「いつまでも雑魚で出来損ないのデクじゃないぞ、かっちゃん!僕は…
頑張れって感じのデクだ!!」
「あっ……!」
爆豪を見据えファイテングポーズをとりそう高らかに叫ぶデックンにハッとする麗日。
そうだ、頑張れって感じで好きだと麗日が言ってたんだっけ。デクというあいつにとって嫌なものでしかなかったその名に前向きな、新しい意味を与えてくれたその一言。2人と別れてからも帰り道で嬉しそうに微笑んでいたのを思い出す。あいつにとって1歩踏みだす大きなきっかけになってたみたいだな。
そっと笑みを浮かべデックン達に背を向ける。
「んじゃ後は任せた〜先行ってるぜ、ほら麗日さっさと行くぞ」
「え、でも1人でなんて……」
心配そうにしている麗日の手をとり駆け出す。後ろからデックンの声が響く。
「2人とも行って!!」
「ほらな?さ、時間もねえし早く行くぞ」
「う、うん。わかった」
俺は1度も振り返ることなく2階へ続く階段へと走った。
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「ほんとに1人で大丈夫だったんかな…」
爆豪の相手をデックンに任せ核の捜索をしている中、麗日が不安そうに呟いた。デックンのことがかなり心配らしい。
「あいつが自分から引き受けたんだ、チームなんだし信じて俺達もやることやろうぜ。デックンなら大丈夫だって」
「相手は爆豪君だよ!?とても1人でも大丈夫な相手じゃないと思うんやけど」
「いや爆豪だからこそ、大丈夫なんだよ」
俺がそう答えると麗日を不思議そうに首を傾げた。
「言ってたろ、どれだけ見たと思ってんだって。昔っから何度も見てきたからこそ動きのクセとかデックンはわかってんだ。逆に俺らが残ってたら足引っ張っることになるだろうしな!敵が爆豪だからこそあいつはやり合うことができてんの」
「そっか…そういうことか。というか、そういうのにすぐ気づいて任せられる三神君もすごいね!」
「俺だって昔から一緒にいるんだし、そういうのはわかっちゃうのさ」
「男の友情ってやつだね!」
「そう、なのかな〜…まぁそういうことにしとくか」
軽く笑みをこぼすしながら歩いていたがさて、と声を潜めて立ち止まる。
「4階にもいなかったし居るとすれば次の階だな……」
4階までの全ての部屋を回り確認したが核も飯田もどこにもいなかった。とすればもう最上階のどこかに居るってことで間違いなさそうだ。
と気を引き締め上へ続く階段へ向かってる途中で麗日が問いかけてきた。
「そういえば三神君壁すり抜けられるんだよね、どうして個性使わなかったん?」
「そりゃ、敵が飯田だからだよ。テキトーに壁すり抜けて核を見つけてもそこには飯田もいる。すり抜けっててあ、見つけたって俺が構える少しの隙でもあいつの脚なら簡単に距離取られたり迎撃されて捕まるだろうなって思ってさ」
おお〜、と納得したように麗日は頷いた。それを横目に俺は話を続ける。
「だから、飯田や核の位置とか状況を把握したうえで作戦立てて攻めないと2人でも勝機は薄いかなって。あいつの脚の機動力はかなり厄介だからな、意図せず鉢合わせになることを避けるためにわざわざ部屋覗いて確認してたってワケ」
「確かにそうだね…うん、わかった!気、引き締めていこう!」
麗日に頷き返しできるだけ音を立てないように階段を上る。
俺達は最上階の5階へ上がり捜索を始めた。
「…み〜っけ。後は連絡入れてデックンが来るの待ってみるかな」
「了解……」
麗日から飯田と核を発見したと合図を送られ合流した。柱の影からそっと様子を見ると飯田が核の前で立ち塞がっていた。
あれだけ核の側にいられちゃあ、やっぱりちょっと意表を突くぐらいじゃ核には触れられそうにもねぇな……。
と、目標を目の前に歯がゆい思いをしていると飯田突然ブツブツと呟きだす。俺達はそーっと聞き耳を立てる。
「…爆豪君はナチュラルに悪いが今回の訓練には的を射ている訳だ。うむ、ならば僕もヴィランに徹するべきなのだ……。これも飯田家の名に恥じぬ立派な人間となるための試練!ヒーローになるために悪に染まる!!」
ちょっと途中から何言ってんのか分からないな……。こいつやっぱ堅物だな、すげー面倒くさそう。
と、苦笑いを浮かべていると飯田が奇妙な言動を始めた。
「俺はぁ〜至極悪いぞぉぉ〜??」
ホントになにいってんだこいつ。
普通そこまでやるか?というか何だよ俺は至極悪いぞって。幼稚園児のヒーローごっこでももっとマシなこと言うぞ多分…。
俺が何とか口に出すのをこらえ困惑の表情を浮かべていると前にいる麗日が思い切り吹き出した。
「〜〜!!真面目やあ」
「ム!来たか麗日君!」
あ〜やっちゃったな…普通に前に出ちゃったし、仕方ねえな。
よう、と軽く手を挙げ麗日に続いて前に出る。
「おっと!三神君もだったか、君達が来ることは爆豪君が飛び出した時点でわかっていたァ!」
俺が出てきたことに一瞬驚いたような素振りを見せながら相変わらず大きな手振りを混じえて言ってくる。
「触れた物を浮かしてしまう個性、触れた物を弾き飛ばすこともできる個性。だから先程!君達対策でこのフロアの物は全て片付けておいたァ!
これで小細工はできない…ぬかったなヒーロー!フハハハハ!!」
悪者っぽく高らかに笑ってる飯田の言うとおり辺りにはそれはもう業者がやったんですかってぐらいに物がなくピッカピカになっていた。飯田のやつ、とことん真面目だよなぁ〜。
「言われてみりゃ確かに物が全ッ然なかったな。なるほど対策はしてあるってワケねぇ〜……ていうか、」
「「サマになってるなあ……。」」
いまの飯田はどこに出しても恥ずかしくない立派なヴィランですね。
『ノア君、麗日さんそっちの状況は!?』
耳につけた無線デックンから通信が入る。片耳に手を当てため息混じりに答える。
「わりぃ、飯田に見つかっちゃったわ」
「今ジリジリと……」
『場所は?』
「5階の真ん中のフロアだな」
『…!ほぼ真上!もうそんなに時間はないしタイムアップは向こうの勝ち……。ここだけは、負けたくない!』
デックンが力強く答える。デックンの言うとおりタイムアップじゃ俺達の負けになる。このままじゃダメだ、なにか行動を起こさないと…!
「…、おいデックンどした?お〜い……取り込み中みたいだな」
デックンの声が聞こえなくなり呼びかけても応答がない、爆豪と交戦中にでもなったか?
「俺らだけでもどうにかやってみるか、さてどうす……る!?」
飯田に向き直り攻撃を仕掛けようかと思った矢先、突然建物全体に大きな衝撃が起こり揺れた。その音は爆弾かなんかが爆発したようなそんな体に響く音…。あの2人一体どんな戦いしてんだよ。
「爆豪君応答しろ、いったい何があったんだ!君がやったのか、おい!」
「三神君チャンスだ、行こう!」
飯田が爆豪に無線をいれている……意識がそっちに向いてるいまならもしかしたら…!
「…オーケー、何もしないワケにもいかねえよな!俺が囮になるから核は任せた!」
少しの希望を胸に同時に駆け出す。
「させないぞ、ヒーロー!!」
それにすぐに察知し飯田もこちらに向かってくる。
麗日の個性のことも既に何ができるか聞いてある、今ならそれを活かせる時だろう。俺は飯田に向かって真っ直ぐ走る。飯田が俺の方に注意を向けたその瞬間、叫ぶ。
「行け、麗日!」
「了解!」
麗日が手を合わせ個性を発動させる。力強く踏み込むとフワリと身体が宙に浮いた。そしてそのまま俺達の頭上を通り核へと手を伸ばす。
短時間なら自分も浮かせられるという彼女の個性。俺が飯田の気を引いてるスキをついて核を回収するって作戦だ、あとは俺が飯田を抑えていれば……
「自身も浮かせられるのか……だが!」
「な…!やっぱ速えぇ……」
もう少しで手が届くというところで飯田は猛スピードで核を回収しあっという間俺達の後ろへ回っていた。
「このスピードにはついてこれないだろう、このまま時間いっぱい粘らせてもうぜェ!グヘヘヘヘ」
あいつの言うとおりあの速さには俺達じゃ追いつけそうにない。やっぱり真っ正面からは無理か……。
「麗日大丈夫か?」
「うん、なんとか……それよりどうしよう、デク君頑張ってるのに!」
このまま核を取れなきゃせっかくのデックンの頑張りが無駄になる。
でも俺達じゃ奪う術がない。くそ、どうすればいいんだ……
なんとか打開策を練ろうとするがいいものは浮かばず、焦る気持ちばかりが募る。そんな中デックンからの通信が再び来た。
『2人とも状況は!?』
「あ〜結構やべぇかも、正面突破は無理だし策も浮かばねえ。万事休すってとこだなぁ」
『……わかった。上手くいくかわかんないけど1つ策なら思いついたよ、最後は2人に任せることになっちゃうんだけど…」
「私達頑張るから!どんなのか教えて!」
『うん、僕が……………』
デックンから手短に作戦を伝えられる。それは俺には思いつきもしなかったとんでもない策だった。やっぱりデックンすげえや。
「ハハハ!またぶっとんだことを思いついたな。いいよそれでいこうぜ」
『うん、窓際の柱に…じゃあまた!』
プツンと通信が途絶える。俺と麗日は頷き合い言われたとおり窓際の柱の側で待機する。
「おいおいどうした!諦めたのかァ?ヒーロー!」
「…………ふっ」
悪役っぽく煽りをいれる飯田に笑みをみせる。首を傾げる飯田に俺は言う。
「いいや?今から仲間がすごいことしてくれるから楽しみに待ってな?」
そしてその時は来た。
『行くぞノア君麗日さん!!』
「はい!」
「待ってましたよ、っと!」
デックンの合図と共に柱へギュッとしがみつく。
直後、凄まじい衝撃と突風が部屋のど真ん中を駆け抜ける。
デックンの作戦、それは階下から天井までぶち抜くほどの大きな穴を開けること。
突然建物が壊れるほどの衝撃が目の前で起こればさすがに誰だって身構える。その隙を俺達が目標を狙う。
「…よし、後は俺達の番だな」
「うん……!飯田君ごめんね!」
その衝撃から壊れ宙に舞う柱を麗日が個性を発動させ両手で掴む。
そして同じように浮かぶ瓦礫を飯田目掛けてフルスイング。飯田のほう目掛けて無数のつぶてが飛んでいく。
「即興必殺!彗星ホームラン!」
「ホームランではなくないかあぁぁああ!!」
腕で顔への直撃を防ごうとする飯田を見て俺は飛びかかる。
「今がチャンス…悪いな飯田!」
飛んでいるつぶての中を『透過』でお構い無しに通りそのまま飯田を蹴飛ばした。
「ぐわっ!三神君か、麗日君の攻撃をすり抜けて……!」
「そういうこと、はい飯田クン確保〜!麗日、核のほう頼んだ」
蹴飛ばしてうつ伏せに倒れた所で飯田の体へテープを巻きつける。その間に麗日が核へ飛びついた。
「回収〜!」
「あぁぁああ!不覚ぅぅぅぅう!!!」
核を回収する麗日を見て飯田の悲痛な叫びが空まで響き渡った。
『ヒーローチーム……WIN〜〜〜!!!!』
オールマイトのアナウンスが轟く。
「わ〜!やったね三神君!!」
「…おう、おつかれ」
喜びの声を上げる麗日とひとまずハイタッチを交わす。ニッコニコの麗日に対し俺はため息をつきながらすっと腰を下ろした。
「あれ、三神君どうしたん?浮かない顔だけど」
「勝てたけどさ、俺はたいしたことできなかったからなぁ。作戦を思いついたのはデックンだし、麗日のおかげで飯田を捕らえて核の回収もできたしさ。もっと俺も頑張んねえとなぁ…って思って」
「そんなことないよ?私1人じゃダメだったかもしれないし三神君がいたから勝てたって私は思う!だからもっと自信持ってこうよ!」
明るい笑顔を見せそう励ましてくる彼女の言葉に自然と俺も笑みをこぼす。まあ、まだまだ力不足であることは間違いないが卑屈になってばかりじゃいられねぇよな。これからもっと強くなればいいだけのことだ。
「そうだな…俺達勝ったわけだしちょっとくらい喜んでもいいか!
あ、そうだ忘れてた。さっきは思いきり蹴飛ばして悪かったな飯田、立てるか?」
「あぁ…敵ながら見事な蹴りだったよ。君達にはしてやられたな」
なぜかまだ倒れたままでいる飯田に手を差し伸べ立ち上がらせる。マスクをしていて顔は見えないがすごい悔しそうにしているのはよく分かる。途中までは勝てると思ってたんだろなぁ。あの奇策がなけりゃきっとそうなっていただろう、これはデックン様様だな。
『みんなお疲れ様、モニタールームに集まってくれ。講評を始めるぞ!』
薄々わかってはいたがデックンは腕を激しく負傷し保健室へと運ばれた。下に降りて担架で運ばれるとこに駆けつけた時はさすがにビビった。まさか両腕を赤黒く変色させてるとは思わなかった。それくらい死力を尽くした戦いをしていたとわかったときは自分の力不足を改めて実感したがそれはぐっと飲み込んだ。反省するのはもちろん大事だが下を向いてばかりもいられない。
「まあでも今戦のベストは飯田少年だけどな!」
え〜マジかぁ……。勝ったの一応俺たちだったんだけどなぁ。
オールマイトの下した評価にほとんどの生徒がざわつく。
「ん〜!さてなぜだろうなぁ〜?分かる人!!」
「はい、オールマイト先生」
オールマイトのわざとらしい問いかけに1人の女子が凛とした声で手を挙げた。確か推薦で入学した八百万、だったかな?……てかすごいコスチュームだな露出度高すぎだろ。
「それは飯田さんが1番状況設定に順応していたからです」
テキトーにまとめると、
爆豪は私怨丸出しの行動。そして屋内での大規模な攻撃、これはデックンに当てはまること。
俺や麗日は途中の気の緩みと最後が乱暴すぎたこと。あれがハリボテだったからできた攻撃だとバッサリ。
俺たちへの対策をして核の争奪をちゃんと考えていた飯田の選択が1番優れていた、ってカンジか……
なるほど反論の余地が一切ないな。
ヒーローチームの勝利は反則のようなものだとまで言われたし…
こうやって言われてみると反省点ばっかりじゃねえか、ちょっとヘコむなぁ…
「まあ、正解だよ!くぅぅう!!」
そう言うオールマイトはピクピクと口元を震わせながら笑顔をつくる。こりゃアレだな、自分で言おうと思ってたことほとんど八百万に言われちゃったんだろうなぁ。
オールマイト、ドンマイ!
それから第2戦、3戦と他のやつらの訓練が行われていった。
俺達のチームほど大ケガや派手な建物の破壊をしでかしたチームはなく、次々と進んでいった。
いろんな個性のやつがいたけどその中でも特にヤバかったのは俺らの後に始まった第2戦の轟焦凍って少年。
開始直後にビル全体を凍らせて仲間を巻き込まず核にダメージも与えずおまけに敵チームの弱体化までして一切の戦闘もなく勝利しちまった。
しかも触れただけでビル全体の氷を溶かしたあたり、凍結だけでなく熱まで使える個性らしい。こいつだけ頭一つ飛び抜けてる、明らかにレベルが違いすぎるな。
「お疲れさん!緑谷少年以外は大きなケガもなし!しかし真剣に取り組んだ。初めての訓練にしちゃみんな上出来だったぜ?私は緑谷少年に講評を聞かせねば。
それじゃみんな教室に……お戻りぃいい!!!」
やたらと早口で捲し立てオールマイトはものすごい勢いで走り去っていく。クラスのやつらはあっという間の出来事に呆気に取られていたが俺はなんとなくその理由を察した。
おそらく制限時間ギリギリだったんだろうな、3時間くらいしかあの姿でいられないってことだしそんな中で教師をやるってオールマイトめちゃくちゃ大変だな…。うっかり本当の姿を見られるなんてことなけりゃいいけど。
制服に着替え教室に戻ってからも午後の授業は行われた。その間、デックンが戻ってくることはなくとうとう最後の授業の終わりを告げるベルがなった。
「なぁみんな!今日の訓練の反省会しないか?」
相澤先生が教室を出た後、赤い髪なやつがそう声を上げた。そしてそれに賛同するようにほとんどの生徒が集まる。まあ俺もデックン戻ってくるまで待ってようと思ってたしちょうどいいか。
「俺も混ぜてもらっていいか?反省会ってやつ」
「おう当たり前だろ!おれぁ切島鋭児郎、よろしくな!いやぁ〜お前らスゲえよ、アツかったぜ!」
でっかい声で近づいてきた切島に俺は苦笑しながらも「そりゃどうも」と返す。次々と人が集まり騒がしくなる中、ガタンと大きく音を立て教室を出ようとするヤツが1人。
「なあ、お前もどうだ?っておい待てよ、爆豪!」
一言も喋らず、一度も顔を上げることもなく切島からの呼びかけを無視して爆豪は教室をスタスタと出ていってしまった。
「おい、お〜い!行っちまったか……」
「いいよほっとけ切島、アイツはこういうみんなでワイワイするようなことするヤツじゃねぇし。誘うだけ無駄だっての」
「そうか、んじゃとりあえず今いるやつらで反省会やろうぜ!」
気を取り直した切島が拳を上げ音頭を取り反省会が始まった。
といっても出た内容はほとんど俺達の戦闘と轟の話がほとんどだった。
壁すり抜けたりできるの便利だしチョーいい個性じゃん!などと芦戸や峰田といった面々から褒められたりもした。
こういうの久しぶりだったから忘れてたけど自分の個性褒められるって嬉しいな、ちょっと恥ずかしくもなって笑いでごまかしたりもしといたけど。それに話してみるとなかなかいいやつばっかりだな、これなら仲良くやってけそうだ。
みんなであーだこーだと盛り上がる中、カラカラ…と控えめにドアが開かれる音がして皆の視線が集まる。ようやく戻ってきたか。
「噂をすればなんとやらだな、おかえり〜デックン」
「お、緑谷来た!おつかれ!何喋ってるかわかんなかったけどアツかったぜ、おめぇ!」
「入試1位の爆豪と互角に渡り合うなんてな!」
「よく避けたよぉ!」
「1戦目であんなのやられたから俺らも力入ったぜ!」
次々に声をかけられ取り囲まれるいまの状況に理解が追いつかずキョロキョロとするデックンに俺は声をかける。
「今日の反省会やってたんだよ。よかったな、おまえベタ褒めされてんだぜ?」
俺がそう言うと「そうだったんだ…」と照れながら笑みをこぼす。
それからしばらくの間和気あいあいとした雰囲気が続いたがデックンあることに気づき声をかけてくる。
「ノア君、その…かっちゃんは?」
「アイツならちょっと前に帰ったぞ?切島とかが止めたんだけどな、黙っていっちまった」
「…!ノア君ごめん、僕行ってくる!」
慌てて飛び出していくデックンに俺はおう、と手を振り見送る。
「あれ?緑谷どうしたの?」
「まあ、ちょっとな。男の因縁ってやつだよ、な?麗日」
「うん、男の因縁です!」
芦戸が怪訝そうに首を傾げるが俺の言葉と麗日の力強い頷きに気圧されそれ以上問い詰められることはなく、それからしばらくして反省会もお開きとなった。
デックンのリュックも持って校舎の入口に座っているとデックンが申し訳なさそうに駆けてきた。よいしょと腰を上げリュックを軽く投げ渡す。
「ほらよ、リュックも持ってきといたぜ」
「わざわざごめんね、ありがと」
「気にすんなって、てかなに話してたんだ?オールマイトもいたみたいだけど」
「爆豪に話しちまったのか!?それってマズいんじゃねえの?個性のことは言わない約束だったろ」
帰り道、歩きながらデックンの返答に思わず声が大きくなる。そりゃちょっと予想外だったわ……。
「うん、オールマイトからも釘刺されたよ…でも、かっちゃんにだけは言わなきゃいけないって思って…。それに!誰から授かったか言ってないし大丈夫だとは思う」
「そ、ならいいけど。というか腕、完全には治してもらえなかったんだな」
「1度の治癒じゃ無理みたいで、明日もまた行かなきゃいけないんだ」
苦笑いでいるデックンに対し俺はため息をつく。
「今日の訓練ありがとな…そんでごめん。お前だけに負担かける戦い方しちまった」
「そんなことないよ!2人も頑張ってくれたし!それに、個性を使おうって決めたのは自分自身だから…!ノア君が悪いわけじゃない」
俺がそう言うと慌てて首を横に振りきっぱりと否定される。そう言いきったデックンの顔には強い決意の色が見えた。俺は静かに頷きそっと笑みをこぼす。彼は後悔なんてしてないんだ、ならこれ以上俺がとやかく言うのも野暮だよな。
「そっか。とりあえず言えることは俺もデックンもまだまだってことかな、お互い頑張ろうぜ!」
「うん!!」
街が夕日のあたたかい光に照らされるなか、互いに笑顔を見せ拳を差し出しコツンと合わせる。
もっともっと強くなろう、今回の訓練は俺たちが改めてそう誓うスタートラインになった。
読んでいただきありがとうございました!
主人公なのにあまり活躍できてないですよね(^^;これからはもっと上手いこと活躍させられるように頑張ります┏( .-. ┏ ) ┓
次回もよろしくお願いしますm(_ _)m