MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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次の投稿は3〜4日後の予定です。



第六十話

「すまない!!」

「え、ち、ちょっと……何があったんですか?」

 

 横浜シニアの練習後に近くのカフェで待ち合わせていた大地、吾郎、寿也と大貫の4人。

 そして席に座った途端に大貫が頭を下げて謝罪をしたため、3人は困惑していた。

 大貫は頭を上げると理由を話し出す。

 

「実はな、君達の特待生枠なんだが……出すことができなくなってしまった」

「……え!?」

 

 大貫は江頭から3人を特待生枠で入学させることを禁止されていた。

 海堂のメンツを潰したと思われていたため、江頭からの意趣返しである。

 その説明を聞いた3人は唖然とした表情をしていた。

 

(くそ、あのとっつぁんボーヤが……!)

 

 大地は江頭のことを原作知識で知っているため、相も変わらずの言動に対して怒りを覚えていた。

 だが、もうこうなっては仕方がないのである。

 

「それでは……仕方がないですね。俺達は違う高校に──」

「──ちょっと待ってくれ! 実はここからが本題なんだ」

 

 大貫は真剣な表情をしながら大地達を見る。

 その顔を見て、大地も言葉を続けることが出来ずに黙ってしまう。

 

「うちのチーフマネージャーから伝言があってね。”もしうちにどうしても入りたいなら、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。そうすれば特待生での条件での入学を認めましょう。”ということだ」

「…………気に入らないね」

 

 吾郎がすぐに反応をする。江頭の上から目線の態度がどうしても気に入らないということである。

 それについては大地も寿也も同意見だった。

 大貫もここまで言われて海堂に入ってくるとは思っていなかったため、3人の海堂入りは絶望であると実感した。

 

「……もし、もしうちに入ってくれるのであれば、それ以降の特待生の条件は俺が決めていいと言われている。

君達の考えている限りの要望に最大限近付けるようにしたいと思っている。……これが今俺に出来る精一杯の誠意だ。本当にすまない」

「……分かりました。大貫さんは悪くないです。ただ、もう少し考えさせてもらってもいいですか?」

「あ、ああ! この場で断られると思っていたから、それでも本当にありがたいよ。もし少しでも興味を持ってもらえるのであれば、10月に海堂(うち)でやるセレクションにぜひ来てほしい」

 

 大貫は頭を下げてそう伝えるとそのまま帰っていった。

 そして、3人はそのまま今の内容について話を続けることにした。

 

「……大地。なんであの場で断らなかったんだよ。あんなふざけた条件で俺らが海堂になんか行くわけねーだろ!」

「僕も同意見だね。完全に舐められているじゃないか」

「まぁ……ね」

「じゃあなんで──」

「──大貫さんのことも少しは考えてあげなよ」

「……あ?」

「上の人にあんなことを言われて、俺らにそれを伝えなきゃいけなかったんだよ? それがどれだけ大変で心苦しいことなのか吾郎には分かる?」

「…………」

「それを一時の感情で断ってどうするんだよ。今回は大貫さんのことを考えて保留にしたんだ」

 

 大地の言葉に吾郎と寿也は黙ってしまう。

 自分達のことしか考えていなかった──中学三年生では当たり前だと思うが──ことに対して、恥ずかしい気持ちになっていたのだ。

 怒りの発散場所をなくした吾郎が大地に続きを促す。

 

「じゃあどうするんだよ」

「んー、とりあえずセレクションを受けてみてもいいとは思うけどね」

「あ!? それだと海堂に入ることに決めたってことかよ!?」

「違うよ。てか一旦落ち着け」

 

 大地に睨まれた吾郎はビクッとしたあとに、深呼吸をして落ち着く仕草をする。

 寿也も吾郎の様子を見て、同じように深呼吸をして落ち着こうとしていた。

 

「大地君、どういうことか聞いてもいいかい?」

「あ、うん。一旦俺らの行動を整理するね。まず、海堂のセレクションは受ける。でもその後の特待生の条件が俺らの基準に満たない内容であれば、別の高校に行くでもいいと思うんだ。

海堂のチーフマネージャーとやらも、まさかここまで言われてセレクションを受けに来るとは思っていないだろうからね。……俺らをバカにしたことを後悔させてやろうぜ」

 

 あくまで冷静に、だが最後は吾郎と寿也をワクワクさせるような言い方で締めくくる大地。

 ここまで言われてようやく大地の思惑に気付いた吾郎と寿也の2人は、目を合わせたあと軽く笑って大地の提案に了承をしたのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 この年、シニアの全国大会で2年連続の全国優勝を決めた横浜シニア。

 ベストナインに選ばれた3人は、10月に行われる海堂のセレクションに参加するべく猛練習を重ねていく。

 そんな中学生活最後の夏休みのある日。大地達は海へ出掛けていた。

 

 初めは涼子から誘われて2人で行く予定だったのだが、どこで聞いたのか美穂もついていくと言い出し、流れで寿也もついていくことになり、それであれば吾郎と清水も誘おうということなり、結局6人で出掛けることとなった。

 

「じゃあ大地君達は海堂のセレクションを受けるんだ?」

「そうだね。せっかくだし受けてみようかなって」

「そっかぁー! 私も大地君と同じ高校に行きたかったなぁ」

「わ、私は大地さんがどの高校行ってもついていけますから!」

 

 電車の中で涼子と美穂が謎の張り合いをしているのを苦笑いで見ている大地。

 寿也も(美穂)の意外な一面を見て、同じく苦笑いをしていたのであった。

 

「吾郎。あんたも海堂のセレクション行くの?」

「ん?ああ、そうだよ。言ってなかったけか?」

「うん、今初めて聞いたんだけど……。そっかぁ、海堂かぁ」

「と言っても、他の高校に行くかもしれねーけどな」

 

 清水は吾郎が海堂のセレクションに行くことを聞いて、海堂の偏差値がどれくらいだったのかを頭の中で思い浮かべる。

 大地に勉強を教えてもらっている関係で、ある程度の高校であれば清水は問題なく行けるだけの学力はあったので、そこまで心配はしていなかった。

 

「美穂ちゃん、清水さん。もし俺らが海堂に入ることになっても、多分学校で会えることはないと思うよ」

「「え!? そうなの!?」」

「うん。だって野球部は一日中練習をしているし、全寮制なんだけど野球部は別の寮になるだろうからね」

 

 大地の言葉を聞いて、あからさまに落ち込む2人(清水と美穂)

 一緒に海堂に行って、楽しい高校生活を夢見ていた2人にとっては当たり前と言っても過言ではない。

 そもそも美穂に関しては年齢差的に──3歳差のため──同じ高校に通うことは出来ないのだが、そこは誰も突っ込まなかった。

 

「ま、とりあえず今を楽しみましょ!」

 

 そう言って大地はトランプを取り出して目的地に着くまで全員で楽しむのであった。

 

 

 海に到着して、着替えを終えた男性陣。

 海で訓練をするつもりでもあったので、準備運動を行っていると後ろから「お待たせ」と声が掛かる。

 そこにはそれぞれが選んだ水着に包まれた女性陣がいたのであった。

 

 大地は不覚にもその姿を見て顔を赤くする。

 涼子は淡いピンク系を基調としたビキニで、胸は平均的に成長しているが全体的にスラリとしており、野球をしていて鍛えているとは思えないほどの細さだった。

 美穂はスカートにフリルの付いたホワイトカラーのビキニで、胸こそ慎ましいものの、あと数年もすれば確実に美人になるのが分かる見た目であった。

 清水は原作のときに着ていた水着かと思いきや、表紙のカラーで出ていたような真っ赤なビキニだった。胸元の紐を結んで留めるタイプのもので、清水が着用するタイプの水着ではなかったが、3人の中では一番成長しているので──どこがとは言わないが──周りの男性陣も注目してしまうのであった。

 

「ちょ、ちょっと!いつまで見てんのよ!」

 

 大地は清水の声でハッとしたが、言われていたのはどうやら吾郎だったようで慌てて言い訳をしていた。

 自分が3人に見とれていたのを気付かれていないようだったのでほうっと息をついたところで、涼子と美穂に話しかけられる。

 

「ど、どうかな?」

「……似合ってますか?」

 

 大地は改めて2人の姿を見て再度顔を赤くしたが、今度は落ち着いて「2人とも似合っているよ。可愛いね」と素直な気持ちを伝えることが出来ていた。

 その言葉を聞いた涼子と美穂は恥ずかしそうにしながらも、お互いに顔を見合わせて笑顔で喜びあったのであった。

 

 

 その後、大地達は海で訓練をしようとしていたのだが、目を離した隙に女性陣が色々な男に声を掛けられていたので、訓練を中止して全員で遊ぶことに切り替えていた。

 初めは吾郎も文句を言っていたが、清水が声を掛けられていたのを見て何かを感じたのか、訓練が中止になることにすぐに何も言わなくなった。

 

 

 夕方になり、そろそろ全員で帰ろうかという話になる。

 大地が着替えを済ませて、帰りの準備をしていると清水と吾郎の話す声が聞こえてくる。

 なんだろうかと思い、声のする方向へ進んでいくと、2人は進学先の高校について話していたのであった。

 

「さっき大地から聞いたんだけど、海堂ってソフトボール部無いんだって……」

「そうなのか。まぁそれならしゃーねーな。清水は行きたい高校あるんだろ?」

「まぁね。聖秀ってところがソフトもそれなりに強くて無理せずに入れるかなって思ってる」

「……そっか。じゃあ俺らは高校からは別になるのか」

 

 吾郎の言葉を聞いて、清水は泣きそうな顔で吾郎を見る。

 しかし吾郎は後頭部を組みながら、優しく笑って話し続ける。

 

お前(清水)ならどこに行っても上手くいくさ。俺らと一緒に最高のチーム(三船リトル)を作り上げた一員なんだからな。

学校は違っても、()()()()()()()()()()()から」

「……うん。ありがとう」

 

 大地は2人の邪魔をしないように、そっとその場から立ち去るのであった。

 




原作をご存知の方だと、清水が吾郎のことを下の名前で呼ぶのは違和感ある方もいらっしゃると思うので、改めて説明をしておきますね。
リトルリーグ編で三船リトルのチームメンバーは大地と吾郎のことを下の名前で呼ぶことにしています。

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『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/

『テイルズ オブ デスティニー〜7人目のソーディアンマスター〜』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/218961/


『ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/226246/
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