MAJORで吾郎の兄になる   作:灰猫ジジ

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第四十八話

「よっし!! これからまだまだ追加点狙えるぞ!!」

「夏目! 積極的に狙っていけー!!」

 

 1死(ワンアウト)、ランナー二塁(にるい)で6番の夏目の打席。

 マウンドでは菊地と寿也が話していた。

 

「ここはランナー気にせずに勝負で行きましょう」

「……ああ」

 

(……ちっ。年下(四年生)のくせに生意気なこと言いやがって)

 

 寿也はホームベースの方に戻っていき、試合が再開される。

 寿也がサインを出したとき、菊地の顔が僅かにゆがむ。

 

(この野郎、この俺にサインなんか出しやがって……年下のリードで投げられっかよ!!!)

 

 菊地が寿也のサインを無視してボールを投げ込む。

 夏目は反射的にバットを振るが、サードベースの左側をライナーで飛ばしファールとなる。

 

(え……!? う、打てる……!? 大地や吾郎の球をいつも見てるからなのか、めちゃくちゃ打ちやすいぞ!)

 

 夏目はバットを見つめながら、菊地の球を打てると確信する。

 寿也はその様子を見て、タイムを要求してマウンドに向かう。

 

「あれ? コントロールミスですか? 要求した球と違うんですけど……。うーん、困ったなぁ……要求したコースに投げるコントロールがないんじゃ……。

じゃあ僕監督に相談してきます。今日の菊地さんは調子が悪くてまともに投げられそうにないみたいですから」

 

 菊地はその言葉を聞いて、「ま……待て!」と焦って寿也を呼び止める。

 

「わ……分かった。つ、次は大丈夫だ。お前のリード通り投げるから……」

「……そうですか。じゃあちゃんと頼みますよ」

 

 菊地の言葉にシンプルに返してホームベースに戻っていく寿也。

 それをマウンドで見送る菊地は、寿也のしたたかさに対して、恐怖を感じていた。

 

(こ……こいつ。可愛い顔してやることがえげつないぜ……)

 

 改めて試合が再開される。

 菊地が第2球目をインハイに投げ込む。

 夏目は急に目の前に来たボールに対して、()()って後ろに倒れてしまう。

 

「ストライク!」

「ナイスボール!!」

 

(え……い、今のが入ってるの!?)

 

 夏目はインハイギリギリに決まったボールがストライクだったことに少し混乱するが、すぐに立ち上がって構える。

 寿也はその様子を見て、菊地にサインを出す。

 菊地は頷くと、振りかぶり真ん中やや外角にボールを投げ込む。

 

 夏目は思わぬ絶好級にバットを振るが、ボールが曲がり、バットが空を切る。

 

「ストライク! バッターアウト!!」

 

 三振になってしまった夏目。

 実はインハイに投げられたあと、腰が引けてしまい外角に対してバットがいつもよりも若干届かなくなっていたため、当てることすら出来なかった。

 寿也はそこまで読んで、サインを出していたのだった。

 

結局7番の田辺も三振にされてしまい、チェンジとなった。

3対0で、二塁に残塁となった大地は、ベンチに戻りながら寿也のリードに対して警戒をしていた。

 

(寿くんにあのリードをされたら、あのレベルのピッチャー相手には何点も取れないぞ……。3点取っておいてよかった……)

 

 

 

 

 2回の表。バッターは4番の真島。

 3点取った三船リトルは、ただ1人(大地)を除いて盛り上がっていた。

 

「よっしゃ! この回も3人で仕留めるぞ!」

 

 沢村の声に皆が応え、声を出していく。

 吾郎も勝てそうな雰囲気に同じように気持ちが高揚していた。

 

 真島が打席に入り、構える。

 吾郎がワインドアップからボールを投げ込む。

 

「ストライーク!」

 

 内角に入ったボールを真島は見送る。

 小森からボールを受け取った吾郎は、「へっ!」と笑いながら構える。

 

「そんなボーッと見たままだと、打てるボールも打てねぇぞ!!」

 

 吾郎は外角にストレートを投げ込み、真島がバットを振るが空振りとなり追い込まれる。

 そして、「これで止めだ!」と言いながら吾郎が投げた球を、真島がバットに当ててファールにする。

 

「当てやがったよ……でもな、当てるだけなら誰だって出来るんだよ!!!」

 

 吾郎が当てられたことにムキになって、4球目を内角に投げ込む。

 真島は冷静にバットを振り抜くと、大きな音が鳴りライトにボールが飛んでいく。

 

「ラ、ライト!!」

 

 吾郎がライトフライだと思って、左後ろを振り向くがボールはホームラン用のフェンスを越えていってしまった。

 静かにベースを一周する真島。

 ホームベースに戻ってきたとき、吾郎の方を向いて声を掛ける。

 

「……確かに速い球だがな。ストレートだけしかないなら、俺だって打てるんだよ」

 

 そしてベンチに戻っていく真島。

 吾郎は真島の声を聞いて、「な、なんだとぉぉ!」と怒りをあらわにした。

 そこで小森がタイムを取り、吾郎を落ち着かせに行く。

 

「ご、吾郎君……落ち着いて!」

「……くそ!」

 

 マウンドの砂を蹴り上げたところで、吾郎は誰かに頭を叩かれた。

 頭を抑えて後ろを向くと、そこには大地がいたのであった。

 

「おい、吾郎」

「な、なんだよ!!」

「何だ今のピッチングは?」

「俺だって渾身の決め球(ジャイロボール)が打たれてショックを受けてるんだよ!」

「……なんでスローボールを投げなかった?」

「「あ……」」

 

 大地の指摘に対して、吾郎だけではなく小森も頭になかったような声を上げる。

 いつの間にか内野手全員がマウンドに来ていた。

 

「お前のジャイロボールはまだ未完成だ。これから何年も掛けて習得していくものなんだから、それだけを頼る必要はないんだよ。

だったらなおさら、スローボールと投げ分けることで()()は活きてくるんじゃないのか?」

「「…………」」

「小森もだ。不用意にストライクを取りに行きすぎだ。ボールを混ぜてこそキャッチャーのリードが最大限に効果を発揮するんだろ? バッテリーがそんな状態だったら、打たれて当然だろ!!」

 

 大地の叱責に対して、黙り込む吾郎と小森。

 

「みんなもだ! 相手はあの()()()()()だぞ! 3点リードしていたくらいで勝てるなら苦労はしないよ!

今は点差が無いものだと思って、気を引き締めていかなきゃだ!」

 

 周りにも気を引き締めるように言った大地は、吾郎の胸に拳を置いて笑う。

 

「吾郎。みんなお前を頼りにしてるんだぜ。こんな程度で崩れたりしないよな?」

「……ああ!」

 

 吾郎も真面目な顔をして大地を見つめる。

 他の選手も大地の声を聞いて、顔つきを変えてポジションに戻っていく。

 外野手もその空気を感じ取ったのか、雰囲気が少しだけ変わっていた。

 

「よし! 無死(ノーアウト)、ランナー無しだよ!しまっていこう!」

「「「「おう!」」」」

 

 小森の掛け声で全員が声を揃えて応えて、試合が再開される。

 

(大地……あんがとよ。俺はどっかで横浜リトルを舐めていた……。そうだよな、全国トップのチームがそんな簡単に抑えられるわけないよな)

 

 真面目な顔になった吾郎は、小森のリードもありその後の5番羽生(はぶ)を三振に抑える。

 そして更に警戒すべきバッターが現れた。

 




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