なるべく早く寿也編の話に追い付きたいのですが、一緒の話数を投稿していると差が開くばかりで困りました。
そういえば、感想いつもありがとうございます!
きちんと拝読していますが、とても嬉しいです!
『MAJORで寿也の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216813/
「そういえばまだ自己紹介していなかったね! 俺は本田大地!」
「俺は本田吾郎! 大地とは双子の兄弟なんだ!」
「ぼ……僕は佐藤寿也だよ」
自己紹介をして、寿也にグローブの付け方を教える大地。
吾郎は少し離れたところでボールを持って準備している。
「そうそう! それでボールが来たら、よく見てこのグローブの中に入れてあげればいいんだ」
「僕に出来るかな……?」
「うん! 大丈夫だよ! 初めは捕れなくても気にしなくていいから、目を瞑らないようにだけ気を付けてみてよ」
そう言って、吾郎にボールを投げるように言う大地。
吾郎は待ってましたとばかりに思いっきり振りかぶって、ボールを投げ込む。
(あのバカ! 本気で投げて捕れるわけないだろうが!)
すぐに寿也の前に立って、代わりにボールを受け取る。
寿也はボールが全く見えないうちに大地が自分の前に立ってしまったため、呆然としていた。
「こら吾郎! まだ始めたばっかりの寿也君が、お前の本気のボールを捕れるわけないだろ! もっとゆっくり投げろ!」
「え……あはは! ごめんごめん!」
少し強めにボールを返す大地。
寿也に謝り、大地は横に移動する。今度は吾郎がすごいゆっくり投げてくれたおかげで、寿也のグローブにボールが収まる。
「あ! と……捕れた!」
「おお! やればできるじゃん! すごいよ!」
「そうだね! 初めてなのに、目を瞑らずにボールを見て捕ったのは本当にすごいと思う!」
今度は大地が寿也にボールの投げ方を教える。
本当に基礎だが、投げ込むグローブを見ること、足の位置とボールを腕の振り方だけを教えた。
(と……届くかな……?)
寿也は言われたとおりに精一杯力を込めてボールを投げた。
ボールは弱々しいが、真っ直ぐに飛んでいき、吾郎の構えたグローブにほとんどズレることなく入っていった。
「す、すごーーーーい!! ストライクだよ! 初めてボール投げてここに投げられるなんて……俺だって初めは投げられなかったんだよ!」
「そ、そお?」
「うん! 本当にすごいよ! 間違いなく才能あると思う!」
(佐藤寿也……やはり末恐ろしい才能だな。もし彼が野球をやっていなかったと思うと、野球界はどれだけの損失を被っていたんだろうか…)
大地は予測していたとはいえ、驚き、感心していた。
吾郎の才能はもう嫌というほど感じていたが、寿也は出会って初日で才能を開花させ始めていたのだ。
大地は負けられないと思いつつ、10球くらいキャッチボールをしたところで次に起こる揉めごとを回避するために動いた。
「そういえばさ、寿也君は家で何か宿題とかやることあるってさっき言っていなかったっけ?」
「……あ! そうだった! ドリル終わらせないとお母さんに怒られちゃう!」
「えー! そんなのやらなくていいじゃんー!」
大地がそんなわけにはいかないと、寿也を家に帰す。
明日もドリルを終わらせてから一緒に遊ぼうと誘うと、嬉しそうな顔をして「うん!」と言ってくれた。
「ちぇー! せっかく友達が増えたのに、何で帰しちゃうのさー!」
「寿くんもやらなきゃいけないことがあるからだよ」
「別に勉強しなくたって、おとさんみたいにプロ野球の選手になれるんだから別にしなくてもいいじゃんー!」
「吾郎……それでも寿くんには寿くんのやらなきゃいけないことがあって、それが向こうの
もし勉強していないせいで、お母さんに怒られちゃって俺らと野球できなくなったって言ったらどうする?」
吾郎は寿也と野球が出来なくなるのを想像して、嫌な顔になった。
それで少しは分かってくれたのだろう。その日以降、寿也の勉強に関して吾郎が何かを言うことはなくなった。
(これで大きな揉め事にはならないはずだ。グローブもこっちで回収したし。あとは寿くんのお母さんに見つかっても説得出来るくらいのことはしておかなきゃだね)
最悪、大地が勉強を出来ることを示したうえで、教えてあげる名目で友達になれば口を出しづらくなると考えているが、なるべく避けたいとも思っている。
小学校に合格すれば新しいグローブも買ってもらえるはずなので、今は我慢のときだと思いながら家に帰る大地であった。
「さあ、出来たぞー!」
「「わっ! 何これ!? すごいでっかい肉ーー!!!」」
吾郎と大地は双子というのもあり、声を揃えて目の前に鉄板に焼かれた大きな肉を出されて喜びの声を上げていた。
「食ったことねーだろ? これがビーフステーキってんだ」と嬉しそうに話す茂治だが、流石にステーキが高いのを知っている吾郎が心配をする。
だが、茂治は「ちゃんと次の仕事を見つけてきたから、心配しないで食え」と言い、吾郎を安心させる。
(ふふ……こいつら、俺の次の仕事場がバッターボックスだと知ったら、驚くだろうな……は、早く言いてぇ! でもまだ一軍に上がるまでは……)
「どうしたの、おとさん。どっか悪いの?」
「ああ、頭がちょっと……うるせえ!」
「俺、何も言ってないよーー!」
天然の振りとレベルの低いノリツッコミの親子漫才を隣で見ていた大地が、軽く笑った。
まだステーキに手を付けていない大地を見て茂治が、
「大地、どうした? お前は食わないのか?」
「ううん、食べるよ。……おとさん、おめでとうの言葉はまだ取っておくね」
不意に大地に言われた茂治は少し驚いた顔をした。
茂治は──もちろん千秋も──たまに大地が大人びた言動をするのを気付いていた。
それは吾郎の兄としてしっかりしないといけないという責任感からだと思っていたが、今回のように何かを見透かした発言が最近増えてきたため、なかなか隠し事がしづらいなと感じていた。
それでも自分の大切な息子だし、吾郎や茂治自身のことをどんなときでもフォローしてくれる大地を頼もしく思っていた。
◇◇◇◇◇◇
次の日以降から、空き地でキャッチボールしている大地と吾郎に寿也が混ざっていた。
ドリルなどの課題を終わらせてからの参加になるため、寿也は少し遅れてくることが多かったが、毎日迎えに行かなくてもきちんと来てくれる寿也に吾郎と大地は嬉しく思っていた。
「でやっ!」
ある日、寿也が投げたボールを吾郎が打ち、空き地を超えて飛んでいく。
「やりぃ! 場外ホームラン!」
「吾郎君! 上に打っちゃダメだって言ったじゃん! 今のが最後の紙ボールだったのに! また家に帰って新聞紙丸めて作らなきゃいけないじゃん! 笑っているけど、大地君もだよ!」
「「ご、ごめん……」」
バッティング練習もしたいという吾郎に対して、寿也が新聞紙を丸めて紙でボールを作ってきてくれたところから始まった。
上に打っちゃダメというルールでやっているが、吾郎と大地は盛り上がるとすぐに思いっきり打ってしまう。
いくら怒っても反省していないような態度なので、寿也は呆れてしまっている。
「でもさ、紙ボール打ったりキャッチボールしているだけだとつまんないね」
「え?」
寿也は野球をゲームでもするようになっていたので、ルールはある程度分かっていた。
9人1チームでやるのが野球なので、もっと広いところで友達集めてちゃんとした野球の試合がしたいと訴える寿也に、吾郎は無理だと言う。
「幼稚園の友達だって、サッカーやドッジボールはやるけど、野球は誰も知らないもん」
「そっか……」
落ち込む吾郎と寿也。しかし、寿也が思い出したかのように「草野球チームに混ぜてもらおう」と提案する。
寿也は線路の向こうにグラウンドがあり、ユニフォームを着た子供達が野球をしているのを見たことがあった。
吾郎と寿也は先ほどとは違って、明るくなりながら混ぜてもらおうと向かう。
「え……本当に行くの!?」
「いいじゃん! 大地も行こうよ!」
大地は乗り気ではなかったのだが、吾郎に引きずられるようにして連れて行かれる。
寿也も一緒について行く。
(吾郎ってめちゃくちゃ強引だよな。寿くんを初めに誘ったときもこんな感じだったし)
◇◇◇◇◇◇
「わあ! やってるー!!」
線路を越えて寿也があると言っていた場所に向かうと、確かに野球をやっている姿が見える。
吾郎と寿也は走って土手の階段を降りて、入り口のフェンスを開けて入る。
大地は未だに吾郎に引きずられたままだ。
「ねえねえ! 混ぜて混ぜてーー!」
「なんだお前ら! 試合中だ! 勝手に入るな!」
監督と思われる男性に注意されるが、吾郎は構わず混ぜて欲しいとお願いをする。
その隣に座っていた小学生の男子──男性から安藤と呼ばれていた──が出てきて吾郎達を追い出そうとする。
寿也は怖くなって「帰ろう」というが、吾郎は納得いかない顔をして、挙げ句の果てに試合の邪魔をして打席に立とうとする。
「図々しいガキだ! そんなにチームに入りたきゃ、9歳になってからうちの入団テストを受けるんだな!」
「なんでだよー!」
安藤という少年に引きずられて摘み出されそうになっていた。
吾郎が「野球が上手ければ、
「ご、吾郎君、大丈夫!? もういいよ! 帰って3人でまた野球をやろ!」
「「……やだ」」
「え……!? 大地君も!?」
寿也は吾郎に帰ろうと促すが、大地も含めて腹が立ったのか声を揃えて拒否をする。
いつもならストップを掛けるのが大地の役割だが、自慢の弟が嘘つき呼ばわりされるのは我慢ならないようだ。
吾郎と大地は目を合わせて頷くと、土手の階段を登り、一番上まで来て少し距離を取る。
「吾郎、いつでも準備はいいぞ」
「うん、行くよ」
大地は座ってキャッチャーのように構えると、吾郎が振りかぶりボールを大地のグローブに向かって投げる。
ボールがグローブに入ると大きな音を立てる。
そうしたら今度は吾郎が座り、大地が立ち上がる。
大地は同じように吾郎に向かってボールを投げる。
吾郎は大きな音を立てて大地のボールを捕ると、また立ち上がり大地にボールを投げる。
それをグラウンドで見ていた監督と小学生達はあまりのスピードに驚いている。
何回か交互に繰り返したあと、寿也も呼んで座らせて、吾郎の全力投球を捕ってもらう。
そのことにもグラウンドにいるメンバーは驚いていた。
「ねえ、これでも吾郎を嘘つき呼ばわりするの?」
大地は吾郎に代わって、グラウンドにいる監督達に声を掛ける。
90kmは出ているであろう球を見て、監督は思わず声を掛けてしまう。
「お、お前ら、
「5つだよ」
5歳と聞いて監督は金の卵を見つけたと思った。
今のうちに硬球に慣れさせておけば、将来プロ野球選手を育てられると興奮した。
「よ、よし! 分かった! チームに入れてあげよう!」
「え! 本当!? やったー! これで本当の野球ができるね!」
そう言って、吾郎と寿也は喜んで土手の階段を降りようとしたが、大地が行くのを止める。
急に止められて、吾郎と寿也はびっくりするが、2人が何かを言う前に大地が口を開く。
「すみません。俺たちをチームに入れてくれるのは嬉しいんですけど、リトルリーグは9歳からじゃないんですか?」
「……本来はそうだが、君たちくらい上手いのであれば、今のうちに硬球に慣れておくと成長した後にきっと役立つぞ!」
「それは……俺たちの身体がまだ出来上がっていない状態で硬球を触れさせても問題ないということですか?」
「そうとも!
監督が甘い言葉で大地達を誘惑してくるが、大地はとても冷めた目で監督を見ていた。
吾郎と寿也は早く野球をしたくて仕方がないという顔をしているが、大地の顔を見て困惑もしていた。
「ごめんなさい。やっぱり帰ります」
「ど、どういうことだい? 君たちがチームに入りたいと言い出したんだろう?」
「5歳の子供に硬球を持たせたらどうなるか、大人のあなたなら知っているでしょう!! その危険性を伝えずに自分のことしか考えない人と野球は出来ません!!」
大地は自分が子供の口調をするのを忘れるくらい怒っていた。
そして、吾郎と寿也を置いて歩いて行ってしまった。
「さ、さっきの子は帰ってしまったが、君たちはやるだろう?」
「……俺たちも帰るね」
「な! なんでだい!?」
「
そう言って吾郎も去っていく。寿也も少しホッとした様子で吾郎について行く。
「大地……」
少し歩いたところで大地が待っていたので、吾郎が話しかける。
大地は深呼吸をしたあと、2人の方を向いて頭を下げる。
「寿くん、吾郎! ……ごめん!」
「だ、大地君! 謝らなくていいよ! ちょっとびっくりはしたけど……」
「そうだよ! 難しくて何話しているか分からなかったけど、大地は俺たちのことを考えてくれてたんでしょ? むしろありがとうだよ!」
「寿くん、吾郎……ありがとう。俺、2人のことを考えていないあのおじさんを見ていたら、すごいムカついちゃって……」
あんまり難しいことは分かっていなかったが、吾郎は大地が怒ってくれたのは自分を守ろうとしてくれたことなのだということは分かっていた。
寿也は、今はびっくりしただけだが、あとで調べてみると大地の言っていることが正しかったことが分かり、感謝することとなる。
今日はこれで帰ることになり、夕食時に茂治にこのことを話したら怒られそうになったが、最後まで話したところで納得してもらった。
「だから今は吾郎や寿くんと一緒に少しずつ身体を成長させて行くことにするよ」
「……そうか」
後日、三船リトルの監督──安藤スポーツ店の主人──が本田家を訪れて茂治に謝罪をしていた。
茂治は何も無かったからと謝罪を受け入れた。
そして安藤監督は大地と吾郎に「9歳になってもしうちのチームに入ってもいいと思ってくれたら、ぜひ来て欲しい」と頭を下げていた。
『一定の年齢、一定の身体能力に達したため、ステータスを開放します』
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