お前本当にレベル1?   作:千点数

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レベル1が決闘することになったお話


レベル1と極振り《前》

 新見智明・・・・・・プレイヤー名23(ニーミ)は、古めかしいバトルフィールドの上で、トントン、と石畳の感触を確かめるように足踏みしている。

 そんなニーミはどこか楽しげな笑みを浮かべて、自らの武器である『暴食の顎』を担ぎ上げた。

 

「さて、そうだね・・・・・・勝った方はプレイヤーメイドのお店にある限定和菓子を食べる事が出来るって事で良いね?」

 

 ふいに、ニーミはそんな事を言った。

 誰に言ったのか。

 

「お菓子の為にも負けないよ!」

 

 その答えは遥か前方。

 烏か、それとも夜の戸張か。それらに引けを取らないほどに真っ黒い鎧を装備し、同じ色調の短剣と大きな盾を掲げ持った少女に対して、ニーミは発言したのだ。

 この少女は、ふんすっ! と鼻息一つ、気合いを入れると可愛らしい顔に好戦的な色を浮かばせた。

 それでも可愛いのはご愛敬。それがこの少女プレイヤー、メイプルのクオリティーであるが故に。

 さて、古めかしいバトルフィールドには、この二人しかいない。

 理由は、ここが『決闘システム』によって設営された、部外者による干渉が一切許されない隔絶空間だからである。

 つまりこの二人は、合意の下、今から決闘を開始しようとしているのだ。

 

「それじゃあ、今からタイマーをセットするよ。このタイマーが鳴ったらスタートだ」

「わかった!」

 

 ニーミの手のウインドウから数字が飛び出し、十秒のタイマーがセットされる。

 そのタイマーは一秒毎に機械音を発し、それと共に両者の緊張感も高まっていく。

 秒数が段々ゼロに近づくにつれ、時間がゆっくりと流れていくように、ニーミは感じた。

 それはメイプルも同じで、これが戦いの前の緊張感なのか、と共に実感した。

 タイマーは機械音を鳴らしながら、その秒数を刻々と減らし______

 

 たった今、ゼロとなった。

 

「【超加速】、【重突進】______っ!」

「防御するぞっ!」

 

 そして、同時に。

 タイマーから鳴り響くブザーの音と共に、ニーミは巨大出刃包丁『暴食の顎』を携え突貫。

 メイプルは、『闇夜(やみよ)(うつし)』を傍らに、胸を張って余裕の表情で迎え撃った。

 

 *

 

 そもそも何故、このような決闘が発生したのか。

 それは、おおよそ五分前に遡る。

 

「プレイヤーメイドのお食事所オープン?」

 

 掲示板にそんな書き込みが貼付けられていたのを読み上げたのは、何を隠そう、当事者その一。ニーミである。

 なんでも、DEX極振りの生産職プレイヤーが開いたお店らしく、どんなスキルなのか、それともプレイヤースキルなのかは定かでないものの、素材を持ち込み、ある程度のお金を支払えば和風の豪華な食事を、それも一時的なステータスアップ効果が含まれている食事を振る舞ってくれる、というモノであるらしかった。

 素材は主に魚や植物系アイテムならば何でも有りで、よほどのゲテモノでなければ(ワニ)やドラゴンの肉も調理してくれる。

 New World Onlineで初めての、プレイヤーによる食事の店だ。

 

「行ってみるかな」

 

 ニーミはストレージ内部のアイテムを確認し、ある程度の種類の魚肉アイテムがあることを確認する。

 

「活け作りでも作ってもらおう」

 

 所変わって別の掲示板でも、ある人物が同じ情報を見ていた。

 

「お料理美味しそう!」

 

 何を隠そう、当事者その二。メイプルである。

 彼女もまた、目を輝かせて掲示板に表示されている料理の写真を見ながら、ストレージの中身を確認する。

 そこには、白身魚の魚肉アイテムがあった。

 

「つくねでも頼もーっとぉ!」

 

 かくして両者は、同じ店で出会ったのだ。

 そして。

 

『来場者百人目突破記念!! 限定和菓子プレゼント! 残り一つ!』

 

 店にあったこの表示が、決闘の火種となったのであった。

 

 *

 

 【超加速】、【重突進】による一撃は、重かった。

 通常のプレイヤーならば一撃で吹き飛び、そのHPゲージをゼロにすること間違いない。

 だが、相手は、メイプルは普通のプレイヤーでは無いのである。

 

「効いてないっ!?」

「どうだっ! 私の防御力!」

 

 ガコンッ! という重たい音。

 防御姿勢もとらず、ただ彼女は、自らの小さな手を移動させてニーミの大剣に当てただけ。

 それだけで、ニーミの攻撃は弾き飛ばされた。

 

「VITの実数値幾つあるんだ、この娘!?」

「ふっふーん、私の極振りしているVITを貫けるならやってみろぉ!」

「極振りしているのか・・・・・・珍しいなぁ全く!?」

 

 驚愕しながら、ニーミはメイプルに攻撃を加えつづける。

 が、ダメ。全くダメ。【器用貧乏】によるダメージ低減効果もあって、彼の大剣攻撃は全く通らない。

 ・・・・・・だが、それはメイプルも同じであった。

 

「【パラライズシャウト】! 【毒竜】!」

 

 暴力的な稲妻と毒の嵐が、ニーミを襲う。大抵のプレイヤーならば、例え耐性をとっていたとしてもやられる。そんな凶悪なスリップダメージの組み合わせ。

 だが。

 

「嘘ぉ!? 麻痺しないの!?」

「麻痺攻撃は無効化出来るモノでね!」

 

 ニーミの【柔軟】のスキルの効果で麻痺は無効となり、【毒竜】の毒ブレスは容易く避けられる。

 【毒竜】によって出来た毒の海を踏まないように移動しながら、ニーミはまた、一歩踏み込む。

 ()()()、自らの大剣を持ってメイプルに迫る。

 

「【重突進】、【スラッシュ】っ!」

「来いっ! 何度でも防御するからね!」

 

 メイプルはそれに真っ向から立ち向かった。【悪食】も使わずに。

 ()()()()()()()()()()()()

 自らの防御を信じるが故に。今回ばかりは()()()()()()()()

 メイプルの防御姿勢を取った腕の鎧と、ニーミの大剣がぶつかり合う。鈍い金属音を立てて、強烈な衝撃波が飛び散る。

 その、瞬間。

 

「【ブラスト】ォ!」

「______!?」

 

 メイプルに対して今まで味わった中で一番強烈なノックバック効果が発生し、悲鳴を上げる間すら与えられない内に吹き飛ばされた。

 そのまま彼女は壁にたたき付けられる。HPは全く減っていないが、【毒竜】、【パラライズシャウト】や【シールドアタック】、【悪食】といった数少ない攻撃手段の届かない位置にまで吹き飛ばされてしまっている。

 つまり、完全な仕切り直しだ。

 

「あー、驚いたぁ。何なの、今の?」

「言うと思うかい?」

「あはは、やっぱり・・・・・・?」

 

 ニーミは大剣を振り抜いた姿勢でそのまま構え、メイプルは体制を立て直す。

 この決闘、簡単には終わらないようであった。




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【ブラスト】
両手武器を両手で持った場合のみ発動可能。
スキル発動時のみ、与えるダメージがゼロになる。(デメリット)
相手に対して超強力なノックバック効果。相手が耐性を持っていた場合はそれを貫通してノックバック効果を与えられる。無効を持っていた場合は威力五割減。(メリット)
・取得条件
両手武器を片手で使いながら、一定時間の間にボスモンスターを百匹倒す。
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このレベル1、どんなプレイヤーと戦わせますか?

  • 防御極振りの天使(化け物)
  • PSヤバイ回避盾ポニーテール
  • 炎帝
  • 第一回イベント一位のヤベー奴
  • 質実剛健、常識的な大盾使い
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