MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

36 / 68
第三十二話

 大貫と会ったあと、何事もなかったかのようにグラウンドに戻って練習を再開する翔。

 動揺を誰にも気付かれることなく、練習を終えて家に帰っていった。

 そして、お風呂に戻り部屋に入ると、寿也が話しかけてきた。

 

「翔……何かあったの?」

「……え? なんで?」

「ランニングから帰ってきて様子がおかしかったからさ。何かあったのかなって」

 

 誰にも気付かれていないと思っていた翔だが、実は双子である寿也にだけは動揺していたことを見抜かれていた。

 やはり双子はすごいなと思い、どうやって誤魔化そうかと考えてから答える。

 

「ああ、実は寿也と()()()()()()()()って決めたんだけど、言い出すタイミングを逃しちゃっててさ。

いつ言おうか、いつ言おうかって悩んでたからそう見えたのかも?」

 

 軽く笑いながら寿也に話す翔。寿也はそれを聞いて「そっかぁ! 翔も海堂に行くのか!」と喜んでくれたが、

 

「で、()()()()で様子がおかしいんだけど、何があったの?」

「……やっぱり分かる?」

「うん、分かる。それくらい分からなくて翔の双子の弟なんて言えないさ」

 

 翔の顔を見て微笑む寿也。

 その顔を見て、誤魔化すのは無理だと判断した翔は、大貫と会った時のことを正直に話すことにした。

 

「な……!? それって立派な脅しじゃないか!」

「まぁ明確には何も言ってないからね。こっちがどう受け取るかは自由だってことだよ」

「だからといってその脅しに屈してもいいの!?」

「まぁ……ね。でもこのままだと僕らはどこの高校にも行けなくなるんだよ。

父親が脱税で捕まるなんてことがあったら、そんな人の子供を欲しがる野球部なんてどこにもないからね」

「でも……」

「それに例えば他の高校の野球部に運良く入れたとしよう。でもこの情報以外に父さんの会社が不正をしていたらどうする?

僕らは部活だけでなく、学校にも行けなくなる可能性だって出てくるんだよ。……美穂もね」

 

 寿也は翔の言葉で、自分に考えが足りなかったことに気付く。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()んだよ。僕らも、僕らの家族も」

「……くそっ!!」

 

 寿也は勉強机を叩いて、悔しそうな顔をする。

 そして大切な全国大会初戦の前夜は更けていくのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 全国大会初戦は大阪の浪速シニアであった。

 サードに名手の三宅がいたが、翔が完全試合(パーフェクト)で抑えきる。

 

 続く2回戦の中京シニア、3回戦の葛西シニアともに完勝をする。

 中京シニアの草野の粘りには苦戦したものの、きちんと抑え、葛西シニアのエース寺門からは寿也がサイクルヒットは放つ大活躍を見せた。

 翔と寿也は心にモヤモヤを残しながらも、順調に勝ち進めていくのであった。

 

 

 

そして────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ストライク、バッターアウト! ゲームセット!」

「「「「「「うおおおおお! やったぁぁぁ!!!!」」」」」」

 

 

 その年、横浜シニアは念願の全国制覇を達成した。

 このときばかりは翔も寿也も海堂のことを忘れ、全員で喜びあった。

 特に寿也は昨年のことがあったので、泣きながらも喜んでいた。

 

 

 

 

 

「よし、表彰式終わったから帰るぞ。準備しろよ」

「「「「「はいっ!」」」」」

 

 表彰式が終わり、監督の指示で帰り支度をする選手たち。

 MVPに翔が選ばれ、ベストナインには翔だけでなく、寿也も選ばれていた。

 

 

 控室で着替えて、全員で球場の廊下を歩いていると、大貫が立っていた。

 横浜シニアには海堂の推薦を貰った選手が多くいるため、大貫が優勝のお祝いに来たと思い挨拶をする。

 一番後ろでは、翔と寿也が大貫を睨んでいたのであった。

 

「おっと、ごめんね。今日は佐藤君たちにも用があったんだ。君らも来年の海堂入学楽しみにしているからな」

「「「「はいっ! 失礼します!」」」」

 

 選手たちが全員いなくなったところで、大貫が翔達に話しかける。

 

「とりあえず優勝おめでとうと言っておこうか」

「あ、ありがとうございます」

「それで……気持ちは固まったかい?」

「…………」

「ふむ、出来れば9月末までに返事をしてくれよ。こっちも忙しいんでな」

 

 笑いながら去っていく大貫に寿也が飛び掛かろうとしたが、翔が慌てて抑える。

 

「寿也! 今ここで何かしても、僕らの不利にしかならないよ!」

「……くそっ!」

 

 翔と寿也は優勝した嬉しさが一気に吹き飛び、複雑な顔をして帰っていくのであった。

 

 

◇◇◇◇◇◇

 

 

 その日の夜。佐藤家に1本の電話が来る。

 

「翔ー! 本田君から電話よー!」

「はーい! ……って吾郎君から?」

 

 吾郎からの突然の電話に驚く翔。

 寿也と目を合わせて一緒に1階に降りていく。

 

「吾郎君?」

『お、翔君? 久しぶり?』

『…って英語? 随分上手くなったね』

 

 吾郎が相手なので日本語で電話に出たのだが、電話口が英語だったので、思わず英語で話してしまった翔。

 「ごめんごめん」とすぐに日本語に戻した吾郎に用件を聞く。

 

「どうしたの?」

「ああ、実はさ、俺高校から日本に戻ることになってね」

「あ! そうなの!? メリッサは何も聞いてなかったよ!」

「ああ、それは俺が言わないでくれって頼んでたんだよ。まぁともかくさ、その関係で一旦来週に日本帰るから、良かったら会わない?」

「え、それは構わないけど……」

「良かった! じゃあ日本着いたら連絡するから!」

「え! ちょっと!」

 

 話すだけ話して電話を切ってしまった吾郎。

 何が何だか分からない翔に更に分からない寿也。

 とりあえず吾郎が戻ってくる来週に詳しい話を聞こうと思い、部屋に戻っていったのであった。

 




面白い!また続きが見たいと思ったら、ぜひ高評価、お気に入り登録、感想をお願いします!

『MAJORで吾郎の兄になる』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/216811/

『テイルズ オブ デスティニー〜7人目のソーディアンマスター〜』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/218961/

『ドラゴンクエストΩ 〜アルテマこそ至高だ!〜』という作品も掲載しておりますので、下記から併せてご覧いただけますと幸いです。
https://syosetu.org/novel/226246/
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。