MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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髪切りたいんです。
でも今行くのは流石に厳しいかなと自粛しています。

悔しいので、今日も投稿します。



第二十五話

「え……!? ギブソンからメジャーリーグオールスターゲームの招待状ーーー!?」

 

 その日の夕食時、桃子に日下部が来たこと、そしてギブソンからオールスターゲームの招待状を貰ったことを告げた。

 桃子はとても驚き、こんなの貰えないと言う。

 

「まぁ……ギブソンは年俸何億も貰っているお金持ちだからね」

「そうそう。だから気にする必要もないよ」

「で、でもパスポートの申請だってあるし……」

「行くのは夏休みだから、それまでに申請すれば問題ないでしょ。仕事だって幼稚園なら夏休み取れると思うし」

 

 桃子は行かない理由を探しているような気がしていたが、大地と吾郎は説得していた。

 さっきまで俯いていた吾郎が桃子を説得するのに少し違和感を覚えた大地だが、おそらくギブソンからのメッセージを見て行ってみようとなったのかも知れないと頭を切り替える。

 

「でも、アメリカって怖いイメージあるし……」

「「母さん、俺達行きたいんだ」」

「え……」

「行ってこの目でメジャーリーグを見てみたい!」

「野球を生んだ国の世界一のバッティングやピッチングをこの目で確かめてきたいんだ!」

 

 大地と吾郎の言葉に桃子は説得が無理だと思ったのか、笑顔で「じゃあ早速パスポートを取りに行かないとね」と許可を出してくれた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

「「「なにぃ!!アメリカ旅行ーー!?」」」

「はっはっは、羨ましいだろう!君たち庶民には20年後のハワイ旅行がいいとこだからね」

 

 清水に「やなやつ」と言われた吾郎は気にせずに笑い飛ばす。

 ギブソンからチケット貰って、ただでアメリカに行けることを疑問に思う3人に、

 

「ああ、そいつ(ギブソン)が俺たちの親父を殺したんだよ」

 

 あっけらかんと言った吾郎の言葉に、その場の空気が凍った。

 

「吾郎、その言い方は誤解を与えるって! ……事故だよ。俺らもそこまで気にしてないから大丈夫」

「な、何だよ。びっくりさせんなよ!」

「オールスターゲームってことは夏休みに行くの?」

「そうだよ。だからそれまでは今まで通り野球の練習をして行こうぜ!」

 

 夏休みが始まるまでは野球の練習をどんどん進めていく5人。

 日曜日の午前中しか全員が集まって練習ができないため、そのときに連携プレーを中心に行い、平日や土曜の午後は各自の実力を上げる練習をした。

 

 吾郎は投げ込みとランニング、そしてバッティングセンターで打撃練習。小森は吾郎と一緒の練習メニューをこなしていた。

 沢村と清水は、大地が特別メニューを作り、守備と打撃、そしてバント練習をする。

 大地は沢村と清水を教えつつ、陰で吾郎と同じメニューをこなすというハードな日常を過ごしていたが、練習好きな大地にはそこまで苦ではなかった。

 そして心配していた吾郎のハードワークも大地がうまく調整することで、少しでも肩や肘に負担が無いようにもしていた。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 夏が始まり、セミが元気よく鳴く季節がやってきた。

 

「じゃあお世話になります」

「はい、安心して任せてください。私がいれば大体は問題ありませんので」

 

 タクシーに乗って空港に向かう一行。

 空港に着き、人生初めての飛行機に乗る大地達は気持ちを高揚させながら出発時刻を待っていた。

 

「アメリカとか行くの初めてなのよー!」

「え、母さんも初めてなんだ?」

「そうよ! というか、海外自体が初めてなんだけど……」

「ああ、だからあんなに不安になっていたんだね」

 

 桃子はこの日のためにアメリカのガイドブックを何冊も買って読み込んでいた。

 その様子を見ていた大地達は、「観光に行くわけじゃないんだって」と苦笑いしつつ桃子を見ていた。

 そして、話をしていると搭乗時刻が近づいていた。

 

「ほらみんな。搭乗時刻になったから行くよ。はぐれないようについてきてね」

「はいー、ほら行くよ大地、吾郎!」

 

 日下部についていく桃子。2人が仲良く話しているのを見て、吾郎が怪しげな顔をする。

 

「え……もしかしてあの人が俺らの新しい父親になったりしないよね?」

「いやいや、それはないって……た、たぶん」

「ほら、早く行くよ!」

 

 

 

(おお! 椅子がでかい! しかもフカフカだ!)

 

 ギブソンから貰ったのはスタジアムに入るチケットだけでなく、飛行機のファーストクラスのチケットも入っていた。

 桃子がとてもはしゃいでおり、吾郎が日下部に「ねぇ、このおばさんを次の駅で下ろそうか?」と話していたが、なんだかんだでサンフランシスコまでのフライトを楽しむのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 サンフランシスコに着いた一行は、オープンカーを借りた日下部の運転でドライブを満喫していた。

 

「うわぁ! 着いた!! 右も左もアメリカよ! ねぇ大地! 吾郎!」

「うるせーなぁ、俺は時差ボケで眠いんだよ」

「ほら、だから寝とけって言ったじゃんよ。母さんもあまりはしゃぎ過ぎると車から落ちるよ?」

 

 桃子はアメリカに着いてとてもはしゃいでおり、吾郎は時差ボケでとても眠そうな顔をしていた。

 

「日下部さん、今日はどんな感じの予定ですか?」

「えっとね、試合は明日だから、今日はシスコ市内を軽く観光しようか。案内するよ」

 

 大地の質問に日下部は優しく答えてくれる。

 雑談をしながら車を走らせていると、右手にスタジアムのような建物が見えてきた。

 

「おじさん、あの建物って何? 照明みたいなのが立ってるけど」

「え? ああ、あれはキャンドルスティックパーク・スタジアムだよ。ギブソンのいるサンフランシスコ・ガンズのホームスタジアムさ」

「「ギブソンのホームスタジアム!」」

「まぁ明日のオールスターはあそこじゃないけどね」

「……じゃあギブソンの家もこの近くなの?」

「そうだよ、行ってみるかい?」

「いや、いいよ……別に俺、ギブソンに会いにきたわけじゃないから……。俺はメジャーリーグを見にきただけさ」

「え、俺は会いに行ってもいいんだけど……」

「おま! 大地! 裏切るのかよ!」

 

 大地の何気ない一言に場が和む。

 その後、サンフランシスコの市街を観光する一行。

 

「あれが有名なゴールデンブリッジかぁ!」

「凄いでかいねー!」

 

「あれはアルカトラズ島っていって、昔に凶悪犯を収容していて、脱獄不可能と言われた刑務所だよ」

「まさに島流しだったんだ……」

「あそこから脱獄する映画かなんかを観たことあるよ、俺」

 

 桃子は明日の野球の試合よりも、サンフランシスコで蟹を食べたり、観光する方が楽しみだったようで、とても満喫していた。

 そしてチェックインするためにホテルに向かった。

 

「えーー! すごい! 超高級ホテルじゃない!」

「まぁ超一流の大リーガーの招待だからね」

『お客様、背中のお荷物をお持ちいたします』

 

 ホテルのスタッフがいきなり英語で話しかけてきたため、驚く桃子と吾郎。

 

「な、なんだ!? なんて言ったんだ!?」

「え、私も分からないわよぉ!」

「アハハハハ、マイマザー イズ ドッグ! ノープロブレム サンキュー!」

『………』

「いやいや、お母さんが犬なのに問題ないって、結構ひどいこと言うわね、吾郎」

「と、とりあえず知っている単語を並べてみました」

『荷物、お願いします。ただ、今代表者がチェックインしているので、それからでもいいですか?』

『かしこまりました。また後でお声掛けしますね』

 

 大地の返事を聞いたスタッフはすぐに下がっていった。

 アメリカに行くのが清水ではなく、桃子になった場合のこの会話がどうしても聞きたくて、最後まで何も言わずに待っていた大地だったが、とても面白い漫才が見れたと心の中で笑っていた。

 

 ホテルの部屋に案内された一行は、景色やウェルカムフルーツなどを堪能していた。

 日下部は仕事があるとのことで、食事は3人で行くことになった。

 初めは日下部も心配していたが、大地が英語をちゃんと話せることが分かったことと、ここが一流ホテルということで危険も少ないと判断したようだ。

 それであれば家族の時間を取ってあげたいという日下部の配慮でもあった。

 

 食事も終わり、先にお風呂に入っている大地。

 吾郎と桃子は分からない英語の番組をじっと眺めていた。

 そして、そのとき1本の電話が鳴った。

 

「で、電話!?」

「ご、吾郎、出てよ!」

「え……そんなの無理だよ! てか大地はどこにいるのさ!?」

「ま、まだお風呂に入ってる! 呼んできて……って切れちゃった」

 

 あわあわしているところは血が繋がっていなくても家族なのだなと思わせていた。

 大地は電話の音にも気付いていたが、気にせずに湯船で鼻歌を口ずさんでいた。

 

 

 

『チェックインはされているのですが、どなたもお出にならないようです。レストランかどこかへ出られているのでは……?』

『そうか……では、あとでこれを部屋に届けておいてくれ』

 

 ホテルのフロントが電話を切った後に、目の前にいる男に話す。

 その男は少し残念そうな顔をしたが、フロントにある物を預けると、そのまま帰って行った。

 

 

 

 全員がお風呂から出てまったりしていた頃、テレビをみていた桃子が偶然ギブソンのスポーツニュースをやっているのを発見する。

 

「だ、大地、吾郎! ギブソンがテレビに出てるわよ!」

「え! 大地! 通訳して!」

「オッケー!」

 

 そう言って大地の通訳でギブソンのインタビューを聞く。

 

『ギブソン投手、明日先発が予想されていますが、オールスターゲーム出場の気分はいかがですか!?』

『オールスターゲームに選ばれて光栄だ……。私が先発するかどうかは分からないが、出場したらとにかく全力を尽くすだけだ。

全米のベースボールファンと、遥々(はるばる)日本から来てくれた私の友人達のために』

 

 インタビュー中に部屋のチャイムが鳴り、大地が対応する。

 

『はい?』

『1時間ほど前にミスターギブソンがこれを渡して欲しいと言ってお預かりしました』

『ああ、どうもありがとう』

 

 そう言ってチップを渡して部屋のドアを閉める大地。

 吾郎達のところに向かい、ギブソンから預かったものを渡す。

 そこには────〝ようこそアメリカへ〟と書かれた硬球があった。

 




『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/

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