5分前に六話も投稿済みなので、良かったらご覧くださいませ。
第七話は明日投稿予定だったのに…やっちまいました(笑)
「わぁ! こんなおっきく出てるぅ!」
吾郎は今日のスポーツ新聞の朝刊に茂治が出ていることに喜び、大地と一緒に茂治に見せに行く。
部屋に入ると茂治は神棚に手を合わせていた。
「……おかさんに?」
「ああ、ちゃんとお礼を言わないと怒るからな」
「お礼って……?」
「ん? 打たせてくれてありがとう。これからも俺と大地、吾郎を見守ってくれ……ってな!」
大地はその言葉を聞いて、茂治の隣に行き手を合わせる。
吾郎も一緒に手を合わせていた。
茂治はその姿を見て、成長した我が子達を誇らしげに見ていた。
そのあと、新聞に出ている茂治を見たが、自身が3面にしか載っていないことを悔しがっていた。
◇◇◇◇◇◇
「大したもんだ。まったくたまげたぜ。確かにお前のセンスは買っていたが……まさかあの場面でいきなりホームランを打つとは恐れ入ったぜ」
「ははっ! たまたまフォークが落ちなかったからな。運が良かっただけさ」
「子供達も喜んだろ? なんつったっけ? お前んとこの双子」
「ああ。大地と吾郎と……それにお前がいなかったら今の俺は無かった。感謝してるぜ茂野」
「……ふん。礼なら俺の投げる今日の試合でも打ってくれ」
軽口を叩き合う茂野と茂治だったが、ここで茂野が茂治に再婚について話を持ち出す。
「再婚……!?」
「もう2年以上経ったんだ。千秋ちゃんだって許してくれるさ。子供のためにもその方がいーぜ」
(再婚かぁ……でも相手がなぁ……。それに、俺はまだ千秋が……)
茂治は子供達が千秋のお腹の中にいるときのことを思い出していた。
公園で千秋と子供の将来について話し合ったときのことだ。
茂治は思いやりのある優しくて強い子になってくれたら嬉しいと言い、千秋は親の背中を見て育ってくれれば大丈夫だと言う。
それが例え野球選手ではなくても、茂治のように夢に向かって頑張る子になるからと話していた。
そのときの幸せな気持ちを忘れられず…次に進もうとする足を止めてしまっていたのであった。
『打ったーーーー!!! 右中間真っ二つだぁーーー!』
8回裏、
その姿を桃子先生、大地、吾郎はスタンドで応援していた。
茂野が9回1失点の好投で、見事完投勝利で横浜が巨仁に2連勝となった。
「じゃあお先!」
「お疲れー!」
茂治が我先にと控室から外に出る。
そこには疲れて眠ってしまい、桃子先生に背負われている吾郎とその隣に立っている大地がいた。
(……ち、千秋!?)
茂治は普段と違い、髪を下ろしている桃子先生を見て、千秋の面影を見てしまう。
思わず見入ってしまい、桃子先生に「どうしたんですか?」と心配されてしまうが、必死に誤魔化す。
そして帰りを送って行くと言い、車の中で吾郎が茂治を褒めていたと伝える。
「吾郎君……私に言うんですよ。おとさん世界一かっこいーだろー!って……」
「いや……ははは。そんなにかっこよかったスかね……?」
「ええ……とても格好良かったですよ」
千秋に似た桃子先生に格好良かったと伝えられ、不意に胸が高鳴る茂治。
そして、以前大地と吾郎が「桃子先生なら新しいおかさんになってくれてもいいなぁ」と言っていたのを思い出す。
「星野先生……1つ変なことを聞いてもいいですか?」
「……え?」
「星野先生にもし子供がいたら……その子に将来何になってもらいたいですか?」
茂治は千秋と話したときの内容を質問にして桃子先生に聞いた。
この質問でやはり千秋とは違うと思いたかったのかもしれない。
しかし、桃子先生は少し考えた後に、
「そうですね……私は何になっても親の背中を見て育ってくれたら多分大丈夫だと思います」
その答えに茂治は驚き、この人しかいないと確信する。
そして、桃子先生の家に着いたときに意を決してデートに誘ったのである。
「あ、あの……! 先生……良かったら今度4人で動物園でも行きませんか……?」
「え……?」
「えっと、あの……そうです! 大地と吾郎のことをこんなに面倒見てもらっているのでお礼です! そう! お礼です!」
桃子先生は少し考えて、「わかりました。今度のお休みに行きましょう」とOKをした。
その返事を聞いて、桃子先生と別れて車に乗る。
(よ、よっしゃぁぁーー! デートに行くのをOK貰ったぜ! や……やったぁぁ!!)
(……俺、相当空気なんですけど)
1人喜ぶ茂治と、いないことにされて少し寂しくなっている大地がそこにはいた。
◇◇◇◇◇◇
「そりゃ、あんた狙われてるね!」
「……え?」
「当たり前じゃないの! 相手は子持ちでもまだ30歳の色男なのよー? あの双子ちゃんズが慕う幼稚園の先生と再婚を考えたって全然不思議じゃないわよ!」
「そっ、そんな……別に私はそんなこと……」
「あれ?何、あんたはその気もないのに動物園OKしたの?」
「そ、そうじゃないけど……私まだ本田さんのことよく分かっていないし……」
同僚で一緒に暮らしている美樹にからかわれながらも話していて、余計に茂治を意識してしまう桃子先生であった。
「あ、星野先生ちょっといい? 昨日園児の父兄から聞いたことなんだけど……」
園長先生から本田兄弟と横浜スタジアムに行ったことを他の父兄の方に見られていたと報告を受けていた。
大地と吾郎は母親がいないことは不憫に思うが、文部科学省管轄の教育現場である幼稚園の先生が贔屓していると思われる行動は取ってはいけないと注意を受けてしまう。
桃子先生はバツが悪そうにして、了承してしまうのであった。
その夜、動物園デートを断っているのを美樹に見られてしまい、
「なんだ、動物園断っちゃったんだ? バレなきゃいいと思うけどね。そりゃあ園長先生は立場上言わなきゃいけないんだろうけど。
……仕事と恋愛かぁ。桃子はあっさりと仕事を取っちゃうのね」
「そ、そんなんじゃ……!」
「でも今の感じだと、本田さんにもそう取られても仕方ないわよ。本田さんと先の可能性を少しでも考えているなら、ちゃんと伝えた方がいいんじゃない?」
美樹の無責任ではあるが美樹自身の気持ちをはっきりと言われ、桃子は何も言えなくなった。
そして少し考えて……決心したように顔を上げるのであった。
美樹はその様子を楽しげに見ながら、ビールを飲むのであった。
(他人の恋愛は楽しいわ! 特に桃子は慣れていなそうだから、ここで背中を押しておかないとね!)
美樹はお節介もあるが、単純に楽しんでいただけであった。
◇◇◇◇◇◇
茂治と子供達の休みの日、3人は動物園に来ていた。
「おとさん、おしっこー!」
「ほら、そこにトイレがあるから行っておいで!」
「俺も一緒に行くよ。行くぞ、吾郎!」
茂治は大地と吾郎を見送ってベンチに座って、色々と考えていた。
桃子先生に断られた理由を納得していた。確かに園児の父兄と仲良くなることは先生として良くないことだ。
それでも茂治は子供の将来について、千秋と同じことを言ってくれた桃子先生以外は考えられないと思っていた。
「本田さん……」
不意に後ろから話しかけられ驚く茂治。
そこには桃子先生がいた。
「ほっ……星野先生!? ど、どうしてここに!?」
「今日までずっと色々と考えていたんですけど……やっぱりいてもたってもいられなくなって…」
「でもまずいっスよ!こんなところまた誰かに見られたら……!」
桃子先生は慌てる茂治にどうしてもあって話したいことがあったと伝える。
茂治はそれを聞いても何がなんだか分かっていなかったが、桃子先生の言葉を待つ。
「もし……もしこんな私なんかで、本田さんと大地君、吾郎君がいいのであれば……半年だけ待っていただけませんか!?」
「え……?」
「2人が卒園する来年の3月まで……そうしたらもう堂々と3人に会えますから……」
勇気を出して話してくれた桃子先生の気持ちが通じたのか、茂治は深呼吸を1回すると落ち着きながら桃子先生に自分の気持ちを話した。
「はい。10年でも20年でも待ちます。待っています」
「……ありがとうございます」
そのあと桃子先生は去っていき、大地と吾郎は戻ってきた。
茂治は上機嫌で嬉しそうな顔で2人にアイスを買ってやるぞと言い、吾郎は喜んでいたが、
「おとさん」
「ん? どうした、大地?」
「良かったね。俺は応援してるから!」
そう言って先に行く吾郎を追いかける大地。
茂治は見られていたのかと思ったが、一緒に吾郎と帰ってきたのを見ていたからそれはないと考える。
(大地……お前は不思議な奴だな。まるで何でも知っているような奴に見えるよ……)
そう思いながら、吾郎に呼ばれて走って2人の元へ行くのであった。
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