お前本当にレベル1?   作:千点数

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主人公が【ザ・ワン】を手に入れるまでの過去編その1


ある少年:オリジン
■■■の魔窟


 初めてのVRMMOという事もあった。

 少年、新見(にいみ)智明(ともあき)の心は今、もの凄く踊っている。

 まだ齢十五の少年であるから、買った新作のゲームに心が躍るというのは仕方がない事だろう。

 

「今まで貰ったお年玉や御祝儀全て使わずにとっておいて良かった・・・・・・っ、有り難う過去の自分・・・・・・っ!」

 

 部屋の畳の上でゴロゴロと寝転がりながら、顔に喜悦を浮かべてニヤニヤする智明。早速、部屋を仕切る襖の前に『VRダイブ中』と乱雑に書きなぐられた貼紙をマスキングテープで張り付け、ゲーム機を自分の肉体にセットする。

 

「さて、どんな世界観かな、どんな景色かな? 嗚呼楽しみだっ!」

 

 ゲーム、スタート。彼の意識が一瞬ブラックアウトし・・・・・・次の瞬間には、VRの世界へと移り混んでいた。

 何も無い、ポリゴンのみで構成された空間である。どうやら初期設定をする場所であるらしい。

 

 智明は説明書も何も見ずにログインした。

 ・・・・・・つまり、ゲームがまずどんな世界観かすらも解らない。

 だが。

 

「大剣に大盾、片手剣に刀、弓、そしてハンマーといった定番・・・・・・挙げ句の果てにはガントレットや曲刀も。典型的なファンタジー系のMMOか」

 

 一瞬で看破した。ゲーム、New World Onlineは確かに、幻想的なファンタジー風景を売りにしたゲームだ。

 

「典型的なファンタジーMMOだと言うならば、やはりここは定番(大剣)で行こうか」

 

 とても安直な考えから、彼は初期装備に大剣を選ぶ。

 

(HPが多く、攻撃も強いが遅い・・・・・・うん、そこはAGIにでも多めにポイントを振れば問題無いだろうよ)

 

 そんな事を考えながら、初期ステータスに百ある初期ステータスポイントを振り分ける。

 HP、MPの他にも五つ、ステータスがあるようで。彼は考えながら、それぞれにステータスポイントを振り分けていった。

 

「さて、行こうか。まだ見ぬVRの世界へと」

 

 そして、振り終わった瞬間。

 彼の意識がまたもやブラックアウト。

 次の瞬間、差し込むのは無機質な光ではなく、暖かい陽光だった。

 

「良いじゃないか。最初に見る景色がこんな素晴らしい噴水広場とはまた、運営も解っている」

 

 実に綺麗な景色であり、周囲のほのぼのとした空気とマッチしておりとてもファンタジーっぽさが出ている。

 王道と言われてしまえばそれまでだが、王道というものは、ありふれていてかつ素晴らしいからこそ王道と呼ばれているのであり、実際に智明・・・・・・プレイヤー名23(ニーミ)には、これ以上無いほどに素晴らしいモノに見えている。

 

「ああ、とても楽しみだ。この世界はどこまで僕を楽しませてくれるのだろうか!!」

 

 初心者装備の大剣とブーツを装備した状態で、ニーミは街を歩いて見回る。

 木製の家、石畳の町並み、途中見上げると浮かぶ浮遊島・・・・・・見る景色見上げる空のどれもが新鮮で、生まれ変わったかのような気分になった。

 道中、スキルを覚えられるという巻物を売る店へと差し掛かり、ニーミは使えるモノがあればと思い入店した。

 

「・・・・・・金額は、バリバリ初期金額の三千。これでどんな買い物が出来るかな・・・・・・」

 

 一つ一つ、スキルを見ていく。

 めぼしいモノを見つけるとそれを片手に持ち、またスキルを探す。

 金額とも相談しながら手に入れたのは、【体術Ⅰ】、そして【大剣の心得Ⅰ】の二つ。総額千七百ものお金が吹き飛んだが、先行投資としてそれを受け入れる。

 

「はてさて、次はポーションやら何やらを買わないとね・・・・・・」

 

 そうして初期金額を全て使い切り、準備は完了。

 レベル上げをしようかと街の出口を探す。

 案外アッサリと見つかり、意気揚々と冒険への一歩を、ニーミは踏み出した。

 

 と、思っていたのだが。

 

「モンスターに全く出会わない・・・・・・っ」

 

 これでは冒険も何もあったものではない。

 モンスターがポップしないのでは、レベルの上げようが無いのである。

 跳んだり跳ねたりして暇を潰す内に【跳躍Ⅰ】というスキルが手に入ったり、余りにも暇過ぎて大剣で木を素振りで誤って伐採して【スラッシュ】という攻撃スキルが手に入ったり等、収穫が全く無い訳ではなかった。だが、経験値とお金が手に入らず、モンスターと戦えないとあっては意気揚々と出てきた分落胆も大きい。

 ・・・・・・実はこのあたりのモンスターを、圧倒的な火炎と物量が燃やし尽くし、根絶やしにしているというのが事の真相なのだが、彼はまだそれを知らない。

 

「モンスター、モンスターは何処だぁー・・・・・・」

 

 最早モンスターを求めさ迷い歩く亡者のそれと化したニーミ。

 プレイヤーだったとしても、HPバーを見た瞬間に襲い掛からんと言わんばかりの有様である。

 大剣を手にフラフラと歩く様子は、一種のホラーだ。ジェイソンか何かであろうか。

 

「モンスター、モンスター、モンス・・・・・・」

 

 目からハイライトを落っことした状態で歩くニーミ。

 口から怨霊の呪いが如くモンスターという単語を垂れ流しており、ホラーそのものとなってしまっている。

 

 その時だった。

 蜂型モンスターであるフォレストクイーンビーが、ニーミの眼前にポップしたのは。

 

「も、も、も・・・・・・」

 

 尋常では無いニーミの様子に何やら危険を感じたのか、せっせと林の中へと消えていくフォレストクイーンビー。

 

「モンスタァァァァァァァァだぁああああああああああ!?!?」

 

 そして、モンスターのような声でやっと見つけた獲物を追いかけるニーミ。

 最早キャラ崩壊である。

 尋常ならざる雰囲気と人間ではないような叫び声と共に、彼は逃げるフォレストビーを追いかける!!

 

『スキル【暴走】を獲得しました』

 

 道中聞こえた機械音声などつゆ知らず。彼はただひたすらにフォレストクイーンビーを追いかけ回す。何がそこまで彼を駆り立てるのか。

 

「モンスターなんだろう!? じゃあ戦おうじゃあないか! 経験値よこせぇぇえええ!」

 

 大剣を持ちながら突撃するニーミ。その突進だけで、林の大樹は削れ、吹き飛ばされる。

 ニーミが決して少なくはないAGIとSTRを持っている証拠である。

 

『スキル【重突進】を獲得しました』

 

 それでもニーミから逃げるフォレストクイーンビーの方が、素早い。

 ぐんぐんと距離を引き延ばされ、挙げ句の果てには人が一人入れそうな洞窟へと逃げ込んでしまった。

 奥は薄暗く、その洞窟がただの横穴では無いことを示している。

 

「くくく、わざわざこんな()()()()な場所に連れて来てくれて有り難うよ蜂さん。如何にもモンスターが出て来そうな雰囲気の洞窟じゃあないか!」

 

 モンスターと経験値に飢えたニーミは、大剣を手に、ゆっくりと侵入していく。

 更なる冒険を夢見て。如何にもモンスターが出現しそうなその洞窟へと。

 

 これは完全にニーミの預かり知らぬ所ではあるが、実はこの洞窟。ちゃんと名称が付けられている。

 それは、巨大な暴食の魔が住まう大迷宮(ラビリンス)

 

 すなわち【暴食猫の魔窟】である。




【暴食猫の魔窟】
迷宮系ダンジョン。
・出現条件
()()()()()()逃げる間に、たまたまこの洞窟へと逃げ込むこと。

このレベル1、どんなプレイヤーと戦わせますか?

  • 防御極振りの天使(化け物)
  • PSヤバイ回避盾ポニーテール
  • 炎帝
  • 第一回イベント一位のヤベー奴
  • 質実剛健、常識的な大盾使い
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