『選択』 〜ヒーローになるための〜   作:りんごあめ

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お久しぶりです、忙しくてなかなか投稿できませんでしたすみません!

第21話よろしくお願いします。


第21話 プロヒーローをたずねて・アクマの弾丸

「……と、まぁこんな感じで自分の弱さを知ってもらったところでだ。何がダメなのか特別に教えてやろう」

 

 たった数分でボコボコにされた後、やたらと上からな物言いでジャッジメントがそう言った。微妙に癪に障るがここでツッコミを入れたら教えるのやめるとか言い出しかねないと思い黙って聞くことにした。

 

 ちょっと変わり者な気はするがヒーローとしての実力は本物だということはこの身でしっかりと味わうことができた。

 そんなヒーローが何を語るのか、楽しみだな。

 

「身体を地面から弾いて動くというお前の基本的な移動方法、これは悪くはない。普通に走るより速いし体育祭でもこれを使って相手を翻弄し攻撃を決めていたな?

 だがこれを地面や氷といった目に見える物体にしか使用していないってとこがダメだ」

 

「え、でも他に使える物なんかあります?見えない物になんて使えないと思うんスけど」

 

 眉間にしわを寄せ首を傾げる俺にため息混じりにジャッジメントが答える。

 

「あるだろ一つ、お前だって個性を使ったことがあるモノが。

 ………空気さ。触れたい物を自由に選べるお前はそれを踏みつけることで空中に留まったり歩いたりできんだろ、それを応用すりゃいい」

 

「うーんなるほど、確かにそうかもしんないんですけどアレ結構難しいんですよ。立つのは楽だけどそこから移動するってのは調節が大変で……」

 

「それが無駄なんだよ、そもそもそんな調節が難しい場所にわざわざ立って歩く必要がどこにある?それなら留まらず触れる時間はごくわずかに、ピョンピョン跳ねるように跳んで動いていけばいい。

 空気を踏み弾いて動くってのを加えるだけでこれまで以上に手数が増え細かく、素早い挙動で敵の意表を突ける。移動が楽になる、救けを求める人の所に早く駆けつけられる。

 

 体育祭の時の話をするなら1回戦の綱渡りや地雷のエリア。空中を飛んでけりゃギミックガン無視で行けたのにノロノロ歩いていたよな?もしあそこで空中を速く跳んでいけていればどうだったのだろう。1位でゴールも夢じゃなかったのではないか。

 ……というようにこの移動法は今後身につけるべき必須の技術だといえる」

 

 

 確かに。と俺は声に出しはしなかったが心の中でうなずく。

 あの場面で彼の言うように俺は歩いて進んでいた。地面と同じように空中を走るのは調整が難しく、歩くしかなかったのだ。

 確かに爆豪なんかは綱も崖も無視して空中を飛ぶことであっという間にあの場を通過していた。

 空中は誰でも動ける場所ではない。そこを移動できるというのは大きな強みになる。

 

 自分でもどうにかしたいと思っていたことの一つだった。その解決策を容易く提示され、プロとの差を改めて実感する。

 

「まぁ試してみろ、とりあえず角度は気にするな。ほぼ真上に跳ぶだけでいい。ほら早く、話が進まんぞ」

 

 そう言って実践してみるよう急かす。そんな風に言われちゃ集中できねぇだろと言いたい気持ちを堪え、軽く息を吐き呼吸を整えたところで個性を発動させる。

 

「地面を弾いて浮かんだらっ、そこを選択して…反射をッ!…………あれ?」

 

 地面に反射を発動させ軽く跳んだ……まではよかったがそこから更に上へ跳び上がることはなく、俺の身体はピタッと空中で一度留まり落下して尻もちをついていた。

 

「違う違う!お前俺の話聞いてなかったのかァ!?留まるんじゃない、跳んでから落ちるまでの間にもっかい発動させんだよ!」

 

 鋭い眼光と共にジャッジメントの怒号が飛ぶ。

 

「え、ええっと、その通りしたつもりなんスけど……?」

 

 恐る恐る反論してみる。そんな俺にぶんぶんと首を振って指を差してきながらジャッジメントは口を開く。

 

「いいや違うな。お前がやったのは空気を一度しっかり踏んでから跳ぶって感じだ。俺が言ってんのは空気を踏む時にはもう反射を発動させ蹴り飛ばすんだ。

 空気には『踏む』というより『触れる』って感覚を持て。触れるだけでいいんだ、次また同じミスしたらシバく!わかったらとっととやれ」

 

 今度は具体的なイメージの話をして間違いを指摘してくれた。わかりやすい、これならさっきより上手くできそうな気がする。

 

 最後になんか怖いこと言われたような気がするのは気のせいか……?

 

 

 

「踏むんじゃなく触る、踏むんじゃなく触る…………地面を蹴ったら今度は空気を……蹴るっ!!」

 

 

 ジャッジメントに言われたことを復唱し頭の中でイメージを固め再び地面を蹴る。

 

「お、おぉ〜できた……できました!」

 

「フン、まずまずだな。真上に跳ぶだけじゃ使い物にならんからな、同じ要領で次は横に跳んでみろ」

 

 結構は成功。反射で地面を蹴り空中へ跳び出した後、空気を蹴って再び身体が上へと跳び上がった。

 喜びの声を上げる俺に反し、ジャッジメントは表情一つ変えずに鼻で笑うと次の指示を出してきた。

 少しくらいは褒めるなりして声かけてくれてもいいじゃないか。

 

「横に跳ぶってことは……反射させる角度を空気を選択した後すぐに選択して………うおっ、さっきよりちょっと難しいな」

 

 今度はコケて尻もちとまではいかなかったが発動に手間取り地面に足が着く寸前で横に跳んだ。真上と横では難度が変わるな、真横ではなくやや斜め上に跳べってことらしいからその調整に手間取ってしまう。

 

 空中に跳ぶ→その高さで足元の空気を選択→次に跳びたい方向へ角度を調整してから弾いて跳ぶ。って流れなんだがそう上手くはいかないな、ひたすら練習して慣れるしかないか。

 

「随分と不格好だな、そんなんじゃ使い物にならんぞ。

 まさかとは思うが踏む空気にそこら一帯をイメージしてるんじゃないだろうな?踏むのなんざ足元の小さな範囲だけでいいんだよ、足がすっぽり収まるくらいの正方形の板がある……みたいにイメージしてみろ

 行動は常に必要最低限にしろ。無駄に疲れたり時間がかかるだけだ」

 

「……!なるほど、確かにその通りですわ」

 

 俺の考えていたことを簡単に言い当て的確なアドバイスをとばす彼に目を丸くする。

 そうしてその通りにすると本当に上手くいくもんだから更に驚かされる。

 

「ありがとうございます、いやぁ〜師匠の言う通りにしたおかげで早くものに出来そうっスわ!」

 

 何度か横への移動も成功させた後、地面に降り立ちジャッジメントに礼を言う。そんな俺を一瞥すると新しいタバコに火をつけながらジャッジメントは答える。

 

「個性ってのは人それぞれ違うがどれも身体機能の一部だ。疲れにくい走り方なんかがあるように、個性も使い方ひとつ変えただけでもやれることは大きく変わったりするもんだ。

 俺が教えてやるのはそういう個性や身体の『使い方』だ。お前の凝り固まった考えに新しいモンを叩き込んでやるから覚悟しとけ」

 

 ニヤリと笑って見下ろすジャッジメントに俺は目を輝かせる。

 

「おぉ〜すげぇ師匠っぽいこと言ってる……!これからはちゃんと口だけじゃなく心の中でも師匠って呼びますね師匠!」

「ほぉ〜?いままではちゃんと師匠と敬ってなかったのかァ??」

 

「痛たたただだ!!スイマセン、スイマセンした師匠!!」

 

 俺がそう声高らかに言うと目をギラつかせ頭を鷲掴みしてくる師匠。頭を締め付けられる痛みに涙目になりながら謝る。そのまま頭を掴んでをポイと放り投げられ尻もちをつかされた後、タバコをふかしながら師匠は口を開く。

 

「まァ今回だけは許してやろう……さてこっから本格的に色々と教えてやるんだがバカ弟子よ。新しい技を早く身につけるために必要なことはなんだ?」

 

「え。そりゃ師匠が言ってた身体や個性の使い方ってやつをイメージしてそれを定着させること、とかですかね?」

 

「そうだな、それが重要だ。これは俺の持論だがそのイメージってやつをより確実に定着させるものがある。

 ……名を付けることだ。口や頭で長ったらしく手順を考えるよりもこの名前=こういう技だ、みたいな結びつけができりゃあ楽だと思ってな。俺はいままでそうしてきた、お前もテキトーに名前を付けてみろ」

 

「なるほど、そういう理由で技名を付けてみるのもいいかもしれないなぁ」

 

 とりあえず腕を組んで唸ってみる。

 

「ん〜空気を弾いて移動する、かぁー。選択、弾く、跳ぶ……あっ、空中に板があるようなイメージをって師匠が言ってたなぁ。それに頻繁に使うものならあんま長くないほうがいいよな………よしっ決めた!

 

 空気を弾く板ってイメージから弾く板と書いて

弾板(バウンド)』にします!」

 

 

 数十秒で考えた名前はどうかと師匠の顔色を伺う。僅かな沈黙の後、口を開いた師匠は、

 

「ま、分かりやすくていいんじゃねーの」

 

 と心底興味のなさそうな声で答えた。

 

「うわぁ、全然興味ないじゃないですかー」

「そりゃあ別にどんな名前付けようが俺には関係ないからな」

 

 何食わぬ顔でそう言った師匠は銃に弾を込めはじめる。

 

「んじゃ名前が決まったとこでだ、早速それをものにするための修行を始めるぞ。昼メシまでのおおよそ2時間、それまでにお前には『弾板(バウンド)』をそれなりに実戦で使えるようになってもらう」

 

「え、たったの2時間!?そんな短時間で使えるようになる気しないんスけど……」

 

「それなりにって言ってんだろバカ弟子が。2時間ちょっとで完璧に扱えるようになるとは微塵も思ってねぇわ」

 

 思っていたより遥かに短い時間を言い渡され、戸惑いに声を裏返す俺に師匠は顔色一つ変えず言う。

 

「な、なるほど。それで?さっきみたいに跳ぶ練習を繰り返せばいいんですか」

 

「いいや?そんな悠長にやってるヒマはないからな。人は窮地に立たされた時に力を発揮するとかなんとか言うだろ?火事場の馬鹿力、なんて言葉もあるしなァ……」

 

 ニヤリと笑い銃を眺める師匠を見て俺は顔を引きつらせ察する。

 

「あ、あのぉ〜まさかまたその銃を撃ってくるなんてことは……」

「察しがいいな、お前はこれから2時間俺の弾から逃げ続けるだけだ。簡単だろ?」

「いやどこが!?さっき為す術もなく吹っ飛ばされまくったんですけど!?!?」

 

 撃たれたのはたったの2、3発。だというのにあまりにも圧倒的な力の差を見せつけられ、師匠の銃に俺はトラウマに近い若干の恐怖を植え付けられていた。

 そんな俺の抗議に深いため息をついた師匠はわざとらしい身ぶりで、

 

「そうカッカするな、人間死ぬ気でやれば何でもできる」

「できてたまるか。人間はできないこともある不完全なモノだから人間なんです」

 

「……口だけは達者なヤツめ、まぁここに来た以上お前に拒否権なんぞない。まずこの空間から自力で出ることは不可能だからな、お前に帰る場所はないぞ」

 

「そんなん言われたらやるしかないじゃないスか……」

 

 どうやら俺はちゃっかりここに監禁されているらしいです、言う通りにしなきゃマジで出してくれなそう。

 もう、どうとでもなれ……こっぴどくシバかれてやる。

 

「ったく、最初からそう言ってりゃいいんだめんどくせぇ。

 んじゃさっき言った通りお前は技を使えるように練習しながら全力で逃げ続けろ、心配するな生半可な攻撃はしない」

 

「いいえそこは生半可な攻撃でお願いします」

 

「いいか、俺はお前を半殺しにするつもりで攻撃する。それがどういうことか分かるか?

 俺が半殺しにするということはお前は死ぬ気でやらなきゃ本当に死ぬってことだ。命が惜しけりゃ本気でやれよ?」

 

 もうほんと何言ってんだこの人。めちゃくちゃだよ、俺の言ったことガン無視で話続けたし……

 まぁもう仕方ない、本気でやればほんとに上達するかもしれないし。とことんやってこう!

 

「もう、覚悟決めました本気でやってきます!お手柔らかにお願いします!!」

 

 こうして俺の職場体験が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ゲホッ、ゴホッゴホッ!やばい……マジで死ぬ!」

 

 さっき言ったことを少し訂正させてほしい。

 俺の地獄の職場体験が始まった。

 

 師匠の撃ち続ける弾丸から逃げ続けること約1時間、俺は顔やコスチュームを土煙で汚しながら息を切らし這いつくばっていた。

 

 ここまで既に何十発もの弾丸が放たれたが1発も避けることはできず、全弾もれなく被弾していた。

 

「くっそ、あの人一体どんな個性なんだ……?それが分かりゃ何とか──」

「個性が分かれば何だって?」

 

「──っ!やば、またっ……!」

 

 さっきから為す術なくやられている理由の一つかこれだ。

 しばらく同じとこからドカドカ撃っていたかと思うとそれが止み、突然近くの家の屋上に姿を現しては撃ちまくってくる。

 

 そしてもう一つ、撃ち込まれる弾丸は俺が全力で逃げてどれだけ距離を取っても追い続け命中する。

 もう本当にお手上げだ、逃げろと言われたがそんなことできる気がしない。ただただ師匠の弾丸に苦悶の表情を浮かべるだけだ。

 

 またしても突然近くに現れた師匠に撃たれ身体が宙に舞い数メートル飛ばされた後、師匠は俺を見下ろし声を上げる。

 

「個性を知りたいんだったな、いいだろう教えてやる。

 俺の個性は『追撃』。中身はいたってシンプル、

 一度俺の身体に触れてから投げるなり撃ち出されるなりした物は狙ったとこめがけて飛んでいく。

『追撃』の由来は放った物が標的を追って飛んでいくこと、そして俺の身体からエネルギー弾みたいなのが放出され一緒に飛んでいくからだ。つまり撃ち出された物が当たった後、もう一撃叩き込まれるのさ。ちなみに放たれた物の威力が高いほどエネルギー弾も強まり追撃の威力は上がる。

 だからよォ元から簡単に高威力を出せる銃なんてのはこの個性とすこぶる相性がいいってことだ。わかったかバカ弟子」

 

 

「シンプルだけどすげえ強いじゃないっすか……てかエネルギー弾ってなに………」

 

「いちいち細かいこと気にしてんじゃねぇよ、個性なんざそもそも何でもアリなもんだろうが!お前の周りにもいんだろ、ビームとか出したりなんか変なモン出すやつはよォ!」

 

「あっ、あぁ〜確かに……」

 

 そう言われてみればそうだ、クラスの中だけでもへそからビーム出す青山とかなんかモンスターを見に宿しちゃってる常闇とかいるしなぁ。確かに個性なんて何でもアリのトンデモ能力だよな……。ツッコミ入れるのも野暮ってもんか。

 

「種明かしをしてやったとこでだ、修行続けんぞ。ほら、逃げなくていいのか?」

 

 小馬鹿にするように言う師匠に苦い顔をしながらふらふらと立ち上がる。

 

 撃たれるばかりの俺だが一つ進歩したものもある。

 近くの家の壁を蹴り空中へ跳び出した後、更に加速して家の屋上より高い位置へと一気に飛び跳ねる。

 

「とりあえずまた距離取らねぇと……『弾板(バウンド)』ッッ!」

 

「ぼちぼち使えるようにはなってきたか、予定通り次に進んでよさそうだな」

 

 教わった新技『弾板(バウンド)』は師匠の言う通り弾丸から逃げ続けている中で既に身につき始めていた。

 

 師匠が何かつぶやいていたがそれに耳を傾けている暇なんてものはなく、空中へ舞った俺は今度は上ではなく横方向に『弾板(バウンド)』を発動させ移動していく。時折家の屋上に降り立ち、走りながらそこから飛び降りると同時に発動させ再び空中を蹴り進んでいく。

 

 窮地に立たされることで力が発揮されるというのは案外本当だったらしい。最初は上手く跳び上がることに失敗し呆気なく銃弾をくらうなんてこともあったのに、必死で逃げるうち自分でも驚くほどスムーズに使えるようになってきていた。

 まぁそうなったところで結局全て被弾し痛みに悶えることにはなるのだが。

 

 全力で逃げつつ一瞬ちらりと後ろを振り向くと、俺を追って真っ直ぐ飛んでくる弾が見えた。

 

「はぁ、はぁ……ぐっ、まともに逃げようたって無理だな師匠の話聞く限り……」

 

 せっかくだから色々試してみることにした。

 空中を進むのをやめて地上に降り、白い住宅街を小走りで進みながら追ってくる弾を引きつける。そうして迫って来た瞬間、再び反射や『弾板(バウンド)』を使い家を飛び越え他の道へ移動して近くの路地へと身を隠した。

 

 しばらく走り回っていて分かったがこの街は似ている家や等間隔の道幅になっているように見えて所々道の形は違っている。ただのなだらかな坂道になっているとこもあれば、少々狭い路地になっている場所もあった。

 そんな路地に潜り込み弾丸はどうなるか確認してみる。

 

 辺りは静寂に包まれる。

 

「お、さすがに追尾してくるつっても壁にぶつかれば止まるよな!」

 

 追ってくる気配がなく予想していた通りになったと安堵する。

 

 

 

 

 

「あれ、なんか音が……ビキビキいってるような──」

 

 安息が訪れたのはほんの僅かな間だけ、近くの家の壁からビキビキと建物が崩れるような音が鳴っている。最初は小さく、そしてだんだん近づいてきているかのように徐々に音は大きく鳴っていく。

 嫌な予感がする。嘘だ、嘘だと言ってくれ……。

 

 誰かに言うでもなくそんなことを心の中で祈るようにつぶやきながらジリジリと後ずさりする。

 

「建物にぶつけりゃそこで弾丸は止まる、そう思ったんだろ?一つ言い忘れていた」

 

「ヤ、ヤメロ、ほんとにっ…頼む、頼むから……話せばわかるってぇぇ!!」

 

 姿こそ見えないが師匠の淡々とした声が響き身体がびくりと震える。

 僅かな沈黙の後、再び師匠の声が響く。

 

「──俺の弾丸はターゲットにブチ込まれるまで止まらない」

 

 そう言い放った直後、目の前の壁が音を立てて崩れ青白い光と共にそれはもう憎たらしいほど元気よく、勢いの全く死んでいない弾丸が姿を現した。

 

「そういうのは最初に言ってほしかったなぁ、返してくれよ俺の淡い希望……」

 

 そう最後に言い残し俺は本日幾度目か、吹き飛ばされ虚しく宙を舞った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「とりあえず合格、ということにしといてやろう」

 

「2時間ひたすら撃たれて宙を舞っただけなんですけど……」

 

「それができりゃ十分さ、途中で動けなくなると思ってたくらいだしな」

 

「えぇ……」

 

 ひたすら撃たれ続けた後、師匠の「腹減った、メシ食うぞ」という突然の宣言により修行は一旦休憩ということになった。

 

 家の中に入り椅子に腰かけ、痛む背中を擦りながら机に突っ伏し大きなため息をつく。初っ端からこんなに疲れるとは思わなかった。先が思いやられるな……。

 

「でけぇため息なんかついてんじゃねぇよ。ほら、とりあえずこれ食え」

 

 そんな俺の前にドンと何かを置いた師匠。その音にモゾモゾと起き上がる。そして、

 

「……え、マジすか!?これめっちゃ高い焼肉屋のめっちゃ高い弁当じゃないっすか!いいんスか!?」

 

「すげえ頭の悪そうな言い回しになってんぞ。食わねぇなら返せ」

「いや食べます!食べさせていただきます!」

 

 差し出されたのは有名な焼肉店で売っている1個3000円以上する焼肉弁当だった。

 

「美味い、美味すぎる……生きててよかったぁ」

 

 そんな高級弁当に頬を緩ませて味わうなか、俺は口を開いた。

 

「そういや師匠、久しぶりに日本来たのは色々用があったからって言ってましたけどどんな用なんスか?」

 

「あァ?まぁいいかお前にも関係のある話だからな、教えてやろう」

 

 意外なことを言われおもわず首を傾げる。俺に関係があるって一体どんな理由だ?

 

「俺は個性に関する違法な薬や実験なんかに関する案件を主に活動している。日本だと何年か前になるが鳴羽田ってとこで起きていた薬物絡みの事件に関わっていた。それが落ち着いてからは海外で似たような事件の対処をしてたんだがな。

 ここにきて妙な話が入った。日本でオールマイトすら苦戦した肉体改造を施されたと思われる怪人が出現したってな、ここまでくりゃあ分かるだろ?」

 

「……あっ!USJん時の脳無とかいうヤツのことか!」

 

「そう、その脳無とやらは複数の個性に加え体内から複数人のDNAが検出されたらしい。間違いなく人体実験で生まれた輩だろうな」

 

「うえっ、気持ち悪。食事中にする話じゃねえぇ……」

 

「知るか、お前が話せと言ったんだろ」

 

 師匠のする話にげんなりとした顔で目を背ける。脳無ってヤツが複数の個性持ちだってのは知ってたがDNAの話は初耳だ、あの見た目だけでもかなりのモンだったがますます気色悪く思えてくるな……。

 

「随分と趣味の悪いヤツもいるもんですね」

 

「まったくだ、その脳無の製作者には心当たりがある。俺も奴と戦ったことがあるんだがそいつは数年前、オールマイトが重傷を負ってまで倒した男だ。奴はあの戦い以来なりを潜めていた筈……俺が日本に戻ってきたのはそいつが本当に動き出したのか確めるためだ」

 

「オールマイトが重傷……!」

 

 師匠が言ったことに対し顔を強ばらせぼそりとつぶやく。

 いま師匠が話した男ってのはオールマイトが活動限界の制約を強いられることになったヴィランのことだろう。

 この人結構やばいことに関わってる人っぽいな、修行だけでかなりのものだったがますます恐ろしい人に思えてきた。

 

「まぁそんなとこだ。よし、昼飯も食い終わったとこでお前にこれをやろう」

 

 話を聞きながら弁当を頬張っているうちに気づけば中身は空っぽになっていた。話も一段落しキリのいいところで師匠は1枚の紙をスっと俺の前に置いた。

 

「お、なんすか。もしかしてトレーニングのメニューとか?いやぁ懐かしいな〜千年公からも前にこうやって…………ナニコレ」

 

 渡された紙をピラッと音を立てながら裏返したところで俺はピタリと動きを止める。

 

「え〜……えっと。し、師匠、これは……?」

 

 ぷるぷると腕や口元を震わせゆっくりと師匠の方を向く。

 

「何って見れば分かんだろ……領収書だよ、今食った弁当の。お前宛てにしてある。こっちは昨日もバーで飲んできてんだよ、高級弁当買うような金なんかあるわけねぇだろ」

 

「飯買う金もなくなるってどんだけ飲んでだよアンタ!?っていうか1万2000円ってなんだ2個分多いじゃないっすか!!」

 

 俺宛てにされた領収書を放り投げながら声を荒げる。

 この焼肉弁当は1つ3000円だから2人で6000円、なんで2倍の額請求されてんだよ!

 

「多かねぇよちゃんと人数分だろホラ」

 

「……ウ、ウマイ。ウマイ……」

「…………。」

 師匠がクイッと後ろの小さい机と椅子の方を指さす。するとついさっきまで誰もいなかったはずのそこに人が現れた。

 

「うおっ、誰かいる!?ってあーそうか、ハコブネさんと………誰だもう一人!!」

 

 現れたのはボソボソと声を漏らしながら弁当にがっつく方舟を創った張本人のハコブネさん、ともう1人翅を広げた蝶のような仮面で口元以外を覆った黒いドレスを身にまとった女性。こんな人がいたなんて全く気づかなかった。いつからいたんだろう、最初からか?

 

「師匠、あの人もサイドキックですか?」

 

「あぁそうだ、お前は気づかなかったようだが最初からいた。

 名はマリア。こいつの歌声は相手の脳を直接支配して相手の視覚をだましたり動きを止めることができる。

 修行中に俺が突然姿を現しているように感じていたのはマリアの歌でお前には見えない様にさせていたからだ。解除させるのをすっかり忘れていた」

 

「これまた強力な個性をお持ちで……そりゃ気づけないワケだ」

 

「まぁだが他に誰かいるのではと疑うことすらしなかったのはまだまだ甘いな、だからお前は訳も分からずやられ続けた。

 ひたすら弾丸から逃げ続けろとは言ったが相手への注意を背けろとまでは言ってなかったんだがなぁ。実際の戦闘では相手へ注意を向けないなんてことしたら命に関わるぜ?少しくらいは弾だけでなく俺自体にも警戒しといてほしかったな」

 

「マジかぁそんなこと考える余裕全然なかった……」

 

 無茶なこと言ってるように思えるが師匠の言ってることは正しいだろう。それができないほど今の俺はまだまだ弱いってことだ。

 次々にプロとの差を見せつけられて悔しさが滲んでくる、が同時にこうやって自分の弱さなんかを知ることができてもっとやらなきゃならないことがあるのだとやる気も出てきた。

 このまま師匠にやられまくって強くなっていこう!

 

 

 

 ……やられる気満々とかドMか俺は。いや違うけど。

 

 

「まっ、そこ差し引いても新技をそれなりに使えるようになれって課題をお前はほんとに達成しちまったワケだし、とりあえず合格と言ったのはそういう理由だ。

 昼メシも食ったし修行を再開するぞ。ここからは少しレベルアップしてお前にもう一つ、新たな技を習得してもらう。さらにハードな修行になるが乗り越えそして見せてみろ。

 Plus ultraってやつをな?それがお前らの売り文句なんだろ?」

 

 またも挑戦的な笑みを浮かべる師匠にはぁ、とため息をついて俺は。

 

「へへっ、見せてやりますよこれでもかっていうくらいにね!よろしくお願いします!師匠!!」

 

 負けじと挑戦的な笑みを浮かべそう言い返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちなみに師匠、弁当代はマジで俺が払うんすか?」

「…………さて、こっからは大変だからな。気合い入れてくぞー」

 

「ちくしょう!あの人本気で払う気ねぇのかよ!助けてセンえもん……」

 

 お昼の弁当代1万2000円は千年公が払ってくれることになったのでした!

 めでたしめでたし……??




読んでいただきありがとうございました!

Dグレ原作のようにこの人が師匠ということで理不尽な請求は避けては通れないかなと思いこのようなお話になりました(^^;

弾板(バウンド)』はワートリのグラスホッパーみたいなそんなイメージといえば少しは分かりやすいですかね(^_^;)

最近忙しくてなかなか時間が取れず1ヶ月以上も更新が止まってしまいました。8月になれば時間が取れると思うのでもう少し更新ペースが上がると思います。不定期更新で申し訳ない。
少しずつでも頑張ります。
お気に入りや感想、評価などもよろしければお手柔らかにお願いします(^^;

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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