寿也sideは正午に投稿予定です。
一回裏、聖秀学院高校の攻撃。
一番打者は寿也。宇佐美のピッチング練習に合わせて素振りをしていた。
(……確かに速球派の良いピッチャーだね)
宇佐美は高校三年生で、今年が最後の年である。昨年までは上級生の出場が優先されていたため、試合に出る機会に恵まれていなかったが、上級生が一回戦で負けて引退してから頭角を現し出す。
現時点のスピードはMAX142km/hのストレートに、変化球はカーブとウイニングショットとして落差の激しいフォークを持っていた。
寿也は打席に入り、構える。
宇佐美はワインドアップから真ん中へストレートを投げ込む。
寿也はボールを見送り、ワンストライクとなる。続いて二球目を内角低めに投げ、寿也がカットし追い込まれる。
「ツーストライクで追い込まれたぞ……!」
寿也が簡単に追い込まれたことに、藤井が不安の声を上げる。
そして藤井のその不安は的中する。
「ストライク! バッターアウト!」
「球太、ナイスピッチング!」
宇佐美のフォークが決まり、寿也は三振となる。
その落差には、寿也もボールに触れることが出来なかった。
「ごめん、あのフォークは初見では難しかったよ……」
「ああ、確かにあれはキツいな」
寿也はバッターボックスに向かっている大地に謝り、ベンチに戻っていく。
(本田大地……来たな!)
宇佐美は大地を睨みつける。大地とこの後に続く吾郎にはリトル時代にホームランを打たれており、彼としてはどうしても負けたくなかった。
大地は睨まれているのに気付いていたが、バッターボックスに入っても特に気にしたような素振りは見せない。
宇佐美は振りかぶり、初球を内角高めに投げ込む。
大地は軽く仰け反ってボールを避ける。
「ボール!」
二球目は真ん中低めに制球されたカーブ。大地はそれをカットし、ファールボールとする。
カウントはワンストライク、ワンボール。続く三球目、四球目のストレートをファールにした大地であったが──
「ストライク! バッターアウト!」
五球目に投げられた宇佐美のフォークを空振りし、三振となってしまう。
三番の吾郎も前の二人と同じく、ツーストライクからのフォークを空振りし、一回は両チーム三者三振でチェンジとなった。
宇佐美は喜びのあまり、マウンドでガッツポーズをしていた。
「おいおい、佐藤だけじゃなくて、大地や吾郎も打てないのかよ……」
「あのフォークをどうやって打てっていうんだよ」
「…………」
大地達が打てなかったことに藤井、内山、宮崎の三人は、宇佐美の球を〝打つ〟というイメージを持つことが出来なかった。
藤井と内山は少し暗い表情で外野へと走っていく。
(まぁ……俺が打たせなきゃいいだけの話なんだけどね!)
渡嘉敷は二回表もヒットを打たせることなく三者凡退で終える。
宇佐美は二回裏も三者三振で抑えようとしたが、渡嘉敷がバントでボールを転がすことで連続三振だけは防いでいた。
「ちっ! 今のを三振できていたら、九人連続三振も見えていたんだがな」
「そうだな。だがまずはうちが点を入れてからだ」
「ああ。四回からが楽しみだ」
三回も渡嘉敷と宇佐美によって抑えられ、四回表の瀬山総合の攻撃が始まる。
打者は一番の岡村一郎。
(ここから俺達の攻撃を見せてやる!)
渡嘉敷は無表情のまま、振りかぶって内角低めにストレートを投げ込む。
一郎はそれをカットしてファールになる。
「……くくく、始まったな」
「ああ、お得意の〝地獄のバックファイアーピッチャー殺し〟がな!」
ここから渡嘉敷が投げるボールを
二球目、三球目、四球目とストライクゾーンに入るボールをカットすることで、渡嘉敷を疲労させていたのであった。
「ボール! フォアボール!」
十球以上投げさせられた渡嘉敷は、結局一郎を歩かせてしまう。
「ちっ! くそ!」
渡嘉敷は地面を蹴って悔しそうにしていた。
寿也は「落ち着け!」と渡嘉敷を
(ふふふ……
二番の岡村二郎は不敵な笑みを浮かべて打席に入る。
そして渡嘉敷の初球を狙っていたかのようにバントをする。
「バントだ! サード……いや、見送れ!」
三塁線上に絶妙なボールの殺し方でバントをする二郎。
寿也はボールが切れると判断し、薬師寺に見送るように言うがファールにならず、途中で止まってしまう。
「よっしゃああ! これで一、二塁だぜ!」
「このあとの三郎と
四回表で、この大会初めてのピンチになる聖秀野球部であった。
◇
「次は三番からだな。どうする?」
寿也がタイムを取り、内野手がマウンドに集まる。
薬師寺がこのあとどうするかを大地に尋ねる。
「んー、岡村三兄弟はここまで昔のときと全く同じ対応をしている。あり得るとしたら、
岡村三兄弟は一郎がカットで粘り、フォアボールで出塁。二郎がバントや盗塁などでかき回して、三郎が盗塁を警戒したストレートを打って点を取るということをしていた。
それはハマればとても強く、このあとの四番に控えている
ピッチャーも宇佐美を加えて強化されているため、本牧リトルのときと比べて選手の質が上がっていてとてもやりづらい相手になっていた。
「ま、だけどそれも
「……ああ。相手にしているのがそこら辺の高校と違うところをみせてやろう」
「そうだね、渡嘉敷も大丈夫か?」
「問題ないよ。打たせるからよろしく〜」
大地の話を聞いた吾郎がその程度であれば、問題ないと一蹴し、大場も追従する。
寿也が念の為渡嘉敷の様子を伺うが、既に落ち着いたようでこちらも問題なさそうであった。
それぞれが守備位置に戻り、試合が再開される。
「プレイ!」
(何を話しても俺達、岡村三兄弟を相手にしたら無駄なんだよ!)
一郎と二郎は足でかき乱そうとリードを大きく取り、今にも盗塁しそうな雰囲気を出す。
いつもであればここで牽制などをして、ピッチャーの集中を削ぐことが出来るのだが、渡嘉敷は完全に無視していた。
(なんだと? それなら走るまでだ!)
渡嘉敷がセットポジションから足を上げた瞬間、一郎と二郎が走り出す。
「盗塁だ!」
田代が声を上げるが、内野手は全員警戒していないように見えた。
しかし、ただの盗塁だけでは終わらなかった。三郎は渡嘉敷が投げた球を打ったのだ。
「ヒットエンドラン!?」
一郎が咄嗟にヒットエンドランのサインを出し、岡村三兄弟がそれを全員で実行した。
打たれたボールはセカンドの横を抜け、センターへライナーで飛んでいこうとする。
「行かせるかよっ!!」
その時、セカンドの吾郎が飛び込んでライナーをキャッチ。そのままグラブトスで二塁に来ていた大地にボールを渡し、大地がその勢いのままファーストにボールを投げる。
一郎も二郎も飛び出していたため、吾郎がライナーをキャッチしても戻ることが出来ず全員がアウトになってしまうのであった。
「ト、トリプルプレーだと!?」
「まさか岡村三兄弟が抑えられるなんて……!」
瀬山総合ベンチは驚きの声を上げていた。今までこのパターンで点を取れなかったことが無かったためだ。
大地は倒れている吾郎に手を差し伸べて起き上がらせると、ハイタッチをして聖秀ベンチへと戻っていくのであった。
本日で一周年記念の毎日投稿を終わりにしたいと思います。
理由は名前間違いや回数表記のミスなどのご指摘が多くなり、私としてもクオリティが保てないと判断したためです。
今後は不定期投稿に戻ります。
これで最新話を出したときにご指摘が減らなかったらごめんなさい!