「えーと……結構見たり聞いたりしちゃったのね」
「まぁ、そうですねはい…」
「君はこの前緑谷少年と一緒にヴィランに向かっていた少年だしな、う〜んん!」
オールマイト(?)は何やら悩み唸った、かと思ったらすぐに俺を見た。
「絶対に、何があっても他の人に話さないと約束できるかい?」
「は、はい!約束します」
「よし、この間君の行動に免じて君にも教えよう!まったく見られていたことに気づかなかったなんて…私もまだまだだな。いいかい、これから言うことは絶対に他言無用だからね?」
改めて念をおしてくる。その圧に気圧され俺はブンブン首を縦に振った。
目の前にいるこのガリガリ男はオールマイト本人で間違いなかった。数年前の戦いのケガや手術により皆が知る平和の象徴でいられる時間は今や3時間程しかなく普段はこの姿でいること。
そして自身の個性『ワン・フォー・オール』。
蓄え、聖火の如く受け継がれてきた力を他者へ譲渡するその個性を先日のヘドロヴィランの件から可能性を見出し後継者としてデックンを選んだこと。その器に見合う身体にするための特訓をしていたこと。
…オールマイトが話してくれたことは大雑把に言えばこんなとこか。いろいろと驚くことが多くてポカーンとしているとオールマイトが俺の顔の前でひらひらと手を振った。
「おーい、とにかく何度も言うけどいま話した事はくれぐれも喋っちゃいけないよ。いいね?」
「…はい、むしろそんな大事なこと話させちゃってすいませんって感じです」
「いやいいんだ。見られちゃったし誤魔化すのも無理があるだろうしね。それより私からも1つ聞きたいんだが、どうしてこんな時間にここに?」
「俺も特訓ですかね……千年公、じゃなくてうちのじいさんがメニュー作ってくれたんすよ、雄英合格のための」
「へ〜!君も雄英志望なのか」
「この海浜公園なら人もあんまいないし人目も気にしなくて済むだろうって。あと、人目につきにくいし個性を使う練習もしたらどうだと…」
「なるほど……それでここに来たら私達がいたという訳か。公共の場で資格なしに個性を使ったらいけないぞ?…せっかくだから君の個性どんなのか聞いてもいいかい?」
「え、まぁいいですけど…」
「あ、あの……僕も見ていいですか……?」
俺とオールマイトが話している間も廃材を運び走り続けていたデックンがぜぇぜぇと息を切らしながらこちらに来た。
「いいよ、少し休憩にしよう。でも緑谷少年は彼の個性知ってるんだろ?」
「はい、たくさんの人を助けられるすごくいい個性だと思います!」
……おい。
オールマイトに見られるってだけで結構緊張するのにキラキラと羨望の眼差しでそんなこと言うもんだから余計にハードルが上げられちまったじゃねぇか。
「俺の個性『選択』っていうんです。簡単に言うと触れる物を選べるってモンでこうやって触れたくないと『拒絶』すると……こんな感じにすり抜けます。他人の個性はすり抜けられないっていう弱点もあるんすけどね」
そう言いながら捨てられていた冷蔵庫に手をつっ込む。俺の腕は冷蔵庫を貫通する。ほう、と興味深そうに頷くオールマイトに「でも、」と話を続ける。
「『拒絶』の仕方が3つほどあるんです。1つは今やった『透過』。『拒絶』し続けておくことで物体をすり抜けられます。で次は……」
砂浜に落ちている石を拾い上げそれを思いきり投げた。投げられた石は突如加速して海へ飛んでいった。
「瞬間的に『拒絶』することで力を加える方向に威力を上乗せして物を弾き飛ばすことができる『反射』。今も石を投げる瞬間だけにこれをやって吹き飛ばしたんです」
ちなみにこれはパンチや蹴りと相性がいい。拳や蹴りが相手に当たった瞬間だけ『拒絶』することでより強いダメージが与えられる。タイミングを合わせられるようにするのには苦労したがこっちは個性にも当てることができる。一瞬だけなら他人の個性にも干渉できるらしい。
「もう1つは母親の個性が混ざっちゃったやつで、衝撃波を出せるんです。威力と反動がデカすぎて腕がぶっ壊れるんで使うことはほぼ無いと思いますけど」
母親の個性『衝撃波』。拒絶することで地面にデカいヒビが入るくらいのを出せるんだが俺とは相性が悪いのか、制御不能ですんごい威力をぶっ放して腕が壊れるという大きすぎるデメリットがあるから2回しか使ったことはない。母親も制御はできたらしいが物騒な個性だからと使ってるところはあんまり見たことなかった。
「とまぁ、こんな感じですかね」
「なるほどなかなか応用が利きそうないい個性だね」
オールマイトは俺の説明を聞きいい個性だと称してくれた。それでつい、聞きたくなった。
「いい個性か……これと似た個性あなたは見たことあるんじゃ?ま、9年前のことなんか覚えてないか」
「ど、どういうことだい?9年前って…」
「
「……そう、だったのか。すまない、私は君の父親を引き離してしまった憎き相手になるのかな……。」
俺の言葉に驚き瞳を揺らすオールマイトはそんな、NO.1ヒーローとは思えぬ後ろ向きなことを言っている。そんな姿に思わず吹き出した。
「ッハハ、確かに父親がいなくなった、もっというと母親も俺を置いていなくなった。家族バラバラになったけどそれをあんたのせいにして恨むつもりはない、全て父親のせいだから。それにむしろ憧れたんですよ父親を倒したあなたの姿を見て。むしろお礼が言いたいくらいです」
「…それはどうして」
「あなたが父親を止めてくれた。そしてヒーローになりたいと、ヒーローとしてこの個性を使いたいと思わせてくれた。オールマイトは俺にとって恩人なんです。いままでもこれからも変わらずに。だから…ありがとうございました」
そう言って昇ってくる朝日を背に思いきり笑顔を見せてやった。
昔から伝えたかったこと。この間会った時はあっという間の出来事だったから伝えることができなかった感謝の気持ち、それを伝えられて憑き物が落ちるようなそんな安堵を感じた。
「そうか…そう言ってもらえると私としても嬉しいよ」
俺の言葉を聞き目を見開きオールマイトは小さく笑みをうかべてくれた。
「さて!しんみりする話なんてもう終わりにしましょう!
オールマイト、1つお願いしたいんだけど俺もこれから一緒にトレーニングしてもいいですか?」
突然の提案にオールマイトは目を丸くする。
「え、私は全然構わないけど緑谷少年はどうかな?」
「僕も大丈夫です!むしろ一緒に頑張る人がいた方が心強いくらいですし!」
「なら決まりだな!2人共これから10ヶ月頑張ろう!」
皆の知るムキムキなオールマイトになりながらそう力強く笑った。
……こんな感じで雄英合格を目指す地獄の10ヶ月が始まった。
早朝から海浜公園でデックンはゴミ掃除、俺は筋トレや砂浜を裸足で走り身体の強化。時にはゴミを担ぎながら近くの公園まで走ったり、海を泳いだりと毎日毎日身体を鍛え続けた。
もちろん勉強方も手を抜かせてもらえず。学校では疲れて居眠りすることでが増えたが家では『合格!』と書かれたお手製のハチマキを巻いた千年公によるスパルタ授業。昔から解けない問題はなかったりいろんな雑学を知っていたり、やたらと博識な千年公により気づけば模試でもA判定を取れるくらいになっていたり。
雨の日も風の日も10ヶ月ほぼ休みなく、ほんとに死ぬんじゃねぇかと思うくらい俺達は努力を続けた。
そんなこんなで雄英受験当日の午前6時。あんな生活を10ヶ月続けたことで俺もデックン見違えるほど体は鍛えられ仕上がっていた。
「いやぁ〜腹筋ってほんとに割れるもんだったんだなぁ」
自分の腹をパンパンと叩きながら呟く。改めて見るとすごいな、ここまで変わると自分でも感動しちゃうわ、よく頑張ったな俺よ。
「うぉおぉおおおおぉお!!」
頭上から雄叫びが響く。頑張ったといったらコッチもかなりのもんだよほんと。
10ヶ月前まではなよなよしてることも相まってひょろっひょろだったデックンは体全体にバランスよく筋肉が付きがっしりとした体つきになっていた。
「お疲れさーん!こりゃきっとオールマイトもびっくりするだろうな〜!」
「うぉぉおおおおあぁああ!」
聞いてねぇなコイツ。
オールマイトに指定されていた区画、そこはもちろんのこと指定外の区画にあったゴミまで塵一つなく完璧に片付けてしまった。そして今はそれを集め積み上げた山の上で人の話も聞かず雄叫びをあげ続けている。
「うおおお!あぁ…ぁ」
「ちょっ、危ねぇ!」
糸の切れた人形のようにぐらりと体が揺れ山の上から落ちる。駆け寄ろうと走りだしだすがその心配はいらず。目にも止まらぬ速さでオールマイトに抱きかかえられそっと砂浜に降ろされた。
「オールマイト…僕、できた、できました……!」
「あぁ!驚かされたよ。エンターテイナーめ!まったく10代ってすばらしい!三神少年もよく頑張った、見違えたな!」
「そりゃどうも、ほんっと我ながらよく頑張りましたよ…」
「ほら見てみろ、10ヶ月前の君達さ!よく頑張ったよ、ほんっっとうに!!」
オールマイトが見せてくるスマホの画面には以前の俺達の姿が。
なるほど、確かにこうやって見てみると全然違うな。俺もデックンもすげえ細い。
興奮冷めやらぬ様子でオールマイトはデックンを見つめ言った。
「ようやく入口の蜃気楼がうっすら見えてきたくらいだが…
確かに器は成した!!」
「おぉ!やったなデックン!」
「なんか、ズルだな僕は……。オールマイトにここまでしてもらえて。恵まれすぎてる……!!」
喜びを噛み締めるように涙を流しながら微笑むデックン。
なにを言ってんだか、お前の頑張りの賜物だろうよ。
そう思ったが敢えて言わずにおいた。まったく、もう少し自分に自信を持ったっていいだろうに。俺も自然と笑みをこぼした。
「ハッハッハ!その泣き虫直さなきゃな!さ、授与式だ。緑谷出久!」
「いいんすか、そんな大事な瞬間に立ち会っちゃって」
「なにを今更、今日まで共に頑張ったんだ、むしろ君には見届けてほしいくらいさ!」
なるほど、そういうことならしっかりと見届けさせてもらうとするか。
「これは受け売りだが最初から運良く受け取った者と認められ譲渡された者では本質が違う。肝に銘じておきな、これは君自身が勝ち取った力だ!」
すげえかっこいいこと言ってるな、まさに授与式って感じだ。と俺が関心しているオールマイトが自分の髪の毛を1本プツッと引っこ抜いた。
いよいよその瞬間が来たらしい。
そういやどうやって譲渡するんだ?そう思っていると引き抜いた毛を差し出し一言。
「食え」
「ヘァッ……?」
……え。
「別にDNAを取り込めればなんでもいいんだけどさ〜!」
「「思ってたのと違いすぎる!!」」
俺達の声がぴったりハモってこだました。いや地味すぎるだろ、もっと派手なもんなのかと思ったら毛食うだけってほんとに受け継げてんのかな……。
「さぁ食え!さぁ!!
「ひいやあああ!!」
デックンの悲鳴が更にこだました……。
同日8時40分。
「な、なんとか間に合ったね」
「おう、とうとう来ちまったなぁ〜」
「ほんとなんでそんなにひょうひょうとしてられるの!?緊張してないの?」
そびえたつのは大きなH型をした校舎、ヒーローを志す者なら憧れずにはいられないであろう超エリート校。雄英高校に俺達は足を踏み入れた。
読んでいただきありがとうございました!
本来ならこんな簡単に秘密を教えないかもしれないですがそこはまぁ、ご容赦ください(^_^;)
他の方のヒロアカ小説読んでると4話でまだ入学試験受けてないのは結構遅いのかなぁなんて思ったり(^^;
展開遅すぎるだろうか……。
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m