活動報告には詳しく書かせていただいたのですが、今後も少しの間だけ更新が遅れますのでよろしくお願いいたします。
あと、中学生編は高校生編への繋ぎなので、試合の描写はほぼないと思ってください!
「え!? ぼ、僕がレギュラー!?」
「うむ。お前は守備も上手いし、バッティングもクリーンアップレベルだ。まだ二年生になったばかりだが、お前の力なら十分スタメンライトくらい任せられる!」
「で、でもライトは高橋先輩が……」
「高橋には可哀想だが、控えに回ってもらった。地区予選の成績が打率一割で、エラーが3つもあったくらいだ。仕方ないだろ。
ま、お前が心配することではない。実力で掴んだレギュラーだ。精一杯県大会の大舞台で頑張ってくれ!」
吾郎達が中学二年生になった夏。三船東中の監督に呼び出された山根は、レギュラー昇格の話を受けていた。
今まで一生懸命練習していた山根は、先輩である高橋に申し訳ない気持ちもしていたが、それ以上に喜びが勝っていた。
「あ! 山根君!」
「小森……!」
「さっき聞いたよ! 県大会からは山根君もスタメンライトだってね! 先輩達が話しているのを聞いちゃった!」
「……ああ、小森は1年生からレギュラーだったからな。俺もようやく追いついてきたよ」
「一緒に頑張ろうね!」
「僕はベンチにも入れないけど、こもりんと山根君のこと応援しているからね!」
「大林……ああ! 頑張るよ!」
部室に戻った山根を出迎えてくれたのは、小森と大林だった。
小森はリトル時代の実績もあり、中学1年生からレギュラーになっており、その実力は誰もが認めていた。
山根は同級生で2番目のレギュラー獲得であり、それはとても喜ばしいことであった。
◇◇◇◇◇◇
小森達と別れた山根は1人で家に帰っていた。
レギュラーになれた嬉しさから、気持ちを弾ませて帰宅していたのだが、目の前に3人の男が立っていた。
「よう、ちょっとツラ貸せや、山根」
「た、高橋先輩!?」
「いいからちょっと来いよ」
そう言って、山根を囲み歩き出す先輩3人。
山根としても抵抗は出来ずついていくしか出来なかった。
学校に戻り、裏手にある体育館の人気がないところに連れて行かれた山根は、囲まれていた。
「山根、何の話かもちろん分かってるだろ?お前、まさか先公に言われたとおり、ぬけぬけと試合に出る気じゃねぇだろうな?」
「え……いや、でも……」
山根が言い返そうとしたところで、肩を掴まれて後ろに押さえつけられる。
その衝撃で山根は何も言えなくなってしまう。
「でももストライキもねーんだよ! これが最後の大会の先輩に対して、華を持たせて引退してもらおうってのが後輩の思いやりってもんだろ!?
ちょっと腹がいてーとかなんとか言ってくれりゃ、それでいいんだよ! な! 頼むよ、山根! 県大会には、俺親とか呼んじゃってんだよ! ベンチじゃ今さら格好つかねーだろ!?」
高橋が山根に対して、高圧的な態度でスタメンを辞退するように詰め寄る。
山根は俯いて少し考えたあと、すぐに「い……嫌です!」と断る。
「こんなことされなければ、まだ同情して辞退したかもしれませんけど……後輩を脅して試合に出ようとするような先輩に、僕はポジションを譲る気はありません!!」
「……そうかい、じゃあ仕方ねぇな」
「な、何をするんですか!?」
「それなら本当の怪我をしてもらうだけさ」
高橋の指示で1人の先輩が山根を抑える
山根の後ろは体育館に入るための金属製の大きな扉であり、そこを開けて山根の腕だけを体育館の中に入れる。
何をされるのかを察した山根は暴れるが、抑え込められて身動きを取ることが出来ない。
「よーし、閉めろ。思いっきりだぞ。中途半端に怪我をしても試合に出るかもしれねーからな」
「や、やめ……」
「よし! 行け!!!」
「やめろぉぉぉ!!!!」
◇◇◇◇◇◇
「大地ー! 早く帰って野球しようぜー!」
「ちょっと待ってろ。てか吾郎もついてきて」
「え、どこ行くんだよ?」
大地は吾郎を連れて、三船東中の野球部の部室に向かっていた。
しかしそこには誰もいなく、もぬけの殻になっていたのであった。
(ちっ。もう帰っちゃってるか……)
急がないとまずいと判断した大地は校門に急ぐ。
山根がこの時期に先輩によって一生の怪我を負わされるのを知っていたため、なんとか防ごうと動いていた。
そして校門が見えたところで、3人の生徒が山根を連れて体育館方面に向かっているのが見えたのであった。
「なぁ大地ってば……って、あれって山根か?」
「ああ、多分先輩に呼び出されたんだろうな」
「え? なんで?」
「山根が次の県大会でレギュラーになったんだよ……でもそれを面白いと思わない先輩もいるってことさ」
「……へぇ。くだらないことするじゃん」
大地と吾郎は職員室を通って、体育館に急ぐ。
そして体育館の中に潜んで、山根達の話を聞いていた。
「……そうかい、じゃあ仕方ねぇな」
「な、何をするんですか!?」
「それなら本当の怪我をしてもらうだけさ」
体育館のドアが開き、そこから山根の腕を抑えた生徒が中に入ってくる。
「よーし、閉めろ。思いっきりだぞ。中途半端に怪我をしても試合に出るかもしれねーからな」
「や、やめ……」
「よし! 行け!!!」
「やめろぉぉぉ!!!!」
しかし、扉が閉められることはなく、体育館側には大地が扉を右腕で抑え、山根の腕を抑えていた先輩を足で引っ掛けて転ばせている吾郎がいた。
「な……!? なんだてめーらは!?」
「ほ、本田……? どうしてここに……?」
「本田って…
山根が大地達の名前を呼ぶと、高橋達が驚く。
野球をやっている同世代で、三船リトル時代に全国制覇の立役者となった本田兄弟の名前を知らない子供はいない。
三船東中にいることは知られていたが、先輩と交流していなかった大地達は顔をそこまで知られてはいなかった。
「先輩達……何してんの?」
「
「くっ! お、お前たちには関係ねーだろ!」
「「……はぁ!? もっかい言ってみろ!!」」
大地と吾郎が高橋の言葉にブチ切れて、声を揃えて威圧する。
1個下ではあるが、あまりの迫力に高橋達は何も言えず、黙ってしまう。
「お前ら、マジでだせーのな。レギュラー取られたくないなら、必死こいて練習しろや!」
「……ちくしょうが! お前ら! こいつらやっちまうぞ!」
逆上した高橋が指示を出して、3人で大地と吾郎に襲いかかる。
しかし、運動神経や体力に明らかに差があり、すぐに取り押さえられてしまう。
「……ったく。大人しくしとけよな!」
「ぐっ……くくく。お前ら
「なにぃ?」
「俺らはこのまま職員室と警察に行って、お前らに殴られたと言ってきてやるぜ! これでお前らの野球人生も終わったな! くはははは!!!」
「ほ、本田……!」
高橋は笑い出し、大地達を警察や教師に訴えると言い出す。
山根は大地達を心配するような声を出すが、2人は笑っていたのであった。
「ああ、
「……そうだよ。先生方、出てきてください」
「「「…………え?」」」
大地の合図で隠れていた教師が数人出てくる。
体育館に行く途中に大地達は職員室に寄って、教師を無理やり連れ出していたのだ。
証拠をきちんと押さえた上で声を掛けたら出てきてほしいと頼んだところ、了承してくれていた。
「せ、先生! 違うんです! 俺ら脅されて……!」
「一部始終を見ていたよ。今さらそれを言っても無駄だな」
教師の言葉に「そ、そんな……」と言ってうなだれる高橋達。
そして、高橋達は生徒指導室に連れて行かれるのであった。
◇◇◇◇◇◇
「本田……すまない」
「ああ、気にしなくて大丈夫だよ。俺らも見かけただけだし……なぁ吾郎?」
「え、ああ! 山根が無事で良かったよ」
「この恩をどう返せばいいのか……」
「んー、じゃあさ、県大会で勝ち上がって行けよ! 小森もいるんだし、支えてやってくれ」
大地の言葉に山根は泣きそうな顔をする。
しかし、涙を拭って笑い、「ああ! 分かった!」と大きな声で返事をするのであった。
本当であれば吾郎と同じく、いや、それ以上に過酷な人生を歩む可能性があった山根。
しかし大地達によって野球選手としての本来の実力を出したまま残りの中学校生活を送ることが出来たことは、彼にとって幸運だった。
そして三船東中野球部の衰退も防ぐことが出来たため、大地が卒業するまで三船東中は強豪のまま県大会出場の常連となっていたのであった。
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