これからも楽しんでもらえるように書こうと思います!
ありがとうございます!
今日は幼稚園の卒園式。
先生や友達に別れを告げて、新しいステージへ向かう大地と吾郎。
そして──
「「いただきます!」」
「はい、どうぞ。2人とも今日は格好良かったわよ!」
茂治と桃子は今日から正式に付き合うことになったのだ。
普段は大地がご飯を作っていたのだが、桃子が来たときは桃子が作ることになっていたので、大地としては大助かりだった。
(もう少しでおとさんが……これはなんとかしないといけないんだけど、今はそれよりも…)
『卒園式を迎えたので、ボーナスポイントを付与します』
このメッセージが急に出てきて、ポイントを貰えたのだ。
何かのタイミングで貰えるポイントなのかな?と予測したが、ポイントを使うのは小学生に上がってからにしようと決めていた。
そして──プロ野球が開幕した。
本田は代打だが、オープン戦から要所できちんと結果を残しており、一定の評価を貰っていた。
帰りの新幹線で明日からの巨仁戦でギブソンが先発すると新聞に書いてあり、茂治は対戦を楽しみにしていた。
◇◇◇◇◇◇
「うわーん! 目に染みるよ!」
「我慢するの! 男の子でしょ!」
吾郎と桃子が一緒にお風呂に入っていた。
大地だけは頑なに桃子とお風呂に入るのを拒否していたが、吾郎は桃子に懐いているため嫌がることは一切しなかった。
(大地君、女性とお風呂に入るのが恥ずかしくなってきたのかな?)
そう思いながら、微笑む桃子。
そんな桃子を見ながら、吾郎は桃子に話しかける。
「ねえ、先生。おとさんといつ結婚するの?」
「え……!?」
茂治が桃子のことを好きだと言っているが、桃子はどうなのかを聞く。
桃子も戸惑いながら、知り合って間もないし茂治も今は大事な時期だからと言うが、
「大地がいるけど……やっぱり寂しいんだよ……。ずっと……ずっと一緒にいてよ先生。俺、先生ならきっとおかさんって呼べるもん……」
そんな吾郎を見て、茂治とのことを考えながら吾郎を抱きしめる桃子。
大地はお風呂場の外でその話を聞いていて、1人で微笑んでいた。
茂治が家に帰ってきて、桃子を家に送っていくと2人で出ていく。
「大地君と吾郎君も来週から小学生ですね」
「ええ」
「ランドセルとか買ってあげました?」
桃子の質問に茂治は忘れていたと頭を掻きながら言っていたが、桃子が明日横浜スタジアムに行く前にデパートで買ってこようかと提案する。
茂治もその提案に対して、お願いをすることにした。
「あ、危ないっスよ、先生」
話していると車が来てしまい、道の端に寄るが、茂治はまだ危ないと桃子の肩を抱き寄せて車が通り過ぎるのを待つ。
桃子は不意に抱き寄せられ、顔を赤くする。
「だ、大丈夫ですか?」
「は……はい」
桃子の肩を離して、声を掛ける茂治。
ふと目が合い顔を赤くするが…茂治はそのまま桃子を抱きしめる。
「先生……結婚してください。再婚で、子供がいて……何の保証もないまだ一軍半のプロ野球選手ですけど……必ず幸せにします」
「……はい」
茂治と桃子は星空の下で口づけを交わすのであった。
◇◇◇◇◇◇
『皆さん、こんばんは。今日は今季初、横浜スタジアムから横浜対巨仁の試合をお送りします』
「あ! 見て先生!! おとさんスタメンだよ、スタメン!」
「本当だ!すごーい!」
(んーー! めじゃーのすごいピッチャーとおとさんの勝負がいっぱい見れるなんてすげーっ!)
(お……おとさん……)
吾郎は興奮して落ち着かない様子だったが、大地は顔を真っ青にして落ち着かない様子であった。
桃子はそんな大地を見て、心配して声を掛ける。
「大地君、大丈夫? 具合悪いの?」
「う、ううん。大丈夫」
今日は巨仁がギブソンの先発で、茂治が野手として公式戦初のスタメンだ。
吾郎はオープン戦でギブソンの凄さが口だけではないことは分かっていたが、絶対に茂治なら打ってくれると信じていた。
1回表、横浜の先発茂野が三者凡退で調子の良さを見せつける。
『ミスターギブソン! 1回の攻撃終わりましたよ!』
通訳の日下部がマウンドに行こうとせずに、帽子を顔に乗せて座っているギブソンに声を掛ける。
『なんだ、もう終わりかよ。しゃーねえな……。ちょっとキャッチボールでもしてくるか……』
ギブソンが日本プロ野球選手を小馬鹿にしたような言い方をして、ゆっくりと歩きながらマウンドに向かって行く。
近年、ほとんどの外国人投手がタイトル争いとは無縁で日本を去っていた。
だからこそジョー・ギブソンという超大物に誰もが注目していたのだ。
(あんなおっきい体で、一体どんな球を投げるんだろ……?)
(……)
吾郎はギブソンの身長198cm、体重105kgの大きい体格から繰り出される投球が想像出来ずにいた。
大地は顔を真っ青にして、祈るように手を合わせていた。
投球練習後、主審のプレイの声と共にギブソンがゆっくりと振りかぶる。
(見やがれ
ギブソンは日本の選手にメジャーとの格の違いを見せ付けるように右足を大きく上げる。
その独特なフォームから凄まじいフォーシームがキャッチャーミットに投げ込まれる。
「ストライーーク!!」
電光掲示板に表示されたスピード計には『158km/h』と書いてあった。
その瞬間、横浜スタジアムがどよめき、大歓声が上がる。
『な、なんだ! なんだこれは! ギブソンいきなり158km/hーー! 来日してから公式戦1球目で井良部の持つ日本記録に並んだぁぁ!!』
「な、何!? 大地君、吾郎君!158km/hってそんなにすごいの!?」
「「……」」
大地と吾郎は違う意味で黙ってしまっていた。
吾郎はあまりの豪速球に。大地はその豪速球が茂治の頭に当たるのを想像して…。
ギブソンはオープン戦に調整で何試合か出てはいたのだが、いつも150km前後のストレートを中心に投げ込んでいたので、この瞬間を目撃した人たちは同じチームメイト、横浜の選手、審判、解説者、観客やファンも驚きで開いた口が塞がらなかった。
しかし驚くのはこれだけではない。ギブソンの2球目──
『ぬ、抜いたーー! 159km/h! なんと日本新記録を更新しました! 日本新記録です!!』
「お、おい……あのスピードガン壊れてるぞ」
「んなわけねーだろ」
茂野と茂治は目の前の光景を信じられず、軽口を叩き合うが、そうでもしないと雰囲気に飲まれてしまいそうになっていたのだ。
このあとギブソンは三者三振で1回の裏を終えたのであった。
150km/h後半のストレートを連発し、150km/hのSFFを投げられると誰も手が出せなくなっていた。
『1回裏の横浜、手も足も出ません! ギブソン、悠々と引き上げます! これがメジャーリーガーなのか! 恐るべし、ジョー・ギブソン!』
実況の声を聞いて、誰もがギブソンの球は打てないと確信していた。
そんな中、吾郎は1人興奮していた。
「すごいよ先生……世界には……世界にはこんなにすごい野球があるんだ!」
『ミスター! ナイスピッチング! あなたはすでに日本の球史に残る最速のボールを投げた男になったんですよ!』
『ふん。日本記録なんか興味ないね。俺の夢はあくまで世界記録の
『ひゃ……101マイル……』
ギブソンの言葉に、通訳の日下部はこの男なら達成出来るかもしれないと思う。
2回になっても両者譲らずだが、横浜が茂治のファインプレーなどもあり0点で抑えており、ギブソンは6者連続三振で余裕を見せていた。
そして3回裏。横浜の攻撃。
「あ! おとさんだ!」
「頑張れー!!」
「……」
今の横浜で打てるのは茂治しかいないと解説も言っており、吾郎と桃子は期待しながら見ていた。
(おとさん……打て!)
(ふん、歯応えのねえ……
吾郎が応援する中、ギブソンは
そして、ギブソンが振りかぶって第1球目──
『打ったーーー!! これは大きい! 入るか!?』
茂治が打った球はライトのポールの右に逸れていき、ファールとなった。
距離的にはホームランでもおかしくなかったが、初球であそこまで飛ばした茂治に会場全体で期待が高まる。
「おっしーーい!!!」
「すっげえ! あのオヤジ155km/hを一振りで合わせやがった!!」
(ほお……この俺のファストボールをあそこまで飛ばすやつが
(来い、ギブソン! 俺はストレートにはめっぽう強いぜ!)
茂治とギブソンはお互いに笑い合いながら2球目を迎える。
第2球目、158km/hのフォーシームを打つがキャッチャー後方に飛んでいきファール。
タイミングは合ってきているがツーストライクと追い込まれ、狙い球が絞れなくなった茂治。
(次は……落ちる球か!? それともチェンジアップか!?)
ギブソンの第3球目。低めにボールが投げ込まれるが、茂治は手が出せずに見送る。
「ちょ、直球!?」
「ボール!」
(……そうか! やつにはメジャーのプライドがある! 自慢の速球をファールにされたら、尚更その速球で俺をねじ伏せるつもりだ! よし、それなら……!)
ワンボール、ツーストライクからの第4球。
インコースに放たれたフォーシームを茂治がバットを振り切る。
『打ったーーーー!!!』
打ったと思ったが、ボールはギブソンのグローブに収まり、ピッチャーフライとなる。
「ああ〜!」
「何よぉ!キザな捕り方しちゃってさぁーー!」
「……」
茂治はバットを折られてしまい、悔しそうな顔をしている。
観客は落胆の声を上げるが、これでギブソンの連続三振がなくなったことと、茂治なら次の打席で打ってくれると期待を持つ。
(ホンダか……初顔合わせで俺のファストボールに全て当ててくるとはな……覚えておこう。その名に恥じない優秀なメイド・イン・ジャパンだ!)
6回裏、各チームともに0点の投手戦となっており、ギブソンは現在ランナーをただの1人も出さないパーフェクトピッチングをしていた。
この回の最初の打者は茂治。吾郎は茂治にホームランを打ってほしいと話したことを思い出していた。
『7番、ファースト本田』
第1球目。アウトコース低めのフォーシームを茂治が見逃し、ワンストライク。
(あくまでストレート勝負か! ……望むところだ!)
2球目、3球目、4球目とファールになるが、茂治はボールに当てて食らいついていく。
そして第5球目──キャッチャーはギブソンに変化球のサインを出す。
(落とせギブソン! SFFなら100%三振だ!)
(バカ野郎が! ファストボールに強いやつは、そのファストボールでねじ伏せる! それが俺のベースボールだ!!)
ギブソンの渾身のフォーシームがインコースに投げ込まれるが、茂治の思いっきり振ったバットに当たる。
大地と吾郎、桃子はそのボールの行方を追っていく。
ゴン! と大きな音が鳴り、その音が鳴った電光掲示板に全員が注目したとき、全てを悟り、観客の大きな歓声が巻き起こった。
電光掲示板のスピード計には『160km/h』と表示されていた。
『は、は、入ったーーーー!!!!! 音が鳴るまで誰も気付かなかった! そして本田が! 160km/hの豪速球をバックスクリーン最上段にたたき込んだ!』
「や、やったーーー!!!!!」
吾郎は桃子と大地に抱きつく。桃子も喜び、大地は嬉しいながらも複雑な顔をしていた。
(な……なんだとぉぉ!? 俺の……)
茂治がゆっくりとベースを一周している中、ギブソンは後ろを一度も確認することなく、ただ立ち尽くしていた。
その後、ギブソンは動揺しつつもリズムを崩すことなく、後続の打者を三振で抑えて、6回の裏を終えた。
(あの、すごいピッチャーからホームランを打つなんて……やっぱりおとさんはすげー!)
(……さすがおとさんだな。でも……次の打席が……)
吾郎は茂治のことを尊敬し、大地は次の茂治の出番に不安を隠せない。
『日下部、あいつは何者だ!?』
『え? 本田のことですか?』
『なぜやつは7番なんか打ってる……? 俺の
7回裏。2番からの好打順で、ギブソンの初球を石居が意表をつくセーフティーバントで転がす。
三塁手が捕って
下手な英語で三塁手が謝るため、ギブソンをさらにイラつかせる。
その後、進塁打で
外野フライでも1点のケースで、打者がアウトコースのフォーシームを見送り
『今のがボールだとぉ!? このヘボ
コントロールに自信があったギブソンの球をボールと判定されてしまい、どんどんヒートアップする。
(何? 1球ウエストしろだと? 訳のわからんサインを……出すんじゃねーよ!!)
スクイズ狙いを警戒して、キャッチャーが1球外せと指示を出すが、ギブソンは指示を無視してフォーシームを投げ込む。
そのとき、3塁にいた選手が走り出し、打者がバントの構えをする。
『ここで畑山のスクイズだーーー!!! 小フライになったが、ギブソン捕れるかーー!?』
ギブソンは懸命に滑り込んで捕ろうとするが、ギリギリで捕れずボールを逃してしまう。
打者もセーフとなり、なおも
(ス、スクイズだとぉぉ!?
日本のスモールベースボールとメジャーのギャップにギブソンは困惑し、冷静になれない。
次の6番打者も初球からスクイズをして、またまた成功し、2点目が追加される。
そして────
『7番、ファースト本田』
『さあ
「いけー! おとさーーん! もうメジャーなんて怖くないぞーー!!」
「……ダメだ」
「え……?」
吾郎が叫んだ横で大地が否定の声を上げる。
観客は大歓声で本田コールが舞い上がる。大リーガーであるジョー・ギブソンに対して日本のプレーが通じると分かり、興奮が止まらないのだ。
ギブソンは周りの声が聞こえているのか聞こえていないのか分からないが、明らかに動揺していた。
そんな中、投げたギブソンの第1球目が────
「ダメだ!!! 避けて!!! おとさん!!!!!」
──────茂治の頭に直撃したのだった。
『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/
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