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『7人目のソーディアンマスター』
https://syosetu.org/novel/218961/
「じゃあ新四年生のスタメンを発表する」
新四年生チームの監督担当のコーチがスタメンを発表する。
寿也はキャッチャーで、翔はセンターとなった。
翔はレギュラーチームとの対戦時に先発でいくとのことなので、今回は野手としての能力を見られている。
「初めての試合が翔のボールを捕れないのは残念だけど、精一杯頑張ろうね!」
「だな! レギュラーチームとの試合の時は俺も頑張って投げるよ!」
先攻は控えチームでスタートする。
「プレイボール!」
新四年生チームの先発である富岡は、少し自信が無さそうに振りかぶってから投げる。
ボールは高すぎてしまい、審判の樫本の頭を越えて後ろにいってしまった。
寿也は樫本から新しいボールを受け取り、富岡のところへ向かう。
「ご、ごめん。き、緊張しちゃって……」
「大丈夫だよ。誰だって初めは緊張するんだから! 打たれるとかも気にしなくていいから思いっきり投げていこう!」
「わ、分かった!」
少し緊張がほぐれた富岡は、軽く深呼吸してから寿也を見る。
寿也はど真ん中に構えて、思いっきり投げてこいと身体でアピールする。
富岡は軽く頷くと、振りかぶって投げる。ボールはバットに当たるが、打ち上げてしまい、キャッチャーフライとなった。
「ナイスピッチャー!
「う、うん!」
寿也はボールを富岡に返して、声を掛ける。
アウトが取れたからか、富岡は嬉しそうな顔をして寿也に返事をする。
結局1回表は特に動きがなく三者凡退でチェンジとなった。
1回の裏。新四年生チームの攻撃が始まる。
レギュラーチームの時は菊地がピッチャーだったが、今回は五年生のピッチャーであった。
五年生でも四年生と1学年違うだけで球速も全く違うので、1番と2番は手も足も出ずに三振で終わった。
コーチには翔と寿也のどちらが4番にするかを相談されていたのだが、今後のことを考えて寿也には4番としての意識を早いうちに持って欲しいと思っていた翔は、寿也を4番にして欲しいとお願いしていた。
「翔ー! 打ってねー!」
「翔! 頑張れー!」
寿也だけでなく、チームメイトにも応援されながら打席に立つ。
翔も新しい人生での初打席のため、それなりに緊張していた。
(前世でも野球経験はあったから緊張はしないと思ったけど、やっぱり緊張するな)
翔は右打席に立ち、構える。
ピッチャーは1、2番が簡単に三振に取れたので、四年生には打たれないと自信満々の顔をしている。
そして振りかぶって、1球目を投げる。
「ストライク!」
ストレートが内角に決まり、ストライクとなる。
翔は様子を見るためにあえて見逃していた。
そして一旦バッターボックスから出て、素振りをする。
(んー、多分85km前後かな。5年生の平均よりも少し速いくらいか)
バッターボックスに戻り構えると、ピッチャーが第2球を投げる。
今度は低めにボールが入り、ツーストライクと追い込まれる。
「バッター打つ気ないよー!」
「ボール見えてないよ! ナイスピッチ!」
相手チームの選手から軽いヤジが飛ぶが、よくあることなので翔は気にしていない。
第3球目は外角高めに外れてボール。第4球目は外角真ん中をカットしてファール。
カウントはワンボール、ツーストライク。
(お前もこれで三振だ!! ……あ、しまった!)
ピッチャーが三振を取ろうと力んでしまったため、ボールが真ん中高めに浮いてしまう。
その甘い球を逃す翔ではなかった。
甘く入った球を翔は振り切り、外野の頭を越えていく。そのまま柵も越えてホームランとなった。
「おおおおお!!! 新四年生がホームランを打ったぞ!」
「「「翔! ナイスバッティングだー!」」」
見学していたレギュラーチームも驚き、チームメイトもホームランに喜んでいた。
翔は少し照れ臭そうにベースを回る。
そしてホームベースを踏み、待っていた寿也にハイタッチをする。
「翔、ナイスホームラン」
「へへ、ありがと。次は寿也の番だな! 頼むよ、4番!」
「ちょっと! プレッシャーかけないでよ」
2人は笑いながら話し、ついでにピッチャーの特徴も寿也に教える。
ストレートはそこまで速くないこと。変化球は何を持っているかは分からないが、ストレートを待って振り切れば強い当たりになり、最低でもヒットにはなるであろうということなどだ。
寿也は頷き、そのまま打席に向かう。
(まいったなー。翔が初打席でホームラン打っちゃうなんて思っていなかったよ)
苦笑いを浮かべながら打席で構える寿也。
ピッチャーはホームランに対して呆然としていたが、寿也の苦笑いの顔が自分を馬鹿にしているように見えたのか少し腹を立てている。
そして気持ちが落ち着かないまま第1球を投げる。
(え……! これ……!?)
ハーフスピードで投げられたボールに対して、寿也は思わずフルスイングをする。
バットは大きな音を立ててボールを弾き飛ばし、そのままレフトの頭上を越えてホームランとなる。
「「「「…………」」」」
先ほどのホームランの熱が冷めないうちに、1球目でホームランを打った寿也に、今度は全員が黙ってレフトの柵を越えていったボールを追ってしまう。
寿也は翔と同じ反応にならなかったことを不思議に思いながらベースを回り、ホームベースを踏んだところでチームメイトが歓声を上げる。
「「「「うおおおお! 2者連続ホームラン!!」」」」
翔は寿也に駆け寄り、先ほどと同じくハイタッチをする。
「ナイスバッティング、寿也」
「ありがと」
「てか、俺より飛ばすなよな。みんな驚いて黙っちゃってたじゃんか」
「あはは。同じホームランなんだから気にしないでよ」
2人は笑いながら、軽口を叩き合う。
ピッチャーは項垂れてしまって、マウンドでキャッチャーに慰められていた。
次の5番はなんとかセカンドゴロに打ち取り、嫌な流れを切った控えチームだった。
(佐藤兄弟。バッテリーとしてだけでなく、打者としても逸材か。これは次の大会でレギュラーとしても考えないといけないな)
樫本は翔と寿也を早いうちから起用していこうと思っているのか、少し嬉しそうな顔をした。
そして2回の表。ピッチャーの富岡は2点の援護を貰い、少し落ち着いて投げていたのだが、4番と5番に連続ヒットを打たれてしまい、ノーアウトでランナー1塁、3塁となる。
「と、寿也君。ごめんね。コントロールがあまり良くないから」
「大丈夫だよ! 点数はこっちが勝っているんだから、まずは得点を気にしないでワンアウトを取っていこう!」
前進守備でスクイズを警戒する新四年生チーム。
6番打者はバントをする素振りを見せず、バットを構える。
富岡が1球目を高めに投げる。スクイズシフトのため、ボールを一旦外した。
そして2球目。真ん中に甘く入ってしまったボールを打者は見逃さずに打つ。
ボールは翔のいるセンターに飛んでいく。翔はキャッチをしてバックホーム体勢に入るが、直接投げずにショートに中継をした。
ランナーはタッチアップが成功して控えチームが1点返すこととなった。
この回は1失点で切り抜けたが、その後も毎回失点を重ねてしまい4回表までで5失点となり交代する富岡だった。
新四年生チームは寿也以降、ヒットすらも打てず凡退を重ねて初回以降は無得点のままだった。
「まぁそうなるよなー」
「新四年生チームに控えチームが負けたら、それこそまずいだろ」
レギュラーチームは冷静に分析をしているが、新四年生チームの奮闘には心から凄いと感じていた。
なぜなら自身が新四年生チームだった頃は、初回で10点以上取られる最悪な試合だったからだ。
だが、通常の新四年生はこれで奮起して練習にもっと身が入るようになるので、今回の紅白戦は毎年行われていたのであった。
4回の裏。バッターは3番の翔から始まる。
翔は打席に立ち、初回から奮闘している五年生ピッチャーを観察する。
(2回以降ランナーを1人も出さずにきているから、持ち直しちゃったか……じゃあまた崩れてもらおうかな)
ピッチャーは先ほどホームランを打った翔を警戒して甘いボールを投げないようにしている。
スリーボール、ノーストライクからの4球目。ストライクゾーンから外れているが、翔は構わずカットする。
そこから翔はボールをカットし続ける。8割くらいの力で振っているので、疲れすぎず尚且つ”カット打法”で卑怯だと言われないようにしていた。
(俺は悪くないと思うんだけど、賛否両論の方法だからね。これに関してはなんとも言えないかな)
何球もカットすることで疲れてしまったピッチャーは、ボールがすっぽ抜けてしまい結局四球となってしまう。
翔としてもまともに打たせてもらえなさそうだったので、それならば次の寿也に少しでも残してあげられるようにしたかったのだ。
現にピッチャーは翔に十何球も投げて、息を切らしている。
(翔……そんなことされたら打つしかないじゃないか)
この場で翔の思惑に気付いていたのは、監督の樫本と寿也くらいであった
残りのほぼ全員は翔が粘っているくらいにしか思っていなかったのである。
寿也は翔の気持ちに気付きつつも、自分の打席に集中しようと深呼吸をしてバッターボックスに入る。
ピッチャーはすごい汗をかき、息を切らしているが、そのまま投げるつもりなのか、セットポジションから構えて投げる。
その瞬間、翔はセカンドベースに向かって走り、キャッチャーも翔に気付いてボールを投げるもセーフとなる。
これでノーアウト、ランナー二塁である。
ピッチャーは嫌そうな顔をするが、寿也に集中しようとキャッチャーミットだけを見るようにしていた。
そして2球目。ピッチャーの全力のストレートを、寿也が思いっきりバットを振り抜く。
今度は左中間にある柵を越えて、ツーランホームランとなるのであった。
(そゆこと。別に僕が打っても、寿也が打っても2点入るのは変わらないんだよね)
翔と寿也はベースを回り、ベンチに帰るとチームメイトに歓声と共に迎えられた。
コーチに「騒ぎすぎるなよ」と注意されるが、残り1点差まで追いついたことで逆転出来るのではないかと思ったりもしていたのである。
だが、その勢いも5番以降が打ち取られて、チェンジとなることで収まってしまう。
結局、塁に出て得点を上げたのは翔と寿也だけで試合も4対6で負けてしまった。
新四年生チームは残念そうにしていたが、レギュラーチームや控えチーム、そして樫本とコーチ陣は翔と寿也──特に寿也──に対して評価を上げていた。
寿也のリードがあったから6失点で済んでいたのだ。これが他のキャッチャーであったら、毎年同様に初回で10点取られることもあり得たからだ。
「「「「「「ありがとうございました!」」」」」」
新四年生チームと控えチームは礼をして、樫本の話を聞く。
「じゃあ1時間休憩をしたのちに、今度はレギュラーチームと新四年生チームの試合を始める。身体を冷やさないようにだけ気を付けておけ!」
「「「「「「「はい!」」」」」」」
全員、グラウンドの端っこで休憩をする。
翔と寿也は軽く休憩をした後、キャッチボールをしていた。
「寿也のリードはすごいね」
「そんなことないよ。富岡君とかピッチャーが頑張ってくれたからだよ」
「確かにそれもあるね。みんなすごい頑張ってたよね」
次は翔が先発のため、肩を冷やさないようにキャッチボールをして身体を温めていた。
お互いに次のレギュラーチーム戦が本番だと思っているので、気合は十分だった。
そして雑談もそこそこに休憩が終わり、レギュラーチームと新四年生チームの紅白戦が始まるのであった。
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『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/