MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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不定期ってことにした方が気持ちが楽なので、数日に一回は投稿するようにしますね!

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第二十一話

「ストライク! バッターアウト!!」

 

 翔が完璧に捉えたと思ったボールは、小森のキャッチャーミットの中に収められていた。

 球の回転も確実にジャイロボールの()()だった。

 

(い、今のはなんだったんだ……? あれは確実にジャイロだったのに。完璧に捉えたはずだったのに……)

 

 吾郎は落ちた帽子を拾い上げ、頭に被りながら不敵に笑う。

 翔はその様をみて悔しそうな顔をしながらベンチに戻った。

 ベンチに戻った時に寿也が話しかけてくる。

 

「今のは……何の球だったの?」

「確実にジャイロボール──僕が投げている球と同じだったはずなんだ。

でも、完璧に捉えたと思ったら、ボールは……ミットの中にあった」

「翔でも見極められなかったってこと?」

「ああ……油断するなよ、寿也。吾郎君は僕達を倒すために確実にレベルアップしている」

 

(へへっ! やっぱり翔くんでも打てなかったか! やっぱり()()()を教えてもらって正解だったな)

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

『ツー……シーム?』

『ああ、今吾郎が投げているボールの握りはフォーシームといって、ノビのある直球を投げるのに向いている握り方なんだ。

だがな、ツーシームという握りはこうやるのだが、これだけでフォーシームと比べて空気抵抗が出やすいんだ。

もし今のストレートを投げるのであれば、ボールの握りを変えるだけでストレートが変化するかもしれない』

 

 アメリカから帰ってきた吾郎のピッチングを見て、茂治がボールの別の握り方を教えていた。

 ジャイロボールを投げるからこそ、空気抵抗がより少なくノビのあるストレートを投げられている吾郎。

 それであればもし握りを変えたとしたら、より空気抵抗が増すことでストレートを投げているのにも関わらず、変化球のようになるのではないかという推測から教えたのである。

 

 これが実際に大当たりした。

 同じ投げ方でノビのあるストレートになるフォーシームと、空気抵抗が増えたおかげでボールの終速が遅くなり、結果通常よりも()()()()()()()()()()()()ツーシーム。

 この2つを使い分けることで、打者にとっては驚異の球になっていた。

 

 それでも吾郎はジャイロボールそのものを会得したわけではないため、やはりまだまだ紛い物と言わざるを得ない。

 だがこれからの野球人生で無理な変化球を覚える必要が無くなったことは、彼の肩や肘への負担が大きく減ったことに繋がるのである。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 寿也は、吾郎が何か変化球を覚えたのではないかと推測した。

 翔が単純なジャイロボールで見極められないということはないと思っているからだ。

 

(次の回の僕の打席……見極めてみせる!)

 

 

 1回の裏、三船リトルの攻撃である。

 1番バッターの長谷川が打席に入る。そこには2試合とはいえ、1番打者として出場してきたことに対しての自信が見えていた。

 翔は油断せずに丁寧に攻めていこうと思う。

 

 その考え方が良かったのか、この回は誰もボールにかすることなく三者三振で終えることが出来た。

 翔は前の打席で三振したことを引きずらないか心配していたので、少しホッとした表情でベンチに戻る。

 

 そして2回の表、4番である寿也の打席。

 寿也はなぜか嬉しそうな顔をしていたので、翔が理由を聞いてみたところ、

 

「だっていつも翔が僕の打席の前にホームランとかたくさん打つんだもん。それ、結構プレッシャーだったんだよ?

今日はそのプレッシャーがないから、のびのび打席に入れると思うとなんか妙に笑えてきちゃってさ」

 

 そう言いながら笑う寿也に、苦笑いで返す翔。

 だがすぐに真剣な顔をして「ちゃんと見極めてくるから安心して」と言ってバッターボックスに向かう寿也。

 翔はそんな寿也を頼もしく思うのであった。

 

(次は寿くんかぁ……翔くんもだけど、この打順は油断出来なくて困るね)

 

 吾郎は困っていたような考えをしていたが、顔は笑っていた。

 翔や寿也のような強打者(バッター)と対戦するのがすごい嬉しいからだ。

 寿也も油断しないようにバットを構える。

 

 第1球、フォーシームジャイロを低めに投げて、寿也が見逃しワンストライク。

 次に外角高めに外しボールとなる。

 そして3球目、吾郎が内角真ん中に投げたフォーシームジャイロを寿也は見逃さず振り抜く。

 ボールはレフト後方に設置されたホームラン判定用のフェンスを左に切れていき、ファールとなる。

 

 観客と横浜リトルのベンチから「惜しい!」などの声が生まれていた。

 翔のボールをホームランにしていた寿也にとって、吾郎のフォーシームジャイロも打てない理由はなかった。

 ただ吾郎の方がジャイロの完成度が高いため、微調整は必要であったが。

 

(やっぱり寿くんもすごいや! まだあれはあまり連投したくないんだけど……仕方ないか……)

 

 吾郎は小森に翔の打席と同じくサインを送る。

 小森は頷きキャッチャーミットを構える。

 そして吾郎が振りかぶって投げたツーシームジャイロを、寿也は見逃して三振となった。

 寿也は初め、少し残念そうな顔をしていたが、ベンチに戻るときに微かに笑ったのを吾郎は見逃していなかった。

 

(え……まさかこの1球でバレたのか……?)

 

 寿也はこの1球でツーシームジャイロが投げられるのを予測していたのだ。

 後々のことを考えて球の軌道をきちんと観察することにし、それは成功した。

 

「寿也、最後の球って……」

「うん、翔が空振りしたボールだったよ」

「ちゃんと見えたのか?」

「まぁね。回転はやっぱりジャイロのものだった。でも翔や吾郎君が投げている()()()()()()()とは違っていたんだよ」

「……え?」

「えっとね、まだ1球だけしか見てないから確実とはいえないんだけど、明らかにボールにはジャイロ以上の空気抵抗によるブレーキングが掛かっていたんだ。

それがまるで変化したように見えていたんだけど、通常のストレートと同じ減速だからジャイロボールだと思って振ると三振してしまうようだね。

あとは……これ自信ないんだけど、多分若干の変化はしているよ。縦のスライダーのような感じだった。

多分ボールの握りと投げ方からそのような変化になったんじゃないかなぁ?」

 

(と……寿也……どこまで分析出来ているのさ!?お兄ちゃん、驚きで口が開きっぱなしになっちゃったよ!)

 

「翔……大丈夫?」

「え、あ、うん。でもさ、これって打てるのか?」

「いや、今の僕らには無理だと思う。握りが違うだけで投げ方が同じって考えると、それを狙うなら通常のジャイロを打った方が確実だね」

「だよなぁ……でもさ──」

「──その球を打ってこそ完全な勝利でしょ?」

「……! そうそう、それだよ!」

 

 寿也に考えていることを当てられて驚く翔だったが、野球好きとしては吾郎のツーシームを打ってこそ完全な勝利になると思っているので、そこは譲りたくないようであった。

 もちろん寿也もそれは否定しない。なぜなら同じ考えを持つ双子だからだ。

 

「でも……最終的には」

「チームの勝利が1番かな。だって僕は寿也達と全国大会行きたいもん」

「だね! じゃあ対策を練っていこうか!」

 

 こうして吾郎が6連続三振を達成している時に対ツーシームについて話し合うのであった。

 そんな様子を観察していた樫本は、翔と寿也のポテンシャルの高さに驚きを隠せていなかった。

 




ここで解説です。そして、これは独自設定なのでよろしくお願いします。

フォーシームジャイロ:原作で吾郎が投げているジャイロボールのこと。ストレートのような軌道をせずに、若干ホップするような感じで伸びていきます。
ツーシームジャイロ:握りを変えることで空気抵抗を増し、軽く縦のスライダーのような変化をするストレートのこと。通常のストレートからすると、変化量的にはカットボールでもいいのかもしれない。
でもジャイロボールからの変化量からするとスライダーと言ってもおかしくないので、上記のような表現を使いました。

これはあくまで独自設定なのですが、実際に握りを変えることでストレートでも若干の変化はしますし、ジャイロボールのような投げ方をするのであれば尚更変化してもおかしくないとの判断です。
翔が三振した理由は、フォーシームジャイロの軌道だと思って通常のストレートの軌道よりも若干上の部分を振ったら、空振りしてしまったということです。
今の吾郎の習得レベルだと、通常のストレートの軌道で振ったら、ボールに当たるが当たり損ないのような感じになります。


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『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/
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