MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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第二十六話

『皆さん、こんばんは! こちらカリフォルニア州のオークランドスタジアム。

いよいよ世界中のベースボールファンが待ちに待った夢の球宴、メジャーリーグオールスターが間もなく始まります』

 

「ホテルから何から何までVIP待遇じゃん。でも遠くてあんまり選手の表情まで見れないね」

「どうだい? メジャーリーグスタジアムに来た感想は?」

「……別にどうってことないよ。内野まである天然芝は綺麗だけど、初めて東京ドームに行ったときの方が感動したよ」

「あ……そ、そうかい」

 

 日下部に感想を聞かれた吾郎は率直に答えた。

 少し素っ気なく答えたりするのは小学生の男の子らしい部分でもあった。

 国歌斉唱の後に始球式も終わり、これから試合が始まる。

 

 吾郎と大地はギブソンの方を見て、『全力を尽くすだけだ。日本から来てくれた私の友人達のために』という言葉を思い出していた。

 

 

『さあ、始球式も終わって、いよいよ試合が始まります!

マウンドにはア・リーグの奪三振王であるランディ・ジョンソンが上がります。迎え撃つは年棒5億、フィリップスのスーパースターであるダイカストラ』

 

 ギブソン率いるナ・リーグは先行のため1番打者のダイカストラが打席に立つ。

 プレイボールがかかり、ランディがファストボールを内角に投げる。

 その初球を狙っていたのかダイカストラが打ち、センター方面へ強い打球が飛んでいく。

 

 このままヒットになるかと思ったが、ショートのリブキンがダイビングキャッチをし、膝をついたまま一塁へ送球をする。

 ダイカストラも全力で走るが、間一髪間に合わずアウトになってしまう。

 

『アウトーー!! いきなり素晴らしいプレーが出ました! 名手、鉄人リブキンのスーパープレー!!』

 

「……」

「さすがだね。なかなか日本人には真似できないプレーだ」

 

 驚く大地と吾郎に対し、冷静に解説する日下部。

 2番のグインが三振となり、次はバリー・ボーンズの打順である。

 サンフランシスコ・ガンズの強打者で足も速いバリーも初球を打ち、ライトの横を抜ける。

 

 バリーは俊足を活かし一塁を蹴って二塁へ向かう。

 

(す、すげえ。あんな身体をしてなんて足が速いんだ!)

 

 吾郎はメジャーの選手の凄さに驚いている。

 しかし、ライトのビケットがボールを捕ってそのまま二塁に向かってダイレクトで送球をする。

 矢のような送球がショートのリブキンに届き、バリーもヘッドスライディングをするも間に合わずにアウトになった。

 

『アウト! 刺した! 刺しました! これがメジャーだ! 打ちも打ったり、守りも守ったり! いきなり魅せますメジャーリーグベースボール!』

 

「どうだい、2人とも。これがメジャーリーグだよ」

「……さすがメジャーだね」

「ああ。やるね……連中。これで俺もようやくアメリカに来たって気がしてきたよ…」

 

『さあ1回の裏、ナ・リーグのマウンドに登るのは、現在10勝1敗。防御率0.98とナ・リーグの大スターであるサンフランシスコ・ガンズの弾丸(バレット)ジョーこと、ジョー・ギブソン! 果たしてどんなピッチングを見せてくれるのか!』

 

(よくアメリカまで来たなBOYS(少年達)よ。今から最高のおもてなしをしよう!)

 

 大地と吾郎を見ながら不敵に笑うギブソン。

 2人も見られているのが分かったのか、同じように笑い返す。

 そしてギブソンは1番打者であるロプトンを見る。

 

 プレイがかかり、ギブソンはいつもの変則フォームから外角真ん中へファストボールを投げ込む。

 94マイル(150km)がミットに入り、ワンストライクとなる。

 2球目も同じくファストボールだが、今度は154kmとスピードが上がっていく。

 

(よし、次はスプリットフィンガーで1球目と同じコースだ)

 

 キャッチャーのマイクがサインを出すもギブソンは首を振る。

 カーブが良いのかと思い、サインを出すもギブソンはさらに首を振り、

 

『No! Hey, Mike(マイク)In this game, (この試合、) I will pitch the fastball only(俺はファストボールしか投げるつもりはない)!』

 

 ギブソンの言葉にロプトンもマイクも驚きの表情を見せる。

 

『な、何でしょうか? 今、ギブソンがキャッチャーに何か言ったようですが……』

 

(こ、この野郎! なめやがって! ナ・リーグの速球王とか言われて調子乗ってんじゃねーぞ!

ファストボールだけで抑えられるほど、ア・リーグのバッターは甘くねぇんだよ!!)

 

 ギブソンの言葉を聞いていたロプトンは、怒りで少し冷静さを欠いてしまい高めのボール球に手を出して三振になってしまう。

 まさか三振するとは思っていなかったロプトンだったが、ベンチに戻る前に2番打者のカルロスにギブソンが話していたことを伝える。

 

「ス、ストレートだ。ギブソンはさっき、ストレートだけで勝負するって言ったんだ」

「……おそらくね」

「うん、俺もそんな気がするよ」

 

 吾郎の言葉に日下部が返事をして、大地も頷く。

 そのまま2番のカルロス、3番のマルチネスも三振に仕留める。

 解説もファストボールだけで抑えられるほど甘くはないと言っていたのだが、三者三振に言葉を失っていた。

 

「君たちのお父さんの時と一緒だ!」

「「え……!?」」

「ギブソンは相手が一流の打者であればあるほど、直球勝負にこだわるんだよ。

そして君達のお父さんは彼の160kmの真っ直ぐをホームランにした。もしかしたらだが……ア・リーグのスーパースター達を直球だけで抑えることで、彼は君達のお父さんの偉大さをこの舞台で君達だけに証明しようとしているんじゃないのかな!?」

 

『なんと初回のギブソン、強力ア・リーグ打線を三者連続三球三振!しかも全部予告したファストボールのみ! 驚きました! どよめく、オークランドアスリーツ・スタジアム!』

 

 「ふん、そんなデモンストレーションで俺が許すとでも思ってんのかね」

 「……」

 

 吾郎は複雑そうな顔をして呟き、大地は黙っていた。

 2回の表、ナ・リーグは三者凡退となり、ギブソンが再度マウンドに登ってくる。

 

(あいつはおとさんを殺したんだ。そんなことでてめーのイメージを変えようったってそうはいかねえぞ……そんな……ことで……)

 

『空振り三振ー! 2年連続MVPの主砲であるトマスも三振! これでギブソン、4連続奪三振! あと1つでメジャーリーグのタイ記録です!』

 

 続く5番のビルも三振に仕留め、メジャーリーグオールスターの連続奪三振タイ記録に並ぶ。

 三振にした際の最後のボールが160kmを記録したため、会場の興奮もどんどん高まっていく。

 

『さあ、あと1つでオールスター新記録! 今日のギブソンは恐ろしく気合が入っています! 打席には鉄人リブキン!』

 

 ギブソンはいつものように大きく足を上げ、直球を全力で投げ込む。

 リブソンはかすることも出来ずに空振りする。

 2球目は外角低めに投げ、リブソンは見逃すもギリギリ入っており、ツーストライクとなる。

 

 大地と吾郎はギブソンの投げる姿を見て、自然と握り拳に力が入っていた。

 そして最後に160kmのファストボールを投げて、空振り三振にしてオールスターの奪三振新記録を達成したのであった。

 

 

 鳴り止まぬ拍手の中(スタンディングオベーション)、ギブソンは静かに微笑んでそれに応えていた。

 そして、その男の大きさに、大地と吾郎は生まれて初めて、寒くもないのに鳥肌が立ったのであった。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

『ライトフライ! マンデシー捕って試合終了! 3対2、今年のメジャーリーグオールスターはナショナルリーグが勝ちました!

メジャーの素晴らしいプレーが随所に見られました。しかし、今日のMVPはやはり圧巻の6連続奪三振を取ったこの人、ジョー・ギブソン投手に贈られるようです。

ちょうど今、現地のインタビューを受けています。しかし素晴らしいピッチングでしたね、ポンチョさん』

『はい。なんせア・リーグの強者達をファストボールだけで6連続でしょう。私も長いことメジャーリーグを見ていますけど、こんなすごいピッチングを見たことがありません。

とにかくこの試合を現地で観ることが出来たことを幸せに思いますよ!』

 

「良い試合だったね」

「そうですね」

「……まあね」

 

 大地も吾郎も日下部の質問にこの時は素直に答えていた。

 そして、声を揃えて日下部に話す。

 

「「ねえ、ギブソンに会う時間ってあるかな……?」」

 




『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/

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