「それを考えるってのも…………戦いの内だろッ!?」

 

 好戦的な笑みを浮かべ引き金を引いた。

 

「なっ!?!?」

 

 突然銃を向けられはっと息を呑みながら背を向け走る。

 射線から逃れようとすぐに近くの家の壁を蹴り屋上へと上がり振り返る。

 とりあえずあの1発は躱せた、2発目を撃とうとする前に一つ奥の道に逃げて射線を切ろう。

 ここは家が密接している住宅街、どこも同じような間隔で家が建てられ、1つ先の家と家の間にも同じような道ができている。逃げ込める道はたくさんある。

 

 

「ひとまず別の道に降りて身を隠そ── ッ!?!?」

 

 そう動き出そうとした時だった。まるで家の外壁を沿うかのような軌道で足元からBB弾が現れると、突然軌道を変え腰の辺りに命中すると俺の身体を後ろへ吹き飛ばした。

 

「ぐっ!クッソなんでだ!?絶対躱したはずなのに……ッ!!」

 

 吹き飛ばされ転がりながら何とか起き上がったところで目を見開く。距離にしておよそ15m先、今度は真っ直ぐBB弾が俺の身体に撃ち込まれようとしていた。

 

 

 避けきれないと分かっているからなのか、それはゆっくりと動いてみえていた。

 直撃しようとしている弾は1発、よく見ると弾の後ろに青白い光が続いている。そしてその光の出処を見ると、それは少し先の家の上に立つジャッジメントの持つ銃から続いていた。

 ジャッジメントと目が合う、いつの間に上に登っていたんだか。確かにあの人の言う通り俺は一度も触れることはできなそうだ……。

 

「がぁ…ッ!」

 

 ゆっくりと見えたのはここまで。そんなことを考えながら被弾した俺は家の下へと呆気なく吹き飛ばされた。

 

 

「痛ってぇぇ……マジで歯が立たねえ」

 

 背中を打ちつけられた痛みに顔を歪ませながらぼんやりとつぶやく。

 こちらの攻撃は当たらず、逆に向こうからの攻撃は躱すことすらできず全てくらってしまうという完敗ぶり。どうやって反撃しようかと半ば諦めながら考えていると。

 

「まっ、こんなもんでいいか。これでよ〜く分かったろ?自分がどれほど弱いかを…………そして俺がお前なんかじゃ相手にならんほど強いヒーローだってことをなぁ?はっはっはっはっはっ〜!」

 

「ホントなんなのこの人……」

 

 屋上から俺を見下ろしながら、わざとらしく高らかに笑い始めた。

 

 

 

 

 

 

 そいつはヒーローというにはあまりに荒々しく、

 しかしヴィランというにはあまりに真っすぐな………いや、そこそこ真っすぐな目をした男だった。




読んでいただきありがとうございました!

師匠的な人を出したいと前々から考えていて、師匠といえばやっぱりこの人かなぁと思いご登場いただきました。
Dグレ知ってる方々なら誰をモデルにしてるかお分かりいただけましたかね?笑
原作のような鬼畜ぶりをお見せできるよう頑張りたい…
そして主人公はホラーが苦手です!ポンコツなところも結構あるんです(^^;

お気に入りや感想、評価などもよろしければお手柔らかにお願いします。

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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