ステータスの表記の仕方を変えました。
海堂高校野球部セレクションから1週間後。大地達3人は本田家に集まっていた。
今後のことで、3人にとって重大な問題が起きてしまったためだった。
「くそ、あのインテリ眼鏡め! あのときは大地のお陰でスッとしたけど、ぶん殴っておけばよかったぜ!」
「大地君、これからどうするの?」
「ん〜、それなんだけどさ……」
大地達は海堂への進学が出来なくなったことで、次の進学先を探していた。そう、文字通り
理由としては、この数日間に候補としていた5つの高校全てから「推薦の話をなかったことにしたい」と連絡があったためだった。
タイミングとしても確実に江頭が関係しているのは明白だった。
(あのとっつぁんボーヤがまさかここまで影響力があるとは……)
原作時、海堂を辞めた吾郎に対し、
しかし、それはあくまで海堂にいた生徒を引き抜いた疑惑を持たせるといった大義名分があって行われた妨害だった。
まさかすべての高校から推薦取り消しという判断をさせるだけの影響力があるとは思っていなかったのだ。
「正直に僕たちも油断していたね。あの人の妨害があったとしても、シニア大会で全国優勝もしている僕らを獲ってくれるはずだという慢心があったのは否定できないし」
「大地、どうするんだ? あそこまで啖呵切っておいて、野球部に入れませんでしただと格好悪すぎだぜ?」
「まぁ……ね」
大地は歯切れが悪い回答を繰り返していた。
自らの考えの甘さが招いたことだったので、今後の策に対しても自信が持てなかったのだ。
そこに1本の電話が鳴る。
「はい、本田です」
「おお、大地君かい? ……大貫だ」
電話の相手は大貫だった。今回の件での責任を感じているようで、謝罪を含めた電話だった。
「今回のセレクションは本当に申し訳ない。我々もまさか江頭さんがあそこまでのことをするとは思っていなかったんだ」
「いえ……それは仕方がないことだと思います。むしろ俺達も大人げないことを言っていたと思いますし」
「それだけじゃないんだ……もう気付いていると思うんだが」
「ええ、5つの高校からは連絡が来ました」
「江頭さんは君達から
大貫は申し訳なさそうに今回の詳細を大地達に教えていた。
実際にセレクションのときに、吾郎は江頭に殴りかかろうとしていた。大地が直前で止めたとはいえ、危険性が高い生徒を入学させる──しかも特待生で──ことは難しいという判断になってしまうのも無理はなかった。
もし、入学後に本当に暴力事件が起こってしまった場合、野球部の公式戦出場停止処分などもあり得るからだ。
「……そういうことでしたか」
「本当にすまない。今回のことで俺が出来ることがあるなら、何でもする。これは君達を裏切るようなことになってしまった俺からの誠意だと思ってほしい」
「分かりました。まぁそれなら仕方ないですよね」
「え……? そ、そんな簡単に諦めてしまっても良いのか?」
「もちろん諦めてはいないですけど、今から訴え出たところで各高校側の判断が覆るとは思えないですし。むしろ
大地が今後どうするべきなのかを悩んでいたのは、江頭が各高校に推薦を取り下げさせた名目が分からなかったからだった。
それが判明したことで、大地としても次に取るべき手が見えてきたのであった。
大貫との電話を終えた後、内容を吾郎と寿也に話したところ、吾郎は気まずそうな顔をしたあと、2人に対して勢いよく頭を下げる。
「大地、寿也……本当にごめん! 俺のせいでまさか推薦が取り消されてしまうなんて……」
「ん? ああ、それはもう仕方ないよ。それよりも次を見よう。その前に、寿くんは今でも俺達と同じ高校に行きたいって思ってくれてるかな?」
「……ふふ。ああ、ごめん。まさか吾郎君がこんな謝り方をしてくれたのが驚きでね。大地君の質問だけど、
あのとき海堂行きを断ったのは、君達と野球をしたいからなんだ。僕らは何も間違ったことはしていない。……だから正々堂々僕らの力で海堂を倒して甲子園に行こう!」
寿也は笑顔で大地達と野球がしたいと伝える。
その素直な言葉に大地と吾郎は胸を打たれ、嬉しそうに笑いながらも3人で頷き合う。
「ちょっとちょっと! 男3人で青春するのも良いんだけど、こっちには美人が3人もいるのにいつまで放っておくわけ?」
実は急遽集まったはずの本田家にはなぜか涼子、清水、美穂の3人も来ていた。
涼子と美穂は大地と仲良くなるために、休みの日は暇さえあれば本田家に来るようになっていたが、清水は今日初めて本田家の中へ入っていた。
初対面のときは涼子と美穂からライバルと疑われていたが、彼女の好きな相手が吾郎であると知ると──元々清水のさっぱりとした性格の良さもあり──少しずつ仲良くなっていき、今回も涼子に誘われて本田家に来ていたのであった。
とはいえ、もし清水の好きな相手が大地であったとしても、2人の性格からして清水と仲良くなっていたであろうが。
「そういえば先週のセレクション、わざわざ見に来てくれてありがとね」
「大地さん、とっても格好良かったですよ!」
「美穂……僕と吾郎君は見てくれてなかったのかい?」
美穂の言葉に苦笑いを浮かべる寿也。
セレクション当日、涼子達3人は大地達の活躍を見たいと言って外から見学をしていた。
先程も桃子を含めてその活躍を録画したシーンをテレビに映して騒いでいたところであった。
「それで、大地達はどうするか決めたの?」
「んー、いくつか考えはあるんだけどね。どうしようかなって思っているんだよ」
清水の問いに大地は答える。吾郎も寿也もその先が気になっていたので、続きを待つ。
「まずは、来年出来る新設校に行くって選択。それか、野球部がない高校に行くって選択かな。
どっちも
もちろん推薦を貰っている高校は他にも山ほどあった。しかし、江頭は今回のように行こうとした高校へピンポイントで邪魔をしてくるため、既に野球部が出来ている高校に入ろうとしてもいたちごっこになる可能性が高い。
何回も繰り返して全員が精神的に疲弊するのであれば、自分達で作るしかないという結論だった。
実は今回の件があってから、大地は選択肢の1つとして考えてはいた。しかし、江頭の妨害の内容が分からなかったため、すぐに言い出すことが出来なかったのだ。
その内容によっては、例え野球部を新しく作ったとしても試合への出場自体が出来なくなってしまえば意味がなくなってしまうからだ。
今回、大貫からの情報が
相手の仕掛けてくる内容が分かっていれば、きちんと対処が出来る場合が多い。
しかし、吾郎はまだちゃんと分かっていないため、当然の疑問を大地に投げかけてくる。
「でも、もし江頭の野郎にさ、今回の俺の件を大げさに問題にされたらどうするんだよ?」
「大貫さんの言っている内容なのであれば大丈夫だよ。だって、吾郎は
「そりゃあそうだけどよ……アイツが嘘つくかもしれねえじゃんか」
「そのときは高野連がきちんと調査を行った上で判断してくれるよ。幸いにも、あの場には大勢の目撃者もいるし」
(まぁ……
表向きの理由で吾郎は納得していたようだった。ただ、実際に大地達をハメようと思えば、全員で口裏を合わせることも出来なくはない。
それを含めても、大地にはまだ手があるようであった。
「まぁそこはちゃんと考えておくからさ。あとは、どこの高校に行くかだよね」
「条件としては、野球部がなくて大地君達が自宅から通えるところだよね?」
「そうだね。一応調べてみたんだけど、それなりにはあるんだ。ただ、家から通えるとなると……かなり少ないんだよね」
そう言いながら、大地は3つの高校を挙げた。それは全て私立高であり、なおかつ吾郎が少し無理をして勉強すればなんとか入れる可能性が高いところであった。
「なるほど……1つ目が新設校で、2つ目は元々野球部が無かった高校、3つ目は……あれ? これって女子校じゃないの?」
「ああ、そこね。元々女子校なんだけど、来年度から共学になる予定なんだよ。しかも体育科であれば、試験も実技と小論文だけで済むんだよね」
「え! そこいいじゃんか! 勉強しないで済むならそうしよう!」
「でもな、そもそもそこの高校に行こうとする男子生徒がどれくらいいるのかってのが問題なんだよ。初年度から大会に出るのであれば、
今は10月になっており、そろそろ志望校が固まっていてもおかしくない時期である。
吾郎としても勉強をしたくない──大地のお陰で成績はそこまで悪くはないのだが──と思ってはいるが、人数のことを考えると流石に悩ましいところであった。
そこで大地が広げていたパンフレットを何気なく覗いた清水が声を上げる。
「あれ? 今話してた
聖秀学院高校。それは原作でも清水が入学した高校である。
もちろん大地はそのことを知っており、吾郎は先日のプールで話を聞いていたはずなのだが、流石に高校名までは覚えていなかった。
「ああ、そういや清水はそんなこと言ってたっけな」
「いいじゃん! 聖秀って学校見学とかも行ってきたけど、かなり雰囲気良いところだったよ!」
清水は吾郎と同じ高校に行ける可能性があるのか、熱心に聖秀を勧めてくる。
その様子を見ていた人たちは──吾郎以外──全員すぐに気付き、清水の顔を見てニヤついていた。
清水も周りの反応に気付いたのか、顔を赤くしてどもったあと、俯いてしまった。
「まぁどこにするかはまだ決められる猶予はあるから無理はしないとしてさ、まずは俺らでも学校見学に行こうか」
「だな」
「そうだね。それから決めても遅くはないだろうし」
こうして大地達は3つの高校に照準を絞って、まずは見学に行くのであった。
そして、吾郎はどこの高校を選んだとしてもきちんと入学出来るように、大地と寿也のスパルタ受験勉強に対して悲鳴を上げる日々になっていたのであった。
◇◇◇◇◇◇
秋から冬に季節が変わり、年も明ける。今年はコートが手放せなくなるほど寒くなっており、受験生にとっては今後の進学先が試験で決まる時期になっていた。
海堂高校野球部長兼チーフマネージャーの江頭は、自身の部屋で1本の電話を取っていた。
「ええ、はい。分かりました。それならもう大丈夫でしょう。ありがとうございます」
電話を終えた江頭は、笑いを堪えるので必死だった。
今すぐにでも大きな声で笑い出したい。自身の策が上手くハマるときほど優越感と自尊心を満たせるものはないと思っている彼は、
しかし、これから人が来る予定だったため、不審に思われないように我慢はしていたが、どうしても口元が緩くなってしまっていた。
(まったく……油断すると笑いが止まらなくなりそうだよ)
そこに来訪を知らせるノックが部屋の入口の扉から聞こえる。
すぐに入室許可を告げると、入ってきたのは大貫であった。
「大貫さん、待っていましたよ」
「はい。どうされたのですか?」
「いやね、本田兄弟と佐藤寿也の入学先が決まったようなので、一応担当だった君にも伝えておこうと思いましてね」
「はあ……それで彼らはどこへ?」
江頭は大地達の進学先の高校を大貫に伝える。
すると大貫はある疑問を持ち、それをそのまま江頭へと質問するのであった。
それは、野球部がない高校へ行こうとしているということだった。
「ふふふ。そうです。彼らは野球部のない高校へ行くつもりなのですよ。私に屈したのか、それともそこで新しく野球部を作ろうとしているのか分からないですがね。
だが、例え作ったところで創部1年目の野球部に人数が集まるはずがない。もし仮に集まったとしても、そんな寄せ集めのチームでは
「はあ……そのために彼らの進学先に色々とされていましたからね」
「ああ、そうです。私に逆らうことがどういうことなのか身を持って理解してもらわないといけませんから。だから、
まぁ野球部がない高校では、そのレベルの内容だと確固たる証拠がないと難しいですが、名門校になればなるほど暴力沙汰で出場停止になる危険性があるだけで拒否してしまいますからね」
江頭は大貫に自身の行った内容を嬉々として話していた。
大地達を応援していた大貫にとって、それは苦痛の時間でしか無かったが、上司と部下の関係なので我慢して話を聞き続けることしか出来なかったのだ。
「それじゃあ私はこれで失礼します」
「はい。来年のスカウトもよろしく頼みますよ」
大貫は江頭の部屋を出た後、気分転換をするためにファミレスへと向かうのであった。
◇◇◇◇◇◇
更に時は過ぎ、大地達は3月の卒業式の日を迎えていた。
無事、進学先も決まった大地は三船東中学の卒業式を終えて、女子生徒に囲まれていた。
見た目が良く、頭も良い、運動神経も抜群で性格も基本的には穏やかで優しい大地は、中学生活でも同級生だけでなく後輩の女子生徒からも人気があった。
「あら、うちの大地ったら本当に人気なのね。あの子はこういうこと家で話さないから」
「そうですね。大地君は涼子ちゃんや美穂ちゃんだけじゃなくて、すごいモテますよ」
「それに比べて吾郎はあんまり人気がないの?」
「うっせーし! 俺だってそこそこ人気あるわ!」
「え……それ本気で言ってるの?」
「し、清水さ〜ん! しまいにゃ俺だって泣いちゃうかんな!」
大地を遠巻きに見ていた桃子の隣で清水と吾郎が漫才を始める。
実際に吾郎はモテないわけではない。見た目は大地と同じで、運動神経も抜群である。大地のおかげもあって、頭もそこまで悪いわけではないし、少しワイルドな性格を好きだという女子生徒もいるからだ。
しかし、それでも大地が完璧すぎたというのがあったため、比較してしまうと
大地は前世の記憶や経験から大人の余裕もあるため、実年齢15歳の吾郎では魅力に差が出るのは当たり前なのだった。
「それにしてもうちの大地は凄いわね。まさか勉強で
正確には特待生ではなく、優秀者のみが受けられる給付型奨学金を受け取ることが出来ていた。
条件としては非常に厳しく、成績優秀、品行方正、健康状態良好などの応募条件が付けられているため誰もが応募出来るものではない。
吾郎の成績では流石に厳しかったため、貸与型の奨学金を使うこととなったが、桃子へ金銭的な負担をなるべく掛けないようにしているのが理由であった。
(大地も吾郎も……結局私に気を遣っちゃって)
桃子は目に涙を浮かべながら、昔を思い出していた。初めに思い出したのは、幼稚園のときの大地と吾郎。
小学生と喧嘩をしていた2人や、茂治が帰ってこないためカレーを作って一緒に食べたこと。
そして、短い間であったが、茂治と一緒に過ごした日々。そこに幼い大地と吾郎がいたことは、今思い出しても素敵で温かい日々だった。
茂治の突然の死は、桃子1人では絶対に乗り越えられなかっただろう。大切にしたいという気持ちももちろんあったが、茂治の忘れ形見である2人とならきっと乗り越えていけると思えたからこそ、彼らを引き取ったのかもしれない。
小学生になっても、いつも良い子な大地とやんちゃな吾郎は変わらずだった。そんな中、弱小になった三船リトルを全国優勝に導いたのは間違いなく彼らの功績だったに違いない。
大地達の試合を見に行くのは桃子の楽しみの1つであった。
海堂付属中学のスカウトのときに、「おとさんが死んじゃったあと、血の繋がっていない俺達をここまで育ててくれた母さんを1人にするなんて絶対に出来ない……」と言ってくれた大地と吾郎の言葉にどれだけ救われたことか分からなかった。
彼らとならきっと上手くやっていける。大地達を引き取ったときから常にそう思っていても、子供を育てることに迷いを重ねる日々が続いていたのは否定できない。
しかし、彼らは徐々に成長していき、今回の海堂高校の件は、彼らは自分の力で乗り越えていってしまった。
(子供の成長は早いものね……茂治さん、私は大地と吾郎がいてくれてとても幸せです)
「……よかったら使ってください」
「清水さん……ありがとう」
桃子は清水から差し出されたハンカチで涙が
「なんだ、母さん泣いてたのかよ」
「なんだとはなによ。あなた達のことを考えてたら涙が止まらなくなっちゃうのよ」
吾郎の言葉に少し照れたように返事をする桃子だったが、いつの間にかやってきていた大地から手を差し伸べられる。
「母さん、これからおとさんのところに報告に行くんでしょ。いつまでも泣いていたら、おとさんに笑われちゃうよ」
「もう……大地まで……!」
大地はずっと家族みんなの笑顔を大切にしていきたいと思いながらも、茂治のお墓へと報告に向かうのであった
〜中学生編 完〜
【本田大地ステータス】
◇投手基礎能力一覧
球速:148km
コントロール:D+
スタミナ:D+
変化球:
ナックルカーブ:4
シュート:3
ウシケンスライダー:2
◇野手基礎能力一覧
弾道:4
ミート:D+
パワー:D+
走力:D+
肩力:D+
守備力:D+
捕球:D+
◇特殊能力
【共通】
ケガしにくさC 回復C ムード○
【野手】
チャンスC+ 対左投手D 盗塁D
走塁C- 送球C+
パワーヒッター 初球◯ 守備職人
流し打ち
【投手】
対ピンチC 対左打者D+ 打たれ強さD+
ノビC+ クイックC-
ジャイロボール キレ○ 回またぎ○
リリース◯
◇コツ
クロスファイヤーLV4 闘志LV4 広角打法LV4
勝ち運LV2 低め◯LV1
どこの高校に行くかは間話か、高校編の最初の話で分かると思います。
新章は間話を2つくらい挟んでからになるので、寿也sideをお読みの方はもう少しお待ちくださいませ。
1つはもしかしたら気付く方もいるとは思いますが、もう1つはまさか!という内容でお届け出来たらと思っているので、ぜひ予想してみてください(笑)
それではこれからもよろしくお願いいたします!