ドラゴンボール 新たなHOPE! -もうひとりの戦士-
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〈さて、車さん。五回表の帝仁高校の攻撃が終わったところですが、どうでしょうか?〉
〈試合もどうなるか分からなくなってきましたね〜!〉
〈二回表に橘君が本田吾郎君からホームランを打ち、四回にも橘君を起点にして得点が入っていますからね!〉
〈石元君も良いですね〜。初回以降、〝
〈……えっと、高熱ですか?〉
〈ええ。39度9分で弓道休部! 3
〈…………以上、解説は車さんでした。引き続き、帝仁高校対聖秀高校の試合をお楽しみください〉
二回表に橘にホームランで得点を取られた後、吾郎は崩れることなく三人できっちりと抑える。
裏の攻撃で寿也と大地が出塁するも、吾郎が続くことが出来ずゲッツーとなり、薬師寺がフォアボールで出塁したのだが、大場が石元に三振に仕留められてしまったため、追加点を獲得することが出来なかった。
そして四回表、
続く五番大和田がライトとセカンドの間にポテンヒットを打ち、ツーアウトのため走り込んでいた橘がそのままホームインして3-2となった。
四回裏、五回表と両者ともに無得点で終わり、五回裏の聖秀高校の攻撃となった。
〈五回裏の攻撃です。四番サード、薬師寺君〉
薬師寺は打席に入って、構える。これまで薬師寺は初回のヒット一本だけだった。それも前の三人が出てくれたお陰で点が取れているが、自分からチャンスを生み出したりは出来ていなかった。
(くっ、
薬師寺は気付いていた。いつも〝
薬師寺は気付いていた。大地達の提案に乗って聖秀に来てから、彼らに偉そうなことを言う割には、それ以上の活躍が出来ていないことにも。
(このままじゃあ何のために海堂を蹴ってまで大地達に付いていったのか分かったもんじゃねぇ。甲子園に
彼が色々と考えているが、ゲームは進んでいく。
ピッチャーの石元はワインドアップからストレートを投げ込む。
薬師寺は真ん中低めに投げられたボールを空振りしてしまう。
(くそっ。
薬師寺は石元の投げる球が四回から変わってきていると大地達から共有を受けていた。
ボールのスピード、球の威力、変化球のキレなどが格段に上がってきていたのだった。
「ストライク!」
二球目もストレートを空振りしてしまい、もはや彼の中では石元の球を打てる気がしていなかった。
「タイム!」
ここで聖秀側からタイムが掛かり、薬師寺が俯いていた顔を上げると大地がベンチから出てきていた。
手招きをされたので、大地のところへ行く薬師寺。
「なんだよ」
「いやぁ……なんか打てません〜って顔してるなって思ってさ」
「なっ!?」
図星であった。そのため大地の言葉にすぐに反論が出来ず、俯くしか出来なかった。
「……実際そうだよ。あの球は打てる気がしねぇ」
「…………」
大地は黙って薬師寺の言葉の続きを待っていた。
「情けねぇって思うかもしれないが、何のためにお前の言葉に乗って
「おい、お前本気で言ってんのか?」
大地は低い声を出し、薬師寺の胸ぐらを掴んだ。
「そうじゃないだろ。 俺がお前を選んだのは、
「…………」
「俺は、俺達は
「────ッ!」
大地の言葉に薬師寺は何も言えなくなってしまう。
それは後ろに控えていた大場、渡嘉敷も同じであった。
「……お前なら打てる。一球あれば十分だろ? せっかくの決勝戦なんだから、余計なこと考えていないで楽しんでこいって」
手を離した大地は薬師寺のユニフォームを直して、そのままベンチに下がっていってしまう。
薬師寺は呆然としていたが、大場や渡嘉敷と目が合い、真剣な顔をしつつも苦笑いしている彼らを見て同じく苦笑してしまう。
観客達は大地の行動には驚いていたが、大声で叫んでいた大地の声は自分達の耳にも届いており、批判的な言葉を出すものはほとんどいなかった。
「そろそろいいかね?」
「あ、はい……」
主審が薬師寺に声を掛け、彼はそそくさとバッターボックスへと戻っていく。
「……あまりああいうことは良くないがね。チームメイトの信頼にきちんと応えてあげなさい」
打席に入る直前、主審が小さな声で薬師寺に話し掛ける。
大地が胸ぐらを掴んだところで、主審も問題行為として聖秀側に注意を促そうとしたのだが、大地の言葉を聞いて見守ることにしていた。
審判団はただ審判をするだけではなく、青少年の心を育むためにも存在していたのだ。
(…………俺は……俺は……)
薬師寺はなんてことを言ってしまったのだと心の中で恥じていた。
せっかく自分を信頼してくれていたチームメイトに対して、失礼なことを言ってしまったのだと気付いた。
(そうだ……俺達が活躍する必要はないんだ……! 俺達は、
大切なことにようやく気付いた薬師寺は、石元の投げたストレートを全力で振り切る。
大きな音を鳴らしながら、ボールはレフト方向へと飛んで行った。
「大きいぞ! レフト、下がれ!」
「入るか!? 入るのか!?」
レフトがボールをキャッチしようと走り続ける。
薬師寺はボールの行方を追いながら、走り続ける。
「入れ……入れ……入っちまえーーーっ!!」
薬師寺が大声で叫ぶと、ボールはその勢いを吸収したかのように飛んでいく。
そして、横浜スタジアムのレフトスタンドへ入るのであった。
「入れた! 入れやがった!」
「うおおおぉぉぉぉおお!」
聖秀ベンチが、観客が全員大声で盛り上がる。
薬師寺はダイヤモンドを回りながら、右手を上げてガッツポーズをする。
そして、ホームベースに戻ってきたところに待っていたのは、大地であった。
「……やれば出来るじゃん」
「…………ああ」
二人はハイタッチを交わし、一緒にベンチへと戻っていく。
そこでは聖秀のメンバーが薬師寺を揉みくちゃにしていた。
(ああ、そうだ……! 俺は、俺はこういう野球をやりたかったんだ……!)
ただ勝つだけではない。仲間を信頼して、信頼されて。そしてチームのために全力でプレーをする。
自分と戦って、仲間と戦って、そして相手と戦って勝つ。
そこで全員が苦しんで流した汗の分だけ、
このことに気付いたのは薬師寺だけではなかった。
「ここまでされたならな」
「俺達もなんとかしなくちゃ駄目でしょ?」
そこには目の色を変えた二人がいたのだった。
「あれ?」
「アウト! チェンジ!」
その後、大場と渡嘉敷がヒットで出塁し、田代が送って
「す、すまん……」
「おい〜ふじい〜」
「うう……」
「……まぁあのピッチャーから真芯で当てたことだけは褒めておいてあげるけど」
渡嘉敷はいつまでも素直にはなれないのであった。
【小話:敵を知るためにはまず応援から②】
観客
「おいおい、聖秀側って何か揉めてねぇか? 胸倉掴んだりしてんぞ!」
佐々木
「(え……? 本田大地がこんなところで暴力沙汰!?)」
大地
「俺は、俺達は
観客
「なんだ……励ましていたのかよ。一瞬焦ったわ」
観客
「俺も俺も! 高校野球で乱闘騒ぎかって!?」
佐々木
「(そ、そうよね……本田大地は
美穂
「すごいすごい! 大地さんに励まされてホームランを打っちゃった!」
涼子
「そうね! さすが大地くん! キャプテンとしても頼りになるわね!」
佐々木
「(え……本田大地の励ましでホームランを打てたってことなの……?
というか、本田大地ってキャプテンだったの!? メ、メモを取っておかなきゃ!
……よくよく考えたら、私の隣に座っている子達って本田大地の知り合いなの? すごい可愛い子たちだけど。
しかも……だ、大地くんって下の名前で呼んでるってことは、も、もしかして……!?)」
桃子
「ほらほら、はしゃぎ過ぎないようにね。暑いから飲み物もちゃんと飲むのよ」
美穂・涼子
「は〜い! でもお母さんも息子の大地(さん)くんが活躍すると嬉しいですよね?」
桃子
「あら? 大地だけじゃないわよ。吾郎が活躍しても嬉しいわよ。ね、清水さん!」
清水
「え、あ、そ、そうですね……!」
佐々木
「(お母さんって……本田大地のお母さん!? すごい若いじゃない!
しかもすごい綺麗だし……ま、まさかこんなところで
これは最後まで油断できないわね!)」