▼昨日の夜
寿也side:総合日間ランキング1位
吾郎side:総合日間ランキング8位
▼今日の朝
寿也side:総合日間ランキング3位
吾郎side:総合日間ランキング1位
…………え!?って思いました!
本当にありがとうございます!
これからも頑張ります!
聖秀野球部のグラウンドが完成し、横浜帝仁高校との合同練習を終えた数日後。大地達は聖秀学院高校の教室にいた。
《聖秀野球部 期末テスト対策勉強会》
黒板には期末テストの対策勉強会と書かれ、席には赤点組は当然として聖秀野球部員以外に清水となぜか他多数の女子生徒がいた。
定期テストで赤点を取ると、別日に補習授業が行われることになる。
中間テストはまだ良かったのだが、期末テストで赤点を取ると最悪夏大会の試合日に重なる恐れもある。
だからこそどの部活動も期末テストでは誰も赤点を取らないように、優秀者主導による期末テスト対策が行われるのがこの学校の伝統であった。
野球部には吾郎、藤井、渡嘉敷の中間赤点組の他に、ギリギリ赤点を免れた大場がいた。
藤井だけであればまだしも、吾郎達三人を欠いては戦力的に厳しくなるし、そもそも人数が足りなくて試合にすら出れなくなってしまう。
「……小学生のときから勉強は散々教えていたんだけどなぁ」
「し、仕方ねーだろ。苦手なもんは苦手なんだから……」
小学生の頃から勉強が苦手だった吾郎は、ずっと大地から勉強を教わっていた。
一時期成績が良くなると調子に乗って勉強をしなくなるため、すぐに勉強が出来なくなるという繰り返しだった。
もっとも勉強が出来るようになったといっても、平均の枠を越えることはほとんどなかったのだが。
「とりあえず内山と薬師寺は自分でやってもらって、分からないことがあれば俺達に聞いてくれ」
「そうだね。僕達は吾郎君達を中心に教えるよ」
「勉強だけでも負けないって分かるだけで、俺としては安心するよ」
成績優秀者の大地と寿也、そして宮崎が教える側に回ることによって全員で赤点を回避しようという作戦である。
「それにしても
一緒に勉強していた清水が、大地と寿也に不満を漏らす。
この二人は運動神経抜群で勉強も出来る。そして顔も良くて性格も穏やかで優しいという超優良物件のため、同学年だけでなく上級生達からもマークされていた。
実際にこの教室にいる女子生徒達は、二人を目当てに集まった者が大半であった。
「大地君〜! これってどうやってやるの〜?」
「寿也君〜! 数Ⅰが分からないの〜!」
終始二人を呼ぶ声が止まらず、しかし二人は邪険にすることもなかったため、それが更に彼らの人気に繋がっていく。
(……嘘つけ! あんた達の成績ならそれくらい分かるでしょーが! まぁ大地と寿くんの二人に注目が集まるのはこっちとしても助かるんだけどさ)
清水は媚びを売る女子生徒達に心の中で悪態を付きつつ、ちらっと目線を移動させる。
そこには高校に入って更に難易度の増した勉強に奮闘する双子の弟の姿があった。
吾郎は決してモテないわけではない。大地と双子というだけあって、顔は良いし運動も凄い出来る。
ワイルドな男性が好きな女子からすると、彼はどストライクであろう。
しかし彼が大地と比べてそこまで人気がないのには、二つの理由があった。
まず恋愛に興味を示していないということだ。これは単純にまだ恋愛というものがどういうことか分かっていないのである。
そのため女子に話し掛けられても、大地と違ってあまり良い反応を見せない。
だからこそ女性に優しく対応してくれる大地と比較されて、大地がモテてしまうのであった。
次に特定の相手がいると周りから思われているということだ。
他の女子に対してと、その子に対しての反応が明らかに違うため、付き合っているのだと判断されていた。
それでも吾郎にアプローチを掛ける女子もいるが、その時に限ってその子がすぐ側で助け舟を出すため、次第に諦めざるを得なくなるのだった。
吾郎も本当はその子のことを意識しているはずなのだが、本人が気付いていないため、
それでもその子にとっては吾郎の側にいることだけで幸せだったのである。
(仲の良い幼馴染でも仕方ないよね……今のこの関係が壊れちゃうくらいなら……)
そう思いつつも、デートに誘ったり、プールや海で大胆な水着姿を見せたりしている。
しかし最悪なのが、吾郎にとってはそれがデートだと気付いておらず、水着姿も健全な男子が持つ欲求を出す程度の効果しかなかった。
(もっと他にアプローチの仕方があるでしょうに……)
水着に関しては大地も苦笑いしていたが、吾郎の鈍感さを思えば仕方ないのかもしれない。
何度か吾郎の後頭部を無言でひっぱたいた大地は何も悪くないのである。
「ねぇねぇ……」
「あ! 果歩も気付いた!?」
「え、なになに?」
教室の端で勉強をしていた女子生徒が何人かコソコソ話をしていた。
その視線の先には、薬師寺に勉強を教える寿也と、その隣で吾郎に勉強を教える大地の姿があった。
「やっぱりダイトシかな!?」
「えー! 私はヤクトシも良いと思う! もちろん寿也君が受けね!」
「いやいや、ここはやっぱりダイゴロでしょ! 双子の兄弟で……じゅる」
どの学校に行っても腐っている人はいるのであった。
◇
「はい、そこまで! じゃあ解答用紙を後ろから前に渡して!」
ようやく期末テストが終わり、全員が安堵の顔をしていた。
いや、正確には
「……もう気にするなよ」
「だ、だっでぇぇ〜!」
大地は横で顔を机に伏せている吾郎に声を掛ける。
吾郎は泣きそうになりながら大地の方を向く。
「答え書くところを一つずつ間違えたのは不運でしょ。それにまだそう決まったわけじゃないし」
吾郎は初日の数学テストの解答欄に答えを一つずつ間違えて書いてしまったかもしれないと話していた。
最後まで埋めた段階で、解答欄が一つ余っていたのだ。
「……終わった。完全に終わった……」
ぶつぶつと嘆いている吾郎に大地は苦笑し、他のメンバーがどうだったのかを聞く。
「僕はいつもどおりかな」
「俺も問題ないね」
寿也と宮崎は問題ないと伝える。
「俺も大丈夫だよ」
「中学含めて今までで一番出来たかもしれん……」
内山も余裕そうで、薬師寺は過去で一番の出来だったと話していた。
田代と大場も問題なく赤点は免れそうだと言い、藤井はギリギリ大丈夫そうで、渡嘉敷は「た、たぶん……」と自信なさげであった。
「何が海堂を倒すだ……俺は大会にすら出られないじゃないか……」
「ま、まぁ数学だけなら先生に頼んで補習授業日をズラしてもらえばいいし、それがダメでも全部の試合が出られないわけじゃないんだから……」
寿也もフォローをするが、吾郎には何も響いていなかった。
家に帰ってからも「終わった……」とずっと言っている吾郎が面倒になり、桃子に任せて素振りに行く大地。
(多分今回も大丈夫だと思うけど……吾郎がダメだったらマジでどうしよ……いや、いかんいかん!)
吾郎のネガティブが移りそうになっていたが、すぐに首を振って否定し、その不安を素振りで吹き飛ばすのであった。
◇
【聖秀学院高校 一学年期末考査順位(上位100名)】
1位:本田(大) 996点
2位:佐藤(寿) 973点
3位:佐々木 972点
・
・
6位:宮崎 951点
・
・
・
28位:清水 901点
・
30位:内山 895点
・
・
51位:田代 821点
51位:薬師寺 821点
・
80位:本田(吾) 711点
「うわ、本田兄は中間テストに続いて学年トップだよ……」
「顔も良くて、スポーツも出来て、頭も良いって……なんなんだよ」
「ほら、3位の佐々木さんがずっと大地君と寿也君を睨んでるよ」
「……こわ! あの子、進学科のトップで勉強一筋だったもんねー!」
(……そうか。2問ミスったかー)
大地はケアレスミスで点数を落としていた。それでも体育科に所属している生徒が中間、期末と1位を連続で取ったことは、今までの聖秀の歴史の中で無いことであった。
そしてその横では吾郎は呆然としていた。
「……吾郎?」
「だ、大地……お、俺……」
「ああ、よく頑張った──って抱きつくな!」
「うおおおおおおお!!!!」
周りで一部の女子生徒が、本田兄弟が抱き合っているのを見て騒いでいる。
吾郎の数学のテストは、最後から二番目の問題の解答だけを飛ばしてしまったため、最後の解答欄が空いていたというだけあった。
家に帰ってもギリギリまで大地が教えていたとはいえ、まさか上位100名に入るとは思っていなかったのでさすがの大地も驚きを隠せない。
ちなみに大場はもちろん、渡嘉敷と藤井も赤点を免れ、野球部全員補習授業無しで夏の大会に挑むことが出来るようになった。
(三船東中のときから一度も勝てなくて……高校では絶対に負けないと思ってわざわざ同じ高校にまで来たのに……)
佐々木は涙が
【小話:クラスメイトの佐々木さん】
佐々木
「ただいまぁ……」
母親
「おかえりなさい。テストはどうだったの?」
佐々木
「…………」
母親
「もしかして……また負けたの?」
佐々木
「……うん」
母親
「でも一生懸命頑張ったんでしょ? それなら仕方ないじゃない」
佐々木
「でも! どうしても彼には負けたくなかったの!!」
母親
「(そんなこと言ってもねぇ……) そういえばどうしてそこまで本田君? に負けたくないの?」
佐々木
「だって……あんなに顔が良くて、野球のシニアの大会であれだけ活躍して、とても優しいのに勉強も出来るなんて悔しいじゃない……」
母親
「(……ん?) シニアの大会でってあなた観に行ったりしていたの?」
佐々木
「て、敵情視察よ! 相手に勝つために調べていたの!」
母親
「(はは〜ん、もしかして……) そうだったのね。次は勝てると良いわね」
佐々木
「絶対勝つわ!! 見てなさい、本田大地!」