MAJORで吾郎の兄になる   作:ねここねこねこ

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活動報告にはお伝えしましたが、大変遅くなって申し訳ございません!
多分今週の土日も更新できるか分からず……来週の連休は更新頻度高めに出来たら良いなと思っています!

あと、今日の投稿に間に合わせるように書いたので、投稿と同時に改稿も始めます!
多少の誤字脱字は見逃してください!



第八十九話

(おとさん、おかさん……俺達、甲子園に行ってくるよ)

 

 本田家の墓の前には桃子、大地、吾郎の三人がいた。

 桃子は座って手を合わせ、大地と吾郎はその後ろに立ちながら、茂治と千秋に対して挨拶をしていた。

 

「…………それじゃ、帰ろっか」

「そうだね」

「……ああ」

 

 明日、大地達は甲子園球場へ向けて出発をする。

 海堂高校──江頭のみ──に喧嘩を売った約一年前。絶対に甲子園へ行ってやるという気持ちで、その後薬師寺達を勧誘して聖秀学院高校へと入学した。

 練習するグラウンドが無い。九人集まるかも分からない。

 

 そんな状態で、たった四ヶ月。たった四ヶ月で甲子園へ行くことが出来たのだ。

 これを快挙と言わずになんと言うことができるであろうか。

 

 海堂高校が破れたことは大きなニュースとなっていた。そしてその海堂を破った帝仁高校に勝った聖秀は更に大きなニュースとなるのだった。

 

 

 

 

 

 

 ──故本田茂治選手の遺児。父の遺志を継ぎ、甲子園デビュー!──

 ──亡き父に似た端正なルックスで、全国の野球女子を魅了! 将来はプロへ行くのか!?──

 

 

 

 

 

 

 ここ数年、話題が無いわけではなかったが、大きな話題とならなかった高校野球において、本田兄弟の存在はスポーツ紙やスポーツニュースを大きく湧かせることとなった。

 もちろんその影響を強く受けたのは大地と吾郎だったのだが、彼らがペースを崩すこともなく出発前日にお墓参りが出来たのも、桃子や涼子、美穂や周りの友人達のお陰であろう。

 

 聖秀の他の野球部員は本田兄弟のことについて一切口を開くことはなく、それは小学校、中学校で親しくしていた友人達も同じであった。

 三船ドルフィンズの元メンバーや横浜シニアのチームメイト達も、祝福の言葉は残したとしても、大地達のプライベートの話は一切口にすることはなかった。

 全員で口裏を合わせたわけではない。それはひとえに大地と吾郎の人徳と言っても過言ではない。

 

「大地、吾郎。あなた達、本当に良い友達を持ったわね」

「……まあね」

「ああ」

 

 帰りの車で口数が少ない大地達。

 茂治が亡くなってからもう十年。すでに受け入れている出来事ではあるが、やはり帰りにはセンチメンタルな気持ちにもなるのだった。

 

「明日の準備はしてあるの?」

「大丈夫だよ」

「母さんも応援に行きたいんだけどね……」

「……仕事があるんだから仕方ねぇだろ。決勝戦にまで行ったら応援に来てくれればいいさ」

 

 この日、家に帰るまでは三人とも口を開くことはなかった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「じゃあ行ってくるよ」

「なにも忘れ物ない? 向こう着いたら連絡するのよ? 変なもの食べちゃダメだからね。お腹出しっぱなしで寝るのもダメよ! それからそれから……」

「だぁぁぁぁ! 分かってるよ! いつまでもガキじゃねぇんだから、自分の子供のことくらい信用しろよ!」

「……だってぇ」

 

 家を出る時間になって、桃子は色々と小言を言い出し、それに我慢が出来なくなった吾郎がキレ出す。

 大地はふふっと笑いながら、桃子と吾郎の仲裁に入る。

 

「まぁまぁ二人とも。母さんは一人で大丈夫?」

「……大丈夫じゃないわよぉ」

「……だろうね。吾郎、ちょっと荷物置いて」

「ん? なんだよ?」

 

 吾郎が荷物を置くと、大地は桃子と吾郎を抱きしめる。

 

「な──!」

「大丈夫だよ、二人とも。甲子園優勝したら帰ってくるから、母さんも少しだけ我慢しててね」

「ううう……そんなことされたら、余計寂しくなっちゃうじゃないのよぉぉぉ!!」

 

 吾郎はいきなり抱きしめられたことを恥ずかしく思い、桃子は大地のぬくもりに堪えていたものが溢れて泣き出してしまった。

 三人はしばらくそのまま動くことはなかった。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ行ってきます!」

「……いってらっしゃい」

 

 ようやく泣き止んだ桃子を置いて家を出る二人。

 これから聖秀学院高校は甲子園球場がある兵庫県へ向けて出発するのだ────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「吾郎っ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────たった一人を除いて。

 

 

 

 

 

 「だ……だいち……? おい、大地。うそ、だ……ろ……?」

 

 そこには血だらけで倒れている大地()の姿があった。

 突き飛ばされた吾郎は腰が抜けてしまったのか、座り込んだまま動くことが出来ない。

 

「きゃぁぁぁぁあああ! 大地くん!! 大地くん!!!」

「だ、大地さん! しっかりしてください! きゅ、救急車! 早く救急車を!!」

「吾郎! 何があったんだよ!?」

 

 その後、救急車が来て大地が病院に運ばれるまで、青ざめた表情をしたまま吾郎は一言も話すことが出来なくなっていたのだった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「とりあえず命に別状はありません。倒れたときに頭を打ったせいで血が多く出てしまっていましたが、他に大きな怪我もなかったですよ」

 

 手術室から出てきた医師が話した言葉である。

 見送りに来ていた涼子、美穂、清水は本田家に向かっている途中で倒れている大地と座り込んでいる吾郎を見つけていた。

 すぐに救急車を呼び、桃子にも連絡を入れた三人は呆然としている吾郎を無理やり救急車に押し込み、自分達も乗り込んだ。

 

 その際に救急隊員に関係を問われた際、「(未来の)家族です!!」と声を揃えて言ったことを誰も責めることは出来ないであろう。

 大地の手術中、病院へと青ざめた表情で桃子がやって来て、吾郎へ問い詰める。

 

「吾郎! 一体何があったの!?」

「…………だ、大地が……死んで……そんな、おとさん達も……」

「吾郎!!」

「────ッ!」

 

 桃子が吾郎の頬を思い切り叩く。

 そこでようやく我に返った吾郎は、周りを見回して今いる場所が病院だと気付く。

 

「こ、ここは……そうだ! 大地は!? 大地はどうなった!?」

「今、手術中よ! 一体何があったの!?」

「大地が、俺を庇って……」

 

 吾郎がポツポツとその時の状況を話し出す。

 本田家を出た二人はいつもどおり野球の話ばかりしていた。

 甲子園で優勝するだの、秋大会でも勝って、選抜出場を決めるだのといった話だった。

 

 そう。いつもと同じだと思っていた彼らは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そして本当であれば、二人とも巻き込んだ車がそのまま立ち去り、病院へ運ばれた二人は確実に甲子園の試合に出場できなくなる。

 その後、彼らがどういう状態になったとしても、それは彼らの運がなかったというだけであろう。

 

 たまたま大地が茂治を思って空を見上げなかったら、()()()()()()()となっていた。

 しかし、何の偶然か大地は空を見上げる。快晴の空がとても心地よく、鳥の声や蝉の声が聞こえるのがとても気分良かった。

 その声を掻き消すように、何かが迫ってくる気配を感じた。

 

 そこからの大地はもはや何も考えていなかった。

 考えるより先に身体が動いていたのだ。

 

「吾郎っ!!」

 

 吾郎を突き飛ばすと同時に、車に吹き飛ばされる大地。

 そして、車が立ち去ったとほぼ同時に涼子達がやって来たということだった。

 

「轢き逃げ……? な、なんで……なんで大地と吾郎が……?」

 

 話を聞いた桃子はへたり込んでしまう。

 吾郎も思い出しただけで吐き気を催してしまっていた。

 二人は思い出してしまったのだ。十年前のあの日の出来事を。

 

 

 

 

 

 家族(茂治)を奪い去った痛ましい出来事を。

 そして、医師が手術室から出てくるまで、誰も一言も話すことはなかった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

「……ん? ここは……?」

「だ、大地!」

 

 その日の夜。大地が目を覚ましたとき、吾郎と桃子がすぐ横にいた。

 涼子達もいると言い張ったのだが、せめて家族に事情を説明してくることと、着替えやお風呂も行ってくるようにと桃子から諭されて一時間ほど前に帰っていた。

 

「吾郎……? かあ……さん……?」

 

 色々と混乱していたが、徐々に何があったのかを思い出した大地。

 

「怪我は、なかったか、吾郎?」

「……っ! 馬鹿、野郎! お前が言うなよな……」

「ははっ……その様子なら大丈夫だったようだな。聖秀のみんなは?」

「先に甲子園(向こう)に行ってもらってる」

「そっか……」

 

 大地は天井を見上げて薄く笑う。

 

(吾郎が無事で良かった。これで聖秀が試合を出来ないなんてことはない……から……)

 

 ふと思い出したかのように吾郎の方を向く大地。

 

「お前はいつ向こうに行くんだ?」

「いつ行くって……大地がこんな状態で行けるわけがないだろ!」

 

 吾郎の言葉を聞いて、大地はゆっくり起き上がる。

 

「……いててっ」

「お、おい! 無理すんなって!」

「そうよ、まだ寝てなきゃ!」

「……そういうわけにはいかないんだって」

 

 頭を押さえながら、大地は座っている吾郎は真剣な表情で見つめる。

 

「吾郎、お前は明日にでも甲子園(向こう)へ行け」

「だから──」

「お前がいなきゃ試合が出来ないだろうが……! せっかくの甲子園なんだぞ、あいつらに観光と観戦だけして帰ってこいっていうのか?」

「でも──」

「甲子園で投げたくないのか?」

「…………!」

 

 大地の言葉に吾郎は黙ってしまう。

 今まであれだけ甲子園に出ることを話していた吾郎にとって、甲子園のマウンドで投げたくないわけがない。

 だが、それ以上に吾郎にとって大地は失いたくない存在なのだ。もちろん大地はその気持ちに気付いていた。

 

「いいから行ってこい。兄ちゃん命令だ。兄ちゃんの命令は絶対なんだぞ」

「……こういうときだけずりぃよ」

「いいから行ってこい。兄ちゃん命令だ」

 

 再度言葉を繰り返す大地。

 ここまで意固地になってしまったら、誰が相手でも意見を変えるのは無理である。

 吾郎はため息をつくと、一言だけ答える。

 

「分かった」

 

 

 

 

 

 次の日、吾郎は一日遅れで聖秀野球部に合流するのだった。

 




なんで彼らは事故にあったのですかね……?

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英雄伝説 青薔薇の軌跡
https://syosetu.org/novel/261919/
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