MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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第十話

 レギュラーチームとの紅白戦で、今世初先発初勝利を飾った翔は、寿也と一緒に勉強に野球にと励んでいた。

 吾郎に紅白戦のことを伝えたら、とても羨ましそうな顔をしていただけでなく、実際に羨ましいと言っていた。

 だが、横浜リトルに誘っても一向に来てくれないのは吾郎らしいと思っていた。

 

「いいなー、翔くんと寿くんは。うちは大変だったんだよ」

 

 そう言って、今までのことを話してくれた。

 小森と沢村のいじめの件の結末。清水はやはり沢村から報復を受けたらしく、クラスメイトの前でスカートをめくられてしまっていたとのこと。

 翔は嫌な顔をしたが、吾郎が「翔くんのアドバイス通り、清水と小森の味方になったよ。アレは俺も許せなかったし」と照れながら話しているのを見て、嬉しそうな顔に変わっていた。

 そこから商店街チームとの試合の話に変わる。

 

「え? 三船の商店街チームって、去年大会で準優勝したところでしょ?勝てたの?」

「それがさ、負けちゃったんだよね。でも三船リトルは継続してグラウンドを使っていいって言ってもらえたんだ!」

 

 自分が投げた球が通用しなくて、全くダメだったと話す吾郎。

 打たれたことをチームメイトに当たってしまって、一時は試合が途中で終わるんじゃないかと思っていたが、桃子のおかげでみんなと仲直りできたこと。

 そしてチームワークの大切さ、1人では野球が出来ないということを改めて実感したと話していた。

 

「そっか。負けちゃったのは残念だけど、チームが残って良かったね! もしかしたら僕らのチームと対戦することもあるかもしれないし!」

「お! そうなったらうちのチーム(三船リトル)は負けないよ!」

 

 寿也と吾郎の話を嬉しそうに聞いていた翔は、三船リトルの実力を聞いてみる。

 吾郎は「まだまだヘタッピな人達ばっかだけど、これから練習して上手くなるさ」と意気込む。

 

「でもね……」

「ん? どうしたの?」

「実は三船リトルの監督のおじさんから、横浜リトルの練習を見てきなさいって言われちゃったんだよね」

 

 翔と寿也が理由を尋ねると、吾郎の実力では三船リトルには勿体ないという判断からだということだ。

 桃子にも話をされており、そのときは興味がないと言ったが、監督には交通費をあげるから見てこいと言われているとのことだった。

 

「あ、そうなんだ! それなら見にくればいいと思うよ!」

「だね! 入る入らないではなくて、一応神奈川の強豪チームだから練習方法とか見るだけでも参考になると思うし、強さがどれくらいかも分かると思うよ!」

 

 寿也と翔が来ること自体は反対しておらず、翔は冗談で「ま、吾郎君が来てくれたらそれはそれで嬉しいんだけどね!」と言ってその場が笑いに包まれた。

 茂治と桃子に話してから決めるとのことだったので、その日は日が暮れる前に練習を終了してお互いに家に帰った。

 家に帰ってからは勉強を再開し、翔と寿也で今年小学一年生になった美穂の勉強も見てあげていた。

 

 美穂は翔達と同じ慶林小(けいりんしょう)に入学しており、勉強は当時の寿也よりも出来ていた。

 理由は下の子特有のモノなのだろうか、兄のやっていることを幼い頃から見てきているので、吸収度合いも早かったのである。

 兄妹仲はとても良く、たまにキャッチボールをしたりして遊ぶようにもなっていた。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 次の週末。翔と寿也は、吾郎と一緒に横浜リトルのグラウンドに向かっていた。

 グラウンドに着くと、樫本が早くに来ていたので挨拶に向かう。

 

「「監督、おはようございます」」

「おお、佐藤兄弟か。……ん? その子は?」

「あ、はい。僕らの友達で、今日見学に来てくれたんですが……大丈夫でしょうか?」

「ああ、別に構わない。君、名前は?」

「……本田吾郎です」

「ああ、吾郎君は本田茂治選手の息子さんなんです」

 

 翔の言葉に樫本は驚いていた。

 現役プロ野球選手の息子なのだ。野球に携わっていれば、驚かないほうが不思議である。

 

「その格好を見ると、やはり野球をやっているようだな。得意なポジションはどこだ?」

「え……そうね。どこでも出来るけど……まぁ一応ピッチャーかな」

「そうか。うちは佐藤兄だけでなく、他にも上級生で良いピッチャーもいるから、盗めるところがもしあればどんどん盗んで行きなさい」

「うん、分かった!」

 

 それから練習を開始する横浜リトル。守備練習、打撃練習と行い、お昼休憩になった。

 吾郎は翔達と一緒にご飯を食べることになり、持ってきたお弁当を広げて食べる。

 

「横浜リトルの練習はどう?」

「ああ、やっぱり強豪なだけあって、みんな上手いね。でもあの偉そうな監督は苦手だけど……」

「あはは。……そうだ! 吾郎君も午後から練習に参加出来ないかな? 見ているだけだとつまらないでしょ?」

「え?」

「もし監督が良いって言ったらだけどね。きっと監督も興味あるだろうから、どうかな?」

「まぁただ見てるだけも暇だしね」

「よし! 決まり!」

 

 珍しく強引な寿也が急いでご飯を食べたあと、翔を引っ張り樫本のもとへ行く。

 初めは驚いていた樫本だったが、実力は翔と寿也に引けを取らないと聞いて、興味があったのか許可を出す。

 

「吾郎君! 監督、OKだって!」

「あ、そうなんだ。じゃあ参加しようかな」

 

 少しドライな返事をするが、顔は嬉しそうな野球少年(吾郎)だった。

 すぐに練習に参加出来るように、3人でアップをする。キャッチボールをして身体が温まった頃に練習再開が告げられる。

 

「よし! 全員集合!」

 

 全員が集まり、吾郎が練習に参加すると話す樫本。

 本田茂治の息子だと言うと、横浜リトルのメンバー全員が驚いていた。

 昨年も優秀な成績を残している茂治は、一軍に定着出来る様になっただけでなく、ファーストのスタメンも獲得していた。

 

「それと練習前に話すことがある。来週は練習試合がある。それで前回の紅白試合を鑑みて、佐藤翔と佐藤寿也をレギュラーチームに昇格させることとした。

他のメンバーも練習試合で結果を出せば、学年も関係なく使っていくからそのつもりで!」

「「「「「「「はい!」」」」」」」

 

 午後からは来週の練習試合に向けて実戦練習に入っていく。

 吾郎は翔と寿也と同じくらいの実力とのことなので、レギュラー陣の練習に参加する。

 まずはランナーがいる場合の想定練習からである。

 

「じゃあ一死(ワンアウト)、ランナー一塁、三塁でカウントはスリーワンだ」

 

 そう言ってピッチャーが投げる真似をして、樫本が打つ。

 ショートにボールが飛んで行き、ショートは捕球後にセカンドに投げるが間に合わずセーフ。

 セカンドがファーストに投げてアウトを取るが、三塁ランナーがホームインしてしまう。

 

「馬鹿野郎、ショート! スリーワンでゲッツー体制取るな!

エンドランの高い可能性を考えたら、前進守備に切り替えてバックホームだろ!」

「は、はい! すみません!」

 

 その後も想定したパターンでの守備練習をした後、逆に想定したパターンでの打撃練習も行っていく。

 全てがそのパターンに当てはまるとは限らないが、色々と考えたりすることで野球脳は鍛えられていくのだ。

 

 そして最後に、短い3イニングでの紅白戦が始まる。

 赤チームにセンターの翔、キャッチャーの寿也、そしてピッチャーの吾郎が入る。

 打者一巡は必ず出来るので、一打席をどれだけ大切に考えて打てるかを鍛えるものだ。

 

(へっ。横浜リトルの奴らがどれだけ凄いのか見てやろうじゃん)

 

 吾郎は意気込んでマウンドに上がる。

 商店街チームとの試合で序盤が上手く投げられなかったので、今回は投球練習を多めにして短いイニングでも実力を発揮できるようにしている。

 

「プレイボール!」

 

 吾郎が第一球を投げる。全力投球で翔よりも速い速球がキャッチャーミットに吸い込まれる。

 横浜リトルのメンバーもこの速さには流石に驚く。

 

(やっぱり吾郎君の球はすごいな。手元で伸びてくるから、さらに速く見えるよ。でも多分……)

 

 寿也は心の中で思っていたことを閉じ込めて、試合に集中することにした。

 結局初回は誰もバットにかすることも出来ずに三者三振となる。

 

 2回の表。吾郎の前に現れたのは横浜リトル4番の真島。

 彼の堂々とした姿に吾郎は自信満々でマウンドからボールを投げる。

 

「ストライク!」

 

(へっ。横浜リトルが強豪って言っても大したことなさそうだね。翔くんも寿くんも大袈裟に言い過ぎなんだよ。

どんなにすごい打者でも……待ってるだけじゃ、俺の球は打てないよ!)

 

 吾郎は再度全力でボールを投げる。真島は待っていましたとばかりにバットを振り、ボールは翔の頭を越えてホームランとなる。

 相手チームが喜ぶ中、吾郎は信じられない表情をしていた。

 

(え、嘘だろ……? 俺の球が小学生なんかに打てるはずないのに……)

 

 動揺したまま5番打者にも打たれ、ランナー一塁。

 続く6番打者にもヒットを許し、ランナー一塁、二塁になったところで寿也がタイムを取る。

 

「ご、吾郎君、大丈夫!?」

「お、俺の球が打たれるなんて……」

「…………」

 

 動揺している吾郎の前に、寿也は声を掛けることができなかった。

 どうしようか悩んでいるところに、吾郎の頭を何かが叩く音がした。

 

「いって! 何するん……って翔くん!?」

「吾郎君、何やってんのさ?」

「え…だって俺の球が通用しないから──」

「──そりゃそうでしょ。力んでるし、フォーム崩れてるし。何より寿也の要求したところに全然ボール行ってないよ」

「……」

「横浜リトルでも通用するって思ったんでしょ? ストレートだけじゃなかなか通用はしないよ。

……でもね、吾郎君の本気を出したボールならあのメンツでもなかなか打てないさ。寿也を信頼して、自信を持っていこ!」

 

 そう言ってセンターに帰っていく翔。外野から勝手にきたことで樫本に怒られるが、気にしていない様子の翔を見て吾郎は軽く笑い、寿也に謝った。

 寿也も「大丈夫だよ」と笑い、ホームに戻っていき試合再開となる。

 

(そうだ。俺は横浜リトルが相手だからって力んでいたのか。寿くんの構えたところも見えてないようじゃ、打たれるに決まってるよね)

 

 目を覚ました吾郎は初回以上の速球を投げていき、2回表の残りの打者を三振に仕留める。

 そして、3回表。延長なしの最終回なので、力むことなく全力で投げ続け、三者凡退で終わる。

 試合に関しても、真島に1点取られたが、2回裏に寿也、翔、吾郎の打順で2点獲得し勝利した。

 

 

 

 

 

「本田、もし横浜リトルに来るようなら合格にするが、どうする?」

「あ、ごめん。俺今回は見学に来ただけだから。三船リトルのみんなは裏切れないし」

「そうか。まぁそこまで言うなら強制はせん。だが、親父のいたチーム(横浜リトル)に入りたいと思っても不思議ではないから声を掛けてみたんだ」

「え……おとさんがここにいたの?」

「なんだ。親父から聞いてないのか? ここは結構プロの選手になっている人がいてな。俺も昔は千葉マリンズでやっていたんだ」

「え……?」

「俺はお前の親父ほど大した選手じゃなかったがな。本田(やつ)とは子供の頃、ここで一緒にプロの夢を見た仲間だったよ──」

 

 

 練習後、3人で一緒に帰っていたが、翔と寿也がいくら話しかけても吾郎は上の空だった。

 翔と寿也は心配したが、こればかりは本人が決めるしかないため、それ以上口にするのはやめていた。

 




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『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/
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