大貫と会ったあと、何事もなかったかのようにグラウンドに戻って練習を再開する翔。
動揺を誰にも気付かれることなく、練習を終えて家に帰っていった。
そして、お風呂に戻り部屋に入ると、寿也が話しかけてきた。
「翔……何かあったの?」
「……え? なんで?」
「ランニングから帰ってきて様子がおかしかったからさ。何かあったのかなって」
誰にも気付かれていないと思っていた翔だが、実は双子である寿也にだけは動揺していたことを見抜かれていた。
やはり双子はすごいなと思い、どうやって誤魔化そうかと考えてから答える。
「ああ、実は寿也と
いつ言おうか、いつ言おうかって悩んでたからそう見えたのかも?」
軽く笑いながら寿也に話す翔。寿也はそれを聞いて「そっかぁ! 翔も海堂に行くのか!」と喜んでくれたが、
「で、
「……やっぱり分かる?」
「うん、分かる。それくらい分からなくて翔の双子の弟なんて言えないさ」
翔の顔を見て微笑む寿也。
その顔を見て、誤魔化すのは無理だと判断した翔は、大貫と会った時のことを正直に話すことにした。
「な……!? それって立派な脅しじゃないか!」
「まぁ明確には何も言ってないからね。こっちがどう受け取るかは自由だってことだよ」
「だからといってその脅しに屈してもいいの!?」
「まぁ……ね。でもこのままだと僕らはどこの高校にも行けなくなるんだよ。
父親が脱税で捕まるなんてことがあったら、そんな人の子供を欲しがる野球部なんてどこにもないからね」
「でも……」
「それに例えば他の高校の野球部に運良く入れたとしよう。でもこの情報以外に父さんの会社が不正をしていたらどうする?
僕らは部活だけでなく、学校にも行けなくなる可能性だって出てくるんだよ。……美穂もね」
寿也は翔の言葉で、自分に考えが足りなかったことに気付く。
「
「……くそっ!!」
寿也は勉強机を叩いて、悔しそうな顔をする。
そして大切な全国大会初戦の前夜は更けていくのであった。
◇◇◇◇◇◇
全国大会初戦は大阪の浪速シニアであった。
サードに名手の三宅がいたが、翔が
続く2回戦の中京シニア、3回戦の葛西シニアともに完勝をする。
中京シニアの草野の粘りには苦戦したものの、きちんと抑え、葛西シニアのエース寺門からは寿也がサイクルヒットは放つ大活躍を見せた。
翔と寿也は心にモヤモヤを残しながらも、順調に勝ち進めていくのであった。
そして────
「ストライク、バッターアウト! ゲームセット!」
「「「「「「うおおおおお! やったぁぁぁ!!!!」」」」」」
その年、横浜シニアは念願の全国制覇を達成した。
このときばかりは翔も寿也も海堂のことを忘れ、全員で喜びあった。
特に寿也は昨年のことがあったので、泣きながらも喜んでいた。
「よし、表彰式終わったから帰るぞ。準備しろよ」
「「「「「はいっ!」」」」」
表彰式が終わり、監督の指示で帰り支度をする選手たち。
MVPに翔が選ばれ、ベストナインには翔だけでなく、寿也も選ばれていた。
控室で着替えて、全員で球場の廊下を歩いていると、大貫が立っていた。
横浜シニアには海堂の推薦を貰った選手が多くいるため、大貫が優勝のお祝いに来たと思い挨拶をする。
一番後ろでは、翔と寿也が大貫を睨んでいたのであった。
「おっと、ごめんね。今日は佐藤君たちにも用があったんだ。君らも来年の海堂入学楽しみにしているからな」
「「「「はいっ! 失礼します!」」」」
選手たちが全員いなくなったところで、大貫が翔達に話しかける。
「とりあえず優勝おめでとうと言っておこうか」
「あ、ありがとうございます」
「それで……気持ちは固まったかい?」
「…………」
「ふむ、出来れば9月末までに返事をしてくれよ。こっちも忙しいんでな」
笑いながら去っていく大貫に寿也が飛び掛かろうとしたが、翔が慌てて抑える。
「寿也! 今ここで何かしても、僕らの不利にしかならないよ!」
「……くそっ!」
翔と寿也は優勝した嬉しさが一気に吹き飛び、複雑な顔をして帰っていくのであった。
◇◇◇◇◇◇
その日の夜。佐藤家に1本の電話が来る。
「翔ー! 本田君から電話よー!」
「はーい! ……って吾郎君から?」
吾郎からの突然の電話に驚く翔。
寿也と目を合わせて一緒に1階に降りていく。
「吾郎君?」
『お、翔君? 久しぶり?』
『…って英語? 随分上手くなったね』
吾郎が相手なので日本語で電話に出たのだが、電話口が英語だったので、思わず英語で話してしまった翔。
「ごめんごめん」とすぐに日本語に戻した吾郎に用件を聞く。
「どうしたの?」
「ああ、実はさ、俺高校から日本に戻ることになってね」
「あ! そうなの!? メリッサは何も聞いてなかったよ!」
「ああ、それは俺が言わないでくれって頼んでたんだよ。まぁともかくさ、その関係で一旦来週に日本帰るから、良かったら会わない?」
「え、それは構わないけど……」
「良かった! じゃあ日本着いたら連絡するから!」
「え! ちょっと!」
話すだけ話して電話を切ってしまった吾郎。
何が何だか分からない翔に更に分からない寿也。
とりあえず吾郎が戻ってくる来週に詳しい話を聞こうと思い、部屋に戻っていったのであった。
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