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『7人目のソーディアンマスター』
https://syosetu.org/novel/218961/
次の日、学校に到着した大地と吾郎は不思議な光景を目にしていた。
教室の後ろで沢村と取り巻きに囲まれている清水が、自らの身体を抱くようにしながら床に座り込んでいたのだ。
小森は席に座ってはいるが、清水をじっと見ている。
他の男子生徒も顔を赤くしながら清水の方を見ていたので、大地が聞いてみる。
「ねえ、何かあったの?」
「え、えっと……」
「今ね、小森君に宿題をやらせようとしていた沢村君達を清水さんが止めようとして……」
逆上した沢村が取り巻きに清水を取り押さえるように指示をして、全員の前でスカートをめくったとのことだった。
清水はあまりのことに泣きそうになりながら蹲っていて、その直後に大地と吾郎が登校してきたということだった。
(
原作でもあったシーンだったが、前回の件で流石にもうしないと思っていた大地は、清水を傷つけてしまったことに反省をした。
大地が向かおうとしたが、吾郎が先に小森のところへ向かって行った。
「小森、あんな
「誰がクズだと、こらぁ!」
「お前らだろ、クズが」
沢村は吾郎に食ってかかろうとしたところで、大地にもクズ呼ばわりされてたじろぐ。
吾郎1人だけであれば3人でなんとかなるかもしれないが、大地もいるのであれば話は変わってくるからだ。
「清水もだ。もう心配すんな。仲間に手を出すやつは俺らが許さねえ!」
「ああ、吾郎の言う通りだ」
「本田……」
小森と清水は吾郎の言葉に嬉しさで泣きそうな顔になる。
誰も味方をしてくれなかった教室で、ここまで啖呵を切ったのだ。嬉しくないはずがない。
「ああ!? 何勝手なこと言ってんだぁ!? 小森は俺たちの大事な仲間なんだよ! 勝手にお前らの仲間にしてんじゃねーよ! なぁ小森!」
「えっ……」
「素直に答えればいいんだよ。友達は自分で選ぶもんだろ?」
沢村に脅されるようにして仲間を強要される小森に対して、吾郎は優しく「自分で決めろ」と促す。
小森は少し考えて「僕は大地君や吾郎君達とも友達でいたい」と素直に話す。
その言葉を聞いて沢村達は驚きのあまり、ショックを隠せずにいた。
清水も小森に対して偉いと笑いながら褒める。
吾郎は「だってよ」と沢村に吐き捨てるが、その直後担任が教師に入ってきて席につくように言う。
沢村達は舌打ちをしながら席につくが、小森と隣の席の沢村は机を離し、小森に話しかける。
「小森、上等だよ。俺達を裏切ってこのままで済むと思うなよ」
「……」
小森は恐怖のあまり何も言えなくなってしまっていた。
大地達も席につき、授業の準備をするが、清水が顔を赤くしながら吾郎に話しかける。
「なあ。本田って……結構良いやつなんだな」
「え? ああ、大地は優しいからな」
「ちげーよ! お前のことだよ!」
(吾郎……そこまで鈍いと将来本当に愛想尽かされちゃうぞ……兄ちゃん、心配だ)
清水と吾郎の会話をこっそりと聞いていた大地は、吾郎のあまりの鈍さに心の中で泣きながら将来の
◇◇◇◇◇◇
お昼休み、大地と吾郎は小森を連れて屋上に行っていた。
小森にグラブを持ってきてもらって、キャッチボールをしようと思っていたからだ。
小森は案の定、キャッチャーミットも持ってきていた。
「なんでお前までついてきてんだよ」
「べ、別に良いじゃない! 仲間だって言ってくれたじゃん! 何やるのか気になったのよ!」
もう1人、清水がついてきていて、3人がこそこそと屋上に行ったのを見て跡をつけてきたのであった。
「野球をするんだけど、清水さんって知ってるの?」
「野球……? 聞いたことはあるけどルールとかはさっぱりかな」
「大地! 清水は放っておいてキャッチボールしようぜ!」
野球を全く知らない清水を放っておいてキャッチボールをしようと言う吾郎を大地は無視して、清水に今までの経緯を話す。
「へぇ、そうなんだ。それで後1人メンバーが足りないってことなのね」
「そうそう。サッカー少年団には沢村もいるからさ、ここでグラウンドを譲ってしまうのは嫌なんだよね」
「沢村もいるのか! そうなんだ……」
清水は少し考えたように俯いたため、「つまんないかもだけど、ちょっと見ててよ」と言って、吾郎達に加わる。
3人でキャッチボールをした後に、小森を座らせて吾郎が軽く投げる。
小森は良い音を鳴らしながらキャッチングをする。
「え……!? こ、小森! もう1球いくぞ!」
「え? う、うん!」
吾郎は、今度は本気でボールを投げる。全力投球の吾郎のボールは現時点で115kmは出ているが、小森は問題なく捕球する。
(す、すごい! これが吾郎君の球……!?)
清水は目に見えない速度のボールを難なく捕る小森に驚き、吾郎もまさか自身の全力投球を捕れると思っていなかったため、本気で驚く。
大地だけは小森が捕球できるのは分かっていたので、特に驚くこともなくその様子を見ていた。
結局お昼休みの時間を全て使って、投球練習をしていた吾郎はキャッチャーの問題を解決したことに喜んだ。
5時間目の授業も終わり、休み時間となる。
次の授業は体育でとび箱のため、着替えて体育館に行くように担任に促される。
着替えたクラスメイトが体育館に向かう中、沢村達はまだ教室に残っていた。
「おーい、沢村! 早く行こーぜ!」
「遅れると怒られるぞ! 何やってんだよー!」
取り巻き達に話しかけられたが、沢村は大地と吾郎の机を漁っていた。
そして2人のグローブを取り出していた。
「お、おい! それって本田のグローブじゃねーか! どうする気だよ!」
「まずいって! それはやめといた方が──」
「──うるせえ! このままコケにされて黙ってられっかよ!」
取り巻き達は沢村の勢いに押されるが、「
沢村は「腰抜けが」と言いながらグローブを持って教室から出ていくのであった。
「あ! 体育館シューズ忘れちゃった! ちょっと取ってくるね!」
「かー、ドジだね」
「急げよー!」
小森が体育館シューズを忘れて教室に戻り、吾郎と清水は小森に話しかけていたが、大地の姿はそこにはなかった。
「あれ? 本田兄は?」
「ん? いないな? トイレか?」
「……ほ、本田!!」
大地のことを話していると、沢村の取り巻き達が現れて吾郎に沢村とのことを話す。
吾郎は「あの野郎……」と言って走り出す。
「え! 本田ぁ! 今から行くのか!」
「当たり前だ!」
清水も追いかけようとするが、吾郎の足が速く、追いつくことができない。
それでも懸命に追いかけるのであった。
◇◇◇◇◇◇
(授業に遅れちゃうから、急がなきゃ)
教室に体育館シューズを取りに戻った小森は、ちょうど教室を出ていく沢村を発見する。
初めは沢村の姿に震えるが、小森に気付くことなく反対側に向かっていく。
小森は沢村の両手にある物を見るのであった。
(あ! あれは本田君達の……!)
大地と吾郎のグローブを持って階段を降りていく沢村を不審に思い、こっそりとついていく小森。
体育館とは反対側にある出口を出て外に行く沢村。
その先には煙突から煙をモクモクと出している焼却炉があった。
「ラッキー。ちょうど燃え頃だな、こりゃあ」
焼却炉ではちょうど火がついて燃やしている最中で、沢村は周りを見つつ慎重に焼却炉に近付いていく。
沢村の目的に気付いた小森だったが、焼却炉の蓋を開ける沢村を止めに入ることが出来ずにいた。
そのとき大地と吾郎が話してくれた言葉が脳裏によぎった。
『もう何にも怖くないさ。これからは俺達がいつでも味方だからな!』
『一緒に野球をやってくれる大事な友達だもんな!』
(こんな僕を……大地君と吾郎君は友達って言ってくれたんだ……! そんな2人を裏切るなんて僕には出来ない!)
「やめろーーーっ!!」
「な、何!? こ、小森!?」
「そのグローブを返せぇ! 2人のグローブに何かしたら、僕が許さないぞ!」
「何ぃ? てめえ、誰に向かって口聞いてんだぁ! 上等だ!」
小森の精一杯の言葉に沢村が逆上して殴りかかってくる。
それに対して小森は沢村の迫力に怖がってしまい、動けなくなっていた。
沢村が殴ろうとしたその瞬間。小さな石が沢村の頭に当たり、沢村の右手を誰かが押さえていた。
「ほ、本田!!」
「大地君! 吾郎君! ……どうしてここに!?」
「
「ああ。でもな、お前は俺達を本気で怒らせちまったな」
大地は掴んでいた沢村の手を離し、吾郎は持っていた石を捨てて沢村に詰め寄る。
沢村は2人の迫力にビビり「冗談だから。返せば良いんだろ」と言ってグローブを渡してくるが、吾郎はそれに見向きもせずに沢村の顔を左手で殴る。
一瞬、沢村は殴られたとは気付いていなかったが、グローブを落として顔を押さえると、口が切れて血が出ていることに気付いた。
「いてぇ! 信じらんねぇ! 口の中切れたじゃねーか! 俺だって小森をこんな風に殴ったことねーぞ!」
「あ? お前何言ってんだ? そんなの関係ないだろ!」
「お前の傷はすぐに治ってもな、長い間虐められてた小森の心の傷は一生消えないかもしれねえんだ!」
大地と吾郎はグローブを拾って、小森に行こうと促す。
小森もついて行くが、沢村の様子を気にしているようであった。
沢村はそのまま立ち尽くしていたのであった。
「あ、ありがとう。大地君、吾郎君。2人が仲間に誘ってくれなかったら、ずっと沢村君達に虐められていたと思う……」
「ん? むしろお礼が言いたかったのは俺たちの方だよ」
「そうだよ。このグローブさ、親父に貰った宝物なんだ。だから燃やされたら本当にショックだったんだよ……」
2人の様子を見た小森は勇気を出して本当に良かったと思い、2人が友達になってくれてよかったと感じていた。
そしてもう1人──
「あ、あのよ……」
「ん? 清水か? 本当についてきたんだな」
「そりゃあ小森達が心配だったんだから仕方ないだろ!」
「清水さん……何か言いたそうな感じだったけど、どうしたの?」
吾郎にからかわれて中断してしまったが、大地に続きを促される。
清水は口ごもるが、勇気を出して話し出す。
「よ、よかったら、私が野球のメンバーになってもいいかな……?」
「え? ……ダメだろ」
「なんでだよ!!!」
「だって素人だろ? 無理だって」
「そんなのやってみないとわからないだろ!」
吾郎に初めから無理だと言われてムキになる清水。
その漫才のような掛け合いを見て、大地と小森は笑ってしまう。
「なんで笑うんだよ! 2人も私が無理だと思ってるの!?」
「あっはっは! 違うよ! 2人が面白くてね、つい。俺は賛成だけど、小森はどうかな?」
「ははは! そうだね。僕も賛成だよ! よかったら一緒にやろ!」
吾郎だけが反対に回ったのだが、仲間なんだからみんなで野球をやろうという大地の説得もあり、渋々了承したのであった。
清水はとても嬉しそうな顔をしていたが、それが仲間として受け入れてもらえたからなのか、吾郎と一緒に野球ができるからなのかは本人にしか分からないのであった。
暴力はダメですけど、ちゃんと左手なんですよね。
『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/
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