MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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毎日投稿8日目です。
寿也sideは9:00に投稿予定です。



第七十九話

 そこから二回戦、三回戦と順調に勝ち進む聖秀野球部。

 二回戦は吾郎が先発として投げ、三回戦は大地が先発をした。三回戦はシード校が相手であったが、素人組をメインにした打線は問題なく機能し、順調に勝ちを拾っていくことが出来た。

 

「俺達が三回戦まで勝つなんてな!」

「いや、当たり前でしょ? このメンバーがいて三回戦程度で負けるなら、藤井が原因だよ」

「…………なんでだっ!?」

 

 藤井が喜んでいるところを渡嘉敷が水を差す。そして藤井がツッコミを入れるといった流れは聖秀野球部では鉄板ネタになっており、それがチームの雰囲気を良くする一因となっていた。

 その横で田代が試合結果を見ながら呟く。

 

「帝仁も海堂も順調に勝ち上がっているな」

「ああ、二校とも五回コールド勝ちってすげえな……」

「俺達、帝仁はともかく海堂が勝ち上がってきたときに勝てるのかな……?」

 

 内山と宮崎が不安を漏らす。帝仁は何度も練習試合をした相手をしており、勝率も高かったため勝てる自信はあったのだが、海堂に関しては直接対戦していないため、どれくらい強いのかが分かっていなかった。

 

「まぁ帝仁と当たる時にも偵察に行くし、とりあえず今は目の前の勝利に集中しよう!」

「そうだな! 藤井達もようやく試合に慣れてきたみたいだからな!」

 

 寿也と吾郎は次の試合相手に集中するように促す。ここからはシード校か、シード校に勝った高校しか残っていないため、強敵になってくる。

 大地も油断しないように偵察に行き、次の対戦相手の情報を集めたりもしていた。

 

「えっと、次の相手の瀬山総合なんだけど、シード校である横須賀西や布溝台を破っているところだ」

「瀬山総合なんてところ、聞いたことあったか?」

「いや、昨年は一回戦負けだったはずだ」

 

 昨年一回戦負けだった瀬山総合。そこがシード校を二校も破るとなるとなにか理由があるはずだと全員が思い、大地を見る。

 

「ああ、試合の偵察に行ってみたんだけど、本牧シニアにいた〝岡村三兄弟〟と戸塚西シニアの〝宇佐美球太〟、久喜シニアの〝上河内(かみがうち)〟がいたよ……」

「岡村さん!?」

「宇佐美って、あの宇佐美か!?」

 

 試合を見に行っていた大地は、リトル時代に対戦したことがある名前の選手がいたと伝える。

 同じ本牧シニアにいた田代と、対戦した選手で印象に残っている宇佐美の名前を聞いた吾郎は驚く。

 

「なんだ? そいつらは有名なのか?」

「いや、俺は少なくとも聞いたことがないな」

 

 薬師寺と大場は全国区ではない選手の名前を聞いても分からないため、特に興味は無さそうであった。

 

「岡村三兄弟はセカンド、ショート、センターのセンターラインを守っているんだけど、かなり守備範囲が広くて大体の打球はアウトにしてしまうかな。

宇佐美はピッチャーなんだが、速球とフォークが自慢の投手で、上河内(かみがうち)は典型的な強打者だな」

「そこまで選手が揃っていれば、三回戦を突破してもおかしくなさそうだね」

「ああ、もしかしたら次はかなり苦戦するかもしれないぞ」

 

 大地が各選手の特徴の説明をすると、寿也も聞いたことがある名前もいたため油断できないと話す。

 田代も苦戦するかもしれないとネガティブになりかけるが、渡嘉敷は両手を後頭部で組み、のほほんとした顔で全員に問いかける。

 

「でもさ、結局そいつらって大地達がいた横浜シニアに一度も勝てなかったんでしょ? なんでそこまで落ち込む必要あるの?」

「そ、そうなんだが……岡村先輩の実力を知っている側からすると──」

「大地達と比べてどうなの?」

 

 所詮は大地達に負けたメンバーでしかなく、全国区になっていない選手にそこまで警戒する必要はないと渡嘉敷は吐き捨てる。

 田代が反論するが、それに重ねて渡嘉敷が大地達と比べて上なのかと問いかけると、田代は「比べるまでもない」とすぐに断言した。

 

「でしょ? それなら最低限の警戒と対策をして、いつもの調子でやっていけばいーじゃん。もう少ししてきたらピッチャーも大地と吾郎だけが投げるようになるんだし、瀬山総合くらい俺が抑えるよ」

 

 渡嘉敷は下手に緊張してネガティブになると、全体のパフォーマンスが下がることを知っていた。

 そのため敢えて格上である大地達がチームメイトにいることを思い出させて、いつもどおりやれば負けないという空気を作り出そうとしていた。

 

「そ、そうだな! 甲子園に行くならこんな相手程度に(つまづ)いていても仕方ないしな!」

「ああ、そのために俺達素人組が足を引っ張らないようにしないと!」

 

 藤井と内山が明るい表情になり、宮崎もそれに続けて頷く。

 大地が渡嘉敷の方を見ると、目が合った渡嘉敷が微かに笑いながら軽く舌を出していた。

 

(渡嘉敷……助かったよ。そうだよな! 俺達はどんな相手でも絶対に負けるわけにはいかないもんな!)

 

 

 

     ◇

 

 

 

「それではこれから聖秀学院高校と瀬山総合高校の四回戦の試合を始めます」

「よろしくお願いします!」

 

 ◇スターティングメンバー

 

 1番:キャッチャー 佐藤寿也

 2番:ショート 本田大地

 3番:セカンド 本田吾郎 

 4番:サード 薬師寺

 5番:ファースト 大場

 6番:ピッチャー 渡嘉敷

 7番:センター 田代 

 8番:レフト 藤井

 9番:ライト 内山

 

 控え:宮崎

 

 

 全国高校野球選手権神奈川大会四回戦。聖秀学院は後攻のため、挨拶の後に全員が守備につく。

 打順はベストの状態だが、ピッチャーの吾郎とセカンドの渡嘉敷が守備位置を交代する形となる。

 

「…………舐められてるな」

「ああ」

「なんで本田兄弟が投げてこねーんだ!?」

 

 瀬山総合のベンチにいた岡村三兄弟は不満を全面に出していた。

 聖秀からするとただのローテーションでしかないのだが、瀬山総合からすると舐められていると受け取ってもおかしくはなかった。

 ただ三回戦までは大地、吾郎、寿也のだれか一人が一切試合に出ず、素人組中心のメンバー構成になっていたので今までの高校のほうが舐められていたのだが、それには一切気付いていなかった。

 

「球太、本田兄弟だよ」

「うん……なんで聖秀にいるのかは分からないけど、ようやくリベンジ出来るね」

 

 宇佐美と上河内(かみがうち)は本田兄弟との再戦を待ち望んでいた。

 本田兄弟が四年生の時に対戦して以降、一度も再戦の機会に恵まれず、人伝いや新聞などで二人の活躍を目にするだけであった。

 それを歯がゆく思っており、高校こそはと機会を伺っていた。

 

「なんにせよ、俺達〝恐怖のブラックトライアングル〟に球太と上河内(かみがうち)が加わったんだ。俺達に死角はない!」

「そうだ! さっさとあそこのピッチャーを引きずり下ろしてやるぜ!」

「それで本田兄弟を打ち崩してやるぜ!」

 

 大きく笑う岡村三兄弟。球太は心の中で高校生になってまで〝恐怖のブラックトライアングル〟は……と思っていたのだが、それを口に出すと怒るのでそれ以上は何も言うことはなかった。

 

「プレイボール!」

 

 渡嘉敷がいつもどおり振りかぶって外角真ん中にストレートを投げ込む。

 

「ストライク!」

 

 明らかに打つ気がない一番打者の岡村一郎。渡嘉敷は気にせずボールを投げ込んでいく。

 再度ストライクとなり、追い込まれるが少しも慌てた様子はなかった。

 

(なんだ……? 今の見送り方……)

 

 寿也は警戒し、一球だけボールを外すが、一郎はそれも見送る。

 それは見送るというよりも()()しているようであった。

 

(あー、そういえばあの三人って……)

 

 大地はようやく岡村三兄弟の特徴を思い出していた。

 一打席目はピッチャーの特徴と様子を観察しつつ、審判がどこをストライク取りやすいかなどを見極める戦術を取っていた。

 勝負は二打席目以降からのため、この打席で警戒してもそこまで意味はない。

 

「ストライク! バッターアウト! チェンジ!」

「よっしゃー! 三者三振!」

 

 渡嘉敷は三者三振で一回表を終える。

 全員が打つ気がなかったことに寿也は疑問を持ちつつも、ベンチに戻った大地から話を聞いて納得するのであった。

 

「ああ、そういうことか。それなら納得だね。あの見送り方は明らかに観察しているようだったからね」

「ま、次以降も打たせなきゃどってことないよ」

 

 渡嘉敷はベンチに座り、余裕の表情でドリンク補給をしていた。

 

(次は俺達の攻撃の番か……)

 

 ピッチャーはリトル時代に対戦した宇佐美球太。偵察したときもストレートも変化球もかなり進化していたので、大地は油断しないように気を引き締めるのだった。

 




これは予想してなかっただろうという人物が出ていた……はず!
もし予想していた方はぜひ感想欄で教えてください!
予想していなかった方も教えてください!笑
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