MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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毎日投稿5日目です。



第七十七話

「いや〜〜〜、まさにアン、ビリーバァブ〜〜〜〜!! まさか神奈川県ベスト四にコールド勝ちするとはなぁ!」

 

 ファストフード店でハンバーガーを食べながら話す藤井の言葉に、素人組や田代は笑いながら頷く。

 海堂組や吾郎、寿也は勝つのが当たり前だと思っていたため、話は聞いていたがそこまで喜んでいるということでもなかった。

 大地だけは藤井の言葉で中学時代の牟田(むた)という男を思い出していた。

 

「まぁとりあえずこれでグラウンドもなんとかしてくれるんだろ?」

「ああ、まぁ理事長はそう言ってたけどな。まだ正式に決まるまでは油断できないよ」

 

 理事長との約束は結果を出せるなら専用のグラウンドを用意しても良いということだった。

 結果とは何を指しているのかは曖昧ではあるが、神奈川県ベスト四に大勝できるだけの実力があれば、甲子園も可能性としてあり得ると判断されても特におかしいことはない。

 そのため全員が比較的安心しているのであった。

 

「それにしてもまさか全員がヒットを打つなんてな」

「それは俺も驚いたよ」

 

 薬師寺と渡嘉敷は、素人組の三人でさえもヒットを打つことが出来たことに驚いていた。

 いくら大地が鍛えたといっても、素人がたった一ヶ月で強豪校のピッチャーからヒットを打つなんて難しいと言わざるを得ない。

 

「大地が丁寧に教えてくれたからだよ」

「あ、それは俺も感じたな」

「そうだな。大地の教え方は分かりやすいから、俺でも上手くなっているって実感があったよ」

 

 内山、藤井、宮崎は口々に大地の教え方を褒めていく。

 実際にリトル、シニアで素人や後輩に教える経験があったため、大地はそれが活きていたのだろうと思っていた。

 

「まぁ俺が教えたことなんて基礎だから、三人が真面目に努力した結果だと思うけどな」

「答えが優等生! ガサツな弟とはなんでこんなに違うかねぇ──って、いてーって! 冗談だよ!」

「……誰がガサツな弟じゃ!」

 

 藤井が冗談で吾郎をからかった結果、後頭部を吾郎にはたかれてツッコまれることもあったが、聖秀野球部の仲は良好であった。

 

 

 

 家に着いて風呂に入り、夕食を食べていたとき、本田家に一本の電話が鳴る。

 

「大地ー! ちょっと出てくれない?」

「分かった! …………はい、本田です。」

「私、聖秀学院高校野球部顧問の山田と申しますが、大地君ですか?」

「あ、はい。どうされましたか?」

「実は……」

 

 このあと話された山田からの提案に、大地も少しだけ驚くのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「合同練習!?」

「ああ」

 

 次の日、朝から市営グラウンドに集まった全員に、山田からあった電話の内容を話す。

 

「昨日、山田先生から電話があってな。グラウンドに関しては、理事長が既に動いてくれていたから大丈夫みたいなんだ。

ただ、グラウンドが完成するまでもう少し時間が掛かるから、それまでは帝仁高校で合同練習をしないか? ということを言われたんだ」

 

 練習試合のあと、聖秀野球部のグラウンドの件を山田が帝仁の監督である峯岸に世間話程度に話したところ、峯岸の方から提案があったということだった。

 帝仁高校は打倒海堂を掲げながら、いつも大敗を喫していたためこの状況をなんとかしたかった。

 そこに一年生のみではあるが、海堂戦以上の点差で帝仁に勝った聖秀と合同練習をすれば、少しは何かが変わるかもしれないという一縷(いちる)の望みを頼りにしていた。

 

 一方、聖秀側としても強豪帝仁高校のグラウンドを使用できるという点、強豪と一緒に練習するということで学べる点は多いということからメリットは多いと山田は判断していた。

 そして市営グラウンドを借りるにしてもお金が掛かっているため、専用グラウンドを作ることが決まった以上、なるべく節約をしてほしいという理事長の意向も汲んでいた。

 

「そういうことか……どうする?」

「どうするも選択肢は無いんじゃないの?」

「まぁ強豪校の設備を使わせてもらえるのはありがたいな」

 

 もう五月。七月から夏の予選が始まるため、薬師寺達からするとできるだけ良い環境下で練習に励みたいという願望が見えていた。

 

「僕もそう思うよ」

「ああ、俺もそれでいいと思う」

「そうだな」

 

 それは寿也や吾郎、田代も同じ意見であった。

 

「きょ、強豪校と混じって練習するのか……」

「俺は……ちょっと……な」

「どっちにしろ俺は出れないしなぁ」

 

 藤井は少し戸惑いを感じており、宮崎は過去のトラウマもあるので明確でないにしろ反対していた。

 内山は家庭の事情があるため、どちらにせよ参加は出来ないのであった。

 

「んー、じゃあこうするのはどうだ? 藤井は強制参加。宮崎は自信がつくまで内山と一緒のタイミングで練習をする。それまでは自主練をしてもらうことになるけど」

「それなら……まぁいいか」

「練習相手が一人増えるのは俺としては嬉しいな」

「え……え? 俺は強制参加なの!?」

 

 大地としては強制的に参加をさせたくないため、宮崎には内山と一緒に練習してある程度実力と自信がついてきた段階で合流するという提案をした。

 宮崎もそれならばと了承し、内山は練習相手が増えたことを喜ぶ。そして藤井は強制参加。

 

「じゃあこれで山田先生には話しておくよ。他に質問とかはあるか?」

「ねぇ! 無視するなって! 俺、本当に強制なの!?」

 

 藤井の言葉を無視して、「じゃあ練習を始めようか!」と大地の号令で本日の練習がスタートする。

 大地が返事をするまで、藤井は叫び続けるのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 帝仁高校との練習試合から更に一ヶ月半の時間が経過した。

 この間、聖秀と帝仁は合同練習をすることでお互いの実力を高めていく。

 聖秀側は全員一年生であったが、練習試合での圧倒的な実力差から三年生達からも一目置かれており、下級生いじめやいやがらせのようなことは一切なく、むしろ積極的に交流を深めていた。

 その様子に大地も嬉しくなり、帝仁の生徒達の練習も見るようになった。その結果、帝仁高校の実力はメキメキと上がっていき、一ヶ月半前とは比べられないほどレベルが高くなっていた。

 

 聖秀側にとっても嬉しいことは多かった。練習場所の確保だけでなく、強豪高校の設備の使用許可。

 そして一番は週末に帝仁が組んでいた練習試合に参加出来るようになったということである。

 元々帝仁と練習試合に来た高校に、ダブルヘッダーとなるが聖秀も急遽参加させてもらうことが出来ていた。

 

 三つの高校で各二試合ずつ、参加していない高校は試合の見学が出来るため、それが勉強になることも多かった。

 帝仁の監督である峯岸も思っていた以上の相乗効果に、笑みを隠すことが出来ていなかった。

 

「それでは……今までありがとうございました」

「いやいや、こちらも凄い助かったよ。聖秀さんとはこれからも懇意にお付き合いさせてもらいたいね」

「ええ、こちらこそ」

 

 六月下旬に聖秀学院高校野球部の専用グラウンドが出来たため、本日が最後の合同練習であった。

 大地と峯岸は握手を交わしながら、夏の予選では頑張ろうと話をする。

 

「今の帝仁(うち)なら、海堂相手でも十二分にやっていける気がするよ」

「ええ、僕達もそう思います」

「とはいっても、その前にお互いに当たったら手加減はしないからね」

「はい、それはお互い様ですね」

 

 世間話の流れから海堂にされたことを大地から聞いた峯岸は、そのことを信じてくれて「絶対にうちが海堂を倒す!」と息巻くようになっていた。

 元々打倒海堂と言ってはいたが、心の奥底では諦めもあった。

 

 良い選手は海堂に行ってしまい、残りの選手を他の強豪で取り合う形になっていれば必然的に海堂以外の高校のレベルは下がってしまう。

 それが海堂一強という現状を生み出していたのは、否定できなかった。だからその現実を知っていた峯岸は表では海堂を倒すと言っていても、裏では諦めていたのであった。

 

 それが聖秀との合同練習でどんどん実力を上げる選手達や、チームとしてのレベルも上がっていくのを見て、まだまだ諦めている場合ではないと思い直すことが出来た。

 そのことに気付かせてくれた大地に心から感謝をしていた。だからこそ海堂に当たる前に対戦したら、お互いに遠慮はなしでという話をしていたのであった。

 

 

 六月下旬。これから本格的な夏が始まろうとしていた。

 




【小話:期末テスト】

大地(中間テスト学年1位)
「七月に期末テストがあるから、全員ちゃんと勉強しておけよ」

吾郎・藤井・渡嘉敷(中間テスト赤点組)
「…………」

大場(中間テストギリギリ赤点免れる)
「…………」

薬師寺(中間テスト順位は半分以下)
「も、問題ないだろ」

田代(中間テスト順位は真ん中らへん)
「ふん」

内山(中間テスト学年42位)
「ふふん、俺はそこそこ勉強も出来るんだからな。動けるデブを舐めんなよ」

宮崎(中間テスト学年8位)
「まぁ楽勝だな」

寿也(中間テスト学年2位タイ)
「定期テストくらいならね」

佐々木(中間テスト学年2位タイ)
「…………絶対に本田大地には負けないんだから!」
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