本日から高校野球編スタートです!
今後の更新の話などは活動報告に書いてありますので、ご覧くださいませ。
活動報告にも書いていますが、これからはなるべく縦書きで読む方が読みやすいかもしれません。
◆活動報告
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=249621&uid=302379
第三十六話
「それじゃあ行ってきます!」
「はい、行ってらっしゃい」
翔と寿也は母親に見送られながら家を出る。今日はワールド高校の入学式──と翔達は思っていたのだが、ワールド高校では日本で行われるような入学式はない。
日本の風習に則ったところもあるが、海外では入学式がないところも多いため、ワールド高校では行われないのであった。
駅に着いた翔達は電車に乗り込み、高校へと向かう。
「……これから毎日この電車で通うのか。結構辛そうだね」
「そうだよね。通学・通勤ラッシュのど真ん中だもんね」
混雑する電車の中、高校生活初日にも関わらず、翔達は嫌な気持ちになっていた。ワールド高校は東京にあるため、神奈川から電車に乗って一時間ほど掛かる。
上り電車は朝がかなり混むため、うんざりしつつも翔は前世を思い出していた。
(前のときもこうやって職場に向かっていたなぁ……懐かしいけど、もう味わいたくなかった……)
満員電車は酷い時は乗車率百パーセントを超えることも多く、駅員が入り口で扉が閉まるように乗客を無理やり押し込んだりしている。
そのため、電車内は更に窮屈となるのであった。
「や……やばかったね……」
「これに毎日乗るのは……厳しいかも……」
目的の駅に着いた翔達。しかし、電車から降りるだけでも一苦労で、通学する前に疲労困憊となってしまっていた。
「と、とりあえず高校に行こうか……って吾郎君だ!」
寿也が駅の改札で待っていた吾郎を見つける。吾郎はアメリカにいたときから朝早く起きてランニングする習慣があったため、遅刻という遅刻はそこまでしたことがない。
今日も、翔達より一本早い電車で着いていたくらいだった。
「おう! 翔と寿也!」
「吾郎君、おはよう」
お互いに挨拶を交わし、電車内がとても大変だったことを話しながら高校へと向かう。
「これさ、ランニングとか自転車で通ったほうが楽じゃない? 朝の運動にもなるし」
「たしかにだな……」
「そうだね。ちょっと考えようか」
翔の提案に対し、寿也と吾郎はポジティブな反応を示し、通学までの方法を真剣に考えることとなった。このことからも今まで通学・通勤ラッシュを経験したことがない吾郎と寿也にとってもかなり苦痛であったことが分かる。
通学に関しての話をしているとワールド高校の校門が見えてくる。ワールド高校には世界中の多種多様な人種の生徒が通っており、入学条件は〝優秀であること〟であった。
それは野球などのスポーツだけではない。勉強や芸術などの一芸に秀でているだけで歓迎され、世界中の専門的な知識や技術に触れつつも、その才能をさらに伸ばすことが出来る。
基本的には英語が共通言語となるので、話せない者は早急に学ぶ必要がある。翔達は幼い頃から英語を学んでおり、吾郎もアメリカ生活が長かったため、英語を話すことは出来ていた。
校門に到着すると、見たことがある人が二人立っていた。
「翔! 寿也! 久しぶりだな!」
いきなり英語で話し掛けられて困惑するが、話し方に覚えがあったので翔も寿也もすぐに思い出す。
「…………え? もしかしてジュニア? ジョー・ギブソン・Jr.なの?」
「そうだ! 小学校以来だから……五年ってところか?」
翔の質問に柔らかい口調で答えるジュニア。吾郎はつい先日まで一緒に暮らしていたため、何か思うことはないが、翔達にとっては本当に久しぶりだったため会話が弾んでいた。
「とりあえず色々と大変だったみたいだけど、これからよろしくな! 俺達なら日本の高校野球でトップ取るなんてらくしょ……」
ジュニアが話している途中で言葉を切り、何かを思い出したかのようにダラダラと汗を掻き出す。
「ん? ジュニア、どうしたの?」
「え、いや……その……」
ジュニアは恐る恐る後ろを振り返ると、そこには金髪の美少女が両手を腰に置き、口を膨らませていた。
「お・に・い・ちゃ・ん? 私を忘れるなんて、いい度胸じゃない」
「いや……その、忘れたわけでは……」
その女の子は髪を腰まで伸ばし、百六十五センチほどの身長で、日本であれば身長が高い部類であろう。まだ幼さを残してはいるが、誰もがはっと息を呑むくらいの美しさと可愛さを兼ね備えた子であった。
「翔もひどいよ! せっかく久しぶりに会えたのに、私のこと無視するなんて!」
その女の子は翔のことも知っているようで、ジュニアだけでなく、翔にも怒っていた。
「え……?
翔は女の子の正体に気付き驚きの声を上げる。
「そうよ! 私にすぐに気付かないなんて失礼だわ!」
「いや、だって気付かないよ……すごい成長したし……綺麗になっているんだもん……」
「えっ……?」
翔の突然の言葉に、メリッサは目を見開く。
(い、今! 翔に綺麗になったって言われたの……!?)
メリッサは、翔の言葉の意味を理解すると顔を真っ赤にする。ジュニアは苦笑いをすると、メリッサに謝罪をする。
「メリッサ、悪かったな。別に忘れていたわけじゃないんだよ。翔を驚かそうと思ってな。実際に翔も驚いているみたいだし」
「そりゃあ驚くよ……メリッサって確かまだ十二歳とかだったよね? なんでワールド高校にいるの?」
メリッサがこの場にいることも驚きだが、ワールド高校の制服を着ていることにも驚きを隠せない翔。そんな翔にメリッサは飛び級制度を使って、ワールド高校へと来たことを伝える。
「へぇ。ワールド高校ってそんな制度があったんだ?」
「そうなのよ。私これでも結構頑張ったんだから!」
ドヤ顔満載の満面の笑みで翔に頑張ったんだとアピールするその姿は、やはりまだ幼い部分があった。そして、その褒めて欲しそうな顔を見て、翔は苦笑いをする。
「メリッサも頑張ったんだね。てかMineでやり取りしていたんだから、教えてくれても良かったのに」
「えへへ、サプライズだよ!」
怒った表情から、ドヤ顔満載の満面の笑み、そしていたずらが成功した子供のような笑顔と、コロコロ表情を変えるメリッサに翔も嬉しそうな笑顔を見せるのであった。
「なんか……僕だけ忘れられてない……?」
寿也も久しぶりに会ったのに、まったく会話に加われていなかったことに対して、寂しそうに呟くのであった。
◇
「へぇ。じゃあジュニアは学生寮に泊まるんだ?」
「そうだな。親父が手配してくれてたから……な」
クラス発表後、今後の学校生活のガイダンスが行われ、初日の高校生活は終了した。放課後となったので、翔達はジュニアとメリッサも交えて教室内で雑談をしていた。
「ん? ……何かあったの?」
翔がジュニアの歯切れの悪そうな発言を気になり、何かあったのかと問いかける。
「実は──」
「そうだ! 翔、聞いてよ!」
ジュニアの話を遮って、メリッサが話に割って入ってくる。
「パパってば酷いのよ! お兄ちゃんの寮の手続きはしていたのに、私のは忘れてたの! そのせいで今もホテル住まいなのよ!」
「え? そうなの?」
ギブソンに対しての不満を翔にぶつけるメリッサ。ジュニアに聞くと、頷いたため真実であったことが分かる。
「一応何かあったらまずいから、俺も一緒の部屋にいるんだけどな。でもいつまでもこのままってわけにも行かなくてさ……」
「まぁ……ホテルも高いからねぇ」
良い手が思い浮かばないジュニアに寿也が質問する。
「学生寮は空いてないの?」
「確かめてもらったんだが……もう部屋は埋まってしまっているみたいなんだ。だからどこかに部屋を借りるかするしかないんだが、ここらへんは
ジュニアとしても出来る限りのことをやっていたのだが、これ以上の方法が思いつかず悩んでいた。そのとき翔を見ていたメリッサが、何かを思いついたかのように声を上げる。
「そうだ!
「…………え?」
全員がメリッサを見て固まる。当のメリッサは、名案を思いついたとばかりにドヤ顔をしていた。
「い、いやいや。女の子が男のいる家に泊まり込むのはまずいでしょ」
「そうだ! まず親父が許さないと思うぞ!」
翔とジュニアが反対の意見を出す。
「で、でも! 元々はパパが悪いんじゃない! だから許してくれるよ! 吾郎もそう思わない!?」
「いやぁ……
「というか、まずうちの両親がOK……するかもしれないけど、僕もいるしなぁ」
メリッサは吾郎に助けを求めるが、即座に否定される。寿也も
「で、でもまだ聞いてみないと分からないでしょ! 私はパパとママに聞いてみるから、翔と寿也もご両親に聞いてみてよー!!」
全員に否定されたメリッサは、少し泣きそうな顔で聞いてみないと分からないと言う。翔とジュニアは目を合わせるとため息をつく。
「翔……すまない」
「まぁ仕方ないよね。ダメ元で聞いてみるよ」
そう言うと、スマートフォンを取り出して自宅へとコールするのであった。
◇
『別にいいわよ。うちには美穂もいるし、同い年なら仲良くなれるんじゃないかしら?』
翔が母親から言われた言葉である。寿也が予想していた通りだったが、迷いもなくOKされたことには翔は驚いていた。
「…………」
「翔、どうだったんだ?」
電話を切った翔がスマートフォンを見つめていると、ジュニアがどうだったのかと聞いてくる。この回答次第で、このあとメリッサが両親に聞くことになるので、妹想いのジュニアとしても気になっていた。
「良いって」
「……え?」
「うちの母さんは良いってさ……
再び固まる翔達の横で、メリッサは喜んでいた。
「じゃあ後はパパ達を説得するだけね!」
今の時間はアメリカではまだ夜中のため、今日はホテルに泊まってそこで説得をするということだった。ここまで来ると、本当にメリッサが佐藤家に居候するのではないかという話が現実味を帯びてくる。
「翔、言わなくても分かっていると思ってるが……」
「……はい」
「……メリッサに手を出したら、ただじゃ置かないからな」
「……はい、分かってます」
ジュニアは居候するのが確定したかのように、今度は翔を睨みながら脅しをかける。それに返事をする翔の目は、感情を失ってどこか遠くを見ているようであった。
え?朝の7時に投稿されていたって?
ソ、ソンナコトナイヨ!キノセイダヨ!
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