感想、全て拝見しております。きちんとご返信したいのですが、なかなか返す時間が取れずに申し訳ございません。
質問やご指摘に関してはなるべく先に返すようにはします。
ですが、温かい皆様のお言葉の方が私としては嬉しいです。
評価をお願いする際に一言コメントをお願いしていますが、そこも素敵な言葉ばかりでこれからも頑張ろうという気持ちになれます。
これからもぜひよろしくお願いいいたします。
※え?30分前にこの話が投稿されていなかったかって?そ、それは気のせいですよ!
〈さぁ! 帝仁高校対聖秀学院高校の神奈川県大会決勝ですが、ついに大詰めを迎えております! 車さん、どうなると思いますか?〉
〈これは……難しいところですね。本田君もスタミナ切れになってきているように見えますし、帝仁高校がやや有利といったところでしょうか〉
〈九回表、
〈ええ。聖秀に何か打つ手があればよいのですがね。まぁ難しいでしょう! やはり優勝は帝仁で決まりですね! 私が初めに予想したとおりになりました!〉
〈…………さて、決着が付いていませんのでどうなるかはまだ分かりませんが、最後まで目が離せない対決となりそうです!〉
九回表。吾郎は一番の本間を三振に仕留めて、
この段階で、聖秀側も観客も帝仁の何人かも聖秀の優勝を確信していた。
しかし、ここから事態が変わってくる。
吾郎が突然ガス欠したかのように球威が落ち、二番の辻にセンター前ヒットを打たれてしまう。
そして三番の中井を四球で出塁させてしまい、
ここで打席に立つのが、帝仁の主砲であった。
〈四番サード、橘君〉
橘は気合十分の表情で打席へと向かっていく。
寿也はこのままではまずいと思い、すかさずタイムを取る。
「ご、吾郎君……大丈夫!?」
「はぁ……はぁ……ああ、だ、大丈夫だ」
寿也は片目を瞑りながら汗を
このままでは負けてしまうと思い、俯いて少し考えたのち、顔を上げて吾郎へ提案する。
「吾郎君、彼を──」
「敬遠ならしないぜ?」
吾郎は寿也の言葉を遮り、敬遠はしないと伝える。
まさか予想されていたのかということと、敬遠を拒否された両方に対し寿也は目を見開いて驚いた。
「……なんだよ。まさか俺がそれくらい予想していなかったとでも言うのかよ?」
「……い、いや、そうじゃないけど。でもじゃあどうするの? このまま勝負しても打たれる可能性のほうが高いよ?」
「ああ、そうだな」
このままだと打たれてしまうと率直に伝えた寿也の言葉を、今度は肯定する吾郎。
ではどうするのかと吾郎に再度問いかけようとすると、吾郎が先に口を開く。
「……それでもな、俺は
吾郎は疲労困憊にも関わらず、寿也へと笑いかける。
もう自分には説得できない。そう判断した寿也はショートにいる大地へと顔を向けるが、大地はただ肩をすくめるだけだった。
(なんだよ、
「もし甲子園に行けなかったらさ……」
寿也の思っていたことに回答するかのように、タイミングよく吾郎が話す。
「行けなかったら……?」
「センバツ目指して、秋大会に向けて練習しようぜ」
吾郎のあっけらかんとした言葉に呆気にとられた寿也。
ポカンとした顔をしていたのだが、急に吹き出して笑い始める。
自分が何か言ったせいで壊れてしまったのかと心配した吾郎が、「と、寿也……?」と問い掛けるが、しばらく笑いっぱなしだった。
「……ふぅ」
「だ、大丈夫か、寿也?」
「……もう仕方ないよね。
寿也はひとしきり笑った後、吾郎の提案に乗って橘と勝負する覚悟を決めた。
そして、ボールを渡してホームへ戻ろうとしたとき、吾郎に声を掛けられて立ち止まる。
「ん? なに?」
「本当にいいのかよ? 打たれたらどうするんだよ?」
「なに、初めから打たれるつもりなの?」
「いや、そうじゃねーけどよ……」
万が一だってあり得るだろうと吾郎は言いたかったようだが、寿也は最後まで言わせずに吾郎へと振り向く。
「──そのときは
満面の笑みを吾郎へと向けた寿也は、吾郎の返事を聞くことなくホームへと戻っていった。
吾郎は寿也の笑顔を呆然とした様子で見ていたのだが、言葉の意味を理解すると「へっ」と笑いながら鼻をさするのであった。
寿也はキャッチャーグラブを構えたときの吾郎の顔は、この試合で一番集中しているようであった。
「感謝するよ」
「……何のことですか? 僕達は
橘は寿也の返事にわずかに笑い、バットを構えるのであった。
「プレイ!」
吾郎はセットポジションからジャイロボールを投げる。
真ん中低めに投げられた球を橘はカットする。
「ファール!」
ボールを受け取った吾郎は冷や汗をかいていた。脳裏に先程のホームランが残っていたからだ。
橘がバットを振るたびに、打たれたときのことを考えてしまうのだった。
(くそっ! 寿也には強気に言ったが、
吾郎は孤独の中で投げているような感覚に陥っていた。
我儘を言った時点で、打たれたら誰が何を言っても自分のせいになるからである。
「ファール!」
「ボール!」
「ボール!」
二球目もカットされたあとは、恐怖心が
(やべえ……う、打たれる……)
吾郎がわずかに俯いてしまう。これはほぼ誰も気付かないレベルのものであり、このスタジアムで気付いたのは
「……吾郎」
もうだめだと思ったとき、後ろから声が聞こえる。
決して大きな声ではなかった。だが、彼の耳には誰よりも透き通って聞こえた声だった。
(だ、大地……!)
吾郎に声を掛けたのは兄である大地。それも吾郎が諦めかけてしまう絶妙なタイミングだった。
大地は口パクで吾郎へと何かを伝える。
「……あ…………」
吾郎は大地のメッセージを受け取ったのか、目を瞑って深呼吸をする。
そして目を開いたときの彼は何かを決心したような表情であった。
吾郎は腕を上げ、
ランナーは一瞬目を疑ったが、すぐに一斉に走り出す。
「ファール!」
橘は真ん中に投げられたボールをカットする。
彼はカットをしたのだが、驚いた顔をしていた。
(な……! きゅ、球威が上がった……だと……!?)
吾郎は再度投げ込むが、橘は喰らいつきなんとかファールにする。
しかし、一球投げるたびに吾郎の球威と球速は上がり続けていた。
(な……なんてやつだ……)
橘は吾郎がこの打席で成長し続けていることに気付き、恐れを感じていた。
(だが、俺も帝仁の四番だ! 簡単に負けるわけにはいかない!!)
バッターボックスの外で一度素振りをして、真剣な顔をして打席へと戻る橘。
お互いに睨み合う
そして吾郎の
「
誰が発したか分からないその声に反応した大地は、ピッチャーライナーで二塁まで飛んできたボールに全力で飛び込む。
ダイビングキャッチした直後、立ち上がらずに上半身の力だけを使って、ファーストへ投げる。
その流れるような動作から投げられたボールは、一塁ランナーが戻る前に大場のミットへと収められたのだった。
この日、聖秀学院高校は史上初となる創部一年目で夏の甲子園出場という快挙を達成した。
【小話:試合後】
佐々木
「(……す、凄かったわ。最後なんて、これが本当に
観客
「最後は凄かったねぇ! ショートがピッチャーの横をライナーで飛んでいったボールをダイビングキャッチだもんなぁ!」
観客
「いや、ほんとほんと! それにその後も凄かったよな! まさか上半身だけ起き上がって、その力だけでファーストにビューーーンだもんなぁ!」
観客
「そうそう! あんなのメジャーでしか見たことなかったよ! 超高校級ってやつだね」
佐々木
「(や、やっぱり最後の本田大地のやつは凄かったんだ……みんなそのことで興奮して──)」
◯◯
「あの……すみません」
佐々木
「(もうやばいわね。家帰っても熱く語っちゃいそうだわ!)」
◯◯
「あの!」
佐々木
「(……え? 私かしら?) は、はい?」
◯◯
「私、こういう者でして……突然なのですが、アイドルには興味ないですか?」