MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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毎日投稿4日目です。



第七十六話※

「あっはっはっはっは!!」

「いや〜、しかしまったくかたじけのうござるですよ、峯岸先生」

「いやいや、君の頼みとあっちゃ、断るわけにもいかんだろ」

 

 山田は帝仁高校の顧問である峯岸と帝仁高校グラウンドのベンチで話していた。

 以前赴任していたという繋がりで山田は練習試合を組むことが出来ており、久しぶりなのもあって早く来て挨拶をしていた。

 

「ん? うちの生徒が来たようなので、じゃあまた後ほど」

「うむ」

 

 大地達が来たため、席を立つ山田。

 山田がいなくなったのを確認した帝仁高校の生徒が一人、峯岸に詰め寄る。

 

「監督」

「ん? どうした?」

「どういうことですか、急にこんな試合入れるなんて……困りますよ、今日は昼から川実とも試合入れてるんですよ!?」

「まあそう言うな。仕方がないだろ、古い友人の頼みなんだから」

 

 本気で困った顔をした生徒に、峯岸は笑いかける。だが、それで納得はしなかった。

 

「しかも聖秀ってまだ一度も公式戦にエントリーしたこともない学校じゃないですか……そんなレベルの野球部と帝仁(うち)が試合になるわけないでしょう」

「……あそこにいるのが横浜シニアの本田兄弟と佐藤、それに海堂特待生に選ばれていた薬師寺、大場、渡嘉敷だとしてもか?」

「……あ、あの!? やつらは海堂に行ったんじゃ……!?」

「色々と事情があったんだろうよ。ただ、これなら試合をやる価値はあるだろう?」

 

 峯岸は何も言わなくなった生徒に、「それでも納得できないようであれば、川実の前のウォーミングアップだと思ってくれ」と言う。

 生徒も少しは腑に落ちたのか、頭を下げて練習に戻っていった。

 

◇スターティングメンバー

 

 1番:キャッチャー 佐藤寿也

 2番:ショート 本田大地

 3番:ピッチャー 本田吾郎 

 4番:サード 薬師寺

 5番:ファースト 大場

 6番:セカンド 渡嘉敷

 7番:センター 田代 

 8番:レフト 藤井

 9番:ライト 内山

 

 控え:宮崎

 

 

 

 スターティングメンバーは寿也、大地、吾郎が一番から三番に入るという超攻撃的布陣を敷いていた。

 これは大地の発案であった。通常であればこの三人は誰が四番になってもおかしくない。しかし、薬師寺と大場という強打者が後ろに控えているため、それであれば一打席でも多く回ってくるように調整したほうが、点が入りやすいという考えからであった。

 

 そしてスタートはベンチの宮崎も後で必ず出すと伝えているため、全員が緊張感を持った状態でスタートができそうであった。

 

「あの〜、じゃあそろそろ始めますか?」

「あ、はい。よろしくお願いします」

 

 人数の関係で帝仁側に審判をお願いすることとなっていた。先攻は帝仁高校。

 挨拶の後、吾郎達はそれぞれの守備位置に行き、各自準備を始める。

 

「ほお?」

「おーー、結構速い球投げんじゃん、あのピッチャー」

「打ちごろってやつか?」

「シニア大会全国優勝チームのピッチャーって聞いていたけど、所詮中坊上がりだからな」

 

 帝仁の選手たちは吾郎のピッチング練習を見て、笑いながら話していた。

 それをファーストにいる大場は冷めた目で見ていた。

 

(()()を本気の投球だと思っている時点で、自分達のレベルが低いと言っているようなものだな……)

 

 それぞれの準備が終わり、審判によりプレイボールの合図が掛かる。

 吾郎が構えてボールを投げ込む。

 寿也のミットに大きな音を立てて吸い込まれていったボールを見て、帝仁側の(とき)が一瞬だけ止まる。

 

「ス……ストライーーク!!」

「────!」

「な……何ィ!?」

 

 続けて投げ込まれる吾郎のボールに、打者は黙って見送ることしか出来ない。

 これには帝仁高校の選手だけでなく、監督の峯岸も口を開けてただただ驚いていた。

 

「ストラーーイク! バッターアウト!」

「こ、これが昨年全国大会を優勝した横浜シニアの優勝バッテリーなのか!?」

 

 

 

 結局吾郎の投げるボールにかすることが出来るバッターはおらず、一回の表は三者連続三振となる。

 

「素晴らしー! 素晴らしーですね、ノゴロー君!! ワタシ、こんな速い球を目の前で見たの初めてですよ!」

「いや、あんた練習で散々見てたじゃねーか」

 

 山田のボケとも分からない言葉に律儀にツッコミを入れる吾郎。

 なんだかんだで相性の良い二人のやり取りを大地は微笑みながら見ていた。

 

「まずは僕の打席からだね」

「おう、寿也! ささっとカマしてやってくれ!」

 

 調子の良いことを言っている吾郎に返事をしながら、寿也はバッターボックスへと向かう。

 久しぶりの試合ということもあり、寿也も嬉しそうな表情をしていた。

 

「プレイ!」

 

 ここから聖秀学院野球部の猛攻撃が始まる。

 一番の寿也がセンター超えのツーベースを放つと、続く大地がレフトオーバーのツーベース。三番の吾郎が左中間の柵を超えるツーランホームランで3-0。

 薬師寺、大場もソロホームランを打ち、一回表でアウトを一つも取れていない状況で5-0となっていた。

 

「はぁ、はぁ、はぁ……」

「タ、タイム!!」

 

 ピッチャーはまだ十球そこそこしか投げていないにも関わらず、青い顔をしながら息を切らしていた。

 峯岸は流石にまずいと思ったのか、タイムを取りマウンドまで自ら行く。

 

「お、おい、どうしたんだ? 調子でも悪いのか?」

「い、いえ……そ、そんなはずは……」

 

 強豪横浜帝仁高校でエースを務めるだけあり、球速もあり変化球も優秀であるはずが、大場までのバッター全員に何も通じていなかった。

 それもそのはずである。彼らが行っていた打撃練習では、大地がバッティングピッチャーをしていたのである。

 

 大地は高校入学時点で今まで貯まっていたポイントを割り振り、この一ヶ月でその能力を使いこなすために全員のサポートに注力していた。

 彼としては能力を使いこなすためにやっていただけだったのだが、それが全員からプラスの評価として受け取られた結果、キャプテンに推薦されたということに大地自身は気付いていなかった。

 

◇◇◇◇◇◇

 

【本田大地ステータス】

◇投手基礎能力一覧

 球速:151km

 コントロール:C+

 スタミナ:C

 変化球:

  ナックルカーブ:4

  シュート:3

  ウシケンスライダー:3

 

◇野手基礎能力一覧

 弾道:4

 ミート:C+

 パワー:C

 走力:C+

 肩力:C

 守備力:C

 捕球:C

 

◇特殊能力

【共通】

 ケガしにくさC+ 回復C ムード○

 

【野手】

 チャンスC+ 対左投手D 盗塁D

 走塁C- 送球C+

 

 パワーヒッター 初球◯ 守備職人

 流し打ち 広角打法 威圧感

 

【投手】

 対ピンチC 対左打者D+ 打たれ強さD+

 ノビC+ クイックC-

 

 ジャイロボール キレ○ 回またぎ○

 リリース◯

 

◇コツ

 クロスファイヤーLV4 闘志LV4 勝ち運LV4 

 低め◯LV3

 

◇◇◇◇◇◇

 

 このステータスの大地がバッティングピッチャーをしているのである。生きた球を投げ込まれる分、初心者組以外の成長度合いも凄まじかった。

 そしてそれは初心者組にももちろん適用される。

 

(あれ? これってもしかして……?)

(これは俺でも……?)

 

 渡嘉敷と田代がヒットを打ち、藤井と内山が緊張した初打席で粘るくらいのことが出来ていた。

 結果二人ともアウトになってしまったが、それは次の打席であれば打てるかもしれないと思わせるほどであった。

 そして寿也が更にホームランを打ち込み、8-0とほぼ勝利が決定したくらいの点差となる。

 

「宮崎、次の俺の打席で行くぞ!」

「え……! 急にかよ!?」

 

 まだ一回裏なのだが、大地が宮崎と代わると宣言し、突然の交代に困惑しながらも打席に向かおうとする宮崎。

 そこに大地がアドバイスをする。

 

「宮崎」

「な、なんだよ……」

()()だ」

「え……?」

「初球を思いっきり振ってこい。初心者組で誰よりも努力してきたお前なら絶対に打てるから」

 

 過去のトラウマからスポーツに対して忌避感を持っていた宮崎。

 本当であれば自分も皆と一緒にスポーツをしたかったのだが、自身の運動音痴のせいで馬鹿にされることが多く、それが彼をスポーツと疎遠にさせてしまっていた。

 

 しかし吾郎に説得されて入部した宮崎は、自分の能力の無さを分かっているため、この一ヶ月は誰よりも努力してきた。

 それは渡嘉敷達にも認められるぐらいである。だからこそ大地もそんな宮崎を徹底的にサポートし続けていた。

 そこまでしてくれた大地を宮崎は疑うことはなかった。

 

「…………分かった。初球だな」

 

 大きく頷いた宮崎。打席に立ち、もう試合を止めたいと思っているピッチャーを睨みつける。

 

(は、早くこんな試合終わってくれ……)

 

 後ろ向きな思いで投げられたボールは、宮崎にとって絶好球でしかなかった。

 

(初球! 初球……初球!)

 

 どんな球でも振ろうと思って、バットを思い切り振る宮崎。カキンと音が鳴り、彼は打球の行方を追わずに一塁目掛けて走り続ける。

 そして一塁を駆け抜け、どうなったのかを知ろうと周りを見たところで、聖秀ベンチから大きな歓声が上がった。

 

「うおおおお! 宮崎、ナイスヒットだ!」

「宮崎が打ったぞ!」

「素人組初ヒットだ!」

 

 打球はセンター前に転がるヒットであった。偶然でもなく、宮崎が今までの練習通り振り切ったからこそ出た結果だった。

 

「宮崎!!」

 

 ベンチから宮崎を呼ぶ大地の声が聞こえる。

 その方向を向くと、満面の笑みを浮かべた大地の顔があった。

 

「う……うおおおおお!!」

 

 そこで宮崎はガッツポーズをして、思い切り喜ぶ。

 自分で努力した結果が結びついたことが心の底から嬉しかった。スポーツで周りに認めてもらえたことが本当に嬉しかったのだ。

 

(やったな……宮崎!)

 

 大地も嬉しそうな顔をして宮崎を見るのであった。

 

 

 

 その後も試合は進んでいき、三回が終わった時点で監督の峯岸より「コールドゲームにしてほしい」というお願いもあり、練習試合は終了となった。

 聖秀学院高校野球部の初めての試合は、神奈川県ベスト四の横浜帝仁高校を相手に16-0という大差での勝利だった。

 




【小話:応援に来た涼子と美穂】

涼子
「え!? 大地君が一回でもう交代するの!? まだ始まったばかりじゃない!」

美穂
「そうですよ! なんで!?」

桃子
「大地のことだから、ヒット打った眼鏡の子にも出てほしいと思っていたのかもしれないわね」

涼子・美穂
「え〜〜〜〜!!! もっと見たかったーーー!!」

桃子
「まぁ試合はこれからもたくさんあるんだし、そのときに沢山応援してあげましょ」

涼子・美穂
「はーーーい……」

桃子
「(うふふ……本当に可愛い子たちね。どっちがお嫁さんに来ても文句ないわ。むしろ両方とも……)」
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