MAJORで寿也の兄になる   作:ねここねこねこ

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毎日投稿7日目です。



第四十六話

「おっしゃ! 回れ回れ!」

「まだまだ点取れるぞ!」

 

 全国高等学校野球選手権東東京大会の一回戦。戸川高校との対戦はワールド高校が終始圧倒していた。

 現在三回で21-0。出場したのは〝第二レギュラー〟のメンバーでアルヴィンが先発であった。

 相手は大体が二回戦止まりの都立高校のため、世界トップクラスの選手が集まるワールド高校の相手になるわけはなかった。

 

 それでも彼らが油断することはなかった。それは練習試合の初戦であるEL学園戦で〝第一レギュラー〟が苦戦していたのを見ていたからである。

 彼らにとって負けることはありえない。あとは()()()()()()()()()()()()()ということになる。

 それが今の点差となっていた。

 

 アルヴィンは翔や吾郎と一緒に鍛えたファストボールや変化球を駆使して、戸川打線をノーヒットに抑える。

 二人ほどスピードは出ていないし、変化球のキレも勝っているわけではない。

 そして、彼独自の変化球〝ミラージュナックル〟は入学当時よりもキレが増しながらも多投することはなかった。

 

 基本はファストボールを中心に、カットボールやスラーブでタイミングやスウィートスポットを外すことで打ち取るピッチングを心掛けていた。

 野手を信頼しているからこそ出来るピッチングであり、それは野手にも伝わり、逆に信頼を貰うようにもなっていた。

 

(これで……終わりだ!)

 

『ストライク! バッターアウト! ゲームセット!』

 

 ワールド高校〝第二レギュラー〟。戸川高校を相手に31-0の五回コールドであった。

 アルヴィンは参考記録ながらノーヒットでその日の仕事を終えた。

 

「ナイスピッチング」

「……ふん、当然だ」

 

 翔がベンチでアルヴィンを出迎える。クールに返事をしたアルヴィンだったが、翔から差し出された手にハイタッチをして応える。

 先に荷物をまとめてベンチ裏に入っていったアルヴィンの口元はどこか嬉しそうであった。

 

 

 

 

 二回戦の相手は大林学園。昨年の夏の大会ではベスト八にまで進んだ相手である。

 この相手をするのは翔率いる〝第一レギュラー〟のメンバー。

 打順はEL学園戦とまったく同じであった。

 

◇スターティングメンバー

 1番:センター 佐藤翔 

 2番:セカンド  ケロッグ

 3番:サード ジョー・ギブソン・Jr. 

 4番:キャッチャー 佐藤寿也  

 5番:ピッチャー 本田吾郎

 6番:ファースト マキシマム・池田・クリスティン

 7番:レフト ヴィクター・コールドバーグ 

 8番:ショート ロイ

 9番:ライト ヤーベン・ディヤンス

 

 

 練習試合を五十試合して、監督のケビンが色々とメンバーを入れ替えたりして試した結果、元々のメンバーにするのが一番良いという判断になった。

 

(やはり全ては俺の名采配……!)

 

 ケビンは調子に乗っていたが、実際にその采配は大当たりしていたので、誰も文句は言うことはなかった。

 〝第一レギュラー〟は〝第二レギュラー〟と違い、吾郎のピッチングでねじ伏せていく戦い方をしていた。

 吾郎がジャイロボールで三振の山を築き、攻撃では翔の先頭打者ホームランを皮切りに、小技をほぼ使わず豪打で得点を重ねていく。

 

 二回戦は昨年のベスト八相手に28-0の五回コールド。

 三回戦、四回戦、五回戦と順調にコールドゲームで勝ち進み、新設校の初参加でベスト四に残るという偉業を成し遂げた。

 それは新聞の記事にも大きく取り上げられることになり、〈黒船には〝剛のチーム〟と〝柔のチーム〟の二つのレギュラーチームがおり、状況に応じて臨機応変に立ち回れる非常に優秀なチーム〉と話題となっていた。

 

「はっはっは!」

 

 新聞を見てケビンが笑っていた。

 

監督(ボス)……新聞読めないのになんで見てるんですか?」

「こんなの雰囲気で分かるだろうが! ……って翔か! 丁度良いところに来た! この新聞の記事を読んでくれ!」

 

 待っていましたとばかりに翔に新聞の記事を読ませるケビン。

 もはやキャプテンの仕事ではないだろうと翔は思っていたが、苦笑いしつつもきちんと読んであげる辺りは彼の優しさが出ていた。

 レギュラーが二つあるということは、インタビューでケビンが語っており──通訳はもちろん翔──試合内容を見れば、剛と柔がどちらのレギュラーチームを指していることは一目瞭然だった。

 

「あ! 監督(ボス)、また翔に新聞を読ませてるの!? いい加減自分で日本語覚えなさいよ!」

「メリッサか……翔、お前の女房は嫉妬で監督(ボス)の俺に絡んでくるようになったんだぞー!」

「ち、ちがっ!」

 

 女房と言われたメリッサはすぐに否定するが、翔は苦笑いするだけであった。

 大会前日の出来事以降、特に二人がよそよそしくなるということはなかったが、メリッサの態度が分かりやすく変わったため、周りからは何かがあったのだろうと勘ぐられていた。

 ジュニアには直接問い詰められ、アルヴィンには「相手はまだ子供なんだから、ちゃんと待てよ」と余計なアドバイスをされていた。

 

「それで残りの高校はどこが残っているんだ?」

「えっと……小川台、関東第二、青道の三つですね……青道!?」

「うおっ! 急に大きな声を出すな! そこの高校がどうしたんだ?」

「い、いえ……」

 

 翔は()()()()()()あるはずがない名前を何度も見ていた。

 

(いや、でもパワプロの世界の高校もあるってことは……あってもおかしくはないのか?)

 

 もし仮にあの私立青道高校が本当に実在していたとしても、地区は西東京のはずなので東東京大会に出てくるはずがなかった。

 このことが気になるとそれ以外考えられなくなってしまった翔は、早急に青道高校の情報を調べようと動き出すのであった。

 

 

 

     ◇

 

 

 

 その日、部活を早めに終えた翔はすぐに青道高校を調べ、ネットに書いてある住所へと向かった。

 時間としてはまだ早いため、野球部は練習しているはずだった。

 

「ここが青道高校? でも当たるとしても決勝だよね?」

「そうだけど気になることがあって……ってなんでメリッサがいるのさ!?」

 

 スマホの地図アプリを見ていたところを、後ろからメリッサに話し掛けられて驚く翔。

 しかしそこにいたのはメリッサだけでなく、吾郎、寿也、ジュニアもいるのであった。

 

「偵察に行くのに黙っていくのはずりぃぞ!」

「そうだよ。ちゃんと僕らにも声掛けてくれなきゃ」

「俺はメリッサとお前が変なことしないか見張りに来ただけだ」

 

 ジュニアだけが少しズレたことを言っているが、決勝戦の相手を見たいと思うのが皆同じなようで、翔に内緒で後ろをつけていた。

 

「んー、まぁ偵察というか、確かめたいことがあっただけなんだけど……」

「まぁそれでもいいじゃんか! さっさと行こうぜ!」

「ちょっ! 吾郎君、勝手に入るのはまずいって!」

 

 吾郎が許可無く勝手に青道高校へと侵入していく。

 それを止められず、なし崩し的に全員が校門をくぐるのであった。

 

 

 

 

 

(うわ……やっぱり()()()()()()だよ……)

 

 野球部のグラウンドへ向かうと、そこにいたのは翔が見覚えのある選手達であった。

 一番初めに目が行ったのは、大声で叫びながらタイヤを引いて走る少年。

 それは沢村栄純本人に間違いなかった。

 

「なんだあいつ? 大声出してタイヤ引いてるやつがいんぞ?」

 

 さすがの吾郎でも沢村の奇行は不思議に思ったのか、おかしな人を見る目で眺めていた。

 翔の知る青道高校という確認が出来たので、バレる前に帰ろうとしたのだが──

 

『おい、誰だお前達は?』

 

 そこにいたのはスキンヘッドの長身の選手であった。

 

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