『選択』 〜ヒーローになるための〜   作:りんごあめ

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第26話よろしくお願いします。


第26話 プロヒーローをたずねて・ただ一人立ち向かう者

 夜の賑わい見せていた街から一変、炎燃え盛る戦場へと変わり果ててしまった保須市。その中でも特に被害が甚大な場所で多くのヒーローが集まりたった一人の敵相手に苦戦を強いられていた。

 

「「クソっ、馬鹿力め……ッ!」」

 

 その黒く大きな巨体から放たれる一撃を警戒し遠距離から攻撃を仕掛けるが、その敵はピクリとも動じない。

 

「一斉に飛びかかれッッ!!」

 

 一人のヒーローの合図で四方からその敵めがけて大勢のヒーローが突進し拘束を試みる。が敵はその巨体から放たれる人間離れしたパワーで地面を粉砕し、大きな土煙を起こしその巨体を煙に巻く。

 

「くっ、姿が見えない……」

 

「ヤツはどこだッ!?」

 

 後方支援に徹していたヒーローが焦り辺りを見回したその時、それは現れた。

 つい数秒前まで自分達が取り囲む中心にいたはずのそれが今この瞬間、自分達の背後から現れその巨大な腕を仲間へと振り上げていた。

 

「ッッッ、逃げろ!!!」

「えっ、ぁ…………」

 

 自分が狙われている、そのヒーローがそれに気づいたその時には既にその引き絞られた腕は撃ち放たれようとしていた。

 ダメだ、避けられない。この場にいた誰もがそう思いながらそれを見ることしかできないでいるその瞬間 ──

 

 

 

 

 

 

 

「ん……なんだ何の音だ?」

「これは…讃美歌……?」

 

 こんな戦場には似合わない女性の力強いような、圧迫感のあるような、荘厳な教会などで聞こえてきそうな讃美歌が響き渡った。

 

「個性限定解放『脳傀儡(カルテ・ガルデ)』ッッ!!」

 

「ッッッッッッ!!!!」

 

 その歌声とほぼ同時に男の声が響くと、先程まで大暴れしていた敵が突然不気味な呻き声を上げながらその場でピタリと静止する。

 

 それから僅か数秒後、

 

「ギイイィィイイイッ!?!?」

 

 どこからともなく現れた銃弾が敵の身体へ衝突し、女性の肉体をかたどったような十字架の紋章をその身体に刻み大きく後ろに吹き飛ばした。

 

「なんだ!一体何が起こったんだ!?」

「銃の発砲音も聞えたけど一体誰かが!」

「発砲?んじゃあスナイプか!?」

 

 

 

「けっ、敵一人にこれだけ頭数揃えてこのザマとは。日本のヒーローも随分とレベルが下がったなァ」

 

 目の前で起こる光景に理解が追いつかず騒がしくなるヒーロー達を鼻で笑いながら、手に持つ銃の銃口にフッと息を吹きかけ一人の男が堂々と歩いて現れた。

 

「なるほど色は黒か、そんで再生持ちってことは雄英ん時と同等の脳無ってことだ。ちょうどいい、実験サンプルにしてやる……!」

 

 立ち上がり骨折しひん曲がった腕をゴキゴキ鳴らし元通りにする脳無を見ながら、肩まで届く赤い長髪をとかしながら一人笑い鋭い目付きで銃口を前に向ける。

 

「裁きの時間だ『断罪者(ジャッジメント)』!!」

 

 戦場と化した保須に悪魔(ヒーロー)が舞い降りた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ホラホラどうした、もうお終いか?」

 

「マジかよ、俺達が束になってもビクともしなかったのに……!」

「なんなんだあの人、強すぎる……っ!」

 

 グリップから銃身の手前まではリボルバー、銃身はオートマチックという奇抜な形状をした全体を穢れのない真白に染め、至る所に金の十字架の装飾が施された銃。その引き金を引いて脳無を圧倒するその男にヒーロー達は唖然としその光景をただ見つめているばかりになっていた。

 

「な、なぁ!俺達にできることあったら言ってくれ!後方支援でもなんでも──」

「いらん」

 

「……へ?」

 

「お前らなんぞいたところでジャマになるだけだ。巻き添えくらいたくなかったらとっとと失せろ」

 

「えぇ……」

 

 こちらを見ることもなく刺々しい赤髪の男の言葉に意を決して声をかけたヒーローはポカンと口を開け引き下がってしまう。本来なら抗議の一つくらいするべきであろう言葉なのだがいかんせん返す言葉が見つからず、素直にそれに従いヒーロー達は皆彼から離れた場所へと後退した。

 

「ふんっ、大人しく引き下がるとは頼りないヒーロー達だな。まぁいいか、とりあえず今は……」

 

 そんなヒーロー達を横目でチラリと見て鼻で笑い、目の前の敵へ向き直る。

 

「俺の弾丸をあれだけくらって無事とはな、あの野郎かなり優秀な『再生』を手に入れてやがるな」

 

 4、5発撃ったところで損傷した部位をすぐに再生させ立ち上がる脳無の姿に、ここにはいない誰かに悪態をつく。そうして男はため息混じりに銃を握り直す。

 

「サンプルにするなら生け捕りがベストだが、警察が来る前に回収したいし仕方ねぇ。頭をぶち抜いて活動を停止させる、滅罪レベル3倍いっとくか」

 

 左手で銃口からセーフティーレバーの辺りまでを撫で、銃の後ろまで何かをつまむような形でその手を引く。途端に青白い光が銃の周りを覆うように現れ気づけばそれは男の身長を上回るほどの弓の姿を成していた。

 

断罪者(ジャッジメント)装填……射抜け、『原罪の矢』!!」

 

 そう言い放ち引き絞った左指に現れた一筋の青白い光から手を離せば、構えた銃もとい弓から青く輝く光線が発射される。

 それはふらつきながら立ち上がったばかりの脳無の剥き出しの脳を真っ直ぐ、容赦なく貫いた。

 

 その矢に頭を穿たれた脳無は僅かな硬直の後、弱々しい鳴き声を上げバタンと仰向けに倒れついに立ち上がることはなかった。

 

 それを静かに見届けた男はポケットから取り出したタバコに火を付け、吸い込んだ煙をゆっくり吐き出しながら──

 

「……アーメン」

 

 吹き荒れる爆風に長い赤髪をなびかせただ一言、そう吐き捨てた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「さてと……ハコブネ、ゲートを開けろ。コイツを方舟の中にブチ込む」

 

 倒れた脳無を見下ろしながら男がそう誰かに呼びかけると、突然多角形の集合体が現れその中から一人の男が現れる。彼はこくん、と頷くと脳無の足をズルズル引きずり再び多角形の中へと戻っていく。彼が消えた数秒後にはパリンとガラスの割れるような音を立てそれは跡形もなく消えてしまった。

 

 

 

「む、応援を要請されここに来たのだがヴィランはどうした」

 

「おっ、これはこれはNo.2ヒーローじゃないか。来るのが遅いからもう終わっちまったぜ」

 

「むっ!その腹ただしい態度と顔、久しぶりに見るな……!!」

 

「別にお前のような加齢臭漂うむさ苦しい男に嫌われていようがどうでもいい。俺は美しい女達に好かれてさえいればそれで十分だからなァ?」

 

「フン!相変わらずヒーローとは思えんふざけた男だ。キサマとだけは組みたくないものだジャッジメントよ……!」

 

「そりゃオールマイトの間違いだろ?なんだとうとうボケ始めたか、いい病院紹介してやろうか?」

 

「ッッッ!!!」

 

 要請を受け来たというNo.2ヒーロー・エンデヴァーとの突然の口喧嘩により現場は緊張感漂うピリついた空気になる。

 

「お前というヤツは──」

「キサマというヤツは ──」

 

 両者が口を開いたその直後、

 

 

「危ないっっ!!!」

 

「あっ……」

「むっ……」

 

 どこか現れたのか、翼の生えた脳無が飛来し近くにいたヒーローを捕え飛びさろうとしていた。

 

「キサマとのくだらん問答はこの辺にしておいてやる。ヴィランに有効な個性のない者は江向通り4丁目へ応援に行ってくれ」

 

 その姿を見たエンデヴァーは小さく息を吐いて振り返り、そうヒーロー達へ指示を出し走り出す。

 

 

 

「ふんっっ!速い、外したか」

 

「おいおいどこ狙ってんだよ」

「キサマ何故ついて来るッッ!!」

 

 飛び去るヴィランへ放った火球を見上げながら自分と並走している男にエンデヴァーは声を荒げ叫ぶ。しかしそんなことを意に介さず男は鼻で笑う。

 

「そりゃ俺もあの敵に用があるからな」

 

「チッ、勝手にしろ!俺は俺であのヴィランを捕らえる」

 

 そう言ったエンデヴァーは加速し近くのビルの壁を蹴り上げ空中へ飛ぶと、放出する炎を槍型にしそれを脳無目掛けて投げ飛ばした。

 

 槍は見事に命中し脳無は呻き、ふらつきながら捕えていたヒーローを手放す。すかさずそのヒーローを抱きかかえ着地し、飛び去る脳無は逃がすかと睨みつける。

 

「お勤めご苦労サン。後は俺に任せて引っ込んでな?」

 

「なっ!キサマわざと俺に救出を任せたな!?」

 

「あぁそうだなァ迅速な対応流石はNo.2サマだ……じゃっ!」

 

 早口に巻くし立て、後ろで響く怒号を無視し男は脳無を見ながら呟く。

 

「白の脳無なら『再生』持ちじゃないかもな、羽を捥ぐ程度にシバいて生け捕りにしてやる。そしてアイツを捕まえたら今度は定時連絡を忘れほっつき歩いてるあの阿呆だ。待ってろよ、脳無とバカ弟子ッッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「ヘクチッ!!」

 

「ノア君大丈夫?」

 

「あ〜急にくしゃみ出たわ、なんか噂でもされてんのかな」

「なんだ今のくしゃみ、女子かよ」

 

「うるへーな、こちとら『意外と繊細で可愛いノア君』で通ってんだ。轟クンよ、俺は昔からこういう可愛いくしゃみしかしねぇぜ」

 

「………こういうのがギャップ萌えってヤツか?」

 

「ううん多分ちが!いやギャップ萌えか……!?ん〜でもそんな可愛い言葉ノア君に使うのはなんかなぁ」

「よぉ〜しお前ら立ちやがれ、ぶっ飛ばすぞぉ第2ラウンド始めんぞぉ」

「俺なんかヘンなこと言ったか?」

 

 ただ俺がくしゃみをしただけだというのに何故だが失礼なことを言ってくるデックンを、ついでに轟もシバこうと俺はブンブン腕を回す。

 デックンにはともかく、特に理由のない暴力が轟を襲う。まったく酷い世の中になったものだ。これはもう然るべき所に訴えるべきだと思う!

 

 

 マジで何言ってんだろう俺。疲れてんなぁ……。

 

「ははっ、すごいな高校生。あんなことがあったのに全然元気だ」

 

「いやぁ元気なのはノア君だけですよ。すみませんネイティブさん、あなたも怪我してるのにおぶっていただいて……」

 

「足怪我してるんだろ?これくらいはさせてくれ」

 

「あ……ありがとうございます」

 

「こっちのセリフさ。君達がいなきゃとっくに死んでただろうしさ」

 

 動けるようになったヒーロー、ネイティブさんに足を負傷したデックンをおぶってもらい俺達は路地裏を後にしようとしていた。

 

 4人で力を合わせなんとかヒーロー殺しを倒した後。近くにあるゴミ捨てをまさぐり偶然入っていたロープでひとまずヤツを拘束した。ちなみにゴミ捨てをまさぐったのはジャンケンで負けた俺である。こういう時に限ってジャンケンに負けるのほんとやめてほしい。

 

 轟と2人で縛ったヒーロー殺しをズルズル引きずりようやく大通りに出る。いままで狭苦しい場所で息も詰まるような戦いをしていたこともあり、開放感にほっと胸を撫で下ろした。

 

「な、何故お前がここに!?」

 

「へっ、あっ!グラントリ──!?」

 

 大通りへ出た矢先、デックンがコスチューム着た爺さんに顔面を蹴られた。突然の出来事に皆口を開け固まる。なんだこのちっちゃい爺さん。

 

「……緑谷、誰だこの人」

 

「僕の職場体験の担当ヒーローのグラントリノ……でもなんでここに」

 

「へぇ、この人があの……」

 

 このちっちゃい爺さんがオールマイトが震えて恐れる先生か。ちっちゃいけどなんか貫禄あるな、師匠とはまた違うベテラン臭がする。

 

「いきなりここへ行けと言われてな、まぁよう分からんがひとまず無事ならよかった」

 

 グラントリノに謝りシュンとするデックンを見ているとわらわらとヒーロー達が駆け寄ってきた。話を聞くにグラントリノと同じように応援要請を受けここに来たらしい。

 俺達の姿とヒーロー殺しを見たプロ達は驚いた様子を見せながらもすぐに警察や救急車の要請など事後処理を始めてくれた。

 

 プロ達に詳しい事情を聞かれそれに答えていると側に来た飯田が深々と頭を下げた。

 

「僕のせいで傷をおわせた……本当にっ、すまなかったッ!怒りで何も、見えなく……なっていた」

 

「僕達もごめんね。君があんなに思い詰めたのに全然見えてなかった、きっと大丈夫だろうって勝手に思い込んで……友達なのに」

 

 目に涙を浮かべ声を震わせる飯田に、今度はデックンが謝罪の言葉を述べた。デックンの言う通り俺達は勝手に大丈夫だと決めつけて上辺だけの言葉を並べていた。実際俺も飯田が一人でいなくなったという話を聞くまでなんとかなるだろうと楽観視していた。後の祭りだがもっと飯田に寄り添ってやれていたらなんて悔やんでいる。

 ダチを救けるだとか偉そうに言ってはいたがそれができていなかった自分が少し腹ただしいくらいだ。

 

 

 

 今回はお互いミスったって感じだったけど、きっとこれからは大丈夫だろう。一度犯した間違いを繰り返すようなやつはここには多分いない。明日からはきっと上手く──

 

「伏せろっっ!!!」

 

 

「っ、あ………デックン!!」

 

 あまりに突然のことに誰も反応できなかった。ヴィランも捕らえ警察や救急への連絡も済ませ、後は彼らの到着を待つだけという状況で気が緩んでいた。

 そんな俺達のもとに翼の生えたヴィラン……いや、脳無が現れデックンを脚で掴み連れ去ってしまった。

 

「血が……アイツやられて逃げてきたのか!」

 

 脳無の血が飛び散ったのを見て、それを頬に浴びたヒーローが眉をひそめる。

 

「いかん、あまり上空に行かれちゃ俺の個性でも届かん……!」

「なら俺行きます!!俺ならもしかしたら追いつけるかもしれない!」

 

「君は怪我人だ!それに学生なんだ、プロに任せて下がってなさい!」

「でもっ!!」

 

 跳び出そうするがプロが慌てて身体を捕まれ止められる。確かに刺された腕は痛むし疲労で身体は重いがそんなこと言ってられるか。ダチが攫われようとしてんだ、黙って見てるなんてできるわけない。こうなりゃ力作りで押し退けて行くしか……!

 

「ハァァ!」

「んがァァァ……!?」

 

 その場にいた誰もが動きを止めその後ろ姿を見るだけになっていたなか、唯一動いた人物がいた。

 

「偽物が蔓延るこの社会も、いたずらに力を振り撒く犯罪者も、粛清対象だァ……!!」

 

 それはこの中で絶対に動くことのないと思われていた人物。戦闘による身体の負傷に縄で拘束されていたはずのヒーロー殺しが、ヒーローの頬についた血を舐め、どこに隠し持っていたのか小さなナイフで縄を切り疾走していた。俺達が気づく頃には、落下してくる脳無の頭を串刺しにして地面へと叩きつけていた。

 

 

 

 

「ったく脳無を追って来てみりゃあ、また随分と騒がしくなってんじゃねぇか」

 

 予想外の出来事に皆が驚愕し顔を強ばらせ、ヒーロー達はとりあえずと構え戦闘態勢をとるなか、突然聞こえてきた声の主の方へ振り返り俺は思わず目を丸くし声を裏返す。

 

「えっ、なんでこんなとこにいるんスか……師匠!」

 

「ん……なんだバカ弟子じゃねぇか。お前こそこんなとこで何してやがんだ」

 

 何故かはわからんがうちの師匠がいつも通りの格好に、白くてやたらと目立つ銃を手に持ち現れた。

 

「俺は言われた通りヴィラン退治ですよ!そういう師匠こそ何してんですかまた飲み歩いてたんスか」

 

「貴様俺をただの飲んだくれだと思ってんのか、仕事に決まってんだろ。こっちに飛んでった脳無を生け捕りにって……あァ!?死んでんじゃねえか!俺の貴重な実験サンプルを殺しやがったのはそこのヒーロー殺しか?ったく酷でぇことしやがって」

 

 ぶつくさと舌打ちをして師匠がヒーロー殺しを睨んでいると、グラントリノがハッとしたような顔をする。

 

「うん?ジャッジメントじゃねぇか!なんだっておめェさんこんなとこに」

 

「アンタこそまだヒーローやってんのか、背ェ縮みすぎて誰だか分からなかったぜ?このクソジジイ」

 

「へっ、相変わらず口の利き方のなってねぇヤツだ。おめェは初めて会った頃からまだちっとも老けちゃいねぇな、歳取ってねェのかこのクソガキ」

 

 現れた師匠にグラントリノがハッと目を丸くしたかと思った矢先、突然口喧嘩が始まった。なんてこと言ってんだよ師匠、めちゃくちゃ失礼なこと言ってるじゃないか。見た目的に師匠のほうが歳下だとは思うんだが、ちっとも老けていないってのはちょっと気になるな。まるでうちの千年公みたいだ、知り合いだって言ってたし何か関係あるのだろうか。

 

 

「なぜ一固まりで突っ立ている!」

 

 師匠が来たばかりだというのに今度はNO.2ヒーローのエンデヴァーが現れた。前から思っていたが身体中から炎をメラメラ吹かしているけどあれ熱くないんかなぁ。見てるぶんには暑苦しくて適わんわ……。

 

「…ハァ………エンデヴァー……!!」

 

 脳無を串刺しにして以来ピクリとも動かなかったヒーロー殺しが恨めしそうな声を上げたことで場の空気は凍り、緊迫した雰囲気に包まれる。

 

 

「ふんっ、ヒーロー殺し……ッ!」

「待て待て、そんな焦んなよNO.2」

 

 足を一歩踏み出したヒーロー殺しを迎え撃とうと身体を燃やすエンデヴァーに師匠が近づいてそれを止める。そのままポケットからタバコを取りだしその先っぽをエンデヴァーの身体から溢れる炎へ近づけ火をつけて吸いはじめた。

……エンデヴァーをライター代わりにする人なんて世界中探しても師匠だけだろう、ほんと何してんだあの人。

 

「なぜ……って貴様ッ!俺をライター代わりに使うなァ!!」

 

 ほらやっぱり怒られた。まぁ当の本人は何食わぬ顔でヒーロー殺しの方を見ているけれど。

 

「偽物ッッ………正さねば!!誰かが血に染まらねば!…ハァ……ヒーローを取り戻さねば!!来い、来てみろ偽物共ォォッッ!!!」

 

 身につけていたマスクは外れ、剥き出しになったその顔と放つ言葉に全身から血の気が引くような悪寒が走り抜け、身体はほとんど動かなくなっていた。それは俺だけではないようで轟達も、ヒーロー達も、師匠でさえも目を見開きヒーロー殺しに気圧されていた。

 

 それほどまでに彼の放つ気迫……狂気ともいえるソレにこの場にいる誰もがただ彼を見ることしかできなくなっていた。

 

 

 

「俺を殺していいのは本物のヒーロー……オールマイトだけだァァァァ!!!!!」

 

 

 

 鬼気迫る咆哮と共に振り上げたナイフを動かそうとしたその時、ヒーロー殺しの足が地から離れ後ろに吹き飛び、ドサッと力なく仰向けに倒れた。

 

 その姿にごくりと溜まっていた唾をゆっくり呑み込み振り返ると、そこには咥えていたはずのタバコをポロリと落として息を吐きながら胸の高さまで掲げていた腕をそっと降ろした師匠の姿が。

 

「ったく、いつの時代も強い信念ってのを持っている奴が一番厄介だ」

 

 その瞬間俺達に突き刺さっていた気迫は消え去り、俺は自然と脚から崩れ落ちた。

 

 

 

 

 後から聞いたことだがこの時ヒーロー殺しは折れた肋骨が肺に刺さっており、全身に火傷を負っていたらしい。

 誰も血を舐められてなどいなかった。にも関わらず師匠がヤツを撃ち抜くその瞬間まで、重症を負い一番動けないはずのヒーロー殺しだけが確かに相手に立ち向かうため、動いていた。

 

 プロのヒーローでもなく、ヒーローを志す俺達学生でもなく、ヴィランがだった。

 たった一人のヴィランが……である。

 

 

 

 

 

 この後すぐに警察と救急隊が駆けつけヒーロー殺しは逮捕され、怪我をしていた俺達は病院へと運ばれ入院することになった。

 こうして俺の職場体験は終わりを迎えたのだ。

 




読んでいただきありがとうございました!

師匠にもちゃんとした活躍の場がなくてはと思い、エンデヴァーさんの活躍をぶんどって脳無をシバいていただきました( ˆᴗˆ )
職場体験編は次回で終わりになります。
すぐには更新できないかもしれませんが頑張ります(^^;

お気に入りや感想、評価などもよろしければお手柔らかにお願いします(^^;

次回もよろしくお願いしますm(_ _)m
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