MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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第三十一話

 「やったぜー!! 久喜リトルに勝った!」

 「私もヒット打ったんだよ!」

 

 沢村と清水が喜んでいる中、吾郎はこれで横浜リトルと試合が出来るのではないかと淡い期待を持っていた。

 安藤はまさか全国ベスト4の久喜リトルに勝つことが出来ると思っていなかったため、心が踊っていた。

 そんな安藤のところに久喜リトルの村上はやってきて話しかける。

 

「む、村上さん」

「いや〜、負けましたよ! うちの上河内(かみがうち)を抑えられてしまったら、手も足も出ないですわ!」

「いやいや、うちもまだまだで……」

「ところであのピッチャーとショートの子はどこから見つけてきたんですか? 内緒にしてるなんてひどいですよ!」

「大地君と吾郎君は、元々うちの地元の子なんですよ。ほら、あの本田茂治選手の双子なんです」

「え!? あの本田選手の!? だからあんなにセンスが良かったんですね。いやはや羨ましい!」

 

 大地と吾郎を褒められたのは、安藤も悪い気がしないので嬉しそうな顔をする。

 そして試合中にも思っていた三船リトル再建も現実的になってきていることに喜びを感じていた。

 

 試合後のミーティングで、吾郎が「次は横浜リトルとやりたい!」と言い出した。

 安藤が打診をしてみると言い、他のチームにも聞いてみることにすると話していた。

 初日から勝つことが出来たことに全員が喜び、これなら全国に行けるのではと可能性を見出していた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「な! なにぃぃぃぃ!? 横浜リトルに練習試合を断られたぁぁぁぁ!?」

 

 その日の夜。吾郎は夕食中に安藤から横浜リトルの監督の樫本から練習試合を断れられたと言われた。

 大地を含めて全員が驚いていた。

 

「そうなんだよ……すまん」

「お、おじさん! なんでなの!? 理由はなに!?」

「勝負が見えているからだと言ってたんだよ」

「な……なんだとぉ?」

 

 吾郎が怒りに震える中、安藤だけが冷静に分析をしていた。

 

「でもね、それは私も感じているよ。樫本監督とは違う理由かもしれないけどね……」

「な、なんでさ!?」

「変なことを聞くようだが、吾郎君は本気で横浜リトルに勝ちたいのかい?」

「な……なに言ってんだよ、おじさん! 当たり前じゃないか!誰だって強いところに勝ちたくて野球をやってるに決まってるじゃないか!」

「……それはどうかな……みんな吾郎君のように野球に人生を賭けている子ばかりじゃないからね」

 

 その言葉に全員が黙ってしまう。

 

「横浜リトルに勝って日本一になりたいのであれば、全員が同じ気持ちにまで合わさらないと意味がないんだよ」

「そ、そんなのみんな同じ気持ちに決まってるじゃんか! なぁみんな!」

「「「…………」」」

「ほら、みんなが吾郎君や大地君と同じくらいの気持ちを持っているかと言ったら……そうじゃないんだ。

だからおじさんもやるからには真剣にやりたいと思っている。そのために明日テストを行いたい」

「「「「「テ、テスト!?」」」」」

「そう。別に受けなくてもいいし、合格しなくてもいい。……でもね、もう二度とグラウンドに顔を出す必要はない。

野球をやるのは君達だ。いくら私が勝つための練習をしたとしても、君らにやる気と根性がなければ厳しい練習について来れないだろう。

そのために、このテストはかつての三船リトルで入団テストに使っていた方法だ。

これに耐えて帰って来れたら、これからどんな厳しい練習だってその子はついて来れるはずだ!」

 

 

 

 

 

 

 夕食後、三船リトル元々いた5年生達が集まっていた。

 

「なあ……明日どうする?」

「え……」

「なにが日本一だよ! 勝手にやってくれってんだ!」

 

 前原が先に脱落宣言をする。本人としても本田兄弟に合わせて辛い練習なんてしたくないし、日本一になれるわけがないと思っていた。

 根性ややる気だけでどうにかなるもんじゃないと思っているのだ。

 

「で、でも帰ったら三船リトルを辞めるってことだぞ!? それでいいのかよ!」

「し、仕方ないだろ!! 俺らはあいつらとは違うんだよ!」

 

 5年生の中で沈黙だけが残る。

 

「……でもさ、今日の試合楽しかったよな」

「そうだな。まさか全員が全国ベスト4のチームからヒット打てるなんて思っていなかったもんな」

「これもさ、大地がいつも教えてくれてたからだよな」

「吾郎も嫌がらずバッティングピッチャーしてくれるし」

「な、なんだよ! お前ら裏切るのかよ!」

 

 前原だけは頑なに辞めると言っていた。

 だが、長谷川に「お前は楽しくなかったのかよ?」と聞かれ、

 

「……初回だって意味のないバントさせられたし、守備は一切必要なかったし。そりゃヒット打てたのは嬉しかったけどさ」

「じゃあテスト受けてみるだけやってみるのはいいんじゃないか?」

「前原だって大地達に色々教わってただろ?」

「……わ、分かったよ! 受けるだけだからな! 辛かったら辞めるからな!」

「「「「はいはい」」」」

 

 前原はひねくれていて、天邪鬼なことを言い出すのを分かっている他の4人は、声を揃えて前原の話を流した。

 「流すなよ!」と少し怒っていたが、その表情は少し笑ってる前原を見て、全員は安心していた。

 

 

(みんな、良かった。これで辞められたら後味悪いもんな。絶対に全員でクリアして横浜リトルにも勝つぞ!)

 

 大地は5年生達がはしゃいでいるところからバレないように去っていくのであった。

 




前原ってなんであんなに憎めないキャラなんですかね。

『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/

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