MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

27 / 68
活動報告に色々と書いてくださってありがとうございます!
読んでみたい二次小説は思いついたものをどんどん書いていただいて構いませんので、ぜひお願いします!

https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=238195&uid=302379



第二十五話

「これが最後の対決になるね。……敬遠する?」

「寿也、本気で言ってるの?」

「いや、言ってないよ。じゃあ全力で抑えに行こうか!」

 

 7回裏、ツーアウトで吾郎に打順が回ってくる。

 敬遠すれば確実に勝てる状況で、翔と寿也は勝負を選択する。

 1度負けているのだが、樫本も何も言わないことと野手全員も勝負するのが分かっている様子だったので逃げることはしなかった。

 

(佐藤兄弟。ここで逃げるようならそれまでの選手だったと思うところだが、やはりお前達にはプロになる素質もあるのだな)

 

 樫本はここで敬遠をするか見ていた。だが2人の頭の中には最後まできちんと勝負するといった熱意があることが分かり、嬉しく思っていた。

 このまま行けば確実に横浜リトルは勝つ。だが名門として、このまま終わらせるわけにはいかなかった。

 

 プレイがかかり、翔が振りかぶる。

 翔がど真ん中にストレートを投げ、吾郎は空振りした。

 

(マジか……ここに来てこのスピードで投げてくるのか。やっぱり翔くんは凄いな)

 

 吾郎は疲労でバットもいつもよりも重く感じており、動くのも相当億劫になっていたが気力でバットを振っていた。

 2球目のインハイに外したストレートを見送る。ここで寿也が動く。

 

(チェンジアップだ。これで打ち取れればそれでもいい!)

 

 寿也のサインに翔は頷き、真ん中低めに制球されたチェンジアップを投げる。

 空振りかと思ったのだが、吾郎は体勢を崩されながらもバットに当ててファールとしてきた。

 

(このタイミングで投げたコレ(チェンジアップ)を当ててくるとはね。寿也、次はどうする?)

(1球外すよ。外角高めだ)

 

 寿也のサイン通り、外角高めに外したストレートを投げたのだが、吾郎はそれすらも打ちライト方向に大きく飛ばしていった。

 明らかに外されているボールを、選球眼は悪くない吾郎が打ったことに対して翔と寿也は驚いた。

 

(もしかして吾郎君……)

(ああ、相当疲れてしまっていて、来た球をそのまま打っているだけなんだろう)

 

 それはある意味怖い状況でもあった。

 どの球にも感覚で打つことが出来ている吾郎に対して、抑えるために投げる最適なコースが見つからないのだ。

 翔はその後も色んなところにボールを投げ続けるが、全てカットされる。

 甘い球を投げたら確実に打たれてしまうのがわかるので、緊張感で疲労も増していく。

 

(翔、投げるコースが見つからないなら、もう()()で終わらせよう)

(え……いや、まぁ投げろと言うなら頑張ってみるけど……打たれたら責任取ってね)

(もちろん! ……翔がね!)

 

 寿也は翔に対してど真ん中にストレートを要求した。

 それはただのストレートではなく、前の打席で翔が偶然投げることが出来たジャイロボールの完成形をだ。

 翔としても投げられるものなら投げたいが、投げられる自信がないのと、前の打席で打たれてしまっていることを思い出して少し躊躇していた。

 

(確かに打たれるのは怖い。……けど、今の僕に出来るのは、寿也を信じて全力で投げるだけだ!)

 

 翔は寿也を信じて全力で投げ込むことに決めた。

 ロージンバッグに触り、ボールの握りを確かめて深呼吸をする。

 すると、周りの声が一切聞こえなくなった。誰よりも集中している感覚、見えているのは寿也のミットだけだった。

 

(イケる。今の僕ならさっきの球(ジャイロボール)を投げられるはずだ……)

 

 ゆっくりと振りかぶり、左足を上げ、指先に神経を集中させてボールを放つ。

 フォロースルーも含めて、完璧の球を投げることが出来た。翔はそう思った。

 しかし、吾郎はそのボールを待っていたかのように思い切りバットを振り切った。

 

 ボールは大きな音を立てて飛んでいき、センターの頭を越えていく。

 翔は集中された空間の中で「また打たれたか…僕のベストピッチだったんだけどな……」と、うつむきながら呟く。

 そして、集中が切れた途端に周りのすべての音が戻ってくる。

 

「センター! 捕れるぞ! 走れ!!!」

 

 真島の声に翔が気付いて後ろを振り向くと、ホームランになるフェンスギリギリのところでセンターがジャンプをしていた。

 翔の球はたしかに打たれたが、球威で勝ったため前の打席ほどボールが飛んでいなかったのだ。

 

「関、絶対捕れ! 翔ばかりにすべて押し付けんなよ!!」

 

 センターの関がフェンスにぶつかり、倒れる。

 ライトの松原とレフトの坂上が、落としたときの事を考えてフォローしようと近付く。

 

「関! 大丈夫か!」

 

 松原が声を掛けると、倒れていた関がゆっくりと上半身を起こす。

 そしてグラブの中にあるボールを確かめて、ゆっくりと手を上げるのであった。

 

「アウト! スリーアウト!」

 

 審判が関のグラブにボールがあるのを確かめたあとに試合終了の宣言をする。

 その瞬間、スタジアムの歓声が最高潮になり、まるでプロ野球の試合でも見ていたかのような盛り上がりとなった。

 野手は全員翔のところに走っていき、ねぎらいの言葉をかける。

 翔も笑顔で応えるが、内心では複雑な様子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 吾郎はマウンドで喜んでいる翔達を見て、バットを持ちながらバッターボックスで立ち尽くしていたのであった。

 




面白い!また続きが見たいと思ったら、ぜひ高評価、お気に入り登録、感想をお願いします!

『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。