MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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皆様GWはいかがお過ごしでしょうか?
コロナ太りになってきていてやばいので、ダイエットをすることを決意した今日この頃です。



第二十七話

「じゃあちょっとこの辺で待っててよ。交渉してくるから」

「分かった」

 

 日下部がギブソンに会えるか交渉をしてくれている間に、友達や同僚へ買うお土産を見ていた。

 吾郎は小森だけにTシャツを買う予定だったようだが、大地に言われて沢村と清水にもお土産をちゃんと買う。

 桃子はスタジアムではしっくりくるものが無かったようで、ホテルか帰りにでも買うとのことだった。

 

 買い物を済ませた頃、周りが騒がしいのに気付く。

 大人や子供、それこそ老若男女問わず一方向に走っていくのが見えた。

 

「な、なんだなんだ?」

「誰か有名人でも来てるの?」

「有名人って……今日ここには()()()()()()()しかいないでしょ」

 

 桃子の天然に大地が突っ込む。

 そして色んな人たちに囲まれている1人のアメリカ人を見つけた。

 

『OK! 慌てないで!』

「あれって……」

「ああ、ギブソンだ」

 

 ギブソンは観客に囲まれながらも、子供を優先して握手やサインに嫌な顔ひとつしないで応じている。

 その姿を大地と吾郎はただ見ていた。

 

「僕が大地君達を呼んでくるって言ったんだけどね……。

こんな一般通路に現れたら、ああなるのに決まっているのに……彼はたった2イニングじゃまだ全然疲れていないよって言って来てくれたんだ」

 

 日下部の声に大地と吾郎はハッとする。

 彼が近付いてきたのに気付かなかったようだ。

 その間も丁寧にサインなどに対応するギブソン。

 

 一通り終わった段階で、こちらに向かって歩いてくる。

 そして観客席に向かう階段の下でギブソンと大地、吾郎は対峙した。

 桃子は後ろでその様子をただ見守っていた。

 

『大きくなったな、本田ジュニア達』

「別に、あんたに会うつもりはなかったんだけどさ……まぁとりあえずアメリカ旅行させてもらった礼くらい言っておこうと思ってね……ありがとよ」

 

 日下部がギブソンと吾郎の間に立って通訳をしてくれている。

 大地はそのやり取りを見て何も言わない。

 

「それとさ、あんたに会ったらどうしても確かめようと思っていたことがある……。()()()……本当に事故だったんだよな?」

「あ、当たり前じゃないか、吾郎君!あれは手が滑って──」

「──おじさんには聞いてないよ」

 

 吾郎とギブソンが睨み合う。

 それもほんの一瞬のことだったが、ギブソンはすぐに『ついて来てくれ』と言って先ほどギブソンが来た通路を戻っていく。

 全員、何も言わずについていく。

 

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 着いた先は今日オールスターゲームが行われたグラウンドだった。

 大地達はベンチから出たところで立っていたが、ギブソンと日下部はホームベースのところで何かを話していた。

 そして日下部だけが大地達のところに戻ってきた。

 

「何? なんでグラウンドに……!?」

「君の質問に対する彼の答えはこうだよ……。例え()()()事故だとしても……それは結局私の精神的、技術的な未熟さが産んでしまった悲劇に他ならない。どんな言い訳をしても、君達のお父さんを死なせてしまった十字架を私は一生背負っていくしかないのだ」

 

 日下部は持っていたボールを吾郎に渡す。

 そして続きを話し出す。

 

「しかし……もしこれで君の気持ちが少しでも収まるのであれば……マウンドからこのボールを私目掛けて思い切り投げてくれ。

頭でもどこでも、気が済むまでぶつけてくれて良い。茶番だと思うかもしれないが、これくらいしか今の私は君の気持ちに応えられない」

 

 ボールを持って少し考えた吾郎は「いいね、これでついにこの手で恨みを晴らせるわけだ……」と言ってマウンドに向かっていく。

 桃子と日下部が止めようとするが、大地がそれをさせない。

 

「母さん、日下部さん。ちょっと見ていて。……吾郎なら大丈夫だから」

「で、でも……」

 

 不安になりながらも桃子は走ろうとした足を止める。

 日下部も桃子が止めないのであれば、自分にその資格はないと思ったのか同じように立ち止まる。

 

 そして、吾郎が振りかぶり、バットを持って打席で構えているギブソンに向かって思いきりボールを投げた。

 

 

 

 

 

 と、大地を除く全員が思っていたが、ボールはホームベースを通過した。

 ど真ん中に投げられたボールを見て、大地は微かに笑い、ギブソンと桃子、そして日下部は驚いた。

 そしてギブソンのところに歩いていく。

 

「ずるいね。小学生の球じゃいくらぶつけてもダメージは与えられないじゃん!」

『……』

「この罰ゲームはまた今度にするよ。いつか俺があんたと同じくらいすごい球が投げられるようになったときにね!」

『……そうか、分かったよ』

 

 笑いながら吾郎が差し出した右手に、ギブソンも笑いながら握手で応える。

 そして、そのあと大地の方を見て話し出す。

 

『君は……いいのかい?』

『ん? 俺ですか? ……吾郎が許しているのに、それ以上何も言うことはないですよ。ただ……』

『ただ……?』

『せっかくここまで来たんだから、メジャーの大スターとキャッチボールがしたいですかね』

 

 大地の言葉に日下部とギブソンは呆気に取られた。

 そしてギブソンは大きく笑いながら、「分かった! ちょっと待っていてくれ!」と言ってベンチに下がっていく。

 

「え、え……? 大地、今何言ったんだよ?」

「……ギブソンが戻ってくるまでの秘密」

「なんだよそれー!」

 

 

 その後戻ってきたギブソンとキャッチボールをしている大地を見て、羨ましそうな顔をする吾郎であった。

 もちろん少し放置した後は、吾郎も一緒に加えて3人でキャッチボールをしたのは言うまでもない。

 桃子はそんな様子を見て、とても嬉しそうな顔をしていたのであった。

 

(ギブソンさん……あのときお墓で話したことをきちんと覚えてくださっていたんですね。……ありがとうございます)

 




『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/

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