MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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本日の8:00にも間話を投稿しておりますので、よろしければそちらもご覧くださいませ。



間話 海堂高校野球部セレクションの裏側※

 大地の江頭への啖呵で終わった海堂高校野球部のセレクション。

 しかし、そこにはある男の子も参加していた。

 

「おおお! ここでやんすか!」

 

 1人で海堂高校のグラウンドに入る男子中学生。

 本日セレクションが行われると聞き、なんとしても通過するのだという意気込みで参加していた。

 

(海堂野球部に入れば……オイラも活躍して女の子にモテモテでやんすよ〜!)

 

 頭の中はガンダーロボかアニメか女の子でいっぱいの青春真っ盛りの男の子。

 彼の名前は、矢部明雄という。眼鏡が特徴的なニヒルなナイスガイ──本人曰く──である。

 1人でアップしながらセレクション開始を待っていると、学校の放送のマイクから声が聞こえてくる。

 

「みなさん、こんにちは。本日は我が海堂高校野球部のセレクションに、ようこそおいでくださいました。

私、このセレクションにおける案内、進行役を務めさせていただきます、野球部編成担当部長の北川です」

 

 その声に矢部だけでなく、他の受験生も注目する。

 セレクションについて簡単に説明を受け、合格人数を最大5名と北川が話したとき、矢部は合格するのを諦めそうになる。

 

(ご、5人って……そんなの無理でやんすよ〜! どうせ落ちるなら、今から帰るとか? ……で、でもここまで来ちゃったでやんすし)

 

 ゼッケンを付けながらもずっと考えていると、北川から怒号が飛び、慌てて走り出す矢部。

 帰りたい気持ちを必死に抑えながらも、セレクションの第一次テストに参加するのであった。

 

 

 

「111、51、92、205、141、17、失格!」

「も、もう無理でやんすーーー!!!!」

 

 どんどん失格者が出ている中、矢部は懸命に走っていた。

 足の速さにはある程度自信があったのだが、それでもセレクションを受けに来る受験生はシニアで全国クラスの選手も少なからずいる。

 この場では自慢の足といってもそこまで凄いわけではなく、事実として矢部の後ろには先頭集団が迫っていた。

 

(無理でやんす! 無理でやんす! 無理でやんすーーー!)

 

 矢部は泣きそうになりながらも懸命に走り続け、トップが間近にまで迫ったとき、一次テスト終了の合図が出されるのであった。

 

「はあ……はあ……はあ……」

 

 矢部はその場で倒れ込み、一歩も動けない状態だった。

 しかし無情にも試験官から二次テスト開始の合図が出される。

 

(う、腕立て!? スクワット!? それもこれから千回なんて無理でやんすよ!!)

 

 矢部が何を思おうが、試験官には何も届かないし、仮に届いたところで何かが変わるわけでもない。

 もう帰りたいと思っているが、試験官が言う回数に合わせて必死に腕立てとスクワットを繰り返す。

 

(も、もう駄目でやんす……このまま諦めて帰りた──)

 

「──90番失格! …………13番、175番失格!」

「ひぃぃぃぃ! もう許して欲しいでやんすーーーー!!!」

 

 泣き言を繰り返しながら、失格者の番号が響く度にそれが恐怖で腕立て、スクワットを止めることが出来ず、なんとか千回クリアすることが出来たのであった。

 

(だ…………だめでやん……す……もう……)

 

「では引き続き三次テストを行う!! 全員後方の体育館に移動!」

「体育館!?」

「ええっ……もう動けねーぞぉ!」

 

 なかなか立ち上がらない受験生達に対し、「駆け足!!」と非情な言葉を投げかけてすぐに移動するように話す試験官。

 矢部はもはや考えることを放棄して、ふらふらよろめきながらも体育館へと移動していくのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 体育館に移動した矢部を待っていたのは、5段に積み重なった箱と等間隔に置かれているやかんであった。

 別の受験生が中を弁当だと確認後、三次テスト前の昼休憩だという声で安心する矢部。

 

(やったでやんす! こんなご褒美が待ってるなんて、今まで頑張ってよかったでやんす!)

 

 しかし、それが三次テストであり、30分で食べきらないといけないと聞いた矢部は絶望に打ちひしがれるのであった。

 

「位置について! 用意!」

 

 試験官の声で慌てて空いている席に座るが、弁当を開き、匂いを嗅いだところで彼の胃袋から何かがこみ上げてくるのを感じていた。

 

(こ……こんなの食えないでやんすよ……! は、吐きそうでやんす……)

 

 その直後、異議を申し立てる受験生がおり、それを心の中で応援する矢部であったが、試験官の持論に誰も反応出来ず、結果予定通り食べることとなってしまう。

 30分で仕出し弁当5つ。矢部にとっては中身を見なくても食べきることが無理だと分かる量だったのだが、開き直った彼は一心不乱に弁当を掻き込み始める。

 

(もうヤケでやんす! こうなったらヤケでやんすよーーーー!!!)

 

 

 

 

 

「残り1分!」

 

 残り時間が1分となったところで、矢部の目の前にある弁当はあと僅かとなっていた。

 リスのように食べ物を口に含んでもぐもぐさせている彼には、残りを口の中に入れることすら出来る気がしていなかった。

 

(は、吐きそうでやんす……もう無理でやんす……)

 

「残り30秒!」

「ん!? んぐっ!!」

 

 試験官の声に驚き、口の中に含んでいた物を全て飲みこんでしまう矢部。

 食べ物が喉に詰まり、急いでお茶で流す。

 

(あ、危なかったでやんす……でもこれならイケるでやんす!!!)

 

 運良く──かは分からないが──ギリギリのところで食べ切ることが出来た矢部は、セレクション三次テストを通過するのであった。

 

 

 ◇◇◇◇◇◇

 

 

 なんとその後の四次テストPK戦をも無事に通過した矢部。

 勘で飛び込んだところに偶然ボールが飛んできて止めることができ、彼が投げたボールがゴールポストに当たり、そのままゴールへと入っていったのであった。

 そして5列に並ばされた際に、これが最後のテストであると聞いた矢部は歓喜に打ち震えていた。

 

(や……やったでやんす! これをクリアすればオイラもモテモテ道をまっしぐらでやんす!!)

 

 しかし調子に乗った矢部には勝利の女神は微笑むことはなかった。

 トーナメント一回戦でCチーム相手に完敗。打席に1度も立つことなくテストを終えてしまうのだった。

 その後のCチーム対Eチームとの試合でも、選抜チームに選ばれた試合でも惨敗を喫してしまうのであった。

 

 

 

 

 矢部は帰りの電車で落ち込んでいた。

 海堂に入れば、女の子にモテモテになれると思い受けたのだが、最後の最後に入部のチャンスをものに出来ず、セレクションを失格となった。

 チャンスに弱い矢部明雄15歳。彼が報われる日は来るのであろうか。

 




横浜リトル時代以来の登場です!
五次テストのメンバー一覧で、彼の名前があったことに気付いた方は矢部君マスターです。
※ご存知ない方のために説明すると、パワプロの矢部君です。

次回から高校野球編に入ります。
次の更新は少しだけ空くと思いますので、気長にお待ちくださいませ。

【吾郎・寿也の高校入学時点のステータス】

■本田 吾郎 ステータス
◇投手基礎能力一覧
球速:154km
コントロール:C
スタミナ:C-
変化球:
ウシケンスライダー:1

◇野手基礎能力一覧
弾道:3
ミート:D+
パワー:D+
走力:C-
肩力:C-
守備力:D+
捕球:D+

◇特殊能力
【共通】
ケガしにくさC 回復C-

【野手】
チャンスD+ 対左投手D 盗塁D
走塁D 送球C+

【投手】
対ピンチB- 対左打者D 打たれ強さD+
ノビB- クイックD+

ジャイロボール 対強打者○ 緩急○
尻上がり 闘志 重い球 
威圧感



■佐藤 寿也ステータス
◇野手基礎能力一覧
弾道:3
ミート:D+
パワー:C-
走力:D
肩力:C-
守備力:D+
捕球:D+

◇特殊能力
【共通】
ケガしにくさC- 回復C- 選球眼

【野手】
チャンスD+ 対左投手D+ キャッチャーC+
盗塁D 走塁D 送球C

パワーヒッター アベレージヒッター 初球○
対エース◯ ブロック 守備職人
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