お前本当にレベル1?   作:千点数

9 / 9
長らくお待たせ致しました。待っている方がいらっしゃるかも怪しいですが、投稿します。
さぁ、樹王まで行きますか。
というお話です。

※前回のステータスのプラス補正は絶対防御なんかの『倍にする』効果も含んだプラスの値にしてしまっていました。なので少しステータスを書き直しました。


レベル1 VS 《樹王》

 新見智明・・・・・・プレイヤー名23(ニーミ)は、ある巨大なダンジョンの目の前にいた。

 何を隠そう、一層のボスがいる場所である。

 

「【ダブルホルダー】。(ようや)く、お目当てのダンジョンの目の前で取得、か」

 

 道中、彼はお目当てのスキルを獲得する為にウインドウを起動させては武器を大剣から【無手】に交換、を繰り返していた。

 ここで重要なのは、【無手】というスキルが『武装スキル』という、半分装備扱いになるスキルだった事である。

 これにより、彼はお目当てのスキルを手に入れる事が出来たのだ。

 

ーーーーーーーーーー

【ダブルホルダー】

()()()()()()()()()()()()()()登録出来る。

登録した装備をウインドウ操作無しで瞬時に入れ替える事が出来る。

・取得条件

二つの右手、左手、若しくは両手装備を一定時間以内の間に、百回以上()()()()()()()()()()()()()()()モンスターを倒す(モンスター討伐数は不問とする)。

ーーーーーーーーーー

 

 これにより、武装スキルである【無手】、そして大剣装備である『暴食の顎』を切り替える事が出来るようになったのだ。

 

「・・・・・・待った。【無手】になったら裸足になるよね?」

 

 いちいち裸足になるため、靴装備だけは手動でウインドウからまた装備し直さなければならない、という事である。

 これを______

 

「うん、面倒臭いな」

 

 このように、面倒に思ったニーミは、装備欄の埋め合わせに買った靴装備はもう装備しない事にした。元々NPCショップの、ただ耐久値が多いだけの靴装備なのだ。一々装備をするほどの重要性が感じられなかった。

 故にニーミは大剣装備の場合、靴装備だけ村人っぽい初期装備の状態である。

 

「それじゃあ試しに。【ダブルホルダー】」

 

 装備を登録し終えたニーミは、試しに大剣から【無手】に入れ替えた。

 スキルを発動した瞬間、大剣は紅いポリゴンとなって消え、初期装備の靴が消えて裸足になる。

 もう一度スキルを発動すれば、靴が戻り、目の前に大剣『暴食の顎』が出現した。

 ニーミは、出現した己の武器を無造作に片手で掴みあげると、満足いったように笑った。

 

「よし、これで戦うための準備は出来た」

 

 彼は肩に『暴食の顎』を担ぎ上げ、前に踏み込む。

 目指すは先日実装された二層への道の開拓。そのための一層攻略。

 

「首を洗って待っていろ。一層ボス」

 

 少年はまた、一歩踏み出した。

 

 *

 

 さて。

 ダンジョンの中を進むニーミ。

 道中はどうやら、猪、熊型のモンスターが多いようであった。

 緑色の猪が猛烈な突進をしてきたと思えば、大きな熊が、拳を振り下ろす。

 いくらステータスが化け物じみているニーミでも、流石にパワー重視のモンスターによる攻撃を貰っては一たまりも無い。

 全て避けた。若しくは攻撃される前に切る。で、なければやられてしまう。

 

「案外短いなぁ。もうボスなのかな?」

 

 救いは、その中身が余り長くなかった事だ。流石に普通の、それこそ《暴食猫》を倒した時のようなダンジョンであったならば、脳が疲れて攻略は明日になっていたかもしれない。

 

「この、岩で出来たアーチの先が、第一層のボス部屋・・・・・・」

 

 一度、鋭利な岩が交差したアーチを見上げ、そして前を向き、その下を潜る。

 

 そこは、最初に相対したボスである暴食猫と同じく、天井の高い、体育館ほどの広さの空間だ。

 空間の中央を対象にして、植物で彩られた空間はなるほど一層のボス部屋にふさわしい美しさである。

 だが、肝心のボスがいない。

 

「おかしい、ボスはどこ____」

 

 だ、と続けようとした瞬間に変化は訪れる。

 急にニーミの背後で、潜ってきたアーチが大きな音を立てて閉まる。そして。

 

「植物がニョキニョキと生えてボスになるのか……トレントじゃあなくて鹿モチーフなのは制作陣のセンスが感じられるなぁ!」

 

 大地からまるで意思を持つかのように生えた幹が、蔦が、木の葉が、一匹の鹿を形造った。

 例えるなら樹木で出来た森の王______樹王とも呼べる存在は、鹿とは思えないくらいの咆哮で挑戦者を出迎える。

 

「行くぞ鹿ァ!」

 

 ニーミが大地を踏み込み、風が遅れるほどのスピードで突貫する。

 握りしめた大剣での攻撃は、樹王の右足を切断せんと迫る。

 だが、弾かれた。

 

「バリアかい!? 厄介な!」

 

 幻想的かつ美しい模様のバリア。それが、ニーミの攻撃を阻む。

 どうやら攻撃減衰や物理的な攻撃を無効化といった、限定的なモノではなく、全ての攻撃を無効化してしまうようだった。

 ニーミは、面倒な、と思う。全ての攻撃を無効だというぶっ壊れ性能のバリアがボスに張ってあるという事は、何かしらのギミックを解くか条件を整えなければならないという事である。

 

「ああもう本当に面倒臭いっ!」

 

 バリアに攻撃し、弾かれた所を植物の蔦や葉っぱが鋭く迫る。

 一本の蔦を転んで避け、刃物のような葉っぱの雨を『暴食の顎』を眼前に構えて受けきり、残り三本の蔦を横に転がりながら『暴食の顎』を振るって切り伏せる。

 

「体がダメなら顔だぁ! 【スラッシュ】っ!」

 

 右手に持った『暴食の顎』を強引に振るい、斬撃を頭に向けて飛ばす。

 頭にもバリアが張ってあるのか、斬撃はそこでかき消える___寸前。

 

「角にはダメージが入っている・・・・・・?」

 

 ポリゴンが漏れている箇所、即ちダメージの入った角の付け根部分を凝視するニーミ。

 そこで、漸く。バリアに関係すると思われるギミックを発見した。その部分だけ、バリアと同じように揺らめきながら光っていたのだ。

 

「なるほど、お前の力の源はその果実かっ! 随分と狙いやすい急所を晒したな鹿ぁっ!」

 

 ならば、とニーミは『暴食の顎』のスキルを発動させる。

 ニーミが唯一持つ、()()()()()()()()()である。これで、高い所にある鹿の角に生えた果実全て、根こそぎ摘み取ろうと目論んだのだ。

 

「蓄積ダメージはさっき与えたダメージも合わせて百二十七。さぁ、避けられるならやってみろ! 【暴食】ゥッ!」

 

 瞬間。合計百二十七発もの無属性魔力弾が『暴食の顎』周辺に生成される。

 それは全て、何らかの動物の()の形をしており、ガチンッ、ガチンッと牙を鳴らしていた。

 

「あの果実目掛けて食らい付けぇ! 【食事開始】ィ!」

 

 ニーミの号令と共に、無数の光の顎達は角目掛けてランダムな軌道を描いて食らい付く。

 百二十七発もの顎に噛み付かれたにしては、ボスに与えているダメージは少ない。実際、果実に纏めて五体ほど顎がかじりついてガリガリと歯を食い込ませる【暴食】だが、HPバーは一割の半分も削れてはいなかった。

 それでも、角に生った果実は全て喰われてしまったらしい。

 叫び声を張り上げながら、ボスの《樹王》は無敵のバリアを破られてしまう。

 

「これで、攻撃は通るだろ!」

 

 【重突進】を発動し、高速で突撃して刃を突き立てようと試みるニーミ。

 しかし、バリアを破られて行動パターンが変わった樹王の呼び出した蔦に呆気なく絡め取られて防がれる。武器が、先程よりも強固になり、ニーミは武器を蔦から外そうとしたが、取れない。

 その隙をついて、側面から茨のような蔦がニーミを急襲する!

 

(あめ)ェ、【ダブルホルダー】ッ!」

 

 ニーミはそんな鹿の行動を予想していた。

 直ぐに武器を切り替え、無手の状態になったニーミは上昇したSTRで蔦を弾きながら後ろへと下がる。

 

「ついでに、【暴走】っ!」

 

 そして、更にSTRを上昇させた。

 これから体感、少々体が軽くなったかのように感じる。【暴走】の効果でAGIも増えたからだろうか。

 ニーミは、慣れない感覚に戸惑いながらも一歩踏み込む。

 それだけ。

 それだけの行動だったのだが。

 

「・・・・・・へ?」

 

 気がつけば、目と鼻の先に樹王の脚があった。

 

「うぉおおおおおおおおおお!?!?」

 

 慌てて一撃。

 バランスを崩して、倒れ様に後ろ足の踵で二撃。

 そのままの勢いで回転し、起き上がって三撃。

 更に前に踏み込んで、四撃。

 最後に、間接部分に五撃。

 

 合計十五撃。

 一本の脚に、これ程濃密な攻撃を、魔法、攻撃スキルが使えないとは言え倍以上に膨れ上がったSTR値から繰り出される突きで殴られてしまっては、流石のボスもたまらない。

 絶叫を上げて、後ろに下がってしまう。

 しかし、そこはボス。ただではやられてはくれない。

 斬撃属性のある鋭利な葉っぱを、絶叫しながらも放っていた。

 それはまるでチャクラムのように回転しながら、ニーミの背後に迫る。

 完全な不意打ち。

 

 だが。だが、しかし。

 

()()()()()()()()

 

 ニーミの装備しているパーカー、『ネメアの外套』に全て弾かれてしまう。

 

「『ネメアの外套』が()()()()()()()()()()()()、魔法含む斬撃属性の完全無効化・・・・・・あって助かった」

 

 それは、限定的な防御能力。彼は、斬撃に対してのみ、条件付きだが無敵なのだ。

 つまり、選んだ攻撃と、当たった場所が悪かった。

 樹王は驚愕に目を見開く。

 ・・・・・・その一瞬の隙が、命取りであった。

 

「ばーか。驚いている暇がるのかい?」

 

 声に反応し、樹王は振り返る。その先に。

 まるで、振り返る事を解っていたかのように。樹王の眼球の前に、踵があった。

 言葉通り、樹王の死は目前だ。

 

「受け取れぇ___!」

 

 ガスッッッ、と。その踵落としは、樹王の果実のようにみずみずしい目を、寸分違わず打ち砕いた。

 

「Gerrrrrrrrrrrrrrr!?!?」

 

 顔面からダメージエフェクトを散らして倒れ込む樹王。流石は一層ボス。致命の一撃も、HPを一割残して堪えてみせた。

 樹王は、運営から与えられた高度なAIで考える。ここから更に行動パターンが激しくなる。苛烈な攻撃で相手に隙が生まれたその時、回復してやる。そこからが反撃だ、と。

 樹王は震えながらも立ち上がる。AIの思考が矜持というモノを持っているのかは解らないが、残った片方の目には、ここからが本領だと言わんばかりのマガマガしい光が宿っていた。

 

 その時、声が響く。

 

「______ノロノロと余裕だね。僕が、攻撃した後に追撃もしない馬鹿だとでも思っているのかい?」

 

 その光は、ついに獲物を捕らえないまま。

 眩しいラストエフェクトと共に消え去った。

 

 *

 

「ふぃー、終わったぁー・・・・・・」

 

 ニーミは、『WIN』の文字が踊るボス部屋を背に立っていた。

 目の前には、荘厳な扉。

 第二層へと続く道。

 

「次は、どんな場所かな、楽しみだ」

 

 ニーミは扉を両手で開く。

 その顔は、まるで遠足に行く小学生のような笑顔である。

 

 『New World Online』。まだ見ぬ新しい世界が、ニーミを待つ。

 ニーミはロマンと未知が溢れる見知らぬ世界へと、またその一歩を踏み込んだ。




ーーーーーーーーーー
『暴食の顎』付随スキル
【暴食】
一時間以内に与えたダメージを蓄積する。上限150。
蓄積したダメージ数と同じ数の、固定1ダメージを与える『顎』を生成する。
『顎』は攻撃対象を指定後、ランダムな軌道を描いて食らい付く。
命中率70%。
ーーーーーーーーーー
ーーーーーーーーーー
『ネメアの外套』付随スキル
【不断の力】
魔法攻撃を含む、全ての斬撃属性攻撃を無効化。
ただし、『ネメアの外套』が()()()()()()()()()()()()
ーーーーーーーーーー

どうもお久しぶりです。千点数です。
このお話で、一回完結とします。
見て下さった皆様、ありがとうございました。

このレベル1、どんなプレイヤーと戦わせますか?

  • 防御極振りの天使(化け物)
  • PSヤバイ回避盾ポニーテール
  • 炎帝
  • 第一回イベント一位のヤベー奴
  • 質実剛健、常識的な大盾使い
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
一言
0文字 一言(任意:500文字まで)
※評価値0,10は一言の入力が必須です。参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。