「ジュニア、日本に行く準備ができたか?」
「ああ。親父も大丈夫なのか?」
「まぁな。とはいえ、俺はすぐに戻ってくるから、そこまで大荷物にはならないんだがな」
ギブソンとジュニアは、日本へ行くための準備をしていた。
“ワールド高校”──ギブソンの提案で
日本の高校と少し違うのは、海外からの留学生が何人いても高校野球連盟などの公式の大会に出場できることや、海外の留学生に限り、
実は、日本人の学生にもその制度を適用しようと試みたのだが、許可が下りずに断念した経緯がある。
ただ、それ以外に関して許可が下りたのには、将来のスポーツ選手やその他の分野でも世界で活躍する日本人の育成に貢献出来るという判断からだった。
それもそのはずだ。世界のレベルの高い学生や指導者が集まれば、今まで以上にその分野が発展するのは当たり前である。
今までは各国ごとの取り組みでしかやっていなかったため、切磋琢磨するにも限定的になっていたのだが、それが1つの場所に集まって出来るとなると反対意見もほとんど出なかった。
「あなた、私は日本に行かなくてもいいの?」
「ああ。ジュニアももう高校生だ。そこまで心配しなくてもいいだろう」
「……そうね。ジュニア、向こうで困ったらいつでも連絡するのよ」
「分かったよ。母さん、ありがとう」
◇◇◇◇◇◇
メリッサはため息をついていた。
彼女はスマートフォンの画面をずっと見ていたのだった。
(はあ……早く来ないかしら? 本当に待ち遠しいわ)
メリッサは翔と会えなかった数年間で大きく成長していた。
数年前のメリッサの見た目は美少女だったのだが、より大人の女性に近づき──まだ幼さは残っているが──言葉も英語以外に日本語も流暢に話せるようになっていた。
そして、誰よりも勉強熱心だったため、その様子を見ていた男子生徒からの人気は絶大であった。
要は、可愛くて勉強も出来て、親も超がつく人気者というのもあって、非常にモテるのである。
(あ、時間だわ!)
メリッサは待ち遠しい恋人を待っていたかのように、笑顔でスマートフォンを操作する。
そしてその笑顔の相手は翔ではなかった。
◇◇◇◇◇◇
「パパ!」
「メリッサか。……どうしたんだい?」
ソファーに座っていたギブソンは、後ろからメリッサに呼ばれて振り返る。
そこには嬉しそうな顔をした彼女がいた。
「私と約束したこと、覚えてる?」
「……約束?」
「誤魔化さないで! ほら!」
メリッサはギブソンの前に先程見ていたスマートフォンを突きつける。
そこには英語で詳細な情報が載っていた。
「こ、これはなんだい?」
「もう! 前に言ったよね!? もし今年のPSATで上位5%以内に入れたら、
PSATとは、Preliminary Scholastic Aptitude Testの略で、大学に入る学生のための模擬テストのことである。
まだ小学校を卒業したばかりのメリッサだったが、ワールド高校が出来るということと翔が入学するということを聞き、自身も行きたいと言いだしたのである。
それに対してギブソンとローラはもちろん、ジュニアまで反対をしていた。
ジュニアのように高校生になる年齢まで成長しているのであればまだしも、まだ小学生を卒業したばかりの女の子である。
せめて高校を卒業するまで待つように言われていたのだが、今回のメリッサは
それであればとギブソンが出した条件──それがPSATで上位5%以内に入るということだった。
そして、メリッサが見せたスマートフォンの画面には、
(ま……まさか本当に取ってくるとは……)
ギブソンからすると、かなり無茶な条件を出したつもりであった。
ローラもその条件がどれだけ難しいことか分かっていたため、絶対出来ないと思って了承していた。
しかし、メリッサは違ったのである。彼女には勝算があったのだ。
「し、しかしだな……やはり何があるか分からないし──」
「──天下のメジャーリーガー、ジョー・ギブソンが約束を破るの? パパはそんなこと……しないよね?」
「う、うむ」
「やった! パパありがとう! 大好き!」
メリッサはギブソンに抱きつき、まんざらでもない顔をするギブソン。
「じゃあ私も入学出来るように手続きお願いね!」と言い残し、自室へと戻るメリッサ。
“
部屋に戻ったメリッサはガッツポーズをして喜ぶ。
しかし、まだ油断はしていなかった。
(まだよ。ここまできてもパパは最後の最後に意見を変えてきたりもするわ。私が日本に行くために、きちんと出来ることをやっておかないと……)
メリッサはそのまま庭へと向かっていった。
「お兄ちゃん!」
「……メリッサ。どうした?」
庭ではジョー・ギブソンJr.が、バットを持って素振りをしていた。
メリッサに呼ばれると、素振りを中断して振り向く。
「実はね、私も日本に行けることになったの!」
「え!? もしかして親父のあの条件をクリアしたのか!?」
「うん! ほら!」
嬉しそうにスマートフォンを見せるメリッサ。
ジュニアはその画面を見て口を開けたまま驚いていた。
「まさか……本当にやるとはな。俺には難しすぎて、どれだけ凄いテストなのかも理解したくないけど、メリッサが凄いということだけは分かるよ」
「ありがとう! それでね、お兄ちゃんにお願いがあるんだけど……」
「む、なんだい?」
「もしお父さんやお母さんが反対しても、お兄ちゃんだけは賛成してほしいの。私、これでも一生懸命頑張ったんだよ?」
「それは…………いや、なんでもない。分かった。俺は最後までメリッサの味方だよ」
「本当!?」
「でも親父や母さんはちゃんと説得してから日本に行くようにしろよ。それが出来ないなら諦めたほうがいい」
「うん、そうだね。分かった! ちゃんと説得する!」
「ああ、頑張れ。俺も一緒に行けるのを楽しみにしているよ」
ジュニアの言葉を聞いたメリッサは、機嫌が良さそうに家の中に戻っていく。
その様子を見たジュニアは苦笑いをしていたのであった。
結局、メリッサはローラの説得にも成功し──最後まで心配されていたが──無事、日本行きの権利を手に入れたのであった。
◇◇◇◇◇◇
日本への出発日当日。
空港ではギブソン一家が話をしていた。
「じゃあ行ってくるよ」
「ジュニア、しっかりやってこいよ」
「ああ。寮で食事もしっかり出るし、大丈夫だと思うよ」
「メリッサも寂しくなったらすぐに帰ってくるのよ!」
「ママ……私ももうそんなに子供じゃないんだから大丈夫よ」
泣きそうな顔のローラはメリッサに抱きつき、なかなか離そうとしない。
メリッサもローラのことを抱きしめながら、子供をあやすようにローラの背中を撫でていた。
飛行機に乗り込み、出発していくジュニアとメリッサ。
日本へ向けて飛んでいくそれを、ギブソンとローラは地上から見送っていた。
「あの子達……大丈夫かしら?」
「まぁジュニアも高校生になるし、メリッサは思っている以上にしっかりしているからな。
俺達も久しぶりに夫婦だけの生活を楽しもうじゃないか」
「まあ! あなたったら」
ギブソンの言葉に頬を緩ませるローラ。
しかしふと思い出したように、ギブソンが呟く。
「あ……」
「どうしたの?」
「いや、その……メリッサの住む寮なんだが……」
「メリッサの?」
「急だったので、手続きするのを忘れていた……」
「え!? 大丈夫なの!?」
「と、とりあえず茂治に連絡して、なんとかしてもらおう」
ギブソンはスマートフォンを手にして、茂治へと連絡するのであった。
「もう! パパのばかぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
というわけで、皆様が待ちわびていた?メリッサがついに合流します!
高校野球編をお楽しみにしていてくださいませ!
【吾郎・寿也の高校入学時点のステータス】
■本田 吾郎 ステータス
◇投手基礎能力一覧
球速:153km
コントロール:C+
スタミナ:C+
変化球:
チェンジアップ:4
ツーシームジャイロ:4
◇野手基礎能力一覧
弾道:3
ミート:D+
パワー:C
走力:C
肩力:C+
守備力:C-
捕球:C+
◇特殊能力
【共通】
ケガしにくさD+ 回復C+
【野手】
チャンスD+ 対左投手D 盗塁D
走塁D 送球C+
【投手】
対ピンチB- 対左打者D 打たれ強さD+
ノビC+ クイックD
ジャイロボール 対強打者○ 尻上がり
闘志 重い球
■佐藤 寿也ステータス
◇野手基礎能力一覧
弾道:3
ミート:C-
パワー:C-
走力:D+
肩力:C-
守備力:D+
捕球:C-
◇特殊能力
【共通】
ケガしにくさC 回復C- 選球眼
【野手】
チャンスC- 対左投手D キャッチャーC+
盗塁D 走塁D+ 送球C+
パワーヒッター 初球○ 対エース◯
ブロック 守備職人