MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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本日8:00の「第四十七話」からリトルリーグ編が終わるまで1時間ごとにノンストップで更新しています。
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第五十三話

 レフトのポールに当たった打球音を聞き、静まっていたスタジアム内が一気に大歓声に変わった。

 大地はバットを静かに置くと、ゆっくりとベースを一周していく。

 そしてホームベースを踏んだところで、三船リトルの選手全員に囲まれて叩かれていた。

 

 涼子はマウンドで崩れ落ちていた。

 泣きそうな顔をしていたところで寿也に声を掛けられた。

 

「参ったね。あそこまで完璧に打ち直しされちゃったら、そりゃ勝てないよ」

「……うん。でも……勝ちたかった」

「……そうだね」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「それでは4対3で三船リトルの勝利です。互いに礼!」

「「「「「ありがとうございました!!!」」」」

 

 握手をする選手たち。

 だが、お互いに声を掛けることなく、ベンチに戻っていく。

 三船リトルはベンチで馬鹿騒ぎをしているが、横浜リトルの選手たちは樫本の指示の下、すぐにベンチから退散していた。

 

 

 

 

 スタジアムの外に用意されたバスの中で、横浜リトルの選手全員が無言で落ち込んでいた。

 そして最後に樫本が乗り込んで声を掛ける。

 

「よーし、全員乗ったか!? 出発するぞ!」

 

 樫本の声に誰も返事をしない。

 

「どうした、返事は!? 真島! 全員いるのか!? 点呼はしたんだろうな!?」

「あ……い、いえ。でも、たぶん……」

「多分だとぉ!? ……ちっしょうがねぇな!」

 

 そう言って樫本は懐からノートを出して点呼を取っていく。

 

「佐藤!」

「……はい」

「佐藤! 佐藤寿也!」

「は、はい!!」

 

 寿也の声が小さいため、再度大きな声で呼び、寿也は大きな声で返事をした。

 それからどんどん点呼は進んでいく。

 

「川瀬! ……川瀬涼子!」

 

 涼子を呼んでも返事がないため、樫本は涼子の座席まで歩いていく。

 そこには帽子を深く被り、俯いている涼子がいた。

 

「……どうした。このバスに川瀬涼子はいないのか?」

「い……いえ。すみません」

 

 涼子が帽子を取って謝ったとき、目に涙が浮かんでおり、涼子はその涙を手で拭っていた。

 樫本は手に持っていたノートを閉じて背中を向けて全員に話し掛かる。

 

「いい勝負だったな。……良かったよ。最高のゲームを見せてもらった……。恥じるな、胸を張れ! 今日の悔しさを忘れずに、また明日から頑張ろうぜ!」

 

 その言葉に今まで全員が堪えていた涙が溢れ出す。

 そして、大きな声で樫本に返事をするのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「ストライク! バッターアウト! ゲームセット!」

「よっしゃーーー!!!」

 

 横浜リトルを破ったこの年、三船リトルは破竹の快進撃で全国に駒を進める。

 そして、その勢いのまま全国優勝をしてしまうのであった。

 

 

 

 

 

「吾郎ー! 何やってんだよ! 早く帰るぞ!」

「お、おう! 分かってるよ!」

 

 大地に促されて、全国大会の表彰式が終わった後の球場から外に出る。

 そして、少し歩いた後に振り返り、球場を見る。

 

(おとさん……俺たち、やったよ。リトルリーグの全国大会で優勝できたよ)

 

「おい、吾郎!」

「……分かったって!」

「おとさんには家帰ってから報告すればいいだろ」

「……何で分かったの?」

「何年お前の兄貴やってると思ってんだよ」

 

 笑いながら吾郎とバスに乗り込む大地。

 

「よーし! 全員乗ったな! これから帰るぞ!」

 

 安藤の号令で神奈川県に帰っていく。

 バスの中では優勝した興奮で全員が喜んでいて、安藤も途中で嬉し泣きをしてしまい、危うく優勝当日に事故に遭いかけるというハプニングに見舞われたが、なんとか無事に帰ることが出来たのであった。

 前原が「あの監督(おっさん)の運転は二度と嫌だよ……」と話していたのはご愛嬌であろう。

 

 家に着いた大地と吾郎は、桃子に出迎えられて家に入る。

 そしてリビングに行ったところで、大地は驚くのであった。

 

「り……涼子ちゃん!?」

「お、おかえりなさい」

「ただいま……ってなんでここにいるの!?」

「試合の結果が気になっちゃって……だめ……かな?」

「いや、ダメじゃないんだけどさ……」

 

 とりあえずシャワーを浴びたいと思っていた大地はすぐに風呂に入り、着替えて髪を乾かしてリビングに向かった。

 そこでは桃子と仲良く話している涼子がいて、なんとなく複雑な気持ちになっていたのであった。

 

「あら、大地戻ったのね。じゃあ、あとは大地に任せようかな。涼子ちゃん、ごゆっくりね」

「はい、ありがとうございます」

 

 やけに仲良くなっている2人におかしいと思いながら尋ねる。

 すると「大地君が遠征している間、遊びに来させてもらっていたの」とカミングアウトされ、更に驚く大地であった。

 

「あ、そうだ。……全国大会優勝おめでとう」

「あ、うん。ありがとう」

「……あーあ。悔しいなぁ! 私も全国大会行きたかった!」

「え……」

「それと大地君と野球したかった! 同じチームで!」

 

 その言葉を聞いて、大地は軽く笑うと涼子に話しかける。

 

「まぁこれからはいつでも一緒に野球できるからさ。それで許してよ」

「……だめ」

「……え?」

「デートもたまにはして!」

「わ、わかりました……」

 

 女性には勝てないなと思う大地であった。

 涼子はデートをしてもらえると聞いてとても喜び、どこに行くかを散々話し合ったあと、ようやく家に帰っていった。

 




次話でリトルリーグ編の最終話です。


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『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/

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