MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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毎日投稿10日目です。



第八十一話

「ストライク! バッターアウト!」

「おっしゃー!! ナイスピッチ!」

「球太! ナイスフォークだ!」

 

 四回、五回、六回と両チームとも点を取ることが出来ずに終わる。

 特に聖秀は未だに()()()()()()()()を打ち崩せないでいた。

 

「…………」

 

 聖秀野球部は淡々と守備につき、淡々と攻撃を行う。

 その様子は応援に来ている人達から見ても不思議だった。

 

「ねぇ……涼子さん」

「美穂ちゃん、どうしたの?」

 

 桃子の横で応援していた美穂は涼子に疑問に思っていることを話す。

 

「大地さん達の攻撃って簡単に抑えられている気がしているんですけど、このままで大丈夫なんですか?」

「そうね。()()()()だとまずいわね」

「だったら何か対策をしないと……」

「それなら安心して大丈夫よ」

 

 心配する美穂に笑顔を見せる涼子。

 それは野球経験者が外から見ているから分かることでもあった。

 

()()()()()()()()()()()()()()()♪」

 

 笑いながらウインクをする涼子の言葉の意味が分からなかった美穂は、桃子と顔を合わせて首を傾げるのだった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

 瀬山総合野球部のベンチでは宇佐美が大量の汗を流して座り込んでいた。

 

「球太……大丈夫か?」

「……はぁ、はぁ……あ、ああ……」

 

 息を切らしながらもチームメイトに返事をする宇佐美。

 宇佐美はスタミナが無いわけではない。リトル時代から父親の指導で、一試合を完投出来るようにと走り込みを散々やらされていた。

 そして今までの三試合も問題なく投げ切っていたのだ。

 

「アウト! チェンジ!」

「……くそっ!」

 

 八回表の瀬山総合の攻撃が三者凡退で終わり、八回裏の守備のために瀬山総合の選手はそれぞれの守備位置につこうとしていた。

 しかし、宇佐美だけはベンチで座り込んだまま、立とうとしていなかった。

 

「う、宇佐美。チェンジだぞ……?」

「……ん? あ、ああ……そうか……」

 

 グラブを持って元気なく立ち上がり、疲労感を見せながらマウンドに向かう宇佐美。

 瀬山総合の監督はそこでようやく気が付く。

 

(そ、そうか……! 聖秀の選手達がやけに淡々としているなと思っていたが、()()()()()だったのか!)

 

 聖秀側は狙い球を絞っていた。正確には()()()()()を絞っていたのだ。

 宇佐美の球種はストレート、カーブ、フォークの三つ。彼のフォークに関しては、一朝一夕で打ち崩せるものではない。

 彼が小学生の頃から磨き上げてきた変化球のためだ。

 

 しかし、フォーク(それ)以外に関してとなると話は変わってくる。

 140km/h以上の速球を持つとはいえ、吾郎や大地のストレートに比べたら彼らにとって打てない速さではない。

 カーブに関してもフォークに比べてそこまで変化するわけでもないため、聖秀ナインからすると打ち頃の球種なのだ。

 

 そう、彼らは()()()()()()()()のだった。フォークを捨て、それ以外のボールを確実に打ちに行く。

 宇佐美にフォークだと抑えることが出来るが、それ以外では抑えることが出来ないと徐々に刷り込んでいく。

 その結果、フォークを多用することとなり、それ以外の球種を投げる時に少なくないプレッシャーを感じることになっていた。

 

 それが宇佐美に余計な力を入れさせることとなり、普段以上にスタミナを削る結果となった。

 精神からくる疲労は気付きにくく、気付いたときには今のように手遅れになっている場合が多い。

 

(このままではまずい……! ピッチャーの交代……を……!?)

 

 瀬山総合の監督はピッチャーの交代をしようとベンチを見るが、戸惑いの表情を見せる。

 宇佐美レベルの実力でここまで追い詰められているのに、()()()()()()()()()()()と悩んでしまったため動くことが出来なかったのだ。

 そこで悩み、戸惑い、動けなかったことが聖秀と瀬山総合の結果を大きく左右してしまうこととなった。

 

「おおおおお! 聖秀が打ったぞ! この試合初ヒットだ!」

「次の打者もヒットだ! 聖秀が一気に得点のチャンスだぞ!」

「あぁ〜! フォアボールだ! 瀬山総合は満塁のピンチだ!」

 

 聖秀は八回裏でようやく宇佐美を捉えることに成功した。

 連続ヒットでプレッシャーを与え、どこを投げればいいか分からなくなった宇佐美はフォアボールでランナーを出して更にピンチにしてしまう。

 ここからはもはや聖秀の独壇場だった。

 

 ホームランこそ出なかったものの、八回裏で打者一巡以上の猛打。

 七点目を聖秀が入れた時点でコールドゲームとなったのだった。

 

「7-0で聖秀学院高校の勝利です。互いに礼!」

「ありがとうございました!」

 

 瀬山総合は四回戦で姿を消すこととなる。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「聖秀が……ベスト八……だと……!?」

 

 海堂高校野球部長兼チーフマネージャーの江頭は、自身の部屋で新聞を読んでいた。

 海堂が先程ベスト四に勝ち進んだという報告のついでに聖秀がベスト八に入ったと聞き、自身の目で確かめようと新聞で結果を確認していたのだ。結果は11-0のコールド勝ちと書いてあった。

 今までの相手の高校と聞いたことがない相手であったため、トーナメント運に恵まれただけだと判断するが、彼にとって本田兄弟含む選手達がここまで残っていることが問題であった。

 

(……まぁいいでしょう。決勝まで来るのであれば、海堂(うち)のマニュアル野球で叩き潰せばいいだけの話です)

 

 江頭は心を落ち着かせようとコーヒーを口に含み、海堂の今後の対戦相手を確認する。

 

(次は横浜帝仁高校ですか……)

 

 横浜帝仁高校は神奈川の強豪でお互いに勝ち上がってくる関係上、対戦することが多い。

 しかし江頭にとってはもはや敵として見てはいなかった。今までの対戦成績は海堂の全勝だったからだ。

 

「聖秀が準々決勝、準決勝と勝ち上がってくるようであれば、海堂(うち)との格の違いを見せつけてあげましょう。万が一勝ち上がってくるようであれば……ですがね」

 

 新聞を置いた江頭は席を立ち、外の景色を眺めながら高笑いをするのであった。

 




毎日投稿終わったのでは?と、皆さんはきっと思われたと思います。
それ以上に、昨日の段階で毎日投稿が9日間って中途半端じゃない?と思ったに違いないです。

一周年記念の毎日投稿は終わりました。
本日はお気に入り登録6,000人突破記念です!

本当にありがとうございます!
皆様に支えられながら、ここまで来ることが出来ました。

完結まで頑張りますので、これからもぜひよろしくお願いいたします。
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