そこは、迷路であった。
いや、迷宮といった方が正しいか。
枝分かれした道の先に広場があり、その先は六つほどの道に、また枝分かれしていて、また広場。
まるでアリの巣である。
「さっき逃げ込んだ蜂もこれじゃあ探しようがないなぁ。どうする・・・・・・」
カツーン、カツーンと裏金が石の床を叩く音。
その反響音が先に行ってから帰ってこない事から、この迷宮は尋常ではない広さであることは解っている。
その中から、一匹の蜂を探し出す事は、もう諦めた。
そして、このダンジョンっぽい場所・・・・・・暴食猫の魔窟から、このダンジョン特有のモンスターが出ることを楽しみにする事としたのだが、出て来るのは効果の弱い麻痺トラップに毒トラップ、そして物理的な落とし穴といった典型的なトラップ。
挙げ句の果てにはパズルである。これは完全にモンスターが登場する巣穴ではなく、何かが封印されている系のダンジョンだ。
その何か、とは名称からしてデカい猫であろう。
「レベル制VRMMOをやっているはず、なんだけれど・・・・・・なぁ。全くどうして探索しか今のところ出来ていないのか・・・・・・」
このダンジョンで収穫が全く無い、とは言えないのが微妙な所である。
数々のトラップのお陰で、【毒耐性大】、【麻痺無効】、【ノックバック耐性大】を獲得し、夜道のように暗い洞窟での探索だからか、【夜目】というスキルも獲得した。
この四つのスキルの獲得からして、幾つものトラップに引っ掛かり、何時間もの間探索していた事が伺える。基本的に、スキルを自然に獲得するには時間がかかるのだ。
「あぁー、経験値が欲しい。レベルをちゃんと上げたい。上げて強くなりたいなぁ。なのにスキルばかりが増えていく・・・・・・」
ぼやく間にも、ガコンッ、と無機質な音と共にトラップが発動。物理的な攻撃を伴う麻痺トラップのようだが、麻痺無効スキルのお陰で麻痺硬直せず、後続の矢の雨を余裕でかわし、大剣で受けて。
全くの無傷である。
『スキル【罠探知】を獲得しました』
「今更かい・・・・・・」
そしてまた、スキルが増えた。
「何々・・・・・・【罠探知】、周囲半径二メートル圏内のトラップを可視化する。魔法スキルで隠蔽されると発見出来ない。取得条件が、HPがゼロにならないままトラップを連続五百回起動させる、か・・・・・・鬼畜過ぎるだろう!?」
取得条件の鬼畜さである。最早幸運が絡まなければ獲得出来ない。
探知スキルの筈なのに罠をわざわざ発動させなければならないという意味不明さに散々ツッコミを入れたい気分になったが、ニーミは無意味な事だと思い直して、やめた。
「使うかな。【罠探知】」
スキルを発動した瞬間、ニーミから濃紺色のオーラが発生し、ニーミの周囲に漂う。
するとどうだろう。ごく限られた空間にではあるが、罠と思わしい円や四角、三角の模様が浮き出たのだ。ご丁寧に、模様の内側に『Danger!!』。すなわち、危険と表示されるおまけ着きである。
「これはいい。探索がしやすくなった」
ご満悦、といった様子で、ニーミはまた歩みを進めていく。
通路を抜ければ、また広場であった。
つまりまた、通路を選択し、行き止まりだったりしたら戻る、といった迷宮ならではの探索をやらなければならない・・・・・・所だっただろう。今までなら。
「罠を見えるようになった、その瞬間にもうゴールか・・・・・・漸く、暴食猫とやらと戦えると思うべきか、せっかくの罠探知が意味ないとぼやくべきか・・・・・・」
その先には、威圧感のある巨大な扉が、一つだけあった。
つまり、この迷宮の主との対決。ボス戦である。
ニーミは広場に座り、食料品アイテムを食べながらこれまで手に入れたスキルを振り返り、ステータスを見てどのように戦うかを検討していく。
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ニーミ
Lv1
HP50/50
MP8/8
【STR 30〈+10〉】
【VIT 30〈+5〉】
【AGI 40】
【DEX 0】
【INT 0】
装備
頭:【空欄】
胴:【空欄】
右手:【初心者の大剣】
左手:【装備不可】
足:【空欄】
靴:【初心者の革ブーツ】
装飾品:【空欄】
:【空欄】
:【空欄】
スキル
【大剣の心得Ⅰ】【体術Ⅰ】【跳躍Ⅰ】【暴走】【重突進】【スラッシュ】
【毒耐性大】【ノックバック耐性大】【麻痺無効】【罠探知】【夜目】
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「・・・・・・暴走?」
やはりこの男、暴走スキルを取得した瞬間、理性が飛んでいたようだ。覚えの無いスキルにクエスチョンマークを浮かべ、スキル詳細を見る。
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【暴走】
五分間、一切の魔法を使用不可(デメリット)。
五分間、攻撃スキルを使用不可(デメリット)。
五分間、HP、【VIT】最大値を半分にする(デメリット)。
五分間、【STR】【AGI】を三倍(メリット)。
五分間、HP自動回復(メリット)。
発動後、一時間経過で再使用可能。
・取得条件
三分間以上
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「ハイリスクハイリターン、といった所かな」
使い所が非常に限られるスキルである。
取得条件? 無視である。
「これをどれだけ上手く使えるか。これで僕の勝敗が決まる。使い所はしっかり選ばなければ」
自分に対して言い聞かせ、立ち上がる。
大剣を引き抜き、何時でも戦える体制を整えて、扉の前に立つ。
「さぁ、決戦だ」
彼は、扉を足で蹴り開ける。
中は広い。群青色の壁に囲まれたその場所は、ニーミが昔見に行った野球のグラウンド。それよりも広い。
明かりは殆ど無いが、夜目スキルのお陰で昼間と同じくらい良く見える。
不意に前方の壁が、身じろぎをするように動いた、ような気がした。
瞬間、ニーミには、ある予感。
「いや、違う。
気がつくと同時に、大地を揺らすかのような爆音が響く。
それは、よく耳を凝らして聞けば、「にゃぁああー」と言っているように聞こえなくもない。
「オイオイオイ嘘だろうっ!?」
壁、ニーミが最初にそう見間違えたのも無理は無い。
今、ニーミの目の前には
次回
VS BOSS〈
このレベル1、どんなプレイヤーと戦わせますか?
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防御極振りの天使(化け物)
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PSヤバイ回避盾ポニーテール
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炎帝
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第一回イベント一位のヤベー奴
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質実剛健、常識的な大盾使い