お前本当にレベル1?   作:千点数

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 過去編その3

 戦闘シーンむずい。


VS BOSS〈暴食猫(グラトニーキャット)

 ニーミの目の前にいたのは、壁と見間違う程の大きさの、群青色の化け猫であった。

 

「Neyaaaaaaaarrrrrrrr!!」

「うるっさい! ・・・・・・鳴き声にノックバックが着いているのは異常過ぎないか!?」

 

 多少のノックバックと共に、ニーミは文句を言う。

 どうやら、見た目通りかなりおっかない攻撃能力を持っているようである。

 ノックバック耐性大のお陰で直ぐに硬直から回復し、ニーミは大剣を手に猫に対して襲い掛かる!

 

「【スラッシュ】っ!」

 

 攻撃スキル込みの、大剣による一撃。

 彼がレベル1とは言え、この攻撃は彼が追いかけていたフォレストクイーンビーですらも、余裕で屠れる威力があった。

 だが。

 

(硬い・・・・・・いや、どちらかと言えばHPが多いっ)

 

 派手なダメージエフェクトに対して、減ったのは微量。暴食猫のHPバーに目を凝らして漸く確認出来るほどの些細な量だ。

 だが、この一撃で自分の有利に働く情報も得られた。

 

(ダメージエフェクトが派手に散ったという事は、VIT値はそこまで高くない。僕の攻撃を避けられずに喰らったから、見た目通り移動速度もほぼ無いっ!)

 

 大剣を両手でしっかりと持ち、暴食猫の周囲を旋回するように走りながら観察する。

 本当に大きい。学校の体育館とほぼ同じ大きさはあるだろう。それぐらい大きく、太い。

 

「Neyaaaaaaaaaarrrrrrr!!」

「ぐぅっ!?」

 

 その大きさにまけない咆哮とともにノックバック効果で体が硬直する。

 暴食猫はその隙を逃さず、ニーミをその太い前足で吹き飛ばした!

 

「______!?」

 

 声にならない叫び声とともにニーミはぶっ飛ばされる。

 HPバーがガリッと一気に半分以上削れ、壁にたたき付けられる。

 

「あいたたた、奴め、攻撃だけは一丁前か!」

 

 HPポーションを使いながら、瞬時に間合いを詰めていく。

 ニーミは先ほどの一撃で、ただ攻撃を喰らうだけではなく、間合いを理解しようとしていた。

 暴食猫の腕の長さ。そこから、どの範囲まで攻撃が届くのかを。

 

「図体の割には大きな腕だ・・・・・・遠くまで届くだろうよ」

 

 暴食猫の腕は、それは長かった。部屋の中心にいると思われるその猫は、自分の後ろにいたニーミに対して、()()()()()()()()攻撃し、その腕を届かせ、それでなお余りある程にまで腕を伸ばして彼を壁にたたき付けたのだから。

 分厚い脂肪と毛皮の裏には、それは長い四肢が隠されているに違いない。

 

 ()()

 

「じゃあ、近くならどうだい? 猫ちゃん」

 

 腕は、それは長かった。

 だが、普通の猫と同じく、関節はたった二つ。つまり、二の腕も前腕もパーツの一つ一つが恐ろしく長いのだ。

 ボス部屋全てをマーク出来る程長い腕だ・・・・・・近い間合いだと、よほど持て余すに違いない。

 

「Neyaaaaaaaarrrrrrrrrrrrr!?」

「ぐぅっ・・・・・・はっはー、吠えても近くにいればその長い腕もただの飾りだなぁ!」

 

 ノックバックを喰らっても、攻撃はニーミの横を通り過ぎるのみ。

 後ろを見ずに攻撃できたのだ。それはもう優れた感知能力を抱えているのだろう。

 それでも、彼には届かない。何よりも近くにいるのにも関わらず。その近い距離が、何よりも遠い。

 

「【スラッシュ】っ!!」

「Neyarrr!?」

『スキル【ノックバック無効】を獲得しました』

「ククク、さぁさぁこれで後が無くなったなぁ! お前のノックバックも効かなくなった! どうするんだい、猫ちゃん!?」

 

 HPゲージは残りまだ九割。だが、勝てる。

 ニーミは油断無く躊躇い無く、唯一の攻撃スキルであるスラッシュを用いて、暴食猫を切る。

 雷鳴が如き鳴き声と鞭のような巨大な腕が、ニーミの姿を捕らえようと、暴風でも発生したかのような圧倒的な暴威をもって奮われるが、それでも、ニーミの肉体を捉える事は出来ない。

 

 間合いが違う。

 現状、完全にアウトレンジ特化の要塞型モンスターである暴食猫では、インファイトは絶望的。敵わないのは当たり前。

 その事実は、ニーミはよく理解している。

 だからこそ、気づけなかった。

 暴食猫が鳴き声を上げるとき。

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 それは、もうそろそろHPが七割を切ろうとしていた頃。

 完全に不意打ちだった。

 完全に理解の外だった。

 その可能性は無い、そう、無意識の内に思っていた。

 

 それが原因で、今ニーミは劣勢であった。

 

「なんなんだい、あれ・・・・・・」

 

 暴食猫。

 なるほど確かに、その名の通り太りすぎな猫であった。

 それだけだと思っていた。

 だが、それが間違いだったのだ。その、ただブクブクと太った猫、という認識が間違いだったのだ。

 

 今、ニーミの目の前には。

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 された事としてはたった二つ。

 【スラッシュ】発動と同時に、いきなり開いた大きな口に大剣を貪られた。

 そして、舌でおもいっきり突き飛ばされた。

 

 つまり、今、彼は。

 ()()()()()()()()()、残りHP七割の、正しく真性の怪物を相手取っている。

 すなわち。ニーミは今。

 圧倒的劣勢である。

 

 ・・・・・・というのは、少々間違いだ。

 

 【体術Ⅰ】。

 生身での近接格闘を行えるスキルだ。

 肉体で戦う(すべ)の名の通り、武器による攻撃には些か劣るが、それでも安定したダメージリソースを稼げる攻撃スキルである。相手が埒外の化け物でなければ、の話だが。

 

 それでも、敵がどんなに強かろうとも、ニーミには関係無い。

 

「攻撃が効くのは背面のみ・・・・・・前面の馬鹿みたいに開いた口に当たった瞬間ドレイン攻撃・・・・・・倒しにくい相手だなぁ!」

 

 前面全てが口と化した暴食猫は、プレイヤーの攻撃さえもHPに変える強力なドレイン攻撃を持っているようだった。

 口の中は柔らかいからダメージが通るだろうと期待して踏み込めば、少しでも口腔内に触れた瞬間HPが持って行かれた時には、ニーミは心底仰天した。

 

 が、それだけ。

 

「身軽になったから手数は増えた・・・・・・体術でどれだけやれるか・・・・・・っ!」

 

 あっという間にニーミは暴食猫の背面に回り込み、攻撃エフェクトで光る拳で殴る!

 それは、一呼吸の内に三撃、四撃と続き・・・・・・五撃目で暴食猫の背面を波打たせる程のダメージを与えた。

 

『【体術Ⅰ】が【体術Ⅲ】へ進化しました』

「ありがたい!」

 

 一気にスキルが進化する条件を満たす。

 背面攻撃で一呼吸の内に五撃という離れ業をやってみせたニーミのプレイヤースキル様様である。

 暴食猫は、連撃ならば負けないという風に、背後まで届く長い腕でニーミを攻撃する。

 大きな口を開けた姿になろうとも、大きな体のせいで俊敏に動けないのは変わらないのか、腕のみを背面に回してボクシングのジャブに似た連続突きを放つ。

 ニーミは初撃を体捌きでかわし、二撃目を手を沿わせる事で弾き、初撃で使った拳を戻すと同時に放ってきた三撃目に手を付いて、跳び箱の要領で一気に飛び上がる!

 

「こんなのでも黒帯なんだ。格闘戦は慣れっこだ!」

 

 飛び上がって落ちる。その勢いで、暴食猫の耳の裏側を蹴り抜きながら着地する。

 暴食猫は片方の耳が根元からちぎれ、HPがガリッと大きく削れる。

 ニーミはそのまま、暴食猫の背後から前面に飛び出ると、鼻を踵落としで蹴り抜く。

 そこが丁度弱点であったらしい。

 

『【体術Ⅲ】が【体術Ⅳ】へ進化しました』

『スキル【拳法Ⅰ】を獲得しました』

「Ne,Ne,Neyaaaarrrr!?!?」

「っは、良く効いたらしいなぁ!」

 

 断末魔の如き咆哮を上げる暴食猫。残りHPが、一気に四割半の所まで削れる。

 うっとうしいスキル云々のホログラムウインドウを乱雑に消し、着地と同時に判明した弱点である鼻へと、【跳躍Ⅰ】で飛び上がる。

 

『【跳躍Ⅰ】が【跳躍Ⅱ】に進化しました』

「またか・・・・・・!」

 

 瞬間、目の前に現れるホログラムウインドウ。

 一瞬、視界を奪われる。

 

 その隙を突かれた。

 

「Nawuuuu!!!!」

「がっ!?」

 

 腕と同じくらい長い舌で、ニーミは吹き飛ばされる。

 ホログラムウインドウで隠された視界、その一瞬の死角を上手く狙ってきた。ボスに相応しい、それ相応の高位AIを搭載したモンスターらしい。

 勿論、ニーミは吹き飛ばされただけ。攻撃で減ったHPは半分と無視できるものではなかったのだが、HPポーションで回復することもせずに吹き飛ばされた先の壁にうまい具合に足を付いて、そのまま一直線に暴食猫の元へと飛び上がる。

 何せ、あの暴食猫は攻撃後すぐの硬直状態なのだ。

 ニーミにとっては、回復する時間すらも惜しかった。

 

「そろそろ、往生しろぉおおおおおおおお!」

 

 【体術Ⅳ】が載った、ニーミ魂心の踵落としが暴食猫の鼻へと、見事に吸い込まれていく。

 その一撃は、攻撃後の硬直が直った暴食猫が出会い頭に反撃する______

 

 ______その余地すら与えずに、暴食猫の鼻っ面を勢いのままえぐり抜いた。

 

 『【体術Ⅳ】が【体術Ⅴ】に進化しました』

 『【拳法Ⅰ】が【拳法Ⅱ】に進化しました』

 『スキル【ザ・ワン】を獲得しました』

 『【麻痺無効】が【柔軟】に進化しました』

 

 ゴトン。

 肩で息をするニーミの目の前に、宝箱が一つ落ちて来る。

 そして、その上には【WIN】という表示と、ウインドウに並ぶ【Item】の文字と大量の毛皮アイテム。

 ニーミは、ここのボスをどうやら、倒したようであった。

 

「・・・・・・ボスを苦労して撃破したが・・・・・・これでドロップアイテムがしょぼいものだったら泣くぞ僕は・・・・・・」

 

 言いながら、宝箱を開ける。

 

「【ユニークシリーズ】、ねぇ。この群青色の猫耳パーカーと革プロテクター付きのズボン、出刃包丁がか。それほど強く見えないんだけれどもねぇ・・・・・・」

 

『"ネメアの外套"を獲得しました』

『"猫獣の足"を獲得しました』

『"暴食の顎"を獲得しました』

 

「・・・・・・何はともあれ、漸く、終わったなぁ・・・・・・」

 

 ニーミを満たす充実感、満足感。そして、達成感。

 ばたん、と倒れ込み、清々しい気持ちで彼は天井を見上げ、勝利の余韻に浸るのだった。

 

 因みにこの後。

 リアルではもうすでにログインしてから五時間が経過しており、目を覚ますと夕飯を食べずにゲームをしている息子の元に般若となった母親がいるのだが・・・・・・それはまた、別のお話。




【拳法Ⅰ】
徒手空拳による攻撃スキル。
体術より一撃の威力が高いが、連撃に不向き。
・取得条件
【体術Ⅲ】を獲得していてかつ、体術スキルによる攻撃で、一息の間に四連撃(以上)を成功させる。

【柔軟】
麻痺無効。
物理的な攻撃による被ダメージを10%カット。
・取得条件
【麻痺無効】を獲得済みの状態で【柔軟】スキルを持ったモンスターを倒す(主に猫系モンスター)。

『ネメアの外套』
【STR +15】
【VIT +15】
【不断の力】
【破壊不可】

『猫獣の足』
【STR +10】
【AGI +25】
【獣の足】
【破壊不可】

『暴食の顎』
【STR +30】
【暴食】
【破壊不可】

このレベル1、どんなプレイヤーと戦わせますか?

  • 防御極振りの天使(化け物)
  • PSヤバイ回避盾ポニーテール
  • 炎帝
  • 第一回イベント一位のヤベー奴
  • 質実剛健、常識的な大盾使い
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