「よし! じゃあ今日はこれで終わりだ! 明日は身体能力測定をする予定だから、同じ時間に集合だ!」
翔チームとアルヴィンチームの対決のあと、ワールド高校野球部は他のメンバーも同じく少人数で試合をしていた。
前の試合で特に何もしていなかった翔も再び参加することになり、全員の実力を確かめつつも良い交流の時間になっていた。
吾郎も本人の希望により参加し、ジュニアと対決するなどもしていた。
「おっしゃあ! 翔、寿也、ジュニア! 帰りにバッティングセンター寄って行こうぜ!」
「うん、いいよ」
「僕も大丈夫」
「ああ、俺も良いぞ」
まだまだ体力が余っている吾郎の誘いでバッティングセンターに行くことに決まった。
更衣室で着替えて正門から帰ろうとしたとき、後ろから声が掛かる。
「ちょっとーー! 私を置いていくのは酷くない!?」
「あ……メ、メリッサ……!」
声を聞いて全員がすぐに振り返ったら、そこには両手を腰に当てて頬を膨らませているメリッサがいた。
制服を来て、長い金髪をツーアップにしていた少女は本気で怒っていたようだったが、それすらも翔達からするととても可愛らしく見えていた。
それは翔達だけでなく、周りの男子生徒も同じ印象を持ったようで、彼女のことを二度見したりしていた。
「吾郎と寿也はともかく、翔とお兄ちゃんは最低だよ!!」
「いや、その……ごめんって」
「ほんとにごめん……完全に忘れてた……」
ポカポカとメリッサによって叩かれているジュニアと翔は、言い訳をせずに素直に謝る。
結局次の休みの時に翔がご飯を奢るという約束をして、ようやく許してもらうまでに一時間ほど掛かっていた。
吾郎と寿也は「俺ら空気だな」と苦笑いをしており、結局この日はバッティングセンターに行く空気にならずに帰宅することとなった。
佐藤家で二人きりになったとき、メリッサに「次忘れたら許さないんだからね」と言われた翔は、お風呂上がりのアイスを献上することで機嫌を取るのであった。
◇
次の日からワールド高校野球部の本格的な練習が始まる。
まず、投手陣と野手陣のそれぞれにサポートするための専属スタッフが付き、野球部専用のジムや室内練習場、分析ルーム、ミーティングルームなどまるで先進国のオリンピック選抜合宿で使うような設備の紹介をされたときは、さすがの翔も驚きを隠せなかった。
「じゃあまずは全員の身体能力を測定する」
ケビンの指示で室内練習場とジムを使って、身体能力検査をすることになった。
基本的な筋力、柔軟性、体力、瞬発力などを専用の機械を使って検査していく。
最後の体力検査だけはグラウンドで行われ、一定のスピードでひたすら走り続けるというものだったが、「も、もう走れないでヤンス〜〜!!」という声が後ろの方で聞こえた翔はまさかの矢部明雄がいるのかと振り返る出来事もあった。
(矢部君がいるのかと思ってたら……ヤーベンがいたのか!)
ヤーベン・ディヤンス──白人、金髪、そばかすがあることを除けば、見た目はほとんどパワプロの矢部君なアメリカ人。
違いは生まれた国くらいで、オタクなところや語尾の「〜でヤンス」というところまでほぼそっくりであった。
実は翔が思っている以上に彼が知っているメンバーはいた。
パワプロからはアルヴィンやヤーベンだけでなく、マキシマム、ナヌーク、ギャネンドラ、ヴィクターがおり、MAJOR原作でもロイとケロッグもいた。
他にも世界各国から実力者と思われる選手もおり、身体能力検査でも上位の成績を出す人もいた。
「はあ……はあ……」
「よし、じゃあ今日のデータはスタッフ陣で分析して、これからの練習メニューに取り入れていくからな」
グラウンドで呼吸を荒くして倒れているメンバー。グラウンドを何十周も走らされたため、流石の翔や寿也、吾郎、ジュニアも立てない状態であった。
体力が尽きたメンバーから抜けていく方針だったのだが、アルヴィンが負けず嫌いを出したのか粘り、それに吾郎も負けずに対抗したため、いつまでも終わらないということが発生していた。
「じゃあ今日はこれで終わりにするが、今週末に練習試合を組んでいるから各自用意しておけよ」
「……練習試合!?」
ほぼ全員が身体を起き上がらせる。国は違っても、試合が好きなのは変わらない。
ケビンはタフな選手を見て、「まだまだ元気じゃねぇか」と苦笑いをする。
そこで上半身を起き上がらせていた寿也が質問をする。
「
「ああ、たしか……EL学園と金城高校といったかな?」
EL学園は関西の名門であり、甲子園常連校である。翔達も中学時代にスカウトされていた高校のため、ある程度知っていた。
しかし金城高校というのは聞いたことがなかった。
「EL学園は関西の名門ですね。金城高校というのは……?」
「いやな、実は俺もよく知らねぇんだ。とりあえず練習試合の申請があったところを順にやっていく予定だ」
「申請が合った順に……?」
ワールド高校のような実力者が集まっているのあれば、対戦する相手は吟味しても問題ないはずなのだが、ケビンは申請して来た順に試合を受けると言う。
それには全員が疑問を抱いても不思議ではなかった。
「
ジュニアが当然の質問をする。ようやく息を整えた他の選手もジュニアと同じような顔をしていた。
「ああ。一応お前達には課題を課しておこうと思ってな」
「課題……ですか?」
「ああ。お前達には夏の予選までに練習試合を最低でも五十試合はして貰う。それで全勝出来なければ、ワールド高校は
「…………!?」
ケビンの課題に対し、またもや疑問が増える。今は四月。七月の夏の予選までに五十試合をするというのはかなりハードである。
だが、このことは今のワールド高校野球部にとって大切な出来事となるのであった。
「あ、そうそう。最後に紹介する人がいる。ちょっと待ってろ」
一度校舎へ向かい、戻ってきたケビンは一人の女子生徒を連れてきていた。
その子を見て、目を見開く翔とジュニア。
「今日から野球部のマネージャーとして入部してもらうことになった」
「皆さん、はじめまして。メリッサ・ギブソンといいます」
そこには昨日帰りに置いていかれそうになったメリッサがいるのであった。