MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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今日は吾郎sideのみを投稿します。
12:00にもう1つ間話を載せますので、よろしければそちらもご覧ください。



間話 オリジナル変化球の習得

 これは海堂高校野球部のセレクションを終えて、2ヶ月後のことである。

 12月に入り、世間ではクリスマスシーズンで盛り上がる中、涼子や美穂はどうやってお互いを出し抜こうかと必死に考えを巡らせていた。

 

「…………えっ? も、もう一回言ってもらってもいい!?」

「えっとね、お父さんが後田(うしろだ)選手の高校時代の先輩でね、大地君達の話をしたら、ぜひ会ってみたいって言ってくれてるみたいなんだけど……会ってみ──」

「──会う会う!! 会うよ! 涼子ちゃんありがとう!!」

「……え? ええっ!?」

 

 涼子の父は元EL学園の野球部所属であり、NPBの広島大洋コープに所属している後田(うしろだ)健太(けんた)選手と野球部のOBの集まりで会った際に、次の期待の選手として大地達の名前を出したところ興味を持っていた。

 大地は後田(うしろだ)選手のファンであり、涼子の提案に二つ返事でOKを出し、喜びのあまり涼子を抱きしめてしまっていた。

 いきなり抱きしめられた涼子は、顔を真っ赤にして硬直する。

 

「だ……大地君……んんっ……」

「ちょ、ちょっと!! 私のいないところで何をしてるんですか!」

「え? あ、ご、ごめん!!」

 

 大地は美穂の指摘により、無意識に涼子を抱きしめてしまったことに気付いて、慌てて離れる。

 涼子は両腕で自身の身体を抱きしめながら、顔を赤くしていたが、それは嫌がるというよりも()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()であった。

 その様子を歯噛みしながら美穂は見ていたのであった。

 

「ず、ずるいです……私だってまだ大地さんにしてもらったことないのに……」

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 1週間後、都内某所にある練習グラウンドで後田(うしろだ)と大地、吾郎、寿也の3人は会っていた。

 

「ほ、本日は貴重な時間を作ってくださって、本当にありがとうございます!」

「「ありがとうございます!」」

「ああ、大丈夫だよ。こっちこそ時間を作ってくれてありがとね」

 

(後田(うしろだ)選手がこんな間近に……か、感激だ……!)

 

 大地は目をキラキラさせて、後田(うしろだ)のことを見ていた。

 吾郎と寿也はプロの有名な選手ということで、少し緊張した様子である。

 

「川瀬先輩から君達の話を聞いてね、興味があったんで時間を作ってもらったんだよ」

「こ、こ、光栄であります!!!」

「……ははは。そんな緊張しなくても大丈夫だよ。じゃあ早速なんだけど、アップしてから君達の球を受けさせてもらってもいいかい?」

 

 いつもとテンションが違う大地に後田(うしろだ)は笑いながらも、優しく一緒に練習をするためにアップをしていた。

 後田(うしろだ)はアップ中、終始大地達に優しく話し掛けつつも、彼らのことを観察していた。

 

(ふむ……確かに先輩の言うとおり、基礎能力のレベルは高いな)

 

 3人がシニアの全国大会で優勝したことも聞いていたため、西日本大会で優勝経験がある後田(うしろだ)は当時の自身と比較してもレベルが高いと感じていたのだった。

 そしてアップが終わり、肩が温まったあとに後田(うしろだ)はグラウンドのキャッチャーの定位置まで行き、腰を下ろす。

 

「それじゃあ、そろそろピッチング練習といこうか! 佐藤君はキャッチャーだったよね?」

「は、はい!」

「じゃあ君はこっちに来て、僕が彼らの球を何球か受けたあと交代してもらってもいいかな?」

 

 寿也は後田(うしろだ)のすぐ近くまで走っていき、まずマウンドに登ったのは吾郎だった。

 自分の力をプロの選手に見てもらえるということでテンションが上がっており、全力でジャイロボールを投げ込む。

 それはセレクションのときよりも速くなっているにも関わらず、後田(うしろだ)は難なくキャッチする。

 

「ナイスボール! もう何球か投げてみよう!」

「はい!」

 

 その後も吾郎は何球か投げて、唯一投げられるスローボールも披露した。

 全力投球との球速差には、後田(うしろだ)も驚いた表情をしていた。

 

「じゃあ次は、大地君! 投げてみようか!」

「はい! お願いします!」

 

 大地も同じようにジャイロボールを何球か投げ、変化球であるシュートとナックルカーブも投げる。

 吾郎のような驚きは見せられてはいなかったが、後田(うしろだ)とキャッチボールが出来ていることが大地にとっては夢のようであった。

 

(この2人……()()()()()()()()()()()()。吾郎君は確実に150km/h以上のボールを投げている。

変化球は投げられないようだが、スローボールとの球速差はプロでも簡単には打てないぞ。

大地君は全体的にまとまっていて良い。吾郎君と違って、何か決定的な武器があるわけではないが、そもそものレベルが中学生じゃないからね。

……これは川瀬先輩が逸材だというのも分かる)

 

 ピッチングを何球か見たあと、後田(うしろだ)は大地と吾郎に対して、現時点でのレベルが高いにも関わらずまだ成長の限界が見えない姿を見て末恐ろしさを感じていた。

 しかし、それ以上に今後の野球界を背負って立つ次世代の成長を頼もしく思うのであった。

 

「じゃあ次は僕が投げるから見ていて。佐藤君! 何球か投げるけど、捕るのが無理そうだったら言ってね!」

 

 さすがに中学生に自身の全力は捕れないだろうと思っている後田(うしろだ)は、最初はある程度セーブして投げていたが、寿也が難なく捕球するため面白くなり、徐々に力を込めて投げていく。

 最終的に全力でストレートを投げるが、それすらも問題なく捕る寿也に対して、大地や吾郎と同じ評価で見るようになっていた。

 

「佐藤君……すごいね。僕のストレートって中学生では捕れないって思っていたんだけど……」

「い、いえ。普段から吾郎君達の球を受けているのもあるかもしれないです」

 

 現時点で吾郎はMAXで152km/hのスピードで投げるようになっていた。

 後田(うしろだ)のMAXスピードは154km/hのため、寿也でもなんとか捕れるレベルではあったのだ。

 もちろんノビやキレなどは今の吾郎達とはレベルがまるで違うのだが。

 

「3人とも良いね。特別にこれから僕の()()()()()を見せてあげるよ」

 

 後田(うしろだ)は、3人全員が予想以上のレベルの高さだったことに気分が良くなり、自身の代名詞とも言えるボールを投げると告げる。

 そして、後田(うしろだ)はセットポジションからボールを投げる。

 130km/h中盤くらいのスピードで投げられたボールは、()()()()()()()()()、その変化量に寿也もミットでキャッチしきれず弾いてしまったのだった。

 

「これが僕の得意な球種──()()()()()さ!」

 

 大地達に振り返りながら笑顔で話す後田(うしろだ)

 本当はここまで見せるつもりはなかった。興味を持ったことは事実だが、一緒に練習をして顔合わせ程度になればという思いで会っていたのだった。

 しかし、彼自身が自分から決め球を見せるくらいに大地達のことを気に入ったのだ。大地達は「す、すげえ……」というテンプレートのような驚きしか出来なかった。

 

「このスライダーを……覚えてみたくはないかい?」

「「……えっ?」」

 

 後田(うしろだ)からの突然の提案に言葉を失う大地達。

 

「本当であれば中学生や高校生はもっとストレートを磨いたほうが良いんだけどね。

でももし覚えられるのであれば、それだけで相当な武器にはなると思うよ」

 

 その魅力的な言葉を断るという選択肢は、大地と吾郎にはなかったのだった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

「……とまぁ、こんな感じかな。これで何球か投げてみて」

「「はい!」」

 

 後田(うしろだ)の決め球──通称”ウシケンスライダー”──は通常のスライダーとは握りが違う。

 一般的にスライダーとはフォーシームの握りの位置を少し変えて、投げる際に中指でボールを引っ掛けるように投げる人が多いと言われている。

 しかし、ウシケンスライダーは()()()()()()()()で、投げる際に()()()()でボールを切るように投げるのだ。

 

 そうすることによって、手首の捻り方を変えるだけでボールの軌道や変化量も変わっていく。

 人差し指で切るようにして投げると、投げた瞬間のボールの軌道がストレートのように見えるため、バッターには変化球が来ることを早い段階で読まれないという長所があった。

 

 しかし初めて投げる変化球のため、大地と吾郎は何球か投げてみてもどうしても上手くいかない。

 後田(うしろだ)は苦戦している2人に対し、「もう少し左肩を我慢して投げてごらん」と伝えた。

 

「左肩ですか?」

「そう。なるべく左肩を開かないように我慢して投げると曲がりやすくなるかな。

あと、もう1つ。2人とも腕の振りが速いから、もう少し()()()()振るように意識するといいよ」

 

 大地と吾郎は、腕の振りのアドバイスに疑問を持った。なぜなら腕の振りが遅くなれば、それだけで変化球だとバレてしまうからだ。

 正直にその疑問をぶつけると、「あくまで()()()()だけなので、バッターから見て腕の振りが遅くなっているか分からないギリギリのラインを見つけると良い」と詳しく教えてもらうことが出来ていた。

 コツを改めて教えてもらい、交互に投げ続ける2人。

 

「おっ! 今の良いね!」

「本当ですか!?」

 

 吾郎がコツを掴んだのか、後田(うしろだ)に褒められる。

 そして、大地も吾郎に負けないようにコツを意識して何球か投げたとき、頭の中でアナウンスが鳴った。

 

 

『ウシケンスライダーのコツを得ました。ポイントを消費して習得が可能です』

 

 

 全国大会を優勝したときなど、たまにアナウンスが鳴ることはあったが、今回は特に集中していたので驚いて声を出しそうになる大地。

 

(い、いきなりアナウンスが聞こえるとびっくりするじゃんか……! で、でもせっかくだから覚えちゃおう!)

 

 大地は周りに気付かれないようにステータスを表示させると、目線だけで変化球の項目に移動をし、ポイントを消費してウシケンスライダーを習得する。

 ポイントはある程度溜まっていたのだが、ウシケンスライダーは習得する際の消費ポイントが他の変化球と比べてかなり多いことに驚く。

 しかし尊敬する後田(うしろだ)に良いところを見せたいあまり、衝動買いのようにポイントを割り振るのであった。

 

(急に曲がるようになっても不自然だから……まずは変化量を1つにして、最後らへんにもう1つくらい増やそう)

 

 パワプロ特典の恩恵は凄まじく、習得した瞬間からウシケンスライダーを投げることができ、最後には変化量をもう1つ増やすことで、さらに変化するようになっていた。

 吾郎は変化するものの、大地には及ばないレベルで本日の練習を終えていた。

 

「じゃあ今日はこのくらいかな」

「「「ありがとうございました!!」」」

 

 後田(うしろだ)と連絡先を交換し、家に帰宅する3人。

 帰り道だけでなく、家に帰ってからも興奮する大地達だった。

 そして、後田(うしろだ)は帰り道で、今日の出来事を振り返っていた。

 

(本田兄弟と佐藤寿也か……まさかあそこまでの逸材だったとはね。これは来年の高校野球が楽しみだ……!)

 




間話の1つ目は感想欄に書いてくださっていた方のとおり、オリジナル変化球です!
モデルになっている方はいるのですが、実はその方もMAJORが好きなんだそうです。
※この作品はフィクションです。実在の人物や団体などとは関係ありません。

前話の大地君のステータスがちゃんと更新されていなかったので、修正しています。

あと、前々からご要望があったので、12:00の間話の後書きに吾郎sideでの、吾郎と寿也の高校入学時点のステータスを載せますね。
そして、寿也sideでは『間話 メリッサの憂鬱②』の後書きに2人の高校入学時点のステータスを載せておきます。

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