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少しでもお役に立てればと思い、今日も投稿します。
ほとんど打ち合わせも出来ないまま始まった変則試合。
後攻の日本チームはポジションをどうするか悩んでいた。
基本は日本語で話し、ジュニアには翔か寿也が通訳していた。
「そうだな。じゃあ吾郎君がピッチャーで寿也がキャッチャーでいいよね。あとは僕とジュニアか」
『俺は元々サードを守っていたから、二塁と三塁の間を守ろう』
「じゃあ僕が二塁寄りで一塁と二塁の間を守ればいいかな。基本ファーストのカバーには吾郎君に入ってもらおっか」
「へっ! そんなまどろっこしいことしなくても、俺が全部抑えてやるって!」
「うん、でも一応低めを中心に投げて欲しいかな。もう外野は一切捨てることにしてるからね」
「オッケー!」
各自守備位置に付き、監督の『プレイボール』の合図でスタートする。
1番バッターはアーサー。アメリカチームは全体的に翔達より大きいが、その中でも比較的小柄な方だ。
(ふん、東洋人のボールなんて目を瞑っていたって打てるぜ!)
油断をしているアーサーに対し、吾郎が振りかぶってボールを投げる。
真ん中低めに大きな音を立てて入っていったボールに、監督だけでなく選手全員が驚く。
(な……なんて球を投げるんだ、この子は。まだジュニアと同い年と言っていたな。今のは
監督も日本人に対してある程度大したことはないという気持ちは持っていたのだが、吾郎の球を見て考えを改めた。
吾郎のファストボールにバットを掠らせることが出来ず、アーサーは三振してしまう。
続く2番のビクター。見た目はチームの平均くらいの身長である。
吾郎のボールを見て、驚いていたがこれくらいの球なら打てるはずだとバッターボックスに入る。
1球目を見逃してストライクにしたあと、吾郎は2球目を投げる。
(よし! これだ!)
内角低めに入った球を、ビクターはバットを思い切り振りバットの芯で当てる。
手応えもあったので確実に外野に飛んだと思ったのだが、ボールは翔のグラブの中に入る。
『な、なんだと……!? 今完璧に芯で捉えたはずなのに……。まさかあの東洋人の球威に押されたとでもいうのか……?』
「へっ、やっぱりアメリカはすごいな。俺の球をすぐに当てるなんて」
吾郎は強気な発言をしていたが、油断は一切していなかった。
茂治が練習で口を酸っぱくして話していたのもあるが、一緒に練習しているときに翔もそれとなく誘導をしていたのであった。
3番のネルソンも勢いのまま三振に仕留めて、1回の表が終わった。
1回の裏、日本チームの攻撃である。
打順は翔、寿也、吾郎、ジュニアの順番である。
翔からすれば誰が何番打っても関係ないと思っているのだが、様子を見たいのであえて最初に打ちたいと立候補した。
「翔―! 頑張って!」
「打てるぞー!」
『ボールをよく見ていけ!』
ピッチャーはこの試合で4番を打っているサミール。体格もよく、チームでも5番ピッチャーをやっている。
バッターボックスに入った翔は、油断しないように構える。
(けっ、東洋人みたいな貧弱な身体をしている奴が俺の球を打てるわけねーだろうが!)
(……って思っていそうだねぇ。まぁどうなるかはこれから楽しみだね)
サミールが振りかぶり、ボールを投げる。
翔は内角に入ったファストボールを反射的に振ってしまう。
カァンと大きな音とともにレフトのフェンスを越えてボールは消えていった。
(あ、様子見たいって言ったのに、つい打っちゃった。……ま、いっか)
ベースを一周した翔はベンチに戻ると3人にハイタッチをした。
やはり「様子を見たいって言ってたじゃんか」と突っ込まれたが、苦笑いで謝っていた。
続く2番の寿也。
(上級生との試合の時もなんだけど、翔の後って打ちづらいんだよね)
そう言いながら打席に入るも、2球目のボールを外野に飛ばしてランニングホームランとなった。
3番の吾郎、4番のジュニアもバッティングセンスは翔や寿也に勝るとも劣らないので、完璧に捉えて外野に飛ばしていき、ランニングホームランにする。
『くそ! なんなんだあいつらは!』
『お、落ち着けよ』
『落ち着いてられるか! くそ!』
サミールはキャッチャーのネルソンに落ち着くように言われるが、日本人に打たれたという現実を受け入れられないようであった。
『あの、すみません』
『ん? なんだね?』
『多分このまま続けても僕らをアウトにすることはできないと思うので、チェンジでいいですよ』
翔は監督にチェンジするように提案する。
監督は一瞬考えたが、翔達のバッティング練習になってしまうと悟り、チェンジを受け入れた。
2回の表。今回は変則野球なので、この回が最終回となる。
つまり、これで4点返さないとアメリカチームの負けになってしまうのであった。
『おっしゃーー! 絶対に打ってやる!』
サミールの打席になり、気合を入れていく。
吾郎はそんなサミールを見て絶対に打たせないようにすると気合いを入れる。
第1球。吾郎のファストボールが外角真ん中に入り、ワンストライク。
2球目は内角に甘く入ったボールを打たれてしまうが、大きく左に外れてファールとなる。
(あ、あぶねー! 油断しちゃダメだ! 甘い球を投げないように丁寧に投げていこう)
(吾郎君、大丈夫だよ。相手は打ち気になっているからね。でもどうせならここに全力で投げていこう!)
寿也の指示に一瞬びっくりした吾郎だったが、軽く笑うと思い切り振りかぶり、全力で投げる。
サミールは投げ込まれたボールを思い切り振るが、バットに当たることなく寿也のミットに入っていった。
(ど、ど真ん中にファストボール……だと……!?)
『ストライク! バッターアウト!』
だが、アーサーもそのあとのビクターも一切かすることが出来ずに三振となり、試合終了した。
『お前らこれで分かっただろ。吾郎達は凄い選手なんだよ!』
『ああ、確かにそうだな。お前達も東洋人だから大したことないとか思っていたと思うが、ベースボールに人種は関係ないってことだ! よく覚えておきなさい』
ジュニアの言葉に監督も同意する。
初めに翔達を馬鹿にしていた筆頭のアーサーは自分から負けたと言いたくないのか、悔しそうに俯いている。
そんなアーサーを見て翔がおもむろに近づいていく。
『試合、楽しかったね! アーサーの球、重くて手が痺れちゃったよ! また勝負しよう!』
『お、お前……』
『さっき監督も言ってたでしょ? ベースボールに人種や国境はないんだよ。だから楽しくみんなで上手くなろうよ!』
『……あぁ! そうだな! 最初、馬鹿にしたような言い方をしてごめん……』
『もういいって! じゃあみんなで仲直りの握手でもしようよ!』
そう全体に話すと、選手全員が嬉しそうな顔をして翔達に近付き、握手を交わしていった。
監督もそんな様子を見て、嬉しそうな顔をするのであった。
(初めはどうなるかと思ったが、吾郎達……上手くチームに馴染めそうだな。アメリカに残るように言って正解だった)
近くで誰にもバレないように見ていたギブソンは、微かに笑いながらその場を去っていったのであった。
『アメリカチームとの変則野球に勝利したので、ボーナスポイントを付与します』
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『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/