「吾郎、起きなさい! もう10時よ!」
「起きないとリトルの練習、俺1人で行っちゃうからな!」
「ん……? あ、そうだった! 今起きるよ!」
吾郎は急いで準備をして、茂治と千秋の遺影に手を合わせる。
そして、朝食時に昨日いじめにあっている小森の件について桃子に報告する。
「やだ……四年生でもうそんないじめがあるの……?」
「そうだね。大地と一緒に助けたんだけど、大地ってば先生にまで喧嘩売っちゃうからびっくりしたよ」
「え……! 大地、そんなことしてたの!?」
吾郎が一部分だけしか話さないので、きちんと桃子に説明する。
それでも担任の先生には敬意を持って接しなさいと叱られてしまう。
(大地はたまに突拍子もないことをするわね……。吾郎以上に心配な時もあるわ)
桃子が心の中で不安に思っていると、テレビで海外のニュースがやっていた。
メジャーリーグは日本のプロ野球よりも一足先に開幕したという内容だった。
『ミッキーズ対ガンズの開幕戦。2年前まで日本で大活躍していたジョー・ギブソン投手が先発。
なんと──いきなりノーヒットノーランで今季メジャー初勝利を飾りました』
ギブソンは茂治の事故の後、半年の契約のところをもう半年間延ばし、1年間で24勝1敗という輝かしい成績でアメリカに戻っていった。
アメリカに戻ってからもパーフェクト2回、ノーヒットノーラン3回と他の追随を許さない成績を叩き出している。
桃子はその様子をテレビで見て、複雑そうな顔をしていた。
「……すごいね、あの人。でもやっぱりこれくらいやってくれなきゃね」
「だな。そんな人からホームランを打ったおとさんは、やっぱりすごい人なんだって分かるからね」
吾郎の言葉に大地も同調する。桃子はそんな2人に「ギブソンを恨んでいないの?」と質問を投げかける。
「もう何年も前の話だしね」
「だな」
「「次は俺らがギブソンからホームランを打ってやるんだよ。おとさんと同じくらいでっかいやつをね!」」
桃子はそんな大地と吾郎を見て、微笑ましく思っていた。
双子なのに性格は違うとよく言われていたが、やはり2人は茂治の息子なのだと実感できていたのだ。
◇◇◇◇◇◇
──三船リトル練習グラウンドにて
「あいたっ!」
「なんだ! そのへっぴり腰は! 下がったら捕れんだろ!」
キャッチャーマスクをつけながらも硬球が怖いのか、ノックの球を下がりながら捕球しようとしたため、グラブではなく腕に当たってしまう少年。
それに対し、ノックをしている監督の安藤は激を飛ばす。
しかしながら、塾があるから帰っていいか確認する子や、練習中にずっと私語をしていたり、
(はぁ……。この覇気のない少年達はなんなんだ……)
今、野球がサッカーの人気の陰に隠れてしまっている影響もあり、三船リトルは定員割れで大会に参加出来ない人数にまで減っていた。
現在練習しているグラウンドも、日曜の午前中以外は三船サッカー少年団の専有となってしまっていた。
このまま
「おっ! やってるやってる! おーい! 俺達も混ぜてくれよー!」
「おい! 吾郎! また勝手に行くなよ!」
土手の階段を駆け足で降りてくる
三船リトルのメンバーに囲まれて、「チームに入っていないよそ者はダメだ」と言われているところに走っていく安藤。
「ま、待て! ……もしかして大地君と吾郎君かい?」
「うん、そうだよ」
「おじさんが一緒にやりたいって言ってたから来ちゃったよ」
「そ、そうか! そうか! あの君達がもう四年生になったのかー!」
喜びのあまり大地と吾郎に抱きつく安藤。
三船リトルのメンバーが大地達は監督の知り合いなのかと質問し、安藤が茂治について熱く語るものの、当時1年生だった子達にとっては茂治は知らない人であり、大地と吾郎もそこら辺は気にしていなかった。
「それよりもすごい人数が少ないけど、どうしたの? 今日は新入団テストの日でレギュラーいないとか?」
「は……ははは。それならいいんだけど……実はこれでほぼ全員なんだよ」
安藤が気落ちしながらも吾郎の質問に答える。現在の三船リトルの人数は5人であり、試合も満足に出来ない状態なのであった。
それに軽く驚く吾郎だったが、それも大人数の子供達と1人の大人が来たことで吹き飛んでしまった。
「さ、沢村さん!? なんですか! まだここはうちの使用時間ですけど」
「どうも安藤さん。……悪いがね今日からここは三船サッカー少年団の専用グラウンドになったんですよ」
一体どういうことだと詰め寄る安藤に、昨日自治会で決まったことだからグラウンドから出ていくように伝える沢村。
大地と吾郎がサッカー少年達を見ると、そこには
人数が揃わない少年野球チームにいつまでもグラウンドを使わせるわけにはいかないと、暗に三船リトルを解散するように言う三船サッカー少年団監督であり、いじめっ子の沢村の父親に対し、吾郎が待ったを掛ける。
「おじさん、今チームは何人いるの?」
「えっ……5人だけど……」
「じゃあ俺と大地を入れて7人か。あと2人ってことだね」
「9人集まれば、またグラウンドを使わせてくれるんだろ?」
吾郎と大地の言葉に沢村監督はダメだと言う。
「ただの寄せ集めで野球ごっこをするのであれば意味がない。少なくとも商店街の野球チームに勝てるくらいの実力があるなら使わせてくれるだろうね」と吾郎達を挑発する。
「本当だな! 9人集めて商店街のチームに勝てばいいんだろ!? やってやるよ!」
「ふん、本気かよ」
「……まぁご自由に」
吾郎が挑発に乗ってしまい、それに対して沢村親子は冷静に返し、その場を去っていく。
三船リトルのメンバーは大人に勝てるわけがないと言うが、吾郎は腹が出た親父達なんて大したことないと強気な発言をする。
「ご、吾郎……お前……知らずにこの話に乗っかったのか……?」
「……え?」
「吾郎君……
「え……!」
◇◇◇◇◇◇
諦め気味の安藤に対し、大地と吾郎は逆にやる気を見せていた。
週明けの朝、登校しながらまずは2人のメンバーを集めるためにどうするかを考える。
「張り紙とかどうかな!? ”デザート1ヶ月分とかプレゼント!”ってやってみるとか!」
「それはあんまり意味ないからやめとけ」
「じゃあどうするのさ!」
吾郎の案を一蹴した大地はどのようにしようか悩んでいた。
(小森は絶対に必要だし、今後のことを考えたら清水もいないとだからね…)
「お、おはよー」
「ん? ああ、小森か! おはよ!」
「おはよう、小森」
「何か悩んでいるようだったみたいだけど、どうしたの?」
小森が登校中に話し掛けてきてくれたので、一緒に行くことになった大地と吾郎。
先週末に起こったことを話して、あと2人メンバーが必要だということを伝える。
「そうだ! 小森って野球やってたこととかある?」
「え……う、うん。小さい時からお父さんとキャッチボールはやってたよ。お父さん、昔横浜マリンスターズの選手だったんだ」
「え! そうなの!?」
大地が小森にさりげなく野球経験があるかを質問すると、父親が横浜の選手で2軍だったがキャッチャーをやっていたことを語る。
吾郎は何も事情を知らないので、とても驚いていた。
自分たちの父親も横浜でピッチャーをやっていたことを話すと、小森は父親に聞いてみると話していた。
「実はさ、今三船リトルって野球チームに入ったんだけど、今俺ら入れて7人しかいなくて……。
このままだとチーム自体が潰れてしまうから、良かったら小森も一緒に野球とかやってくれないかなって思って聞いてみたんだ」
「そうなんだ……。うん! 親に聞いてみないと分からないけど、多分大丈夫だよ! 僕も2人と野球をやってみたい!」
小森が快諾してくれたおかげで残りのメンバーは1人となった。
後日、大地が小森の家に遊びに行った際に、いじめから救ってしかも友達になってくれたのが本田茂治の息子だと知った父親にものすごい気に入られ、父親は小森から「恥ずかしい」と怒られていた。
(よっしゃ。小森は思いがけず上手くいったな。次のメンバーどうするかも考えないとだけど、その前に一応能力のチェックをしておこう)
◇◇◇◇◇◇
【本田大地ステータス】
◇投手基礎能力一覧
球速:100km
コントロール:E
スタミナ:E
変化球:
ナックルカーブ:2
◇野手基礎能力一覧
弾道:2
ミート:E+
パワー:E
走力:E+
肩力:E
守備力:E+
捕球:E+
◇特殊能力
チャンスD+
ケガしにくさC-
送球D+
ムード○
◇◇◇◇◇◇
基礎能力のE-はリトルリーグで通用するかどうかといったレベルである。
Eだとレギュラークラス、E+になれば全国トップクラスの実力となる。
大地は今まで貯めたポイントをほぼ全て使って今の能力にしていた。
(まぁ今後のことも考えてこんな感じにしていくのがいいかな。吾郎がピッチャーをするし、寿也はキャッチャーをするだろうからね。俺はピッチャーをしつつ、
リトルリーグに入るにあたって、自分がどのポジションがいいかを悩んだ結果、ピッチャーとショートの二刀流でやっていくことにした。
あまり聞かないポジション選びだが、吾郎がピッチャーをすることと、MAJORの世界はキャッチャーが充実しているため、センターラインを固められるようにショートを選んだ。
ピッチャーの能力は平均的に上げて、速球よりも”ナックルカーブ”を覚えるためにポイントを使った。
理由はパワプロの世界ではナックルカーブの評判が良かったためだ。
なかなか打ちづらいと当時ネットで調べたときも書いてあったが、吾郎のバッティングセンスでも当てるのが精一杯であった。
野手はミート、走力、守備力、捕球をE+にあげて全国レベルの能力を出せるようにした。
ポジションがショートなので、守備寄りにポイントを振った結果である。
特殊能力に関しては、チャンス、送球をD+に上げた。これらは基礎能力と違って、Dが標準の状態である。
それにあえてムード○を習得している。これは念のためだ。
(それにしても……吾郎はすごいよな。俺が能力を上げるたびにすぐに追いついてくる。……才能は怖いなぁ)
ムード○はあえて付けてます。
『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/
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