「祐樹、今週のヤンジャン見た?」
「ああ、『GANTZ・E』だろ? 見た見た!」
学生達が大勢いる、とある高校の朝の休み時間の教室で、鹿島 雪乃と阿野 祐樹が話をしていた。
二人が話しているのは、『GANTZ』という、死んだ筈の人間が謎の黒い球・ガンツに呼び出され、星人という謎の存在と戦う漫画であった。
『GANTZ』自体の連載は数年前に終わっているが、今も時々映画やスピンオフの漫画が掲載されており、二人は『GANTZ』の大ファンであった。
「ガンツに記載された文字さ~読めなくない」
「江戸文字だろあれ? 何だこの文章は!? って思ったよ…」
楽しそうに話している二人であったが、周りの男子達は面白くない表情をしていた。
「またあの二人、『GANTZ』の話してるぜ」
「『GANTZ』ってグロいし、エロ描写とかもあるよな」
「阿野と鹿島さぁ…それが目当てで見てるんじゃね?」
と、周りの男子は悪態をつくが、雪乃と祐樹は聞こえていたが、相手にする事はなかった。それは慣れであった。
このクラスの男子達は、とある理由で雪乃と祐樹を嫌っていた。それは…
「おはよ~、雪乃君、祐樹君」
ガンツの話をしていた二人に話しかける、可愛らしい声が教室に響いた。それはある一人の少女であった。
「天沢さん、おはよう」
雪乃が応えた少女の名前は、天沢 香音。このクラス一の美少女であった。
「お~天沢、おはよ」
祐樹も挨拶をした。
「二人共また『GANTZ』の話をしてたの?」
「そうだよ。今週の『GANTZ・E』の話を…」
「雪乃君が貸してくれた、実写版のDVDを見たけど、戦闘シーンとかカッコいいよね」
香音が興奮した感じで言った。それから三人はGANTZの話で盛り上がった。
「……」
クラスの男子達は恨めしそうに、その風景を眺めていた。先程も言ったが香音はクラス一の美少女であり、クラスの男子達の憧れの的であった。その憧れの存在が、クラスのガンツマニアと仲が良いのが、甚だ面白くなかったのであった。
何気ない日常であるこの風景…しかしこれが最後だとは、雪乃と祐樹はおろか、このクラスの誰もが思っても居なかった。
次の日
「おはよ~祐樹」
「おう、雪乃」
次の日の朝、雪乃は通学途中で祐樹に出会った。
「今日僕の親居ないからさ、家に『GANTZ・O』のDVDでも見に来ない?」
「おっ良いな! じゃあ俺が菓子でも持っていくから」
「OK」
そんな会話をしながら、二人は通学路を歩いていた。その時…
ガァーーーー!!!! ドンッ!!!!!!
凄まじい音と共に、雪乃達に強い衝撃が走り宙を舞った。
「ッッ!!!」
「ガァ!!!」
衝撃による痛みにより、声にならない声を漏らした二人。そしてそのまま地面に叩きつけられる。そして二人が見た光景は、白い車が暴走して走り去っていく光景だった。
「「やば…このまま…ガンツ部屋行きか…」」
それが二人がこの世界で最後に思った事だった。
※ ※
その後、車の運転手は逮捕されたが、今回の事件で不思議な事が起こった。車にはねられたと思った二人の高校生の姿が、何処にも見当たらなかったのであった。