MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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私は好きなのでたまに入れたいんですけど、あとがきの小話ってあっても大丈夫ですか?
恋愛部分や裏事情を本文に入れるのがなかなか難しくて……。

解説はあの有名な〝車さん〟です。
これで全部察してくれたら、とても嬉しいです。



第八十三話

〈さあ、夏真っ盛りのこの日に、神奈川県196校の頂点が決まるのです!〉

〈なんといっても今大会はまさかあの海堂高校が準決勝で敗退するという出来事がありましたからね。やはり一発勝負の高校野球は何が起こるか分かりませんなぁ〉

〈ええ、まさにそのとおりです! それでは二校のスターティングメンバーと特徴の紹介から始めましょう〉

 

 

◇聖秀高校スターティングメンバー

 1番:キャッチャー 佐藤寿也

 2番:ショート 本田大地

 3番:ピッチャー 本田吾郎 

 4番:サード 薬師寺

 5番:ファースト 大場

 6番:セカンド 渡嘉敷

 7番:センター 田代 

 8番:レフト 藤井

 9番:ライト 内山

 

 

〈先攻は聖秀高校です! 一番の注目はやはり横浜シニアで全国優勝をしている本田兄弟と佐藤寿也君の三人でしょう!〉

〈ええ、〝聖秀三連弩(ポリボロス)〟の三人は実力がずば抜けていますからね〉

〈情報によると、本田君は大リーガーであるジョー・ギブソンからホームランを唯一打った故本田茂治氏の息子さん達ということみたいですね〉

〈やはり才能を受け継いでいるのでしょう。もちろん本人達の努力も忘れてはいけません〉

〈ええ、ええ! その通りですね! 佐藤君もキャッチャーとしてだけでなく、バッターとしても才能に溢れている選手です!〉

〈はい、それに薬師寺君、大場君、渡嘉敷君と粒ぞろいのメンバーがなぜ創部一年目のこの高校に集まったのかも不思議でなりません〉

〈そこは諸説ありそうですね! 続いては帝仁高校の紹介です!〉

 

 

◇帝仁高校スターティングメンバー

 1番:セカンド 本間

 2番:センター 辻 

 3番:ファースト 中井

 4番:サード 橘

 5番:レフト 大和田

 6番:キャッチャー 児玉

 7番:ライト 植木

 8番:ショート 神埼

 9番:ピッチャー 石元

 

 

〈ここでの注目選手はやはり四番の橘君でしょう!〉

〈ええ、彼は大打者としての才能を持っていながら海堂に行かずに、あえて帝仁に行った選手ですね〉

〈そうなんです! 昨年までは海堂高校に惜しくも破れてしまっていたのですが、三年目にようやくリベンジを果たすことが出来たということでしょうか〉

〈そうですね。帝仁も昨年と比べてレベルがかなり上がっているので、どちらが優勝してもおかしくはないでしょうね〉

〈ありがとうございます! それではこれから神奈川県の頂点を賭けて、ここ横浜スタジアムで二校が激突します! 皆さん、ご注目ください!〉

 

 

 

     ◇

 

 

 

「それではこれから全国高校野球選手権神奈川大会決勝を始めます。二校とも悔いの無いように試合を行ってください」

「よろしくお願いします!」

 

 二校の挨拶が終わり、後攻の帝仁はそれぞれ守備につく。

 お互いに合同練習を行い、練習試合も何回も行っているだけあり、手の内は知り尽くしている。

 だからこそ聖秀の新しいグラウンドが出来てからどれだけ成長したかによって、勝負は分かれてくるであろう。

 

〈一番キャッチャー、佐藤君〉

 

 寿也が打席に入り、構える。

 そしてこの大会からエースナンバーを付けるようになった投手を見ていた。

 

(石元選手……彼は今二年生だったか。練習試合のときは三年生がエースをしていたけど、確かに合同練習のときからいい球を投げていたね)

 

 石元は、球威のあるストレートを中心に投げてくる本格的な速球派投手である。

 185cmを超える上背とガタイの良さから、これまでの対戦相手をことごとくねじ伏せてきた。

 そのやり方は海堂戦でも変わらず、見事完封に抑えたほどである。

 

(それでも甲子園に行くのは聖秀(僕たち)だ!)

 

 寿也は睨みつけてくる石元にたじろぐことなく、睨み返す。

 そして主審のプレイボールのコールで試合が始まるのであった。

 

「ストライク!」

 

 初球、真ん中低めのストレートを見逃す寿也。

 唸るように迫ってくる剛球に腰が引けそうになったが、きちんとボールを観察していた。

 寿也、大地、吾郎の三人は世間から〝聖秀三連弩(ポリボロス)〟と呼ばれるようになっており、その三人から始まる際の得点率が八割超えという結果を叩き出していた。

 

 本人達はそういう風にテレビで勝手に呼ばれていることを知り、止めて欲しいと恥ずかしがっていたが、薬師寺、大場、渡嘉敷──敢えて言おう、渡嘉敷だけだ──の三人はなぜ自分達も入れて聖秀()連弩としないのだと憤っていた。

 単純に大地達だけがやたらと注目されているということが悔しいだけであろう。

 なんにせよ寿也が出塁できるかはこの試合の流れを大きく左右するのだが──。

 

「右中間だ!」

「センター、追いつけるぞ!」

 

 石元が投げた二球目を捉え、右中間へとボールを運んでいた。

 打たれた石元や観客は完璧に打たれたと思っていたが、寿也は苦虫を噛み潰したような顔をして走っていた。

 

(()()()()()()! 完璧に打ったと思ったのに……)

 

 石元の球威に押され、スタンドまで運んだと思ったボールは途中で失速。

 センターとライトの間にポテンと落ちただけのシングルヒットとなった。

 この試合、油断はできないと寿也は気を引き締め直していた。

 

 その寿也の様子を観察していたのが二番打者である大地である。

 大地は〝聖秀三連弩(ポリボロス)〟の二番手として、器用に立ち回らないといけない位置にいた。

 寿也が出たあと、送るのか、ピッチャーを撹乱するのか、長打を狙うのか、はたまた違う手を狙うのか。

 単純な攻撃では読まれてしまうため、〝聖秀三連弩(ポリボロス)〟と言われるようになったのも大地の戦略、戦術の豊富さからと言っても過言ではなかった。

 

〈二番ショート、本田大地君〉

 

 大地は打席に入り、どうしようかと考えていた。

 石元は九回を投げ切っても余力があるだけのスタミナを持っている。

 それであれば球数を投げさせて体力を削ってもそこまで効果があるとは思えなかった。

 

(それなら調子づく前に点を取らせてもらいますかね)

 

 大地は()()()構え、相手との真っ向勝負をするような素振りを見せた。

 それは石元だけでなく、相手ベンチ、観客にまで伝わったようだった。

 

(真っ向勝負というなら受けて立つ!)

 

 寿()()()()()()()()()()のに誰も気付くことなく、大地に注目が集まる。

 そして石元が振りかぶって投げた初球──。

 

「ファール!」

「おおおお〜〜!」

 

 レフト方面への大ファールに、観客も思わず声を上げる。

 石元はボールの行方を見て、冷や汗をかいていた。そしてそれは()()()()()()()()()も同じであった。

 大地はちらりとその様子を確認したあと、先程と同じく大きく構える。

 

 真っ向勝負を受けて立つと思った以上、石元としては逃げるわけにはいかない。

 セットから足を上げた瞬間──。

 

「走ったぞ!」

 

 ファーストの中井の声で盗塁を警戒していなかったことに石元は気付く。

 しかしもう投球に入っているため、途中で止めるわけにはいかない。

 ショートとセカンド()()が動いたのを大地が確認し、()()()()()()を取る。

 

「バ、バントエンドランだと!?」

 

 ファーストの中井とサードの橘が走るが、先程の大地のファールのせいで()()()()()()()()()()ため、虚を突かれてスタートが遅れてしまう。

 三塁側に打球を上手く殺して転がし、大地は一塁へと駆け抜けていく。

 

「くそ、間に合わない! 見送れ!」

 

 キャッチャー児玉の指示で橘が転がったボールを見送るも、三塁線を切れることなく止まってしまう。

 だが、大地達の攻撃はこれだけではなかった。

 

「三塁! ランナー走ったぞ!」

「──なっ!?」

 

 セカンド本間の声で橘が気付き、すぐにボールを持って三塁に投げようとするが、()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「さ、三塁に誰もいないだと!?」

「橘も投げられず、これで無死(ノーアウト)一塁、三塁だ!」

 

 ここまでが大地の作戦であった。

 初めに真っ向勝負を促すような仕草を見せて、()()()()()()()()()。その後、大ファールを打つことでそれが本当であったと思い込ませ、守備陣に警戒心を植え付ける。

 ここまでは長打が来る可能性を考え、全体的に後ろを守らせることが目的だった。

 

 次に()()()()()()()()寿也が走ることで、ショートとセカンドを二塁に釘付けにする。

 そこで大地がバントエンドランを仕掛けることで、まさかの出来事に一瞬守備陣が固まってしまった。

 しかし、そこは強豪ということだけある帝仁はすぐにファースト、サードが打球処理に入り、ピッチャーがファーストのカバーへ入る。

 

 ここで問題だったのが、セカンドとショートが二塁に入ってしまったことである。そのせいでサードががら空きとなっていた。

 レフトが入れればよかったのだが、()()()()()()()()()()()()ため、それをすることも叶わない。

 

 そして寿也が二塁を蹴って誰もいない三塁へと走り、今の結果となったのだった。

 これは何回も練習していないと絶対に出来ないことであり、なおかつピッチャーの性格を把握し、大地が大ファールを打つ、守備の位置を確認して実行するなどの様々な要因が重なってようやく出来ることなのだった。

 

「こ、こんなトリッキーなことをわざわざ練習していたというのか……ま、まさか……」

 

 帝仁の監督である峯岸も呆気にとられていた。

 それは()()()()()も同じであった。

 

「アレ、本当に決まるんだ……」

 

 渡嘉敷の声に全員が頷く。二人で練習していたのは知っていたが、本番でしかも一回で成功すると思っている者は吾郎を除いて誰もいなかったのだ。

 

「……へっ、やっぱりうちの()()はすげえな。俺もやるしかねぇか!」

 

 気持ちが乗った吾郎は帝仁側の動揺に付け込み、センター前にタイムリーヒットを打ち、薬師寺、大場、渡嘉敷もそれに続き、初回で三点を得ることが出来た。

 なんとか持ち直した石元によって、それ以上点を取られることなくチェンジとなったのだが、帝仁側としては痛い失点となるのであった。

 




【小話:敵を知るためにはまず応援から①】

佐々木
「(一応野球のルールも覚えてきたけれど……大丈夫かしら?) あ、本田大地が出てきたわ!
え、今のはホームラン? あれ、ファールなのか。野球ってあんなに飛ばせるものなの?」

観客
「バ、バントエンドランだと!?」

佐々木
「え、え、え? バントエンドランってなに? なんであんなに帝仁高校側は慌てているの?
あ、あれ? いつの間にか点が入ってる! これは凄いの……?」

涼子
「美穂ちゃん! やったわ! 大地君の活躍で先制点獲得出来たのよ!」

美穂
「い、今のって……」

涼子
「えっと、今のはね……(大地の思惑を説明)」

美穂
「う、うわ〜! 大地さんって本当に凄い! そんなことまで考えてるなんて!」

佐々木
「(そ、そういうことなのね……あのプレーひとつでそれだけの裏事情があったなんて……本田大地、恐るべしだわ。あ、今のうちにメモを取っておきましょう!)」

桃子
「ふふふ……今のは吾郎のタイムリーヒットも良かったわよね、清水さん」

清水
「え、ええ! そうですよね! センター前に綺麗なヒットだったと思い……ま、ます」

桃子
「(清水さんったら、興奮しているのに気付いて恥ずかしがっちゃって……可愛いわね♪)」
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