MAJORで寿也の兄になる   作:灰猫ジジ

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大変お待たせしました。
活動報告には詳しく書かせていただいたのですが、今後も少しの間だけ更新が遅れますのでよろしくお願いいたします。

あと、中学生編はあくまで高校編への繋ぎで考えていますので、試合の描写はないと思ってください!



第三十話

 中学三年生になった翔と寿也。

 身長も170cmを越え、少しずつ大人の男性になり始めていた。

 

 中学二年時、横浜シニアは佐藤兄弟のバッテリーを中心に準優勝をしており、決勝で負けた悔しさから猛練習に励んでいた。

 翔はピッチャーとセンターの二刀流が板につき、投打で活躍を見せるくらいの成長を見せている。

 寿也はバッティングに更に磨きが掛かっただけでなく、キャッチャーとしてのテクニックも更に向上していた。

 

 寿也に関しては昨年の決勝での怪我に責任を感じており、二度と同じ過ちを犯さないように身体を鍛えつつ、交錯プレーでも怪我をしないようにするにはどうするかを調べたりしていた。

 翔は寿也が無茶をしないように練習量を調整するのに苦労していた。

 

「寿也、今日はもう上がろうか」

「いや、僕はもうちょっとやっていくよ」

「寿也、今日はもう上がろうか」

「え、だからもうちょっと……」

「寿也、今日はもう上がろうか」

「……分かったよ」

 

 笑顔で同じことを繰り返す翔に対して、寿也はついに諦めた顔をして練習道具を持って帰りの支度を始める。

 翔は一息ついて同じように帰り支度を始めるのであった。

 

「翔、そういえば今度の夏大会って初めの相手はどこだったっけ?」

「えっと……たしか横須賀シニアだったと思うよ」

「ああ、泉くんがいるところだったよね」

「そうそう。彼は強敵だから油断出来ないよね」

 

 帰りの電車で来週から始まる夏大会について雑談をしていると、不意に寿也が何かを考えるような仕草のまま、黙り始めた。

 

「……やっぱり心配なの?」

「え? ……まぁね。去年の大会は僕のせいで負けたようなもんだから」

 

 1年も引きずっている寿也に対して、心の中で苦笑いをしつつ、フォローをする翔。

 

「……んー、それならさ、今年は絶対優勝しよう。それも()()で活躍してね」

「翔……」

「1人で背負うのはずるいよ。僕らは兄弟で双子なんだから、楽しいことも嬉しいことも悲しいことも辛いことも一緒だよ」

「……」

 

 寿也は翔の話を聞いて何も言えなくなっていた。

 そして自分自身のことしか考えていなかったことに対して、恥ずかしさのあまり顔を手で隠していた。

 

「……え? 寿也、急にどうしたの?」

「なんか……自分が恥ずかしくなってきちゃって……。

翔はいつも僕のことを考えてくれているのに、なんで僕は自分のことばっかり……って」

「ああ、そういうこと? そんなこと気にしなくて良いんだよ」

「……そうなの?」

「ああ、そうだよ。だって僕らは兄弟なんだからね。それに今回は寿也だっただけで、今後僕は助けられることだってたくさんあるだろうし」

「そっか……そうだよね。僕らは兄弟だもんね! ……ありがとう、翔」

 

 薄く笑いながらも、ここ1年ずっと沈んだ顔をしていた寿也の顔が徐々に晴れていく。

 翔はタイミングを見てはさり気なく声を掛けていたが、()()()()()がベストタイミングであったようだった。

 

(ありがとう、翔……。思えばこの1年はずっと迷惑掛けてばっかりだったよね。もう中学三年生なんだから、もっとしっかりしないといけないよな)

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 横須賀シニアとの対戦は横浜シニアの圧勝であった。

 寿也が今までの鬱憤を晴らすかのように、5打数5安打4本塁打8打点の活躍を見せていた。

 そこには昨年の逆転負けを引きずっているような姿はどこにもなかった。

 

「寿也、ナイスバッティング」

「ああ、ありがとう」

 

 静かに会話を交わす翔と寿也は、ハイタッチをしてお互いの健闘を称える。

 そして帰りの準備をして家に帰ろうとしていたとき、翔と寿也は後ろから声を掛けられるのであった。

 

「佐藤君、ちょっといいかい?」

「「え……?」」

 

 佐藤君と呼ばれたので、2人とも声を揃えて振り向く。

 そこには無精髭を生やした小太りの男性と、肩までの長さの髪をした20代そこそこの女性が立っていた。

 

「えっと……どちらの佐藤でしょうか?」

「ああ、すまないね。君ら2人ともに用があるんだ。申し遅れたが、私はこういうものだ」

 

 名刺を女性から2名分渡され、そこには”大貫”と”名倉”と書かれた名前があった。

 そして、大貫は()()()()()()() ()()()()()() ()()()()()()()()()()という肩書が書いてあった。

 

「「か、海堂高校!?」」

「ああ、そうだ。ぜひ翔君と寿也君にはうち(海堂)に来てほしいと思っていてね。他の選手の誰よりも先に声を掛けさせてもらったんだ」

「我々海堂高校野球部は、あなた方を第25期特待生として正式にスカウトさせていただきます。

条件等はご両親とも話し合ってからだとは思いますが、先に翔君と寿也君のご意思をお聞きしたく声を掛けさせていただきました」

 

 翔と寿也はまさかこのタイミングで海堂高校から接触があると思っていなかったので、かなり驚いていた。

 2人は顔を見合わせたあと、翔が代表して答える。

 

「えっと、ありがとうございます。ちょっとまだどうしようか悩んでいるので、一度持ち帰ってもいいですか?」

「……ああ、構わないよ。それにしても君は社会人みたいな言い方をするんだね」

 

 翔の話し方を聞いて、少し意外そうな顔をする大貫。

 慌てて「そんなことないですよ、あはは!」と笑って誤魔化して事なきを得る。

 

(危ない……(前世)の働いていたときの癖がいまだに出るんだな。気を付けないと……)

 

 また連絡をすると言って、2人と別れたあと帰りの電車で興奮している寿也の話を聞く。

 

「まさかもう海堂高校のスカウトが来るなんてね! しかもどの選手よりも先に来たって言ってたよ!」

「まぁ……それが本当かはともかく、良いところから特待生のスカウトが来てよかったね」

「良いところって! 海堂だよ!? 甲子園の常連で、いつもベスト4以上に残っているところじゃないか! 野球やっている中学生なら誰だって入りたい場所だよ!」

 

 興奮する寿也を横目に、翔は浮かない顔をしていた。

 翔は海堂高校がマニュアルを重視しているのと、例の()()()()()()()()がいるのであまり寿也とは関わらせたくないと思っていた。

 もちろん寿也はそんなことを知らないので、家に帰るまで興奮しっぱなしであった。

 

(さて、どうするべきか……)

 

 翔も中学三年生なので、そろそろ進学先を本格的に考えなくてはならないのだ。

 大学や社会人を視野に入れて進むべきか、プロを目指してより環境の良いところに行くべきか。

 悩みつつ、家の玄関に入ると、知らない靴があった。

 

(ん? 誰か来てるのかな?)

 

「「ただいまー」」

 

 翔と寿也の声を聞いて母親が走って翔達を出迎える。

 普段そこまで急いでいることはないことなので、何かあったのだろうかと不思議そうな顔をする。

 

「おかえりなさい、翔、寿也。今ね、E()L()()()()()()()()()()がいらっしゃっているわよ!」

 

 興奮気味に話す母親の顔を見て、翔と寿也は再度驚くのであった。

 




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『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/

『テイルズ オブ デスティニー〜7人目のソーディアンマスター〜』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
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